姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
俺がトイレに行くと。
姉が便器の前に座り込んで。
水を流しているところだった。
姉が、紗耶香が俺の子供を身籠った!
嬉しい!
思わず後ろから彼女を抱きしめた。
そしてそのまま
嬉しい!
ありがとう紗耶香!
そう言おうとした。
けれど……
俺の腕の中で、紗耶香は泣いていたんだ。
え、と思った。
嬉しく無いのか?
俺の赤ちゃんが出来たのに。
そもそも……
俺と子供を作ることを提案したのは、紗耶香だろ……?
困惑と……混乱。
だから
「……何で泣いてんの?」
そう訊いたら
紗耶香は
「ゴメン……ちょっとね。とうとう本当に戻ることが出来なくなった、と思ったんだ」
俺に対する口調が、昔の調子に戻っていた。
彼女は、姉は続けた。
「これまでは行き過ぎた夫婦ごっこをしただけだという逃げ道があったけど、これでもう……どこにも逃げ場が無い。あなたのお姉ちゃんに戻る道が完全に断たれた、そう思ったら……」
泣いてしまったのか。
そう思ったら
「……これでもう、あなたも戻れない。人の親になったんだから。……話を持ち掛けたのは私だけど、そもそも私は、あなたのことが元々好きだったのかもしれない。自分でも気づいていないレベルで。……だって……今の私は、あなたを男の人として心から愛していると言えるから」
そんなことを口走るように言って。
彼女は泣いた。
自分の隠された異常性に、あなたを巻き込んで、戻れない道に引きずり込んでしまったんじゃないのか。
そう思えた。
そんなことを口にした。
……そんな。
俺の方だって……
「俺だって、紗耶香の……いや、姉さんが女として無理ではないから……もっといえば、姉じゃなければ恋人にしたいくらいに好きだったから、姉さんの提案を受け入れたんじゃないかと思うよ。俺だって……今は姉さんのことが女として大好きだ。愛している」
俺はそう言って、姉を、紗耶香を強く抱きしめた。
紗耶香は俺の言葉にさらに涙を零して
「……もう、金輪際。私たちが実の姉弟だったことは忘れましょう。墓場まで持っていくのよ……特にこの子には絶対に知られるわけにはいかないわ」
そう言って、紗耶香は俺たちの愛の結晶が宿っているお腹に手を当てる。
その言葉で。
俺の中で燻っていた紗耶香の中の姉が、完全に壊れて消えてしまった気がした。
これからは……対等の……共に人生を歩いていくパートナー。
それは俺に強い衝撃で……
それでも受け入れないといけないことで。
俺は
「分かった。紗耶香……これからは俺の妻として生きてくれ。俺もお前の夫として精一杯頑張る」
そう、ハッキリと言い切った。
それを受けて紗耶香は
「はい……何があっても夫婦2人、協力し合って生きていきましょう。拓斗さん……」
妻としての口調になり。
俺の顔を見た。
俺は向き合った彼女にキスをした。
そして俺から舌を彼女の口腔に入れた。
……ちょっと彼女は応じるのに戸惑いがあった。
理由はすぐに分かった。
キスの味が、ちょっと酸っぱかったからだ。
……さっきまで悪阻で吐いていたわけだし。
まぁ、いいけど。
紗耶香の出したものなら、別に何でも平気だから。
だって愛しているもの。