※この作品はR-18です。

姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語   作:XX(旧山川海のすけ)

93 / 202
第93話 この世界では叶わないこと

 そしてもう、何日も修司さんと一緒にダンジョンに潜り続けた。

 その間、特に危ないこともなく、順調に狩れた。

 

 今日も今日とて

 

「あれは何だと思いますか?」

 

「翼が生えた白い蛇だろ……多分ケツアルカトルじゃないか?」

 

 修司さんと2人。

 宝箱部屋に入って、番人の魔物の正体について意見を出し合う。

 

 修司さんは俺より年長者なだけあって、知識が豊富で。

 こういうとき、頼りになった。

 

 俺が指差して意見を求めたのは、宙を舞う1頭の蛇型ドラゴンで。

 見た目は5メートル以上の体長を持つ白い大蛇。

 そして蛇なのに、その体に3対の純白の鳥の翼を備えている。

 

 そんな異形の空飛ぶ大蛇。

 それに対し、修司さんは「ケツアルカトル」と言ったんだ。

 

 俺は知らなくて

 

「ケツアルカトルって何ですか?」

 

 そんな俺の問いに、修司さん。

 

「南米の方の神様だな。ゲームではドラゴンの一種にされることが多いけど」

 

 なるほど……

 

 すごく魔法を使ってきそうな感じがするな。

 だったら……

 

 

 

 一気に攻めて、俺たちはケツアルカトルを倒した。

 魔法を使われると厄介だしね。

 

 そして獲物を落としたので、また休憩。

 今日も弁当を持たせてもらっている。

 

 今日のお弁当はサンドイッチだった。

 具は卵と野菜とハム。

 紗耶香の愛情を感じて、嬉しい。

 

 ありがとう。美味しいよ。

 

 向こうはおにぎりと鶏肉、ブロッコリー、煮物か……

 

 一部、昨日の晩の晩御飯の残りが入ってる気がするんだが。

 

 実際、どうなんだろうな?

 

 

 

「子供の誕生日、どうしている?」

 

 一緒に弁当を食べていると。

 

 突然、修司さんがそんな話を切り出してきた。

 

 ええと……

 

「普通に、誕生日ケーキを確保してきて一緒に食べてますけど」

 

 来斗の誕生日はずっとそうしてきたし。

 近々やって来る明日香の1才の誕生日もそうなるはずだ。

 

 ……まあ、正直に言うと。

 

 お金を払わなくていいのが、正直寂しいというか、空しいというか。

 辛いものがあるんだけど。

 

 すると修司さんは

 

「……やっぱりそこどまりなのか。……正直、辛いよな」

 

 少しだけ、切ないというか。無力感というか。

 そういうものが含まれる声で、そう言ったんだ。

 

 ……ああ。

 

 この人も、同じことで苦しんでるのか。

 

 すごく共感してしまった。

 

 

 ここの世界……

 食べることには絶対に不自由しないんだけど。

 

 だって、物資は無限に湧くからね。

 

 けれども……

 

 愛しい誰かのために、働いて稼ぐことが出来ないんだ。

 

 そこだけは、本当に苦しい。

 

 紗耶香が奥さんになってくれた後。

 紗耶香のために装飾品だとか、あと、結婚指輪を用意しようと思ったことがあった。

 

 けれども

 

 ……紗耶香の指に合うように、指輪の調整をしてもらうことはできないし。

 仮に出来たとしても

 

 ……タダで取って来たものを、贈り物にするのってどうなんだ?

 尊く無いし、紗耶香だって本当には喜んでくれるはずがない。

 

 紗耶香はそういう女だ。

 モノだけ貰えればいいなんて、そんな下種なことは言わないだろ、

 

 俺には

 そこに思い当たり、断念した過去がある。

 

 子供たちの誕生日についてもそうだ。

 誕生日プレゼントを用意することが出来ない。

 

 だってタダだから。

 タダで取って来たものを、贈り物になんて出来るわけがないだろ。

 

 この世界で稼げるのはゴッドのみで。

 そしてゴッドで買えるものには子供の誕生日プレゼントとして有用なものは存在しない。

 

 ……そこが正直、どうしようもないくらい、辛いんだ。

 

 大切な人に、まともな贈り物が出来ない、ってのが。

 

「……一度でいいから、死ぬ気で一生懸命働いて、奥さんと子供たちにプレゼントしたかったです」

 

 俺がそう洩らすと、修司さんは

 

「そこはまあ、俺も同感だ」

 

 この世界での辛い箇所のひとつだな。

 

 彼のそんな言葉には、俺は心の底から同意した。

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