姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「ありがとう。俺の魔術師もとうとう達人の域に到達した」
ある日。
タマミさんの店で。
俺たちは修司さんにそういう報告を受けた。
おお……
「じゃあこれで、修司さんも上級職を迎えられますね!」
「ああ。ありがとう。……もう1回、お礼を言っておく」
いえいえ。
修司さんの戦力アップは、俺たちのためにもなることだし。
同じパーティーなんだから。
「だとしたら、今日のお弁当は無駄になってしまいましたね」
おめでとうございます、と言ってから。
俺の隣の席に座っている紗耶香が言った。
……修司さんと修行兼狩りに行く日は、このタマミさんの店で終日由宇と一緒に妻同士、おしゃべりして過ごし、俺たちの帰還を待つのが基本だったのだけど。
これでもう、それはしなくていいな。
それは、少しだけ寂しかった。
まぁ、それはそれとして
「無駄にはならない。食べるから」
一応、それは言っておく。
愛妻弁当は無下には出来ん。
「悪阻がはじまる前にランクアップ出来て、本当に良かったよね」
満面の笑みでニパニパ笑いながら、由宇。
まあ、妊婦に目に見えて具体的な不調が出る前に決まったのが良かったって言うのは同感だ。
妊婦の苦しい時期は、なるべく一緒にいてサポートしてあげたいし。
だって俺たち夫婦で、紗耶香は妻なんだから。
「ああ。紗耶香の傍にいてあげられるし、手伝いも出来る」
俺がそんな言葉を口にすると
「愛だねぇ。旦那が奥さん大事にしてるのは尊いよね」
そう言って、由宇は隣の自分の夫である修司さんに抱きついた。
修司さんの方は慣れたもので
平然としながら
「まあ、パーティー活動が無くても、閉鎖環境で家族だけの生活ってのは子育てについても良くないと思わないか?」
だからたまにはこの店に来て、皆でお茶でも飲もうじゃないか。
……そんなことを修司さんが。
まぁ、確かに交友関係は欲しいよな。
紗耶香との家庭生活は幸せだけどさ
子供たちが親兄妹としか交流が無いってのは、何か違う気がするし。
……横目で見る。
10才のお姉さんにボール遊びをしてもらってる来斗と明日香の姿を。
こういうのが理想なんだろうね。きっと
……そんなことを、来斗を公園に連れて来たときに思った。
この街には俺たちしか人間がいないから、公園は貸し切りだ。
本来は他の子が遊んでる状況が正常だろうに。
来斗を公園に連れて行くのは、これまでは紗耶香がやってくれていた仕事だったんだけど。
これから彼女は身重になって辛くなるだろうから
「俺が行くよ」
そう言って、代わったんだ。
これからのことを考えると、こういうことも俺がこなすべきだと思ったから。
すると紗耶香は
「……まあ、頑張ってくださいね」
妙な含みのある笑顔を見せて
俺に行ってらっしゃいのキスをしてくれた。
……あの笑顔……
一体、どういうことなんだ?
そして俺は……
僅か数分でそれを悟るに至った。
これはなんと……!