姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
そしてまたしばらく時間が経った。
この世界の暦の上では12月。
寒くなって来た。
……去年はそうだなぁ。
明日香が紗耶香のお腹にいて。
クリスマスの食べ物は俺が集めたんだっけ。
紗耶香に作らせるわけにはいかないし。
俺が料理できれば良かったんだけどさ……
俺の料理なんて……
食わせられないからな。
……情けねぇ。
その気になれば鍋を作れる修司さんを尊敬してしまう。
なんとかならんかな。俺も……
そんなことを考えながら。
今年も俺は、大型スーパー「アマノドー」で、クリスマス特別商品を買い物かごに入れていく。
……店員も何もいないのにさ。
2月には豆と恵方巻が並ぶし。
3月にはちらし寿司と菱餅。
7月には土用の丑の日で鰻。
……こんな感じで、イベントごとのアイテムはちゃんと手に入ってしまうんだよね。
お金を払う必要は無いから、節約の概念は無いのだけど……
ウチの家では、必要な分以上は確保しない。
それがルールになっていた。
言い出したのは紗耶香なんだよな。
まあ、元々姉だったんだし。
当たり前なのかもしれないけど。
そうしないと、感覚が壊れる。
そして際限なく堕落していく。
……もっともな意見だと思ったし。
そんな言葉が普通に出る奥さんが、ますます好きになった。
……あ、そうだ。
クリスマスだから、コレも確保しないと。
クリスマスプレゼントもどき。
……まあ、飴玉なんだけどね。
ちょっとだけお高いやつ。
アマノドーの中の、高級洋菓子店で陳列している商品なんだけど。
1袋1000円する高い飴。
これを子供たちが寝た後に、枕元に置くんだ。
……本当は玩具を置いてあげたいけど。
ここの世界、子供の玩具事情に不利だから。
テレビ番組やってないからね。
映像作品は無料動画かDVDで見るしか無いし。
そういうので子供向けは、昔の作品で。
玩具は手に入れにくいから。
……自宅の玩具はブロックと積み木、ぬいぐるみ、玩具の刀。
そんな感じで、プリンセスシリーズの変身アイテムや、戦隊ロボやライダーベルトは無いんだよ。
こういうところも、こっちで辛いところだな。
お金を払えないという負い目の問題もあるけどさ。
「ただいまー」
クリスマス物資を確保して、家に帰って来た。
すると玄関で
「ご苦労様です。あなた」
俺をお腹が大きくなった紗耶香が出迎えてくれる。
マタニティウェア。
その後ろに来斗が。
腕の中に抱っこされている明日香がいた。
「パパおかえり」
息子も出迎えてくれる。
嬉しい。
明日香も発語はあったんだけど、この子は挨拶の概念をまだ習得してないので無言だった。
俺は頭を撫でてやった。
これが挨拶の代わりだ。
「クリスマスチキンは3人分確保したよ。言われた通り」
紗耶香に物資が入ったエコバックを渡しながらそう言うと
彼女は
「どうせ明日香は全部食べるの無理ですしね」
明日香には紗耶香が自分の分を分けるんだろう。
来斗も、全部は食べられないかもしれない。
その食べ残しは、俺が食べるかな。
……じゃあ、2人分の方が良かったんでは?
俺はそこに、唐突に気づいた。
俺の分……紗耶香と分けるかなぁ?
あ、でも……吐いちゃうかもしれないのか。
相談するか。後で。
そんなことを、俺は妻に抱擁の挨拶をしながら考えた。