※この作品はR-18です。

仄暗い雪の底から   作:竹@竹林にて。

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転禍

「い、――――~っ!?」

「そう、ここをクリクリって焦らした後にきゅって摘まんだり強く刺激すると面白い位に反応してくれるよぉ?」

「…」

 

 あれから数日、きりたんはずん子の手解きを受けながら、年齢不相応の女性を悦ばせる技術を身に付けていた。…その技術を、相手を害する為に使ってしまってはいるのだが。

 今のきりたんにずん子に逆らう意思はない。正確には、ここから逃げ出して誰かに助けを求めることが出来なくなってしまった。彼女は、ゆかりを、本来助けるべき先輩を姉と同じように犯してしまったのだから。保身の感情がないと言われればそれは嘘だろう、しかし、それ以上に自分を見限ってしまった。自分に彼女を助ける資格など無い、そう思ってしまっていた。

 

「…あら、もうこんな時間。私、もうそろそろ収録に行かないとだから、後のこと任せていいかな?」

「…はい」

 

 私に拒否権などあるのだろうか、すっかり擦れた考えでただ惰性に任せて返事をする。

 辺りに散ったねばつこい水気を拭き取る頃には、ずん子は既にシャワーを浴び終えていた。まだ僅かに水気の残る火照った顔は綺麗に整っていて、化粧をする必要などない程に美しい。…彼女のこの一面を知った今となってはどうでもいいことであるが。

 

「それじゃあ後はよろしくね?夕飯は用意してあるからゆかりちゃんにも食べさせてあげてね?」

「分かりました…」

 

 こちらの気を知っていてなお笑顔で出掛けて行く姉を見送る。かちゃり、と備え付けの鍵が締められる音が聞こえて、その後にカチンともう一度小さな音が響いた。姉曰く、二人が逃げないようにと南京錠を買ったらしい。抜け目のないことだ。

 だるい身体を押し進めて、リビングルームのソファへと崩れ落ちる。

 もう疲れてしまった。確かにずん子は宣言通り、様々な物を用意してくれた。気まぐれに要求してみたゲームソフトや漫画が室内物干しの下に放置されている。最近は気晴らしにきりたんも積極的に手伝っているが、この生活を初めて三日程はVOIDEROID活動の忙しさにも関わらず全ての家事を完璧なまでにこなしていた。ただ惰性で生きるだけならばそれ程悪い暮らしでもないだろう。

 だが、それだけだ。犯罪者、それも親族との生活など精神が持たない。それどころか、毎日のように彼女と共に知り合いの女性を犯しているのだ。一体何と差し引けばこんな生活など受け入れられるのだろう。

 

「…何か、しますか」

 

 ぼそり、と年齢不相応の低い呻くような声で呟いた。何も、楽しみたいわけじゃない。気晴らしでもない。何かをしていたかったのだ、そうでもなければ気が狂いそうで。単純作業でもいい、頭を可能な限り使いたくなかった。振り返りたくなかった。

 のそのそ、と歩いて冷蔵庫へ。そこからミネラルウォーターを取り出す。パキッと漕ぎみよい音を立てるキャップが、思考を冴えわたらせるような冷たい水の感触が少し憎らしい。どんなに些細でも変化は嫌いだ、思考が変に巡ってしまう。そうして、ペットボトルの中身をちゃぷちゃぷと揺らしながら、普段の自分ならまずチョイスしないような作品の傾向で満ちたソフトと漫画の袋を物色する。さて、作品の袋、というよりもその傍らに立てられている室内物置は、リビングの限られたスペースゆえにベッドルームへ繋がる扉のすぐ隣にあった。当然、この部屋のどこよりもベッドルームの変化に気付き易い場所である。例えばそれが、

 

「ん…ぐ、つっ…」

 

 袋をあさる音にかき消されそうな程に小さな呻き声だとしても。

 きりたんは物色する手を止めて、顔を上げた。当然ながらベッドルームから聞こえた声はゆかりのもの。相変わらずのすっかり荒れてしまった声であるが、一定ではない呼吸の仕方からして起きているのだろう。確かに今日は基本的に(素面の)自分が責めていたから、いつもよりは疲れは少ないのだろう。それだとしても、起きているのは珍しい。そうきりたんは思う。…もしかしたら、喉を痛めて眠れないのかもしれない。

 ベッドルームに入ったきりたんに、ゆかりはびくりと肩を竦ませる。当然と言えば当然の所作であるが、やはり物悲しさは否めない。

 

「…ゆかりさん、水持ってきましたよ。喉、大丈夫ですか?」

「あ、だいじょ…、いえ、いただきます…」

 

 なるべくゆかりを怖がらせないように、穏やかな声を意識して話しかける。それでも怯えていたゆかりは一度は断りかけたのだが、その一瞬に見せたきりたんの表情の陰りに、ゆかりは掌を返してみせる。そうして、僅かに純粋な喜びを見せてそれをすぐに自嘲するように陰らせた少女の姿に胸を痛めた。自分が嫌になる、ずん子の思いを歪ませた自分も、目の前の本来は被害者たる少女に気を使わせている自分も、そこまで分かっていながら依然心の何処かでまだきりたんを受け入れられない自分も。

 仰向けで両手を後ろ手縛られながらの不自由な体勢から器用に座りなおしたゆかりの傍らにきりたんが歩み寄る。彼女の口元へペットボトルの開け口を近付ける。その時だった。

 

「ひっ、いやあ!」

 

 結果としては双方の油断があったのだろう。

 きりたんとしては、先程の受け入れたその反応からして精神的にも肉体的にもゆかりが自分の行為を受け入れたと思い込んでいたこと。ゆかりとしては、水を飲ませるという行為なら多少触れられても我慢できるだろうと思い込んでいたこと。

 しかし、結果としてゆかりはきりたんに触れられることを拒絶した。身体に沁み込まれた恐怖が自らの意思に反してきりたんを突き飛ばし、きりたんはバッドの下に投げ出される。どすん、という音がしてゆかりもきりたんも、断片的ながらどういった事態が起こったのかを理解した。

 

「だ…!だいじょうぶ、ですか、きりたん…?」

 

 申し訳なさか単純に心配なのか、恐る恐るといった様子で尋ねるゆかりにきりたんは答えない。ただ、むくりと立ち上がっただけだ。どこかぶつけましたか、大丈夫ですか。そう尋ねようとしたゆかりは、ただヒッと小さく悲鳴を上げた。

 

 ゆっくりと振り返ったきりたんが、どこか据わった瞳で睨みつけてきたのだから。

 

「ご、ごめんなさ…」

「別に謝らなくてもいいですよ?」

 

 笑顔で、しかし瞳だけは何一つ笑わない様子でそう答えると一歩、またいっぽときりたんはゆかりへと近付いていく。その度に後ろへと這いまわるようにして逃げようとするゆかりを誰が止められよう。

 

「いやですね、そんな逃げないでください、よっ」

「んぷ…っ!?ひぃ、い、いや…」

 

 脚に結ばされていた鎖をくい、と引っ張ればゆかりは呆気なくその場に倒れ伏した。そうして顔を上げれば吐く息の熱が伝わらん程の距離にきりたんがいるのだ。思わず小さな悲鳴を上げる。

 

「ご、ごめんなさい、ごめんなさい…」

「だから、謝らなくていいですよ?」

 

 そう、厭に穏やかな声で言うきりたんにいよいよゆかりは恐怖がとまらない。

 

「謝らなくていいですから、酷いことしてもいいですよね?」

 

 とくとく、と二人の視界の外で、ただ投げ捨てられたペットボトルが、自らの重さを減らしていた。

 

 

 

***

 

 

 

「いやっ、もう、ゆるし、やぁっ!」

「だからっ、始めからっ、許してるってっ、言ってるじゃないですかぁ!」

 

 興奮交じりの叫びと悲鳴交じりの喘ぎが響く室内で、二人の少女は淫らに交わっていた。

 きりたんはゆかりの背中へと抱きついている。言葉でだけなら、おんぶかコアラかといった可愛らしい響きであるが、その少女が背後からゆかりの控えめな胸部へと手の伸ばし愛撫を施していると付け加えれば、数段飛びに背徳的な光景の完成である。

それもただやみくもに胸を揉みしだく児戯に耽っている訳ではない。左手では刺激によって期待している様に膨らんだ頂と柔肌との境目を撫でるように、なぞる様に刺激する。一方の右手では頂きの示す期待に応えるように強い刺激を与える。ころころと指先で転がしては弾き、時には胸の中程まで垂直に押し込んでやる。その間も、うなじから背筋にかけてのなだらかな曲線を舌で舐め上げ、ゆかりの性感を高めていく。

全てはずん子の教育の賜である。しかし、これほどまでに積極的な意思を見せてやるのは初めてであった。何も何か狙いがあってここでその手腕を示したわけではない。ただ、一度のゆかりの拒絶がきりたんの中にある枷を、取り壊してしまった。

 

「ホントは、嫌じゃ、ないんでしょう!?こんなに先っぽ、膨らませて!期待していたんでしょう!?」

「ちが、ぁ、そんなわけ、ひゃうぅっ!?」

「なにが、違うです、かっ!こんなに、ぎゅって、されただけ、で!身体ビクビクさせて!ホントは、始めから、こんなふうにされたかった、ん、でしょう!?この、インラン!」

 

 両方の乳首を、ギリ、と指先で押しつぶしてしまえばゆかりは否応なく高い声を上げさせられて、吹き出した愛液で湿る布団に身体を預けた。荒い呼吸を繰り返し整えようとするゆかりに、しかしきりたんは責め手を緩める気配は微塵にも見せない。

 しがみ付いていた背中から離れて仰向けに転がす。先程の絶頂で満足に身体も意識も動かせないゆかりはされるがままだ。そのまま脚を割り開きその間へと身体を滑り込ませる。

 

「…?、っ!?ぃや、なに…!?」

 

 そこまでされて、ゆかりは自分の置かれた状況に気付き小さく悲鳴を上げる。辛うじて届く膝で僅かばかりの抵抗を試みる。だが、そんな微かな抵抗に意味などない。それに、きりたんは改めて目の前に広がる光景に心を奪われていた。

 度重なる絶頂に打ち震えるゆかりの中心はひくつき、今でもくぽくぽと奥から熱い蜜を溢れさせている。その上で微かに揺れる秘毛は蜜で湿り、汗にまみれた髪のそれとも違う卑猥な光沢をてらてらと輝かせている。

 

(すごい…、きれい…)

 

一瞬、我を忘れた。もしかしたらそれ以上かもしれない。頭の奥が沸騰してドロドロに溶けてしまったかのように熱い。最早善悪の判断さえ出来ぬほどに興奮したきりたんには、目の前の光景が世界で何よりも尊いものである様に思えてしまう。まして、それを作り出したのが自分自身なのだ。その興奮たるや筆舌にし難いだろう。ざまぁみろ、心の中で誰に言うでもなく呟いた。そうしてきりたんは、興奮に身を任せて、

 

「あっ、ひん!うぁ、あ、ぁあ!?」

 

 二本、人差し指と中指を揃えて熱く濡れそぼった蜜壺へと深く刺し込んだ。刺し込んだ指が焼けてしまうのではないかと思うほどに熱いそこを掻き出し前後へ動かすたびに、ゆかりは身を震わせ甲高い嬌声を上げる。その中の一点、ざらついた箇所を見つければそこを重点的に、擦り上げるように刺激すれば、ただでさえ高い声が一層高く跳ねあがる。

 

「ここ、ですか?ここが、いいんですか?」

「いや、ちがう、のぉ!よくない、ですか、ら、ぁっ!?」

「うそ、言わないで、ください!こんなに感じてる、じゃないです、かっ!」

 

 ゆかりの泣き叫ぶ姿に、きりたんは背筋を駆け上がるぞくぞくとした衝動を感じた。その衝動に従えば指の動きはより早くより荒々しいものになっていく。その度に、もう限界だと思われていたゆかりの感度はより過敏なものへとなってゆく、ゆかりの感度も、快楽を感じるかも、その全てを自分が握っているのだ。

 

「や、やめっ!もうぅ、いやぁあ!?」

「なにが嫌、なんですか!?こんなにぎゅうぎゅうに、指を締め付けて!自分より年下の、小学生に、こんな風に犯されて、恥ずかしくないんですか!?インランさん!」

 

 まだ小学五年生の身には不相応な余りに歪んだ興奮に、きりたんは囚われていた。口元が三日月の形に歪んでいくのが理解できた。あぁ、そうだ。結局どれほど常人ぶっても私だってずん姉様と同じだ。あの人と同じくらい、もしかしたらそれ以上にこの人を犯したかったんだ!

 そう衝動に任せて、最奥まで指を推し進めたいのに足りない己の指の短さがもどかしい。あぁ、もう。そう吐き捨てるようにして、きりたんは熱いぬめり気を帯びた自らの指を引き抜いた。

 

「ひゃうん!?」

 

 そんな小さな悲鳴に悦に浸ったきりたんは、見せつけるように指に塗れた愛液を舐め取ってみせれば、ゆかりは荒い息を吐きながらも恥ずかしがるように目を逸らした。

 

「…なにを、今更恥ずかしがってるんですかぁ?」

「いや、だって…!」

「まぁ、何だっていいんですけれど」

 

 そう多少気が晴れた様子でぼやくと、きりたんはベッドから立ち上がり一直線に部屋の隅にある籠へと近付く。ただそれだけで、ゆかりはひゅっと息を呑んだ。当然と言えば当然であろう、その籠に放りいれられているのは、その全てが彼女を無慈悲に無機質に攻め立てる性玩具なのだから。

 その中から二つのバイヴ、一つは初めてゆかりの胎内を侵し彼女を責め立てたあの時のものを取り出すとあえてゆっくりとした足取りでゆかりの横たわるベッドへと歩み寄る。これはいわば処刑へのカウントダウン。一歩一歩ときりたんが近付けばそれだけゆかりは表情を強張らせていく。まるで彼女の生殺与奪の総てを握っているような全能感で後ろ暗い笑い笑いが隠しきれない。間違いなく自分は今、人生で一番醜い顔をしている。そう自覚しながらきりたんはしかしそれを止めることなど出来なかった。当然であろう、自らの上を自覚しながら眼前に差し出された餌を拒む獣などいないのだ。

 

「それじゃあ、挿入れますから。力抜いといた方がいいですよ」

「き、きりたん…、もうやめましょう…?ほら、勝手にこういうことすると、ずん子さんも怒るかも…」

 

 ガン!!

 突然の音に、ゆかりは身を竦ませた。きりたんが、彼女にとって特別でない方のバイヴを床めがけて投げつけたのだ。

 

「今は、姉様は関係ないでしょう?力を抜いてくださいね」

「い…、ぅ、うん…」

 

 本人からすれば、穏やかな笑顔のつもりだったのだろう。衝動に任せた行動で怯えたゆかりを安心させる為の笑顔だったのだろう。だが、その目は据わっていた。笑っていなかった。その様な笑顔を穏やかなものと誰が言えようか。拒絶の意を示す気力もそぎ落とされ、ゆかりはただ自分より幼い少女の命令に従うほかなかった。

 

「ン…あ、うぅ…!」

「…ふぅ、奥まで入りましたよ。大丈夫ですよね、ゆかりさん」

「な、んとか…でも、くるし…」

 

 凶暴さと優しさを使い分けてゆかりを従順にしていく。責め立てられるゆかりは当然、責め立てる側のきりたんでさえ自覚していないその行為は、しかし幼い少女の嗜虐心を満たすには不釣り合いなほどであった。

 

「そのくらいなら大丈夫ですよね。それじゃあ、動かしますよ」

「え、いっ、うぅん!?」

 

 きりたんの囁きを合図に、中に突きこまれたバイブがぶるぶると振動を始める。それも小さい刺激から段々と、なんて生易しいものではない。いきなり最大出力で動かされた疑似性具にゆかりは胎内をかき乱された。

 

「どうです、ゆかりさん?やっぱりこれがお気に入りなんですか?最初に入れたときもこれでいっぱいいっぱいになってましたもんね?」

「いや、ぁあ!だめっ!だめです、これ…っ!強すぎて、だめですぅ!!」

「へぇ、やっぱり気持ちいいんですか?…それじゃあ、もっともっと気持ちよくしてあげますね?」

「…や、ぁああああ!!?」

 

 ゆかりの言葉など制止するきっかけにもならない、むしろ逆効果であっただろう。きりたんは振動するそれに手をかけると、子宮口めがけてぶつけるようにバイブでゆかりの膣内をかき回した。

 

「どう、ですか?気持ちいいですよね!?姉様がやるよりもよっぽど気持ちいいですよね!?」

「わから、ないぃ!わかりませんか、らぁ!?」

「そう、ですか!じゃあ、もっと、分からせて、あげますね!」

「あ、あぁっ!」

 

 もう返答を聞く余裕があるのか、そもそも聞く気があるのかさえ定かでないきりたんは、手首を捻るようにして疑似性器をぐりぐりと動かす。

 

「あ、やっ、やめ、ひぃう!?」

 

 手の動きはそのままにきりたんはゆかりの胸元へと顔を近付ける。そして、

 

「はむ、ちゅ、ちゅる…」

「やぁっ!そ、こまで…!」

 

 その頂点で既にぷくりと膨らんだ蕾に唇を押し付け舌で絡め取る。余った左手も同様に添えて、パン生地でもこねているのかのように強く握りしめる。

 

「いっ…、もう、やめてぇ!あ、あぁ!」

 

 その荒々しさにつられるようにして、バイブを握る手の動きも一層激しいものになる。

子宮口を叩きつけるようにごす、ごす、と前後に出し入れしていく。

 

「いや、ひっ、ぐ、あぅ、が、あぁあ!?」

 

 突き入れて、引き出して、突き入れて、引き出して。激しく前後するきりたんの手首は既にゆかりの吹き出した愛液で濡れている。

 

「あ、ああ、あ、いっ、あぁ、あああ!」

 

 ゆかりの喘ぐ声の間隔が短くなっていくのを感じ取り、きりたんは動きを徐々に変えていく。胸を揉みしだいていた左手で右手で持っていたバイブを掴む。多少の動きづらさはあるが、そのまま膣内に刺しているよりは余程彼女を追い立てられるだろう。そうしてどこかぎこちないする左手はそのままに、右手でゆかりの濡れそぼった秘毛をかき分けて目当てのそれを探し出す。そして、

 

 ギリィ!

「あ、あぁああああああああああっ!!?」

 

 右指で強く、快楽を期待していたかのように膨らんだ秘芯を強く絞るように刺激する。胸元を舐めその頂点にある果実を吸うに留めていた口の動きを改め、その先端を歯の先で軽く噛んだのはそれと同時であった。

 その瞬間、ゆかりは一際大きい叫びをあげ、身体も同様に大きく跳ねさせた。ピン、と伸びて強張った身体は暫く動けず、ふっと糸が切れた様に布団の上にだらりと倒れ込んだ。

 

「あ、あぁ…」

「イっちゃいましたね、どうです、気持ちいいでしょう?」

「は、あ、あぁ…」

 

 そう満足そうに尋ねるきりたんであったが、肝心のゆかりはまだ打ち上げられたその高みから下りきれていない。まだどこか朦朧とした意識では、きりたんの言葉を理解することが精いっぱいでそれ以上は望めないようであった。

 

「…やっぱり、まだ満足できませんか。大丈夫です、まだ時間はたっぷりありますから」

「…っ!?」

 

 しかし、そんな状態であっても流石にこの一言には反応せざるを得なかった。当然であろう、今日だけでも既に何度絶頂へ押し上げられたか分からないのだ。これ以上されたら、間違いなく壊れる。結月ゆかりを形成する何かが無くなってしまう。…果たして未だにそんなものがあるのか、定かではないが。

 

「きも、気持ちよかった、ですから…!今までで、一番くらいにきもちよかった、です…!」

 

 そう、自分の愛液に塗れたきりたんの上着を掴みながら、息も絶え絶えに自分の意図として、その思いを伝える。

 

「そう…そうですか!なら、もっと、もっとしてあげますね!まだまだ気持ちよくしてあげますから!」

「…ぇ、え…」

 

 しかし、その言葉に意味などなかった。きりたんが壊れてしまったのか、もとよりどちらの解答を用意しても犯し続けるつもりであったかはゆかりに分かるはずなどない。唯一つ分かるのは、このままでは既に限界を迎えた身を更に侵されるということだけだった。そんなことをされれば、間違いなく、壊れる。今度こそ、本当に。

 

「き…、きりたん…!」

「どうしたんですか?何か、してほしい事とかありますか?」

「やめ…、やめてください…!もう、ほんとうに、げんかいなんです…、だから…!何でも、しますから…、それだけは…!」

「…そう、ですか」

 

 そのゆかりの決死の覚悟が込められた言葉に、きりたんは少々の落胆を覚えた。やはり自分に心を開くつもりなど毛頭ないのだろう、その上姉の与える快感よりもやはり自分は劣っているようだ。そんな独り善がりな考えに陥ってしまうのも幼さゆえか。

 

「そうですか、何でもですか…」

「き、きりたん…?」

 

 しかし、突如として年不相応の不気味な笑みを浮かべるきりたんの様子に、ゆかりは自らの失言を悔いた。だが、もう遅い。ベッドに先程まで暴れに暴れていた疑似ペニスを放り、ずい、とゆかりに迫ったきりたんは口を開いた。

 

「それじゃあ、一つお願いがあるのですが…」

 

 

 

***

 

 

「やっぱり、情報とか入ってこない、よね…」

「はい…」

 

 ずん子の向かいの席に座ったマキは、酷く疲れきった顔をしていた。目の舌の隈が彼女の整った顔を台無しにしている、髪も普段より無造作にまとめられている。やはり親友の突然の失踪が相当堪えているのだろう。…そんな思いやり、彼女にする資格はないだろうとずん子が心の中で非難している事に気付く余裕もないのだろう。

 

「本当に、何処行っちゃったんだろ…。携帯とかも自分の家に置いたままでさ…」

「自殺、とかじゃないですよね…。心当たりは全部当ったんですが…」

「…縁起でもないこと、言わないでよ」

 

 その言葉が震えているのは自殺なんて不穏な単語が出てきただけではないのでしょう?心当たりがあるのでしょう?

 

「でも、確かにいなくなる前のゆかりさんは少し様子が変でした。すごく落ち込んでて、どうしたんですかって聞いたら、何でも振られたって…」

「ずんちゃん、しーっ!…ここ一応外だから」

 

 そう慌てて口を閉じさせると、マキは辺りに視線を目配せして周囲の様子を窺う。特に誰も見ていないのを確認しても、まだ少し落ち着かない様子であった。…当然だろう、貴方は善意の第三者なんかじゃない、当事者の一人なんだから。

 

「でも、そっか…失恋か。それは、辛いなぁ」

「…えぇ、そうですね。相当に酷い振られ方でもしたんでしょう、こんなことになるなんて」

「…そう、だね」

 

 白々しい嘘に苛立って強い言葉をぶつければ、既に弱り切っていたマキが更に小さくなったように錯覚する。でもそこに、罪悪感ややりすぎたといった感情は存在しない。寧ろ、ざまぁみろ、としか思えない。

 

『ねぇ、ずんこさん…わたし、どうしておんなに生まれちゃったんでしょうか…?』

 

 あの日、どれ程追い込まれた表情で私の家を訪ねたのか貴女は知らない。

 

『マキさんに、マキさんが、わたしはそういうしゅみじゃないって…』

 

 その言葉をどれ程の苦痛と共に吐き出したのか、貴女は知らない。

 

『…ねぇ、ずんちゃんは、このきもち、わかってくれますか…?』

 

 そうやって私を選んで縋ってきてくれたことも、貴女は知らない。

 貴女は、あの後の彼女のことを何一つ知らない。その事実が、憎悪と優越感という二つの歪んだ感情となって渦巻いている。

 肘を付きながら額に手を当てるマキが思い耽るのは、何処知れず姿を消した後輩に対しての後悔と心配だろう。そんな様子を見ながら飲むコーヒーのなんと美味しいことか。その愉悦を表情に出さないように努めながらずん子は誤魔化すようにコーヒーを啜る。

 

 

 

 だって、手放したのは貴女なのだから別にいいでしょう?

 これから彼女と幸せな日々を送るのは私なのですから、貴女はそこで立ち止まっていてください。

 

 

 

 自らの部屋で今まさに行われている淫行など知らぬまま、ずん子は心の中にあくどい笑みを浮かべた。

 

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