でも、お狐様要素は薄いでしょうか。強い魔物娘ということしか書けてない気も…。
エロシーンもお狐らしさに悩み、結果開き直って割とやりたいようにやらせてもらいました。もふもふ尻尾も要素に組み込めばよかったかも。
ちなみに、割と最後までふたなりをゆかりさんにするかイタコさんにするかは悩みました。身体の起伏の少なくボーイッシュな雰囲気のあるゆかりさんが王道かとも思いましたが、肉感的でムチムチな身体のイタコさんがバキバキで猛々しい男根を持っているというフェティッシュを想像しては興奮した自分の本能に従って書かせて頂きました。
「…ふぅ。それで?これ以上高額な依頼は無いんだが…」
「そこをどうにか…。まさか、国外渡航がこんなに高いとは思いもしなかったんですよ…」
普段の彼女には似合わない懇願をしながら縋るように視線を向けるゆかりの様子に、ギルドのマスターは頭を掻きながら困り顔で溜息を付いた。しかし、ゆかりからすればある意味そうなるのも必然とも言える状況に追い込まれていたのだから仕方ない。路銀を十分に溜め込んでいたゆかりが訪れたジパングと言う島国は、大陸からの渡航の費用はそれなりの船旅を経験してきたゆかりが二度三度と何度も確認したほどには旅費は安いものだった。それならば、と安心した心持でジパングを観光してはついでにギルドの依頼もこなして程々に満喫したゆかりを襲ったのは、規格外に高いジパングからの出航費用だった。なんでも、大陸との交友関係の樹立やそれに伴うギルドの設立以降優秀な人材が国外へ流出するのがジパングでは問題視されているらしく、それを防ぐための手段として行われているのが国外への渡航に異様に高い関税をかけて優秀な人材を国内に留めさせるというやり方らしい。ジパング人ではないゆかりからすれば堪ったものではないそんな渡航費用の問題は、しかも夏に向けて人の往来が激しくなる少し先に一層ひどいものになるらしいとのことだった。このままでは暫くという言葉では済まないほどの時間をジパングで過ごすことになる。ジパングが気に入らないわけではないが、根無し草を好む性分のゆかりがそれを待ちきれるはずもなかった。そういうわけでゆかりはギルドの高額依頼を漁っていたのだが、考えるところは皆同じなようで多くの高額依頼は既に他の冒険者に奪われてしまったらしく、渡航費用を賄えるほどの依頼は無いようでゆかりはしょんぼりと肩を落としてしまっていた。それを哀れに思ったのか、ギルドのマスターは大きく溜息をもう一度吐いてゆかりの前に一枚の依頼書を置いた。
「これは?…っ!?な、何ですか、この報酬…!?」
「見たならさっさと隠してくれ。そんじょそこらの冒険者に見せちゃいけない依頼なんだよ、それは」
言われた通りにゆかりはもう一度報酬だけ確認すると、動揺を周囲に悟られないようにすぐに依頼書を裏返した。しかし、ゆかりが酷く驚いたのも無理はない。これまでそれなりに多くの高額依頼をこなしその中の幾つもを上回る額の遺跡調査も達成したゆかりですら見たこともない額の、それこそ渡航費用など軽く払え、それどころか報酬だけで半端な国ならば爵位の一つや二つ買えてしまいそうなほどの額を見せつけられたのだから。その規格外の報酬で、この依頼がどれほど危険であるかを指し示していた。
「…んで、この依頼なんなんですか…?こんな高い依頼、それなりに回ってはいますが見たことないですよ?」
「まぁ早い話が国難に繋がりかねないマジもんの厄ネタなんだよ、これは。嬢ちゃん、旅の途中に『呪尾石』って話を聞かなかったか?」
「呪尾石…?あの、悪霊を封じているとかいう呪いの石のことですか?」
「おぉ、ちゃんと冒険者やってるらしいな。そうだ、その呪尾石だ。詳しい経緯は面倒くさい歴史の話になりそうだし、そんなこと嬢ちゃんも多分興味ないだろうから省くがな…。簡単に言うと、その悪霊はかつてジパングの皇宮を乗っ取って国を破滅に追い込もうとしたうちの国では最悪レベルの厄ネタなんだ。かつての国軍にもひでぇ被害を出しながらどうにか封じていたその魔石の結界が解けてきているのか、最近呪尾石の周囲にえれぇ瘴気が立ち込めて周りにも無視できない被害が出てるって話でな。これは兎に角優秀な冒険者にしかしちゃいけない依頼なんだよ。封印の調査と結界に綻びが出ているようならそれへの対処、もしも悪霊が漏れ出ているようならそいつへの対処までやらなきゃいけない、なんで国軍が対処しないのか不思議でならないアホみたいなやつだ。一応言っておくと、依頼書の額は呪尾石の問題を完全に解消した場合に支払われるモンだから額面通りの額が来るとは限らねぇ。例えば、悪霊が出ていなくて結界を張り直すみたいな対処の仕方だった場合はいくらか減額になる。これだけでも依頼を受注しない選択肢は出てくるかもな。しかも、依頼を受けて生きて帰ってきた奴はゼロだ。うちの国の五大都市でこそこそながらにかれこれ三十人近い冒険者が依頼を受けてだ。怖くなってきたか?だが、流石に渡航分の費用を足らすなんて安っぽいもんじゃないくらいの報酬が出ることだけは保証するぜ。…どうする?」
そう心配半分諦め半分といった様子でゆかりに尋ねるマスターの様子に違わず、ゆかりも伏せられた依頼書を何度かチラチラと確認し酷く悩んでいる様子だった。しかし、額に手を置いたまま頭痛を堪えるように天井に視線を向けて唸り声をあげると、意を決したように頭を振り下ろしてそのままジョッキを呷って半ば睨みつけるように店主に視線を向けた。
「…分かりました。ハイリスクハイリターンな依頼はもう嫌って程経験済みです。どうせこれしかない現状、命を捨てる覚悟で挑ませてもらおうじゃありませんか」
「…マジで、か?」
「大マジです。これでも修羅場は散々くぐってるんです。…死んだときは、恨んでくれていいですよ」
「…了解だ。じゃあ、こっちもある程度準備が必要だな。明日、はちょっと微妙だな。明後日にもう一度来てくれ。それまでに準備は済ませておく。あ、あと依頼書に受注したサインだけ頼むわ」
「分かりました。…あ、麦ショウチュウをまた炭酸割でお願いします」
「…これだけの依頼を受けておいて酒を注文できるたぁ、よほど心臓に毛が生えてるようだな。…まぁ、いいことだ」
呆れたような苦笑を零して、マスターは店舗裏に消えていった。ゆかりは緊張か武者震いか小さく揺れる身体を誤魔化すように身体を伸ばすと、空になったジョッキの下敷きになっていた依頼書を裏返して受注者の記入欄に自身の名前を記した。
****
「…これは、大層な装備、というか術式ですね…」
「まぁ、そんだけ今回の依頼が危険ってこった。にしても、あんた本当にジパング式の術師じゃねぇんだよな?俺も詳しくないからそこまで説明できないとはいえだ、こうも容易くジパング術を解析して効用を理解する奴なんて初めて見たぜ。ジパング出身者でも見たことねぇよ」
「まぁ、これでもアカデミー…冒険者用の学校施設みたいなところでは、魔術に関してはやたらと評価されてましたからね。」
「へぇ、そんなもんがあるのか。冒険者の学校か、大陸は進んでるもんだな」
感心した様子でゆかりの話を聞くギルドマスターだったが、ゆかりもまたマスターから渡された装備を感心した様子で眺めていた。ジパング式と言う通り、自分の魔術とは違う馴染みの薄い術式だから些細な違いはあるかもしれないが、そのどれもが大陸ならひとつで一回の依頼で稼げる額でも間に合うかどうかといった高額なものになるだろうという確信がある。口を覆う用のスカーフのような布切れは生半可な瘴気など簡単にシャットアウトしてしまうだろうし、装備の一つ一つに張り付ける用の護符は一枚でも並の魔術師の一級魔法を防げることが想像できる。何よりすごいのは封印の為の勾玉だ。余りに強い霊気は微かな光となって懐から漏れだしてくる始末だ。どれほど強力だといっても、一悪霊を封じるのには余りに強すぎないかと疑念さえ浮かんでしまう代物。これがあればあの時もっと楽だったのに、なんて今考えても仕方がない昔ヘマをした記憶が蘇ってくる。依頼を受けたとはいえ一冒険者に預けるには大層すぎる装備なのではないか、そう思わずにはいられない。
「…にしても、です。これだけの装備を冒険者に渡せる分用意できるなら本当に軍に配給してさっさと解決すべきではないんですかね?」
「全くだ。まぁ、お上の考えることなんざ俺らの知ったことじゃねぇよ。変に嗅ぎ回って明日が来なかったら意味ねぇからな」
「それはそうですね」
自身のもっともな疑問を一刀両断したギルドマスターの一言に短く同意を示したゆかりはそう重くない装備を更に身軽にした短期決戦用の装いに整えて、余った着替えや日用品をまとめた鞄をギルドマスターの足元にぼすんと預けた。
「…それでは、三日帰ってこなかったら私は死んでいるでしょうから。もしも、そうなったら売っても捨ててもいいので、処分をよろしくお願いします。…できれば、そうならないように祈っていてください」
「…おう。お前さんみたいなただ渡航してきただけの冒険者に国の問題押し付ける形になってすまねぇな。俺はなるべく長く祈っておいてやるから、しっかり戻ってきてくれ」
それだけ言葉を交わして、ゆかりは馬車に揺られて辿り着いた伝聞通りに瘴気に溢れる山の麓から生い茂る森目掛けて、ギルドマスターが怯み風圧に当てられた馬が嘶きを上げるほどの速度で飛び出した。そのまま木々を縫うように駆け抜けるその姿に、ギルドマスターはこれまでの依頼で感じたことのない期待を覚えずにはいられなかった。
ゆかりは瘴気によって醜く変質した木々や動植物が視界を埋める森を驚異的な速度で抜けて、生物の気配のない岩が転がる山肌を駆け上がる。駆け抜けるその速度はただの登山客は当然として並の冒険者など比較にならない程であり、その速度で移動してもなお息一つ切らさぬその様子は歴戦の冒険者と言うに相応しい貫録を示していた。
そうして山を駆け上ること暫く、瘴気が一際濃くなったことを確認するとゆかりは一度足を止めて額に留めていた魔力を込めて作った手製の簡易的な防塵ゴーグルを装着して進んでいく。気が狂いそうになるほどの濃い瘴気の奔流を与えられた護符やスカーフ、そして自身で組み込んだ防護魔法で防ぎながら、ゴーグルで視界を確保して進むゆかりの視界に思わぬ景色が広がる。それまで広がっていた黒く濁った瘴気が無い、正確には上空に逃げるように一度高く浮き上がって周囲に広がるといった様子で黒瘴が抑えられた空間に辿り着いたのだ。そこの中央には瘴気を吹き出す魔石が鎮座しており恐らくはそれが呪尾石であることは分かるが、それとは別に理解できることがもう一つ。年若いながらも成熟した女性の美しさも感じる長い銀髪の女性。煙管を片手に吹かす豊満な乳房と高い身長を有する彼女はしかし頭部から狐耳が、お尻からはもふもふとした九つの尻尾が生えていて人間でないことは明らかであった。一見すると悪霊という存在では収まらないほどに確かな存在感を放ちながら、しかし悪霊と言う言葉でしか言い表せないほどに鬱々と暗く闇の気配に満ちた魔力を放つその存在が封じられていたモノなのだろう。
「ふぅ~…。ん、ちゅわぁ?貴方…、またぎるどとやらのお使いですの?」
「…っ!そ、そうですよ…!」
こちらに向けられた一見柔らかい視線はしかしそこから放たれる冷たい魔力には剣呑な気配がこれでもかと詰め込まれていて、それだけでゆかりは気付いてしまう。これは、敵に回すべきではない、永遠に封じられていなければいけない、いけなかったはずのものであると。
「まぁ、いいですわぁ。貴方、お名前は?一応、聞くだけ聞いておきましょうか」
「ゆ、ゆかりと言います。覚えてもらわなくて結構ですよ?」
「ふふ、それは私が決めることですわ」
絶対的な強者としての余裕で笑ってみせる妖狐の一言だけでプレッシャーをひしひしと感じてしまい、ゆかりは言われるがままに彼女に従ってしまう。だが、それも仕方のないことだった。国難級の厄ネタとは比喩でもなんでもない、言葉通りの存在だ。少なくとも、自分一人の力では相手取るなんて無理だろう。懐に隠した勾玉を布越しに握り締めながら思う。こいつの使いどころは慎重にならねばならない、と。
「で?ぎるどの使いということは、無謀にも私をどうにかしようということでちゅわよね?…貴方に、それが出来ますか?」
「…やるしか、やってやるしかないんですよ、私は…!」
そう意を決してゆかりは短剣を構える。普段は自分の性に合わないと、本来それが有効な筈の死霊戦でさえ碌に使わない聖属性ないし光属性の魔法を攻撃用に刀身、防護用に護符を貼り付けた装備の上から張り巡らせて抵抗の意志を示す。端から見れば猫に威嚇する鼠のような光景だろうが、ゆかりにはそれが精一杯の行為だった。
「ちゅわ。それでは、貴方の素質を教えてくださいな?どうか、すぐには死んでくれないことを祈っておりますわ、よ!」
「っ!?ぐ、ぐぅうううううっ!?」
妖狐は手をかざしてゆかりへと振り下ろす。途端、宙を高く漂っていた黒い瘴気が質量を持ってゆかりに襲い掛かる。身を裂くような衝撃と共に襲い来る黒瘴に呑まれた身体は辛うじて張られた防護魔法で身に襲い来る脅威を弾きはしたが、ゆかりは耐え切ったこと以上に脅威を覚えることになった。
「…なっ!?ご、護符が、全部…!?」
「そんなもの、私に通用すると思ってるんですの?時代を経て多少は洗練されたようですけど、それは私に多少は追い付いたくらいでしかありませんわ。…貴方は外からの渡航者の様ですけど、その魔法がちょっとした障壁になっているだけで軽くいなせますわ。それでは、二発目いきますわよ?耐えられますか?」
「くっ…!《聖式・防護結界・三重》…っ!」
咄嗟に放った防護魔法がゆかりの身体を包み込む。護符によるブーストを失ったはずのゆかりの身体は、しかしその魔法によって瘴気から守られた。魔力による結界障壁はゆかりの身体を包み、更にその外側にも防壁を展開する。妖狐の操る黒瘴はじわじわと芋虫が植物の葉を食むように黄白色に煌めく防壁を侵食するがそれだけに留まった。
「…へぇ。これはこれは」
少々の驚きを覚えながら妖狐はあくどい微笑みを浮かべると、両手を大きく振るって周囲に漂う瘴気でゆかりの防壁を取り囲んで圧し潰すように攻め立てる。じわじわと障壁ごと面積を押し縮めて追い込まれるゆかりであったが、それでも結界を重ね掛けしては蝕まれる障壁を強固なものにして妖狐に抗う。それは、ゆかりにとっては自身の命やジパングの未来を賭けた一世一代の大勝負なのかもしれないが、妖狐————九尾にとっては自身のつがいとして許される存在かを推し量る、ただの婚前儀式のようなものに過ぎない。そして、その婚前儀式は九尾の思惑を超えて予想外に順調に進行していた。圧迫と殴打、障壁への侵食と物理的な衝撃によって幾度となく攻め立てているのに、今までの冒険者ならどれほど優秀でもここまで追い詰めれば瘴気に呑まれてその身体を黒塊に変えていたのに、この冒険者はまだその地面に立って確かな意志で抵抗を示している。これは期待以上の相手だ、と喜びながら、九尾は瘴気を操ることで幾分かくたびれた腕を休めようと手を下ろす。それに合わせて瘴気も空へと逃げていく。暗く黒い圧力は障壁の周りから離れ、ゆかりの視界が晴れていく。防壁の向こうに、気分よさげに笑う九尾の姿が見えて、ゆかりはそれを逃しはしなかった。
「…っ!《ライトニング・ブラスト》ぉっ!」
「…むっ!?ちゅ、ちゅわっ!?」
ぜぇぜぇと荒く息を切らしながらもゆかりは障壁越しに悪霊特攻と言って差し支えない光弾を放つ。光弾は瘴気の闇を切り裂き九尾の手を貫いた。手は焼け爛れ九尾は驚きと苦痛に表情を歪める。先程までの余裕気な表情を崩して九尾は剣呑な、しかしそれでも確かな笑みを浮かべてゆかりを睨みつける。
「ふぅん…。思ったより、よっぽどやるようじゃないですか。これまでの輩と同じで、期待外れの肉塊とばかり思ってましたわよ」
「…ふ、はは。ご期待に添えたのなら、よかったですね…!ダサい名前の魔法を使った甲斐があったというものです…!」
「それなら…。少しだけ、本気、出してあげますわ!」
「ふ、ひ…っ!?」
笑みの中に確かに怒気を孕んだ九尾はまるで瞬間移動でもしたかのような速度でゆかりの眼前に迫り、身に纏ったそれなりに絢爛な着物を翻しながらその腕を振るう。怒りを見せながら襲い来る九尾とその鋭い爪に恐怖を覚えて、ゆかりは咄嗟に聖属性を纏ったままの短剣を振り上げた。ガキィンと高い音が響いて九尾の爪とゆかりの短剣が相まみえる。外見の細さに似合わぬ力で打ち合った二人の一撃は相殺されてそのままぎりぎりとその場に留まる。しかし、ゆかりは下から耐えるように必死で押し上げるのに対して、九尾は余裕ありげに笑いながらぐぐぐ、と押し潰すようにその手に力を込める。力量差は明らかだがそれでも懸命に耐えるゆかりに興味深さを覚えつつも抵抗されるのは気に入らない。九尾は振り下ろしていない方の、焼け爛れていたはずの手で器用に瘴気を操って、未だ障壁に身体を包んだゆかりを殴りつけた。
「ぐ、ぐぅうっ!」
「ちゅわぁ!耐えるとはやりますわねぇ!でも、この武器とはもうお別れです、わぁ!」
「っ、うぁあああっ!?」
障壁を蝕まれながらも身を包む防御魔法で耐えることの出来たゆかりを、しかし無慈悲に魔力を瞬時かつ急激に込められた爪が襲う。バキン、と割れるような鈍い音が響いてゆかりの身体が後ろに跳ねる。そうして無防備に身体をふらつかせたゆかりの腹部を瘴気に包まれた九尾の脚が襲った。相変わらずその細さに似合わない力で襲われ、ゆかりの身体は後方へ吹き飛ばされた。そのまま瘴気の壁を突き破るように吹き飛んで、ゆかりは地面に身体を投げ出される。
「く、ぐ、ぐぅ…っ!ぁ、け、剣が…っ!?そ、そんな…!」
全身を走る鈍く重い痛みに怯みながらもどうにか身体を動かしたゆかりの視線の先に、鍔のすぐ上で哀れに折れた愛用の短剣が見える。驚愕と絶望に見開いた目はゴーグルと瘴気の壁越しに地面に突き刺さった刀身を捉えた。口開かぬ武器でしかないとはいえ長年冒険を共にした相棒の死に、身体が無事とはいえ瘴気を伴った攻撃ですっかり剥がれた挙句に残存魔力では再度張ることも碌にできなさそうな障壁に、何より爛れた腕もすっかり回復して余裕ありげに悪辣な笑みを浮かべる九尾の姿に、ゆかりの心はすっかり折られた心持になる。否、もう一つ手段はある。どうせ、ここで散るのなら最後に一度だけやってみてもいいかもしれない。ゆかりは辛うじて立ち上がると、魔力をその手に込めてきっと九尾を睨む。
「ちゅわぁ…。ここまで、圧倒的に力の差を見せられてもまだ諦めないんですの?それは勿論誇らしいことですが、無謀という言葉はご存じでして?」
「う、るさいです…!やってみないと、分からないでしょう…!?」
「…ふう。なら、やってみなさいな?結果は、変わらないでしょうけど」
そう笑いながら九尾は悠然と構える。相変わらず周囲に大量という言葉ですら生温い視界を遮るほどの瘴気を漂わせる九尾へ向けて、ゆかりは瘴気を辛うじて防ぐ程度の、それまでに比べれば余りに心許ない障壁を張って、残りの魔力を脚に込めると九尾にすら思いもよらない手段に打って出た。
「ぅ、うぁあああああああっ!!」
叫びながら半ば自棄になったように瘴気に突っ込むことさえ厭わずゆかりは九尾目掛けて突撃する。それに目を見開きながら、しかしすぐに呆れたような視線を向け直した九尾は雑に瘴気を振り下ろす。がりがりと障壁は瘴気に蝕まれ、次第に顔を庇うように振り上げていた右腕を侵食されたゆかりはそれでも走るのをやめない。それを変わらず冷たい目で見やる九尾は、しかしもう眼前まで迫ったゆかりが懐から障壁全てを瘴気が突破するすんでのところで取り出した何かに目を見開いた。
「ちゅっ!?あ、貴方…、それは…!?」
「き、効けぇえええええっ…!」
肉体を蝕む瘴気の重圧に気をやりそうになりながら、ゆかりは最後の気力を振り絞って懐に仕舞っていた切り札の勾玉を握り締めて殴りつけるように九尾目掛けて振り下ろす。途端、爆ぜるように勾玉が光を放って———
***
「…さま。ゆかりさま。起きてくださいまし」
「…ん、んぅ…?」
小鳥の囀りのような優しく耳障りのいい、しかしどこか聞き覚えのある筈の声がゆかりの耳に届く。長く目覚めていなかったようなぼやけた思考と視界を晴らすように頭を軽く振って起こすと、ゆかりは目を開いた。
「あら、漸く目覚めましたわね。…まぁ、あれほどの戦いを経ていましたもの。長く眠ってしまったのも、無理のないことですわ」
「あ、貴方は…?」
「あ、お待ちくださいまし。無理に動いては、お身体に障りますわよ?」
「い…っ!?」
そうして身を起こそうとしたゆかりに鋭い痛みが走る。それに困惑しながら視線を落とすと、ゆかりの右腕が肘のすぐ下からその姿を消していた。
「な…っ!?う、腕が…!?」
「相当激しい戦いだったのでしょうね…。九尾の亡骸の傍らで倒れていた貴方の身体はぼろぼろで、その場で急いで治療もしたのですが、これが精一杯でしたの…」
「そ、そうだったんですか…」
大陸のような魔力灯ではない、不思議に紫色に煌めく炎で照らされた広い部屋の中央で膝枕のように身体を預けさせてもらっているやはり既視感のある長い黒髪の女性に支えられながら、ゆかりは朧げな思考で彼女の話を聞いていた。その思考も、癒すための目的なのか知らないが火の入れられた香炉から立ち昇る甘い香りに乱される。
「あ、そ、それより貴方は…?」
「あぁ!私はイタコ。将軍様、そして帝様の命を受けて、貴方様の渇求を満たすために遣わされた女中でございますわ!」
「しょ、しょうぐん…?みかど…?」
痛む頭でゆかりはイタコと名乗った女中の言葉を噛み砕く。将軍。帝。ゆかりの記憶が正しければ、彼らはジパングでも最上位の権力者であったはずだ。そんな権力者が何故自分のような一冒険者に。そんな疑問を見据えていたようにイタコが口を開いた。
「貴方様は国難からジパングを救ってくださった英雄ですの!あの勾玉で、忌まわしき九尾を祓って下さった活躍を知った帝様が貴方様をジパングの英雄として称えるためにこの離宮にてひとまずは身体を休めてほしいとのことでした。ゆかり様の容態がよくなった暁には盛大な祝宴を開く予定ですの。それまではゆかり様にゆっくりと休んでもらうためにと私が遣わされた次第ですわ。どうか、お望みのことは私に何なりとお申し付けくださいまし」
「そう、ですか…。そう、ですね…。今は、休ませてください…」
そう微笑むイタコの瞳は宝玉のように綺麗で、ゆかりは納得したように頷いた。それでもどこか痛む頭を休めようと、イタコの豊満で柔らかい身体に傷ついた自身の身体を預けてゆったりと目を閉じる。ぱちり、ぱちりと聞こえる火の小さく弾ける音に耳を傾けながら安心したようにゆかりは時間を過ごしていた。しかし、そんな安らぎを乱すようにイタコは小さく唸り声を零すと、思いついたようにやはり小さく笑い声を零してゆかりの身体を抱き締める。
「…?い、たこさん…?」
「ゆかり様は、性欲などはどれ程お持ちですの?」
「ぶっ…!?は、はいぃ…!?な、何を急に言ってるんですか…!?」
思わず噴き出して、困惑の声を上げるゆかりにしかしイタコは微笑みながら楽しそうに言葉を続けた。
「いえいえ?“英雄色を好む”とも言いますし、あれほどの戦いのあとですもの。ゆかり様も溜まっているものもあるのではないかと思いまして。大丈夫ですの。私、そういう手腕も優れていると評価されてきましたのよ?どうか、私に御身を預けてくださいまし…?」
「え、い、いや、ちょっと…!?」
突然のイタコの淫乱めいた発言に困惑の声を上げるゆかりを無視して、イタコは舌なめずりをしながらそれまでの装備の代わりにゆかりの身を包んでいた和装に手を挿し入れる。
「ふふ、ほぉら…。ゆかり様の可愛らしい乳首、まだ触っていないのにぷっくりと膨らんでおりますよ?」
「い、いや、ちが…、あ、はぁんっ!」
どういうわけか敏感に起ち上がった胸の中心を摘まれて、ゆかりは甘い悲鳴を漏らす。否定したいのに、イタコの細い指が乳首を弾くただそれだけでゆかりのただでさえ働いていない頭は機能不全に陥り、惰性で甘い快楽に従うことを暗に強要する。理性など欠片も残っていないゆかりに、その強要を断ることは果たしてできなかった。
「ふふ、可愛らしいお姿ですこと。とても、あの九尾に無謀ながら勇敢に立ち向かった勇者様とは思えませんことよ」
「はうぅ…!や、みみ、よわいんです…!」
「あぁら?そうですの?なら、もう一人の私にお任せしましょうかね?」
「ぇ…?も、ひとり…?」
「ふふ、はぁい。私ですの」
「ひぃん…!?」
まだ腕が残っている方の左側、左耳のすぐ側で囁くような声が聞こえた。その声と共に送られる微風のような吐息に身体を跳ねさせて、半ば痺れるような身体を緩慢に動かして振り返れば、そこには右側で胸の蕾を弄ぶイタコと同じ顔の女性が少し悪戯っぽい微笑みを浮かべながら寄り添っていた。
「な、なんでイタコさんが、もうひとり…!?」
「ふふ、何を仰っていますの?私と、それにゆかり様が望んだんですもの。私が増えられない道理などありませんわ?」
「な、なる、ほど…?」
「ふふ…。さぁ、そんな些末なことなど気になさらないで?今はただ、快楽に身を預けてくださいまし?」
「ひ、ひゃ、やぁ…!こ、これ、おかしくなるぅ…!」
「おかしくなっちゃっていいんですのよ?ゆかり様は救世の勇者様なのですから…。それくらいじゃあ、罰など当たりませんわよ?あぁむ…」
「あ、あぅうんっ!?」
そう微笑みながら耳に息を吹きかける左のイタコが続けざまにゆかりの小さな左耳をその口に含む。そのまま滑らかな舌先で耳介にぬとりと熱の籠った唾液を塗りたくる。それにたまらなく切なさを覚えたゆかりの様子に笑みを深くして、そのまま左のイタコもゆかりのイタコに比べれば余程控えめな胸部に手を伸ばす。控えめながらも確かに柔らかいゆかりの胸に触れると、そのまま指を包み込むように這わしてゆっくりと揉みしだいた。
「ぁ…っ、はぅう…!そ、それ、だめぇ…!」
「ふふ、駄目じゃないでしょう?いいんですのよ?気持ちよくなっても…。貴方はそれだけ頑張ったんですもの」
「もう一人の私がこうだと、私が手持ち無沙汰になりますわね…。あ、そうですわ!なら、お口でして差し上げます!」
耳を口や舌先で可愛がりながらも慎ましく可愛らしいゆかりの胸を絶妙な力加減で可愛がるもう一人の自分に少々の嫉妬を覚えながら、しかしそれまで乳首を弄んでいたイタコは思い付いたように無邪気な笑みを浮かべて、もう一人の自分が指を這わすその胸から隙間を縫うようにして顔を出す薄桃色の可愛らしい蕾に舌を向けると、その先で乳頭を擽るように震わせながら甘い刺激を与えた。
「あ、あひぅ!ら、らめぇ…!」
「あぁ、いいですわよ…!もっと気持ちよくなってくださいまし…!」
小さく興奮する自分に言葉には出さずに同意して、胸に舌を這わすイタコはもう一方の切なげに顔を覗かせる乳首にも指先を伸ばし、傷つけないように気を回しつつ爪先でつつくように転がしてやる。たったそれだけでも身体を跳ねさせるゆかりの様子に気を良くしてイタコは責めを苛烈にするばかりだ。最早癒し労りたいのか乱し責め立てたいのか定かではない二人のイタコによる淫技に、ゆかりは切なく涙を零しながら小さな絶頂に勇者とは思えないほどに細くしなやかな身体を震わせて喘ぎ声を漏らす。
「あふぅ…。耳、もそろそろ慣れてきましたかね?じゃ、今度はこちらを…。ゆかり様、こちらを向いてくださいまし?」
「あ、ひぅ…?む、むぅうん…っ!?」
それまで耳を嬲り胸を揉みしだいていた方のイタコがゆかりの敏感な耳から口を離し、左胸に添わせていた方の手を今度はゆかりの頬に添えた。それに少々の疑念を覚えて怯えたようにイタコに視線を向けたゆかりの唇に、胸を揉みしだくイタコはそれまで耳を弄んでいた自身の唇を押し付ける。
「は、あぁむ…。ちゅ、ちゅる、れぇる…」
「ん…っ!んちゅ、りゅ、れる…。ふむぅ…!」
突然の柔らかい感触に身体を跳ねさせたゆかりの口内に、イタコは無遠慮に舌を挿し込んでそのまま柔らかな頬の内壁を蹂躙する。口の粘膜をこそげ落とすようにかき回した挙句、舌を絡み取ってそのままぐちゃぐちゃに乱していく無遠慮なイタコの舌に困惑して身体を強張らせながらも、次第にその不慣れな快楽にゆかりは身体を情けなく跳ねさせた。
「ん、ちゅ…。口の中も弱いだなんて、ゆかり様はどこも弱弱しいんですのね?とても、勇者様とは思えない可愛らしさですわ。…うーん、しかし。キスまでもう一人の私に奪われるなんて、ズルいですわぁ」
とても遣えるように仕向けられた女中とは思えない辛辣とも取れる言葉をゆかりに投げかけながら、乳首に舌を這わせていたイタコは悔しそうに表情を歪ませる。しかし、もう一人のイタコに苦言を呈することもなかったのはもう一人のイタコが敢えて手を出していないそこを弄ることが出来る余裕があったからだった。
「まぁ、いいですわ。先程から切なそうにぴゅっぴゅってお潮を噴き出してるこちらを頂かせてもらいますもの」
イタコが乳首から唇を離してその顔を近づけたのは、それまでは触られていなかったにも関わらず胸や顔周りの刺激だけで絶頂と共に潮を噴き出していたゆかりの秘部だった。潮を噴き出していることで何となくは察せられたが、与えられた刺激など皆無な筈のそこはしかしゆかりの秘奧から溢れ出した淫蜜でしとどに濡れそぼっており、イタコはくらくらと眩暈がするような心地になりながら辛うじて残った理性で狙いを定めてゆかりの秘唇の襞の一つ一つに舌を這わせる心持で舌を突き入れた。
「…っ!?む、ぅうん…っ!」
「ふ、ふふっ…。ん、ちゅる、れぅ…」
与えられたその刺激にびくんと大きく身体を跳ねさせたゆかりの様子に、口づけをしていたイタコも小さく笑みを零した。そのまま二人のイタコによる舌技がゆかりを襲う。口内を襲うイタコの舌は大胆にゆかりの口壁や舌を大胆にかき乱し、秘裂に舌を這わせるイタコの舌は一枚一枚ゆかりの内襞をなぞり擽るように繊細に動き回る。傾向の異なる動きと与えられる快楽にゆかりが心の準備を出来るはずもなく、ただひたすらにその眦から快楽の涙を零して身体を揺らすことしか出来ない。そうして小さく膣壁に這わせた舌先を震わせながらゆかりを追い立てる方のイタコの責めがゆかりの膣内のある一点をなぞった。
「っ、ふぅうんっ!!?」
「…!ちゅ、ぷぁっ…。ここ、ですのね?」
一際大きく身体を跳ねさせたゆかりの姿ににんまりと笑みを深くしたイタコは、そう呟くと再びゆかりの秘裂に舌を突き入れて見つけてしまった弱点を集中して責め立てる。もう一人のイタコも邪悪な笑みを浮かべて、より響く高い喘ぎ声を聞こうと口づけをやめて耳への責めを再開した。勿論頬に這わせた掌は、やはり左胸へと居場所を戻して快楽を与えている。
「あ、いたこさ…っ!そこ、らめです…っ!だ、だめ、わたし、わたしぃ…!」
「れる…。いいって言っているじゃないですか。頑張った女の子の特権ですのよ?ほとを擽られる気持ちよさに夢中になって、溺れてしまってもいいんですのよ?ゆかり様は、もう頑張らなくていいほどに頑張ったのですから…」
「あ、あうぅ…!だ、だめぇっ!」
そんな甘言も届かないくらいに鮮烈な快楽に甘く切なげな悲鳴を漏らしながら身体を震わせる。そうして舌先で膣内の弱いところを穿つイタコの頭に、ゆかりの左腕が伸ばされる。———途端、ふに、と縋るものをどうにか探して半ば掴むように伸ばされたゆかりの掌が、本来人間の頭にあるまじき柔らかい感触を捉えた。人間の髪の毛とも違うもふもふとしたその感触を伴うその触り心地は、小型の獣の耳のそれに似ていて。
その瞬間、蕩けたように碌に機能しなかったゆかりの頭が、今まで脳裏に辛うじて浮かんでいた違和感を収束させて朧げな意識に警告音を発する。そうして、先程まで快楽に翻弄されていたとは思えない困惑と怯えの表情を浮かべるゆかりの視線に、二人のイタコは少し驚くとすぐに観念したような笑みを浮かべてゆかりから僅かに身体を離す。
「これは、仕方ないことですわね。私」
「えぇ、仕方ありませんわ。私」
「まさか、お耳を掴まれるなんて思いもしませんでしたわ」
「えぇ、だからこれは仕方のないこと」
「貴方が悪いんですわよ、ゆかり様。…いいえ、ゆかりちゃん」
「えぇ、ゆかりちゃん。もう、誤魔化すこともできませんわ」
その言葉と共に、二人のイタコの姿が霧のようにぼやけてすぐに別の形を映し出す。長い黒髪は狐耳の生えた銀色の長髪に。女性らしい豊満さを見せていたお尻からは九本の尻尾が生えて。そこにいたのは、先程までのイタコの話の通りであれば自分が満身創痍ながら祓ったはずの国難の九尾だった。
「な、なんで…!?私、勾玉を使って…!?」
「あぁ、あれですの?ほんっとーに、あれはやばかったですわよ…。自爆覚悟で突っ込んだゆかりちゃんの瘴気でぐずぐずになった腕ごと私も焼かれるところでしたもの。まぁ、瘴気を咄嗟に壁にして身体を軽く焦がす程度で済ませましたけれど」
「それでも、瘴気を一瞬で大量に生み出すのと、ついでに焦げた身体を戻すのに霊力あらかた使っちゃって、分身も二人までしか出来なくなっちゃいましたもの。普段なら、尻尾分九人になれるんですわよ?」
「きゅ、九人…!?」
「まぁ、それでこちらも大分追い込まれましたけど。だからこそ、ゆかりちゃんをこの呪尾石の中の魔宮に招待したんですわよ?」
「えぇ。九尾の私ともあろうものが少々ながら手こずるほどの技量に、半ば蛮勇にも片脚を突っ込んだ度胸と機転の良さ」
「それに、戦っている最中は恥ずかしながら気付けませんでしたけれど、冒険者をするには勿体ないくらいの可愛らしさと、身体から溢れ出ている余りにも上等な性の気配…」
「私…、いえ、私達は思ったのですわ」
「えぇ、思いましたの」
「「私のつがいに相応しいのは、まさしくゆかりちゃん、貴方なのだと」」
そう、狐に相応しい肉食獣の鋭い眼光を悪辣な笑みと共に浮かべながら、二人のイタコはゆかりを見やる。その視線に恐怖を覚えて、ゆかりは力の抜けた足腰と片方を失った腕で十分に動けないながらも必死になって距離を取ろうとする。
「ふふ、怖がらなくていいですわよ?ゆかりちゃん」
「えぇ、ゆかりちゃん。私達はもう、貴方を害するつもりなどありませんわ」
「ただ、目一杯気持ちよくなって私達との間に子供を作っていただきたいだけ」
「ジパングへの復讐に足るくらいの、私達の愛すべき血族を産んでもらって、私達と一緒にジパングの新しい主になっていただきたいだけ」
「ふふ、楽しみね。私」
「えぇ、私。ほら、ゆかりちゃん。気持ちいいこと、しましょう?」
「や、やぁ…っ!」
だが、そんな抵抗などイタコ達には児戯に等しい。あっさりと這いずるゆかりの元に追いついて恐怖で震える身体に手を伸ばす。小さな悲鳴を上げるゆかりの身体はあっさりと二人に捕らえられた。
「は、離して…!ひ、ひぃ…!?」
「ふふ。口ではそう言っても、先程まで気持ちよくなっていた身体ですもの。気持ちよさは残ってますわよね?」
「ふふ、お胸に軽く触れただけでそんなに身体を跳ねさせちゃって…。耳はどうですかね?ふ~…」
「あぁんっ!?」
戻りかけた理性を再び燃やし尽くさんと揺らめく紫の狐火に、理性と共に蘇った恐怖を蕩けさせようと香りを巻き起こさせる香炉の煙に包まれた人知れぬ魔宮の床に倒れ込んだゆかりの身体を引き起こして、その身体を支えてやりながら胸を包み耳を弄ぶ二人のイタコによって理性とは裏腹に未だ快楽に溺れる身体を躾けられながら、ゆかりは支える二人に挟まれて悦楽と恐怖の狭間で静かに涙を零していた。そのまま、蜜で濡れたままの秘裂にも指を伸ばされてゆかりはイタコに縋り付いて喘ぎを漏らす。
「ちゅわぁ。これだけ濡れていれば、もう準備万端ですわね?私」
「そうですわね、私。では、私が先でいいですわよね?」
「そうですわね。それに関しては二の私の方が得意ですし、お願いしますわ」
そう言って一人のイタコがゆかりの身体から離れて小さく呪文を詠唱し始める。その様子に怯えるゆかりの身体を受け止めたもう一人のイタコは、役得と言わんばかりに女性にしても妖狐にしてもかなり大柄で豊満な身体でゆかりの頼りない身体を包み込みながら、細くも確かに存在する柔らかさをゆかりの身体に腕を回して撫で回すことで堪能する。
「…ふぅ。いいですわよ、私、ゆかりちゃん」
「ほら、ゆかりちゃん。私の方を見てごらんなさいな」
「ぅ…。…っ!ひ、ひぃ…っ!?」
二人のイタコの囁きに促されるように、呪文を詠唱していたイタコの方に視線を向けたゆかりは引き攣ったような悲鳴を漏らした。ゆかりの視線は頭上から下へと向かっていき、狐耳の揺れる頭部から相も変わらず美しい顔、体格を加味しても豊満が過ぎる胸部から段々と下りていって、着物の前が開かれて露わになった腹部の更に下、本来見えるはずの女陰を隠すようにそそり立つ余りに太く立派な男性器がその姿を顕わにしていたからだ。その猛々しさは、女性としての豊満さに余りに満ちているイタコには不釣り合いな、あるいは一周回って却って相応しいと言えるかもしれない。しかし、一般的な男性の男根とは比較にならない程に太く長く、熱量も凄まじいのか上気だってさえいるそれを咥えることを暗に強制されているゆかりにとって、その男根はただの凶器にしか感じられない。
「や、やめて…っ!い、いや…!やだぁ…!」
「ゆかりちゃん?そうは言いましてもですねー…。これは生やしたらもうおしまいですの。もう雄の本能が獣欲になって私の理性を食い尽くしちゃってですねぇ…。それに、ゆかりちゃんみたいな可愛くて並々外れた性をぷんぷん溢れ出しちゃってる柔らかくて美味しそうな雌の身体を見せられたら、もう、とても我慢できませんわぁ…!」
「ちゅわぁ…。まぁ、分かってたことですが…。肉棒生やした挙句にゆかりちゃんみたいな子を前にしたらそりゃあ理性なんか紙切れですわよね。ふふ、じゃあゆかりちゃん?お楽しみの時間ですわよ?」
「ひ…!いや、やだ…!おねがい…、ゆるして…!ゆるしてぇ…!」
最早体裁も気にする余裕なく助けを乞うゆかりの腰を、猛々しい雄の象徴をその腰に拵えて一匹の獣に成り果てたイタコががしりと掴む。そのまま、狙いを定めて舌なめずりをしながらゆかりの秘裂に先端を添えた。
「は、はぁ…っ!許します、許して差し上げますわよ、ゆかりちゃん…!だから、とびきり大きなこの肉棒で、気持ちよくして差し上げますわぁ…!」
「た、たすけ…っ!」
「参ります…っ!」
「ぁ、ぐ、~~~~~~~~~~~っ!!?」
ゆかりの懇願の声など理解の外のイタコが体格相応に細く狭い膣内を抉り拓くように挿入した肉棒の衝撃と熱量に、ゆかりは息を詰まらせながら言葉にならない悲鳴をその細い喉から零す。ぱくぱくと碌に呼吸も出来ない口を開いては閉じてを繰り返して見開いた目から涙を流すその様子を労るように、もう一人のイタコが縋るものを探すように左腕を彷徨わせるゆかりの身体を優しく抱き留めた。それとは対照的に、こちらもゆかりの膣壁がきゅうきゅうと絡みつきながら搾精に長けたスライムのように痛いくらいに締め付けるゆかりの膣の感触に言葉を失い、挙句にぶわりと吐き出されたゆかりの桁違いの性の奔流に意識さえも僅かに失いかけたイタコが、意識と共に一瞬飛びかけた理性を取り戻して驚愕と恍惚に打ち震えながらぎらぎらと獣欲で満ちた視線を浮かべてその口角を上げる。
「は、あぁ…っ!な、なんですの、この膣の締まり…!?それに、性も…っ!は…!私、ゆかりちゃんの膣、やっばいですわよ…!極上とかなんて言葉じゃ足りないくらい…!きっと、魔物娘にとっては最高の身体ですわ…!なんて、なんて幸福なんでしょう…!私、これほど私の人生を恵まれていると感じたことありませんわぁ…!」
「いたく高評価ですわね、私…。…まぁ、それも仕方のないことですわね。端から見て、お零れを頂いているだけの私まで、高揚感で叫びたくなるくらいですもの…!」
ゆかりの膣壁を堪能するイタコは最早息も絶え絶えになりながら、もう一方のゆかりを支えるイタコも興奮で頬を赤く染めて高揚する。その間で呼吸すら覚束ない様子で震えるゆかりがそんな二人の昂りなど分かる筈もなく、淫らな熱を秘めた静寂という異様な雰囲気が空間を支配していた。
「はぁ…!そ、そろそろ動きますわよ…!?気持ちよくしてくださいまし、ゆかりちゃん!」
「ぁ、あぁああああっ!?」
そんな静寂を破ったのは、やはりと言うべきか肉棒に頭を支配されているイタコだった。膣壁に締め付けられる快楽で満足できなくなった欲望の赴くままに、その剛直を受け入れるには少々ならず調教が足りなく思われる膣壁を削り取るように無遠慮に腰を前後に動かしていく。その動きに翻弄されることを強いられているゆかりは、その衝撃に呼応するように悲鳴のような嬌声を上げる。
「はぁん!?ゆかりちゃんの膣内、最高ですわよぉ!ふわふわで柔らかいのに、きゅうきゅうきつく締め付けてきてくれて…!こんなの、こんなのすぐ出ちゃいそうですわぁ!」
「あ、あう、うぁ、や、やぁっ!も、だ、だめ…っ!とんじゃ、とんじゃうからぁ!」
「落ち着いてくださいまし、ゆかりちゃん…!私が、ちゃんと支えてあげますから、安心してくれていいですわ」
「そ、そんな、ことっ、いわれてもぉ…!あひぃ!?や、やぁんっ!」
「あぁ、もう。私が、こんなにがっつくなんて!ゆかりちゃんは罪な人ですわね!」
狂乱と言って差し支えない様子で荒々しく腰を振るイタコに乱されながら、短く悲鳴のような喘ぎ声を浅ましくも唾液と共に零すゆかりは、左右非対称になって間もない上半身をそれでも懸命に動かして残った左腕を伸ばしながら縋れるものを探す。そうして腕を伸ばした先にあった己を優しく抱き留めるイタコの着物を気遣う余裕もなく握り締めて、更には口から目、鼻からも流れる液で汚れた顔を押し付けるようにして体裁どころでなく縋り付くゆかりの様子と、それすらも意識の外で盛った獣の本能のままに腰を振るう方の自分に大きすぎる溜息を吐きながらイタコはゆかりの背を撫でる。それでゆかりの混乱が収まる気配は一向にないが、一方で狂乱するイタコもまた限界を迎えつつあるのは一目瞭然であった。
「で、出ますわ!出ますわ、私、ゆかりちゃん!ゆかりちゃんのキツキツで熱々な膣内に、私のドロドロに濃い精液、たっぷり注いであげますわ~っ!」
「あ、あう!や、し、ひんじゃ、ひんじゃうぅ…!」
「大丈夫ですわ、ゆかりちゃん。精液で人は死にませんわ。安心なさいな」
こちらの話など聞く気というか余裕もなく、性欲に狂い、あるいは咽び泣く二人の様子にいよいよ対応も適当なものとなったイタコに気をやることもなく、残りの入れられ入れる二人は遂に快楽の頂上に辿り着こうとしていた。
「出し、出しますわよ、ゆかりちゃん!あ、来る!来ちゃいますぅうっ!」
「や、らめ!い、イく、イっちゃ、イっちゃぁ…っ!」
「「ぁ、あ、~~~~~~~~~~~~…っ!!!」」
被害者と加害者という対極的な立場にいるはずなのに、昇り詰めるときの喘ぎ声は以心伝心とでもいうかのように気の合った声を上げて、獣欲のイタコといたぶられたゆかりはともに快楽の果てへと至った。イタコはゆかりの柔らかくもきつい相反する二つを内包する魔性の膣壁で締め付けられたその肉棒から、宣言通り煮詰めたポタージュスープのように熱くドロドロとした特濃の精液をゆかりの下腹が膨れ、果ては容量の限界を超えて秘裂からだらだらと零れ落ちるほどの量を遠慮なく吐き出す。ゆかりはそんな雄の欲望を煮詰めたような豪精ザーメンを硬さから熱さ長さに至るまで規格外の男根に削り取られたことで快楽に滅法弱くなった膣壁に放たれて、与えられる熱量と質量の奔流に僅かに残っていた理性や良識までもを奪われてただその圧倒的な快楽の前に屈するほかなかった。
「は、ぁ…、はふぅ…っ!こん、な、気持ちいい射精…、初めてですわ…!ゆかりちゃんの膣内、最高が、過ぎますわぁ…!」
「…はぁ。満足しているところ悪いのですけれど…。流石にやりすぎが過ぎますわよ、私?ゆかりちゃんを壊してしまったら、元も子もありませんのに…」
「ぅぐ…。で、でも、ゆかりちゃんの膣内が良すぎるのも悪いんですわよ!?この気持ちよさを味わえば、私もきっと分かりますわ!?もう病みつきですわよ!?」
「それは、まあ分かりますけれど…。九尾になってから、挿入もしていないのに見ているだけで力を得る機会があるとは思いもしませんでしたもの」
そう言いながら、ゆかりの背に回していた手を見て支えていた方のイタコは薄ら笑いを浮かべる。彼女の宣言通り、妖狐の頂点たる九尾であるはずのイタコの力はゆかりから漏れ出ただけの性でその力を増している。魔物娘の力が強大であればあるほど成長は難しいにも関わらずだ。ゆかりがどれほど規格外な性の持ち主か、これだけでも分かるというものである。
「ですわよね…!じゃあ、今度は私が挿れますの?」
「いえ…。今回は、本当に、ほんっとーに口惜しいのですけれど、私に譲りますわ。私もゆかりちゃんの熱々でキツキツの膣内、気にならないと言えば嘘になりますけれど、二人ともゆかりちゃんに夢中になってストッパーがいなくなってしまったら他の私に一生怨まれてしまいますもの」
「それなら、遠慮なく私が貪らせていただきますわよ!さぁ、ゆかりちゃん!第二回戦といきましょうか…、ん?」
そう言ってあからさまに上機嫌にもう一人の自分に身を預けるゆかりに手を回そうとしたイタコは、快楽にへばるゆかりの異変に気付いた。
「え、えへ…。えへへ…。き、きもちいいの、いいのぉ…」
壊れた玩具のように気触れた笑いを零しながら、快楽に溺れた発言を繰り返すゆかりの視線は焦点が合っておらず、まともな理性も意識も無いようだった。
「…あちゃあ、やりすぎましたわね」
「…ど、どうしましょうか?私」
「…まぁ、いいんじゃないですの、私。遠慮せずにずこずこやっちゃいなさいな」
「い、いいんですの?」
「いいですわよ。よく言うじゃないですか?“壊れた魔道具は叩けば直る”って」
「…それも、そうですわね…!」
僅かな不安の表情を、貪欲な性に溺れた笑みでかき消した二人の九尾は、壊れた笑みを浮かべながら涙をぽつぽつと零す少女の身体を無遠慮に弄び始めた。
***
小さな島国であるジパングのとある山。警戒され続けていた瘴気は少々弱まりつつも相変わらず驚異のまま残っているその山の中腹、瘴気の根源たる呪いの要石、呪尾石の中に隠れて存在する魔宮の中庭で九尾の妖狐が己よりも尾の数の少ない妖狐達に瘴気の使い方を指導していた。その指導を受ける十人と少しの妖狐達は外見から想像される年齢はバラバラではあるが、皆女性であり、どの娘も九尾の面影を残していた。銀髪の妖狐達に混ざって紫髪の娘もいたが、違和感なく他の妖狐達に溶け込み受け入れられている。
「はい、いいですわよ。今日はこれくらいで終わりにしましょう。それじゃ、お夕飯の準備をしてくださいな」
「「「はーい」」」
手を叩いて微笑みを浮かべながら本日の指導の終了を告げる九尾に同じく笑いながら従う妖狐達が駆けていくのを見送って、妖狐達の中では一際幼い娘はその場に残って少し気恥ずかしそうに九尾の着ている着物の裾をぎゅっと握った。
「どうしましたの?稲荷」
「なぁ、イタコ母様…。ゆかり母様は、その…。まだ、結依にかかりきりなのか?」
「そうですねぇ…。結依はまだ乳飲み子ですもの。ここは外よりずっと早く成長できるとは言いますけれど、あと数カ月して言葉を話せるくらいになるまでは待ってほしいですわ」
「むぅ…。お姉ちゃんが妹の為に我慢するのは分かるけど、私もゆかり母様に甘えたいぞ…」
「…ふふっ、稲荷はいい子ですわね?」
そう言って少し頬を膨らませる稲荷と呼ばれた幼子の頭をイタコと呼ばれた九尾はくしゃりと撫でる。
「…私って、いい子か?」
「えぇ。甘えたいのを我慢して、赤ん坊とはいえ結依に譲ってあげてるんですもの。こんなに小さいのに、すっかりお姉ちゃんですわ。…ここだけの話ですけれど、泉お姉ちゃんがまだ小さかった頃は、赤ちゃんだった椿お姉ちゃんに嫉妬して、我儘ばっかり言って大変だったんですわよ?」
「…じゃあ、泉姉様よりも私の方が立派ってこと?」
「そうかもしれないですわね?」
「あ、稲荷ー?買出しに江豆まで顔出しに行くが、お前行くかー?行くならついでに変化のやり方のコツ、教えてやるぞー」
「…ふふっ。うん、行くー。しっかり教えてね、泉姉様?」
「な、なんだぁ?嫌に素直だな、お前…。あ、もしかして、母様?なんか稲荷に変なこと教えた?」
「ふふっ、どうでしょうかねぇ」
「あー!絶対なんか教えただろー!ひどい母様だぁ!」
「はいはい、気が済んだら買出しをお願いしますわね。くれぐれも気を付けるんですのよ?」
「うぅー…、わぁったよぉ…」
「あははっ。ねぇ、早く行こ?泉姉様」
「はいはい…」
そう言って手を繋いで魔宮の奥へと歩いていく七尾と三尾の二人の様子に微笑ましさを覚えながら、イタコもまた二人とは違う魔宮の奥深く、最奥と言っていい隠し部屋へと慣れた様子で向かう。
「…ふふっ、よぉしよし。一杯飲めていい子ですね、結依。ほら、ゆりかごですよぉ。ゆぅら、ゆぅら…」
その部屋の中央では、柔らかな座椅子にゆったりと身体を預け、結依と呼ばれた狐耳と一本の小さな尻尾が生えただけの乳飲み子をあやす紫髪の女性がいた。少し広く開けられた胸元から覗く乳首は僅かに濡れており、先程まで母乳を与えていたことが察せられた。
「…ゆかり、結依はどうですの?」
「あ、イタコ様。ふふ、この通り今日も可愛いですよ。さっきなんか、お乳を飲んでいる最中におっぱいに手を伸ばしちゃって…。誰に似たんでしょうね?」
「む、むぅ…。恥ずかしいですわね…」
そうばつが悪そうに視線を逸らすイタコに笑みを零すゆかりと呼ばれた女性は、その瞳に澱んだ光を宿しながらその手は片手であるにも関わらず器用に結依を支えて心地よい揺らぎで眠りに誘う。そのあやしは功を奏したようで、間もなく抱えられた結依はすぅすぅと一定の調子で穏やかに寝息を立てた。そんな我が子を、旦那であるイタコにかつて欲望のままに貪られたことで少々狂ってしまった瞳の色から僅かばかりの圧を感じてしまいそうになる微笑みで見守りながら、ゆかりは相変わらず器用に柵で守られた赤子用の寝台にそっと結依を寝かすとふぅと小さく息を漏らして元々柔らかかった表情を更に緩ませる。
「いつになっても、赤ちゃんを預かるのはやっぱり緊張してしまいますね。結依は大人しくていい子なので、気持ちは少し楽ですが…」
「そう言って、少し育ったら泉のように聞かん坊に育っちゃうかもしれませんわよ?」
「その時は、イタコ様にお願いしますね?私よりも子育ては経験あるでしょう?」
「でも、どの子も私よりゆかりを慕ってますのよ?私、妬いちゃいますわぁ?」
「そうですかねぇ…?」
そう笑い合う二人の間に流れる穏やかな空気は、しかしそう言えば、の後にゆかりが告げた言葉で途端に真剣なものに変わる。
「私達の子供はすくすくと育っていますか?…この、ジパングをひっくり返せそうですか?」
「…えぇ。現状だけで言えばまだまだでしょうが、将来にはとても期待できそうですわ。これもゆかりのお陰ですわよ。あんな才気溢れる子供、これまでの冒険者との間に生まれたことなんてありませんでしたもの」
「そうですか…。あと、どれくらいで発起するんです?」
「そうですわね…。今考えている限りで言えば、結依が五尾…、いいえ、六尾になるくらいには丁度いいかと考えていますわ。今の成長具合でいけば、上手くいけばその頃には泉や椿も九尾になれるかもしれませんもの。ふふ…、九尾が何匹も現れて人間を打ち捨てて、最後には狐の王朝を興して人間たちを隷属させる。何とも面白そうな話ではありませんこと?」
「ふふ、いいと思います。私は、イタコ様にどこまでも付いて行きますよ」
そう悪辣な笑みを浮かべて野望を語るイタコに、ゆかりは澱んだ光を宿す重い瞳を期待に揺らしながら微笑みで返す。その様子に、かつての同胞である人間を慮る気配は微塵もない。
「…それで、ですが。やはり、その戦争に私は連れて行ってはくれないのでしょうか…?」
その瞳に僅かに感情を覗かせて、潤ませながらイタコの方を見やる。そんなゆかりの視線を気まずそうに受け止めて、しかしはっきりとイタコは口を開いた。
「…駄目ですわ。ゆかりが私を、子供達を想ってくれるのはとてもありがたいのですけれど、ゆかりにかつての同胞を手に掛けさせたくありませんの。…えぇ、分かってます。これは私の我儘に過ぎませんわ」
「でも…」
「…それに。もしも私達が敗れた時の保険として、ゆかりには私達の意志をどこまでも継いでいってほしいのですわ。狐の王朝は、最早私の独りよがりではなく、我が一族の悲願となりましたの。私の妃として、どこまでも狐の王朝を興すことの出来るように一族を見守っていてほしいんですの」
「わ、かりました…」
理解してはいるが納得はしていないその考えを押し殺して、ゆかりはイタコの言葉に従う。その代わりに、ゆかりは淡い力でイタコの着物を摘んだ。
「では…、っていつもお願いしている気もして恥ずかしいのですが…。どうか、私に貴方のものであるという証を、改めて刻んでくれませんか?」
気恥ずかしさで目を少々伏せながらも頬を染めて確かに告げるゆかりに、イタコも同じように頬を染めながらしかし少々ばつが悪そうな表情を浮かべる。
「…どう、しました?」
「い、いやぁ…。その、ですね?稲荷に、結依にゆかりを譲って我慢してるなんて偉い、お姉ちゃんしてるなんて褒めたばっかりな手前、ここでゆかりを欲望のままに貪るだなんて、はしたないなんて少し思ってしまって…」
そう零したイタコの様子を見ながら、ゆかりは何がおかしいのかくすりと笑みを零した。
「な、なんですの…?」
「何を仰っているんですか?私の勝手なお願いなので、イタコ様の欲望なんて関係ないじゃないですか?それとも…、イタコ様は私相手だと我慢が利かなくなってしまうけだものさんだって認めちゃうんですか?」
「…!な、なんですの?ゆかり…」
そう挑発するように笑いながら、色を含ませた視線でイタコを誘うゆかりの様子に、イタコはその意図を理解しながらも、隠せようのない欲望と苛立ちを浮かべながら理性を棄却してゆかりの細い身体を押し倒す。
「きゃ…っ」
「誘ったのはゆかりですからね…?結依の手前、孕ませることはできませんが、それでも満足するだけじゃ足りないくらいに抱き潰してしまいますからね…?」
「…ふ、ふふっ。どうぞ、満足いくまで頂いてください」
そう蠱惑的な視線を向けて、ゆかりは残った左腕を慣れた様子でイタコの背に回すと、近寄せてくれたイタコの耳元で蕩けるように甘い調子で囁いた。
「来てください、旦那様」
ジパングでも屈指の危険度を誇る国難の九尾。シリーズでもトップクラスに強い魔物娘であり、あらゆる生物に有害な瘴気を操る。また、身体能力や回復能力も高い上に様々な妖術を用いられると戦闘面では殆ど隙がない。反面、実は性交渉に関しては手加減が出来ずやり過ぎたりそもそもが強過ぎるために性による成長が殆ど出来なかったりと案外苦手。本人も成長限界なのではと半ば諦めていたが、ゆかりと交わって成長出来たことで本格的にジパングの支配の野望に乗り出した。一族には割と甘い。つがいになったゆかりにも甘々である。
元ネタは東北イタコ。お狐様=九尾は前々から決まってました。しかし九尾っぽくてどうすりゃいいんや?と結構悩みました。んで、割とやりたいようにやったら我ながらいいんじゃね?と自信ある作品になってたり。pixivの方で公開してみても評判良かったみたいで凄く安心しました。