※この作品はR-18です。

冒険者ゆかりさん、魔物娘に敗れる   作:竹@竹林にて。

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書いていた当時巳年の新年明けでしてそれに合わせて蛇娘なラミア回です。ヤマタノオロチとかのイメージでしょうか、蛇って酒好きという印象を持っていたので、今回はセイカさんに出張ってもらいました。その割に酒が出てくる場面は殆どありませんが、それが私の構成力不足さを物語っております。自分で言ってて泣きたくなってきました。ただ、友人のアドバイスも受けてちょっとえっちシーンこだわってみたのでお楽しみください。


冒険者のゆかりさんがクイーン・ラミアのセイカさんに絡め取られて冒険終了してしまう話

「お姉ちゃん、ありがとうねぇ!僕、お姉ちゃんのこと忘れないから!」

「はい、こっちも忘れませんよ」

「いやいや…、もうすっかり村の英雄ですな。…まぁ、事実そうでしょう。本当に、あの子をラミアから守っていただいてありがとうございます」

「いえ…、私も気まぐれで助けただけですので」

 

 ある国でギルドの依頼と遺跡探索に精を出し十二分な路銀を得たゆかりは、気まぐれに海を渡りとある島国をぶらりと旅していた。そこで、やはり気まぐれにラミアに襲われていたところを助けた子供に連れられてきたのは山間の集落であった。文化の違いにはおおよそ対応できると自負していたゆかりであったが、敷物があるとはいえ素足で椅子もないところに座るのと、幾人かの壁際の男達に警戒混じりの視線を向けられるのにどこか落ち着きのなさを感じながら、村の長老らしき老爺に出された緑色のお茶に口を付けた。

 

「しかし…。ラミアが棲みつくような森を子供がうろつくのは危険ではないですか?何か言いつける必要があるのでは?」

「いやはや、仰る通りで…。しかし、村の男手が少なくなる中、近場で採れる薬草などの採取は子供の手も借りたいくらいでして…」

「…男手が足りない?」

「はい…。これは、ラミアどもが襲ってきたのにも関わるのですが…。つい一年前のことです。妖艶なラミアの親玉が、他のラミアどもと近くの洞窟に棲みついたのです。曰く『私に村を滅ぼされたくなかったら、ふた月に一度、ここの村の酒を私に貢物として捧げよ』…と。無論、若い男衆はこれに反対して武装して洞窟へと攻め入りました。…しかし」

「男達が帰ってくることはなかった、と」

 

 ゆかりのその発言に、悲痛な面持ちで長老は頷いた。

 

「あの敗北で、村の男は半分ほどに、特に若い者は殆ど死んでしまいました。残されたのは、保険として残された酒造の男衆と年寄り、あとは女子供ぐらいでしょうか。村もすっかり活気を失い、ただラミアに滅ぼされたくないがために生きていくだけの日々でございます。それも、親玉以外のラミアには知能の低いものも相当いて、貴方様が追い払ったもののように取引を破って村人を害することもあるのです」

「よその村や町に相談はしないので?」

「一応はしましたが…、報酬として渡せるものなど碌にないこの村を助けるものなどおりゃしません。…薄情だとは言いませんさ。いつ魔物に襲われるかも分からないこのご時世、他所にかまける余裕などどこもないでしょう」

「はぁ、それは大変なことで。…それでは、私はそろそろ去りましょうか」

「お、お待ちくだされ!」

 

 立ち上がろうとしたゆかりを長老が慌てて制する。壁際の男達も一層強い視線で睨みつけるのを受け止めて、哀れだとは思いつつもゆかりは冷めた視線を向けた。

 

「…なんです?」

「一つ、無理を承知でお頼み申す!どうか、このラミアどもを追っ払ってはくれませぬか!?子供たちから聞きました!貴方様は、海向こうの奇怪な術すらも使える相当に腕の立つ御仁だと!貴方様であれば、あのラミアの親玉を下すことが出来るやもしれませぬ!どうか、どうか…!」

「…実力を評価していただけるのは有難いですが。貴方、さっき言いましたよね?『報酬として渡せるものなど碌にない』って。私は別に義賊ではないので、危ない橋は渡らない主義なんですよ。すみませんが、他所を当たってくだ、さ…?」

 

 そう言って立ち上がろうとしたゆかりの視界がぐわんと歪む。身体にも力が入らず、その場に倒れ込んでしまう。

 

「…そう、ですか。そうでございましょうな。…ですが、申し訳ございませぬ。我々も、最早手段を選んでいられぬのです」

 

 今のうちに用意してしまうぞ。長老のその言葉と男たちが立ち上がる音を最後にゆかりの意識は途絶えた。

 

 

 

***

 

 

 

(…?ここ、は…?)

 

 途絶えた意識がぼんやりと戻り始め、ゆかりは己の状態を把握する。塗り潰された様に暗い中で分かるのは、自分が何かの中に閉じ込められており、更に身体に感じる揺れから自分が閉じ込められた何かが運ばれているらしいことだった。ついでに、シュルシュルと何かが這うような音、また昼間に子供を助けた時にも聞いた人間の声とは違う音から、運んでいるのは恐らくラミアであることも何となく察せられた。

 

(…木の匂い。酒樽、いや、桶ってやつですかね?…くそ、嵌められましたか)

 

 悔しくて舌打ちしたくなる気持ちをどうにか堪える。恐らく献上品の酒のふりをして贈られたであろう酒桶の中にいるのが自分だと気付かれては面倒だ。普通のラミアに後れは取らないだろうが、村の男衆を壊滅させるだけの数は流石に相手しきれない。今は下手に刺激しないで、桶を下ろしてラミアが離れるまで静かに眠ったふりをしていよう、と息を潜める。そうしてゆかりがまだかまだかと息を押し殺して幾らか経った頃、漸く揺れが収まり自分の身体が地面に落ち着く感覚を覚えた。

 

「——————。—————。」

「あー、ご苦労様。そうね、そこに置いていていいわ」

「————。————————。」

「はいはい、そんなに気を遣わなくていいわよ。…うん、そう。分かったら、持ち場に戻ってちょうだい」

 

 先程より明瞭に聞こえるラミアの人外の声と、同じくらいに明瞭な人間らしき声がゆかりの耳に届く。しかし、その人間らしい声に秘められた魔力から、ゆかりは恐らくその声の主が魔物であること、それも高い知能を持った魔物娘の一種であることを予測した。そして、恐らくは彼女こそ。

 

「…さて、あの子たちは行ったかな?いいわよ、出てきても。起きてるのは分かってるから」

 

 ラミアのシュルシュルという這いずる音が段々と遠くなっていって少しした後、魔物娘と思しき声の主は、桶の中に入ったゆかりに呼びかける。その呼びかけに応じるように、ゆかりは魔力で効いた夜目で桶の蓋を確認するとそれを押し上げて桶の外へと飛び出した。

 

「全く、仕方ないとはいえあの子たち重さとか匂いとかで入ってるのがお酒とは違うって気付かないものかしらねぇ。まぁ、そもそもお酒を理解できていないから中身がどうとか考えるだけの頭もないんだけれど」

 

 そう愚痴る声の主を確認するより先に、ゆかりは自らの状態を慎重に観察した。揺られている間に頭は冴えた。身体も怪我をしていたり動かなかったりという様子はない。装備も万全だ。…腰の辺りに纏めていた筈の路銀がすっかり無くなっていたのには、思わず叫び声を上げそうになったが。

 

「まぁ、私は甘々な女王様だから?あの子たちには何もしないわけだけど?でも、あの子たちを騙した長老さんたちにはちょっと痛い目見てもらわないとね。あなたもそう思わない?」

「…えぇ、そうですね。でも、貴方がそうする必要はないですよ?私が代わりに請求してやりますので」

 

 そう言いながら睨みつけた声の主は上半身だけを見ればそれは美しい女性だった。ラミアという種自体が女性として上等な外見をしていることは多いが、ゆかりはその中でもこれほど美しい存在は見たことが無い。短く揃えられた黒髪から覗く瞳は蕩けたように細められ、上気したのかそれとも酔っているのか頬は赤く染まっている。髪色とは対照的に美しく白い肌色をしたその身体は細身でありながらその胸は大きすぎない程度に膨らんでいて柔らかそうだった。街中ですれ違えば思わず振り返ってしまいそうになるほどの美貌を持つその女性は、しかし下半身の太く長い蛇の尾を見れば見る人々の印象を変えるだろう。伝聞でしか知らないが、ラミアという種は下半身の蛇体の立派さで群れの中での優劣を決めるらしい。あれほどの体躯であればどの群れでも容易に頂点に立てるだろうと想像できるそのラミアが、村で言っていた親玉であることはゆかりにもすぐに理解できた。

 

「一応確認ですが、貴方がこのラミアの群れの親玉ってことでよろしいでしょうか?」

「ちょっとー、親玉なんて言い方ひどくないかしら?確かに私はこの群れのボスではあるけれど、私には親玉なんてぶっきらぼうな言い方じゃなくてセイカっていう綺麗な名前があるんですー。さぁさぁ、今度はあなたの名前を教えなさいよー」

「…はぁ、酔っ払いは面倒ですね。…ゆかりと言います。覚えなくて結構ですよ」

 

 そう管をまく様に文句を言うラミアの親玉のセイカに言われて、ゆかりは溜息を付きながら名乗る。ついでに腰の短剣を抜いて構えてみせた。

 

「ふーん、ゆかりかぁ。いい名前ねぇ。顔つきもカッコよさと可愛さがいい感じで、お姉さん気に入っちゃったわぁ。で、そんなお姉さんに覚えなくて結構だなんて冷たくなーい?武器まで構えっちゃってさぁ、お姉さん悲しいなぁ」

「五月蠅いですよ、こっちは嵌められて気が立ってるんです。痛い思いをしたくなければ、私を開放してくれませんか?あの村人たちに奪われた金銭とだました分の慰謝料請求しなければなりませんので」

「あら?あなた、じゃないわね。ゆかりちゃんはこれからうちの子たちと一緒にここに住むんだからそんな必要ないわよ?村の男とか子どもなんかよりよっぽど素敵な性を持ってるんだもの、逃がしはしないわ」

 

 そう言ったセイカは笑みを浮かべてはいるが、その表情は先程までの酔っ払いめいた気の抜けたそれとは違う、肉食獣が獲物を狩る時にする剣呑で嗜虐的なものに変わっていた。その眼を鋭く細め、唇をラミア特有の二股に分かれた舌先で舐め上げる。

 

「…ふぅ。魔物娘ってのは、子供をつくるとかあまり頓着せずに性ばかり重視するのが困りものですね。いいでしょう、こうなっては仕方ありません。殺し合いましょうか」

「うーん…、私は殺すつもりなんてないんだけどなぁ…。まぁ、それなりに痛い思いはするかもだけど、お互い頑張りましょうか!」

 

 そう言ってその身体の大きさに見合わぬ俊敏さでセイカはゆかりと距離を詰める。その速さに思わず面食らうゆかりであったが、どうにか冷静さを立て直して跳ねる様に後退する。それを拒むようにセイカは尻尾の先を器用に動かして、ゆかりの後方へと回し込む。そうして後退を封じて自身の身体をゆかりを取り囲むようにしてぐるぐるととぐろ状に巻き込んだ。後はこのまま締め付けるだけ、という状態になってセイカは違和感に気付く。ゆかりの口角が上がり、手に持った刀身に急速に魔力が充填されていく。

 

「油断しましたね、《焔》!」

「っ、あっつぅ!?」

「甘いですっ!ふっ、えいやあっ!」

「い、いたぁっ!う、くうぅうっ!」

 

 ゆかりの詠唱に合わせて、その身体を取り囲むように炎の波が湧き上がる。巻き付こうとその長躯でゆかりの身体を囲っていたセイカの蛇体は直火焼きにされる。そのまま焼かれるのから逃れようと解かれたセイカの身体にゆかりは熱の籠った刀身を突き付ける。貫かれるのは免れたが、セイカ自身の引き戻しも相まってずりりり、と身体に深い刀傷を負ってしまう。

 

「い、痛いわぁ…!ゆかりちゃん、酷いわよ…、未来のご主人様に向かってこんなことするなんて!しかも、魔法まで使えるなんて!ギャラちゃんみたいなことしないでよ、もう…!」

「魔物娘が言うと思わず笑ってしまいそうな台詞、私の中でナンバーワンですね。さぁ、これ以上痛い目を見たくなかったら諦めて降参してください」

「うぅ…、痛い、痛いわぁ…!」

 

 身体を引き戻したままの凄まじい速度で洞窟奥の(恐らく)ボスとしての定位置に戻ったセイカは悲痛な呻き声を上げながら火傷と刀傷の残った先の方の蛇体に労るように舌を這わす。今が攻め時かと短刀を構えて迫ろうかと考えるゆかりであったが、そこで今度はゆかりが違和感を覚えた。自身が与えた傷がそう浅くないものであるのは恐らく違いない。しかし、ラミアは生命力が高い種であると聞いたことがある。まして、セイカはその種でも相当優れた個体であることは間違いないのだ。それがあそこまでの傷で弱ったようなリアクションを見せるだろうか。むしろ、自分に見せつけているような。そこまで思い至ってゆかりは脚を止めて近づかないように気を配りながら構えた。

 

「———なんちゃって♡。…って、あんまり予想外って感じじゃないわね、あーあ」

「なっ…!?」

 

 そんなゆかりに応えるように、セイカは先程と打って変わって何も気に留めていないとでも言いたげな態度で笑ってみせた。その後で、警戒を解かなかったゆかりの様子にあからさまに残念と言いたげな声を漏らすが、ゆかりとしてはそれどころではなかった。セイカの蛇身に傷が無いのだ。ある程度の回復は予期していていたとはいえ、ゆかり自身決して瞬治するようなものではない傷を負わせたはずなのだ。なのに、そこに初めから傷が無かったかのような綺麗な鱗の並びを見て驚愕して、そこで漸くゆかりは蛇の身体の下敷きになったぼろ布の様な塊に気付いた。

 

「———まさか、脱皮…?」

「お、鋭いわねぇ、流石ゆかりちゃん!再生力には限界があるけど、私くらいになれば多少の怪我ならちょっと脱皮すれば御覧の通りに元通りよ!まぁ、ゆかりちゃんの傷はちょっと深かったから結構リソース使っちゃったけどね。でも、これで私を傷つけても勝てないって分かったでしょ?大人しく降参してくれれば、痛いことはしないわよー?」

「——はっ。そんな脅し文句を聞くようなら冒険者なんてやってませんよ。貴方、言いましたよね?再生力には限界があるって。なら、それが尽きるまでとことん付き合ってもらいますよ」

「えー、それは面倒だし私も弱くなるのは困るなぁ。それなら、私なりに“説得”させてもらうわね?」

 

 そこまで言って、セイカは唐突に口を開いた。魔法でも詠唱するのか。そう警戒したゆかりを裏切るように、

 

「~~~~~♪~~~~♪」

「…?————っ!ちょ、《聴覚遮断》…っ!」

 

 セイカは囁くようにしっとりと色っぽく歌を紡ぎ始めた。はじめは突然の場違いな甘い歌声に怪訝そうな表情を浮かべていたゆかりであったが、その歌声に繊細に隠された魔力の流れを感じると慌てたように魔力で音の流れを遮った。ゆかりが警戒したそれは、魔力を媒介とした魅了攻撃。魔物や魔物娘の中には、自身の声やそれを用いた歌に魔力を組み込んで人間を魅了して縄張りに誘い込むものがいる。代表的なものでセイレーンなどがいるが、ラミアもまた知能の高い個体にはそのような歌を用いるものがいるというのを思い出したのだ。しかし、とゆかりは疑問に思った。確かに高知能のラミアもまた魅了の歌を用いるが、それはあくまで逃げる獲物や森に迷い込んだ冒険者を逃がさないための手段であり、このように戦闘に用いる個体など聞いたことはない。まして、魔力という手の内は晒しているのだから、歌を防ぐ聴覚遮断を用いるかもしれないことは予期できるのに、ここで隙を晒しかねない歌を歌うのだろうか。一応の対策として咄嗟に使った聴覚遮断で限りなく聞こえなくなった音と目の前のラミアに警戒を続けているゆかりだったが、すぐに予測できない事態が訪れる。

 

(…殆ど聞こえないけれど、いい歌声。もっと聞いていたいくらいに…。それに、セイカ、だったか。あのラミアも、肌が雪みたいに白くて、顔も美しくて…、っ!?)

 

 そこまで考えて、考えてしまって思わずゆかりは頭をぶんぶんと振った。ある程度は防いだはずの歌声が素通りしたかのようにセイカに、その歌声に見惚れて、聞き惚れてしまったことに驚愕と危機感を覚える。どうにか理性と警戒心を保とうとするゆかりであったが、しかし、こちらを見透かすように不敵な笑みを浮かべながら歌を続けるセイカへの甘い渇望が止まらない。

 

「なん、で…っ!?音は、防いでるのに…!?」

「~~~…♪ふふっ、そろそろ種明かししてもいいかしらね?私の歌は、そんじょそこらのラミアのとは違う、頭に直接訴えかけるとびきりの魅了の歌。ゆかりちゃんの使ってる聴覚遮断も突き抜けて、もうこの人に好きにされたいよぉ…って気分にさせちゃう劇薬なのよ。それこそ、絵本の聖女様みたいに魔法を完全にシャットアウトする守りの加護でもない限り、私の虜なの」

「——っ!そ、そんな、の、卑怯です、よ…っ!」

「はい、そんなの知りませんよーっと。とりあえず、一回私に魅了されてくださーい?ほら、~~~~~~~♪」

「くっ…!そ、それ、やぇ…」

 

 そこで、ゆかりの意識に靄がかかった。先程まで持っていた危機意識も警戒感も徐々に霧散していき、次第にセイカに対する情欲や恋愛感が深くなっていく。喉を震わせていたセイカがチラリと見れば、ゆかりは頬を赤く染めてこちらに微熱めいた視線を送っている。短刀も手から離れて地面に転がっているところを見るに聴覚遮断の魔法ももう解かれているだろう。しかし、今のゆかりにはそんなこと些事に過ぎない。今はこの歌に溺れていたい。目の前のセイカの魅力に見惚れていたい。あの白雪の様に可憐な肌を、大きすぎないが確かに女性的なふくよかさに溢れた胸を、思わずすれ違いざまに振り返ってしまいそうな美貌を、もっと近くで見ていたい。そう、桃色に染まった頭でぼんやりと思ったゆかりは、

 

「ぁ…。せ、セイカ、さま…」

「~~~~~~~♪…♪~~~~~~♪」

 

 うわ言の様にそう呟いて、ゆっくりとセイカへと歩み寄っていく。装備も魔法防御もない無防備な姿で自身にふらふらと近づいてくるゆかりの様子に、セイカは笑みを深くして歌声に一層魔力を込めた。そのまま魅了の熱に侵された甘い思考でゆかりはセイカとの距離を縮め、ついにはそのままセイカの手が届くほどに近づいてしまった。しかし、そこでセイカは魅了に侵されたままのゆかりに手を伸ばすことはせずに、

 

「~~……♪…はい、そろそろお目覚めよ?お姫様♪」

「…っ!?」

 

 あえて魅了の効果を途切れさせて、ゆかりを正気に戻した。そこで熱に浮かされながらも靄が晴れた思考は危機感を訴えゆかりにセイカから離れるように指示を出す。多少の戸惑いを覚えながらも慌てて後退しようとしたゆかりの身体にセイカの蛇体が迫る。相変わらずの体躯に見合わぬ素早さで足元から回された身体に脚を奪われたゆかりは体勢を崩してしまった。その隙を見逃さないセイカは蛇尾の先で器用に絡め取る。

 

「ぎ、あ、ぐぁあっ!」

 

 そして、そのままゆかりの身体をきつく締め上げた。捕らわれたゆかりはその強い締め付けに苦悶の声を上げる。

 

「い、痛…っ!く、くぅう…っ!」

「あぁ、ごめんねゆかりちゃん。痛いわよねぇ、苦しいわよねぇ?だから、参りました、もう逆らいませんって言ってくれないかしら?」

「い、いやです…!そんな、セイカ様に負けるなん、て…!?」

「ぷっ!あはは!セイカ様かぁ!可愛いわねぇ、ゆかりちゃん!」

「い、いや!今のは違うんです…っ!」

「うんうん、分かるわよぉ。でも、セイカ様ってのも悪くはないかもねぇ」

 

 そう愉快そうにけらけらと笑うセイカに怒りを覚えながらゆかりは身動ぎをするが、その締め付けはきつくとても解けそうにない。

 

「こ、この…!こんな、拘束なんてぇ…!」

「…うーん。頑張れる子は嫌いじゃないけれど、こうも諦めが悪いとなぁ…。仕方ないわね、もう力の差ってのを見せちゃおうかしら」

「ち、力の差…?」

「はい、ぎゅー…」

「うぅ…っ!つ、強ぃ…!?」

 

 そう言ってセイカは締め付けの力を一層強くする。力が加わるにつれて、ゆかりの顔に刻まれた苦悶の皺も一層深いものになり細く悲痛な声が漏れる。そして、

 

「お、ここかしら?はい、ばーん」

 

 バキィ!

 

「!?あ、あぁ…!?」

 

 ゆかりの胸元から聞こえた何かを叩き割ったような鈍い音。その音と胸元が軽くなる感覚からゆかりは最悪の事態を考え、そしてそれは不幸にも当たってしまう。胸元に巻かれたセイカの蛇身、その強い力がゆかりの軽装ではあるが確かな丈夫さを持つライトアーマーを粉砕したのだ。それはすなわち、身体を締め上げられている現状、今は無事な骨や内臓、ひいては命までもがセイカに文字通り捕らえられていて、セイカの気分次第で自分は無残に殺されてしまってもおかしくはないことを意味していた。

 

「ふぅ…。器用なもんでしょ、私。で、これで逆らう気分は失せたかしら?もう抵抗しないでくれると私も楽なんだけれど」

「…ゃ」

「うん?」

「や、やめて…。ごめんなさい、放して…。いや、死にたくない…」

 

 驚異的な再生力にこちらの自由を奪う魅了攻撃、そして何より圧倒的な破壊力。それら全てによる覆しようのない圧倒的な戦力差に、ゆかりの辛うじて冷静さを保とうとしていた心はぽっきりと根元から折れてしまった。その代償として、その表情は絶望からくる怯えに染まりきり、口からはうわ言の様に謝罪と命乞いの言葉しか出てこない。

 

「…あちゃー、やり過ぎたか。つがいにするにもこれじゃあ罪悪感凄いし、楽しくないしー…。はあ、仕方ないわねぇ」

「ひっ…!ご、ごめんなさい…!」

「あぁ、謝らないで!…大丈夫よ、怒ってないから。はい、ちゅー」

「んぅ…っ!?」

 

 怯えて身体を震わせるゆかりに顔をぐいと近付け、セイカは震えるゆかりの唇を奪う。怒って自分を害すると思っていた相手からの優しい口づけに目を白黒させるゆかりを余所に、セイカは呆然と隙間が開けられたゆかりの唇に自身の舌を滑り込ませる。

 

「ん、ちゅる…、れぅ…、じゅるっ」

「んっ!はぅ…、れ、ぅ…、ふあぁ…っ!」

 

 そのままセイカは自身の先が二股に分かれた舌で、ゆかりの熱く唾液に塗れたそれを絡め取る。ただでさえ人間よりも薄く細長い舌は二股で分かれた先で更に細長くなっており、そのうちの一つをゆかりの舌に螺旋状に巻き付けて扱く様に締め付けるようにして刺激を与える。ゆかりにとって未知のそれは、決して小さくはない息苦しさと途方もない快楽を与えてくる。特に、つるつると滑らかなセイカの舌が自身のざらざらとした舌の表面に擦りつけられると、背筋にぞわぞわとした感覚が走り恐怖も含めた思考が麻痺して気持ちよさしか考えられなくなる。もう一方の舌先も、口腔内のふっくらと柔らかい側部や肉の滑らかさと粗さが共存する上部、果ては締め付けられた舌の付け根まで、細かに動いては器用に擽ってみせる。二つの舌先が見せるこれまでに体験したことのない感覚に、ゆかりは先程までの圧倒的な恐怖の感情も麻痺させて快楽の涙を眦から零しながら思考を沈ませた。

 

「ぁ…、ぅ、ふぅ…。は、あぁ…」

「は…。とりあえずはこれでいいかしらね…。あぁもう、舌先が痺れるわ。なんで人間ってこんなに体温高いのかしら…。はぁ、それにしてもいい性…。やっぱりゆかりちゃんって、他のやつなんかより全然違うわ」

 

 快楽で表情を惚けさせたゆかりからぬろ…と舌先を引きずり出し、あまり長く絡められない舌先を労りながら不満げに独り言ちた。ラミアは突き詰めれば蛇の魔物であり、そのためか人間より体温の低いものが多い。特に舌などの体温をそのまま感じやすい器官での性行為は自身の負荷にもなるため本来は行わない、あるいは避けるべき行為である。それでもゆかりの身を慮って深い口づけを行ったのは、それをする価値があるほどにゆかりの性が素晴らしいものであるという確信があったから。そして、その核心は見事に的中した。絶頂には至ってないにも関わらず、ゆかりの身体から溢れ出た性は、質も量も他の人間の比にならないものであった。そんなものが自らの手の内にある一種の全能感にセイカの頬は思わず緩む。

 

「それじゃあ次にー…っと。このままじゃ、ゆかりちゃんの肌が傷ついちゃうわね。つがいになる子なんだし大事にしないと、ね」

「は、ぁう…?だいじ、に…?」

「はい、ゆかりちゃん。ぎゅーってしましょう?」

 

 そう言って、セイカは尻尾の拘束を解きゆかりを抱き寄せた。そうして自由になった尻尾を使って傍らにある自身の抜け殻を雑に引き摺って、まるで鳥類か何かの動物の巣であるかのような鱗皮の塊を作り上げた。

 

「うん、これなら地面に直接寝かせるよりは上等でしょ。それじゃ、ゆかりちゃん。ここに寝っ転がってねぇ」

「ぁ…、は、はい…」

「うん、いい子。…それじゃあ、脱ぎ脱ぎしましょうね?私、人間の服とか分からないからちょっと乱暴に脱がしちゃうけどいいわよね?どうせ、これからここで私と一緒に過ごすんだし」

 

 セイカは上機嫌に頬を緩ませながらそう言うと、宣言通り乱雑に、外見としては細身なその腕に似つかわしくない力で殆ど引き千切るようにしてゆかりの装備品や着ている衣類を脱がせていった。中身が空になった短剣の鞘も、セイカが締め付けて砕いたライトアーマーも、年頃の少女にしては華美さが微塵もない冒険者然とした衣服も。下着に至るまで全ての装備品を剥ぎ取って、セイカはゆかりの冒険者としては華奢で細身な裸体をその眼前に晒してみせた。

 

「…綺麗よ、ゆかりちゃん」

「やぁ…、はずかし…」

「隠さないで?もっと私に見せて頂戴な」

「で、でも…。こんな、細いばっかりの身体なんて…」

「謙遜しすぎるのは美徳とは言わないわよ?少なくとも私には、とっても美味しそうな身体なんだから自信持ちなさい?」

「…性、だけですか?」

「? どうしたのかしら?」

「…!い、いえ…。なんでも、ないです…」

「そう?…ふふっ、いい子。そう、私にその身体を見せて?大丈夫よ、もっと気持ちよくさせてあげるから」

 

 身体を隠していたゆかりの腕から力が抜けたのを確認すると、その身体を側面から抱き締めてセイカはゆかりの薄い胸に手を伸ばした。顔は耳元に近づけて、まだ少しひりつく舌先で器用に耳を撫でる。一方は耳殻の薄い隙間を擽り、もう一方の舌先を耳奥まで滑らせてそこに唾液を塗りたくる。物欲しげに動く尻尾は緩く片脚に巻き付けられ、完全には脚を閉じられないようにしてしまう。そのまま先端はずるりずるりと足先から脚の付け根へと向かい、そのままキスだけで前戯は不要とばかりにしとどに濡れた秘部へと突き刺さる。

 

「ひぃんっ!?」

「ひもちいいわよね、ゆかりちゃん…?ちる、れる…」

「ひゃ、ひゃう…っ!あぁっ!」

 

 そのまま指先と同じかそれよりも器用と思えるほどに滑らかに動く尾の先がごしゅごしゅと膣内を無遠慮にかき回す。それに合わせて、耳に伸ばされた舌先も丁寧かつより滑らかに動かされてゆかりの快楽を誘った。女の扱いには慣れていないのか、胸への愛撫は腫物を扱うように優しく乳肉を揉み込む程度のものだったが、その先端にも指先は伸ばされていて軽く弾く様に刺激を与えている。ゆかりからすれば十分に強い刺激であり、これだけでも十分に絶頂へと届きそうだった。特に、膣内を暴れ回る尻尾などは治りかけなのか荒々しい鱗の感触も相まって普通の人間や並の魔物娘では到底味わえない快感を与えてくれる。

 

「ちゅる…。うぅん、ゆかりちゃん、気持ちいい?」

「は、ひゃう…っ!き、きもちいい、ですぅ…!」

「でも、もっと気持ちよくなれそうよねぇ…。うん、折角だし使っちゃうわね?」

 

 使う?何を?

 そう問おうとするゆかりなど差し置いて、セイカはゆかりの首元へと顔を寄せる。そして、汗に塗れた肌へと舌先を滑らせて、僅かに汗が拭われたそこへ狙いを定めて、

 

「ぅうっ!?い、痛っ…!?」

 

 かぷり、と浅く牙を立てて噛みついた。そのままぐり、と力を入れる。その痛みに僅かに身を捩るゆかりは、牙の先から何から自らの体内に送り込まれるようなぞわりとした感覚を覚えた。ぷぁ、と息を漏らしてセイカがゆかりの首筋から口を離す。冒険者よろしく軽く牙を立てられただけの浅い傷はすぐに塞がったが、肝心の自分の身体に流し込まれた、使われた何かは未だ分からない。何をしたんですか。そう問おうとゆかりは口を開いて、

 

「っ!?あっ、はぁ…っ!?」

 

 どくん、とした不自然な胸の高鳴りを感じて思わず熱い息を吐き出した。

 

「うわ、あつ…。うん、これなら効いたわね?お疲れ様。これからもっと凄いわよ?」

「き、効いた…?セイカさん…、私になにを…」

「うん?とっておきの媚毒よ?身体が熱くて疼いてくるでしょ?これからが本番だから楽しみにしてなさい?」

「っ、い、ひゃああっ!つ、つよ、強いぃいいいっ!」

「あはは、明らかに声が大きくなったわね!これならもっと気持ちよくなれるでしょ?ほら!もっと気持ちよくなって、ゆかりちゃん!」

「あ、あぁああっ!あぁんっ!?」

 

 先程よりも大きな喘ぎを漏らすゆかりの様子に、セイカは気持ちの昂りを抑えきれずに無意識にゆかりへの責めを強めていた。膣内を暴れ回る尻尾はそれほど狙われていなかった膣奥を容赦なく殴りつけるし、胸に伸ばされた掌は先程より容赦なく握り締めて強く揉みしだく。ゆかりの身体から溢れ出す性も膨れ上がり、セイカは身を焦がす力の増幅感に思わず歓喜のままに声を上げる。

 

「じゃあ、とびきりのをあげるわね!ゆかりちゃん、ほら、イっちゃえ!」

「ひゃ、ひゃぁあああああああああっ!?」

 

 そうしてセイカは宣言通りに、膣内の最奥まで沈んだ尻尾を膣壁に押し付けるようにして勢いよく引き抜き、更に両胸の先端でぷっくりと膨らんだ慎ましやかなつぼみをぎゅっと指先で潰してやる。今の媚毒に侵された身体には強すぎる快楽に、ゆかりは快楽の悲鳴を上げながら身体を絶頂に震わせた。

 

「は、あぁあああ…!やっぱり、凄いわ、ゆかりちゃんの性…!こんなの初めてよ…!」

 

 はぁはぁと虚ろな瞳で空を見つめながら息を整えるゆかりの傍らで、彼女を自身の抜け殻の上に置いたセイカは自身の身体を抱き締めながら恍惚の表情でゆかりから溢れる性を堪能していた。頬は体温の低いラミアにしては酷く珍しいほどに赤く染まり、息も小刻みに揺れていて興奮しているのはまるわかりであった。しかし、セイカは尚も物欲しげな視線を息も絶え絶えのゆかりに向けて、そして何かを思いついたように笑みを深くした。

 

「…ねーぇ、ゆかりちゃん?」

「ぁ…、ふぇ…?」

「あのねぇ、お姉さんもうちょっとゆかりちゃんの性が欲しいのね?それでなんだけど、先に謝っておくわね、ごめんなさい」

「ぇ…。な、なんで謝るんですか…?」

「そうねぇ…。ゆかりちゃんには、ちょーっと苦しいかもしれないからかしら?」

「く、苦しい…?」

 

 そう、碌に動いてない頭の上にはてなを浮かべるゆかりの視界の外からゆっくりと尻尾の先を彼女の上半身に向かって伸ばす。そうして、こてんと傾げられたゆかりの細いその首へと向かって、

 

「———えいっ♪」

「ぐっ…!?ぁ、ぇ…!や、な、なんで…!?」

「だぁいじょうぶよ?気持ちよくはさせてあげるし、殺したりはしないから」

「や…。ゆるぃて…。た、たすけ…」

 

 その尻尾の先を巻き付けた。突然の衝撃と絞め殺されるのではないかという恐怖がない交ぜになりゆかりは困惑と恐怖の視線をセイカに向ける。しかし、嗜虐的な笑みを浮かべるセイカの言葉はゆかりの恐怖を完全には拭い去ってはくれない。悲痛な面持ちを浮かべながら懇願するゆかりの言葉などさして気にも留めずに、セイカはゆかりの力の抜けた腰元へと顔を近づける。そして、

 

「それじゃあ、いっぱい性を出してね?いただきまぁす」

「ひゃぅんっ…!?」

 

 そこでぐずぐずに濡れそぼった膣口へと自身の細く長い指を挿し入れる。尻尾ほど長くはないが器用さは折り紙付きのそれで、ゆかりの淫蜜を掻き出しては口付けてそれを蕩けた表情で啜り上げる。

 

「あ、あぁん!や、そこ、こすっちゃだめぇっ!」

「んー?なんで?いいでしょ?たまらないでしょ?じゅる、じゅ…。じゅるるっ!」

「ひゃあああっ!?」

 

 余りの快楽の強さに身を震わせるゆかりは頭がおかしくなりそうなほどの快楽に制止の声を掛けるがセイカはやめてくれない。それどころか、与える快楽をより一層強いものにしてゆかりの喉から嬌声を絞り出させる。

 

「あ、ぁあああ…!やぁあん…っ!」

「ふぅ…。そろそろ、気付けの時間かしらねー?えいっ♪」

「っ!?ぎ、く、くる、し…!?」

 

 ゆかりの喘ぎ声が落ち着いてきた頃を見計らって、セイカは突然にそれまでゆかりの首に巻き付けていただけだった尻尾にぐい、と力を込めた。きゅう、と絞められた喉から訪れる痛みと息苦しさにゆかりはどうしようもなく苦悶の声を漏らした。セイカとしては、あくまで行為の為のスパイスであり絞め殺す意図など無いが、ゆかりからすればその意図など分からない。訪れるかもしれない死に対する恐怖に身を震わせながら、セイカへと縋るような視線を向ける。それに微笑みで返したセイカは、容赦なくゆかりの膣口をぐずぐずにかき回す。突然の性的な刺激に驚いたゆかりであったが、驚愕したのはそれだけではなかった。

 

「や…!?な、なんれ…!?き、きもち…!?」

「あ、やっぱり気持ちいいでしょ?死んじゃうかもしれないくらいに追い詰められると、人って性を強く出す感じがするのよねー。だから、私はもう死んじゃうかもってなってるときに感じる快感は普通の時よりも強いのかも、って考えたのよ」

「や、やぁあっ!?もう、強くしないでぇ…っ!こんな、頭おかしくなっちゃ…!」

「まぁ、ゆかりちゃんがどうしようもなくマゾヒストちゃんなのかもしれないけどね?でも、頭おかしくなっちゃてもいいわよ?私が治してあげるから」

「やら、やらぁ…っ!っ、ぐぅ…っ!」

「もう、我儘言わないの!いいから、もっと気持ちよくなっていっぱい性を出しなさい!じゅる、じゅるる…!」

 

 そんな身勝手な快楽を押し付けながら、セイカは膣内をかき回す指の動きも、膣口に押し付けた唇の啜る強さも、首を締め付ける尻尾の強さも激しく強いものに変えてゆかりを責め立てる。その分、絞められたゆかりの喉から漏れる喘ぎ声も大きくなり、拘束された身体の震えもより激しいものになっていく。何より、苦悶と快楽で表情を歪めるゆかりの身体から溢れ出る性が一層強く甘美なものに変わっているのだから、セイカはもう歓喜で震えながら責め手を激しくするほかこの興奮を表す術を知らなかった。

 

「やぁ!ぁ、ああ、あ、あああ…!」

「ん、そろそろかしら?いいわよ、ゆかりちゃん?今日は、これくらいでイっちゃいなさい…!」

「ぁ、~~~~~~っ!!」

 

 一層甲高く短い悲鳴を漏らすようになったゆかりの様子から彼女の限界を悟ったセイカは、膣口の上でふっくらと膨れていた快楽の秘芽を指でぎゅうっと押し潰して、もう一方の手でも膣内のざらりとした箇所を強く指で擦り上げた。その刺激を与えられたゆかりは、絶頂に身体を一際強く跳ねさせながら声にならない悲鳴を上げて抜け殻の上に転がった。

 

「ふぁ、あぁあ…!——————…っ!す、すご…っ!これが、ゆかりちゃんの、全力の性…!」

 

 その際に身体からぶわり、と弾け飛ぶようにして溢れ出た性を一身に浴びたセイカは、そのあまりの衝撃にゆかりの首に巻き付けた尻尾も外して身体を震わせながら驚愕と歓喜に最早絶頂にも似た感覚に襲われていた。

 

「もう、なんて子なのかしら、ゆかりちゃん…。こんな子、絶対に逃がすわけにいかないじゃない…!」

 

 そう言って恍惚の表情をゆかりに向けたセイカだったが、その表情はすぐに曇ってしまう。性を溢れさせるために快楽と苦悶に幾度となく追い込まれたゆかりが、息を切らしながらも絶頂の余韻に浸ることもせずに自身に恨めし気な視線を向けていたためである。

 

「あ、あはは…。やりすぎちゃったかしら…。ご、ごめんね、ゆかりちゃん」

 

 そう誤魔化すように笑うが、当然ゆかりの視線が緩まることはない。それどころか、視線に込められた怨嗟の感情は一層強まったように感じられる。

 

「ど、どうしようかしら…!?き、嫌われた…?それじゃあ、もう、魅了で…!」

「…っ!だ、だめ…っ!」

 

 慌てたセイカが魔力を込めて口を開こうとするのを遮るようにして、ゆかりは息も絶え絶えなその口から確かに制止の声を上げた。その突然の声をどうにか聞き逃さなかったセイカは驚きの表情を浮かべてゆかりへと視線を向けた。

 

「ゆ、ゆかりちゃん…?」

「き…、気持ちいいのはいいです、好きです…。苦しいのも…、好きじゃないですけど、我慢できます…、許します」

「…そ、そう」

「でも…!その、魅了の声だけは、止めてください…!それは嫌です…!そ…、そんなもので、私を縛らないで…!」

「…!」

「私は…!私は、セイカさんの身体で、好きにさせ…、んぅ…!?」

 

 ただ、魅了の力と快楽と暴力で無理矢理つがいにしたと思っていた相手からの突然の懇願に、セイカは死角から剛力で振り回された金槌で殴られたかのような心地にさせられた。声に乗せようと口元に集められていた魔力は無残に霧散して、未知の感情に突き動かされたセイカはその衝動のままに、舌が痺れることさえ厭わずその唇を奪った。

 

「はぁ…っ!もう、なんてこと言うのかしら…、ゆかりちゃん…!」

「ぁ…。すきに、好きになりたいんです…。セイカさん…」

「…!ゆかりちゃん、ごめんなさい…!私、つがいなんて作るの初めてでこんな風に愛し合うのは初めてだから、あなたの気持ちに全然気づけてなかった…!ごめんなさい…!もう、こんな思いさせないように、気を付けるから…!だから、私もゆかりちゃんを好きにさせて…!本当の意味で、つがいにさせて…!」

「…は、い…」

 

 絞り出すように口にしたセイカの言葉に、ゆかりは漸く瞳に込められた恨み辛みを緩めて表情を和らげた。それに堪らない愛しさを覚えてセイカはゆかりの今にも折れそうな身体を抱き締める。そんなセイカの背中におずおずとゆかりは手を回した。

 

「…あと、もう一つごめんなさい、ゆかりちゃん」

「…?」

「実は、私の交尾…セックスって本当はもっと、とっても長いの。今日はお試し、ってことで我慢しようとしてたんだけど…。さっきのゆかりちゃんので、我慢できないっていうか、したくないっていうか…。も、勿論ゆかりちゃんさえよければ、なんだけど…」

「…、ふふっ」

 

 そう慌てた様子で言うセイカに、ゆかりは明らかに疲れた顔に微笑みを浮かべた。

 

「いい、ですよ?…さっきも言ったでしょう?気持ちいいのは好きだし、苦しいのも許します…って。私、頑張りますから…。だから、セイカさんの好きに、して…」

「…っ!ゆかりちゃん…っ!」

 

 もう堪らないといった様子で、セイカはゆかりの身体を押し倒した。

 

 

 

***

 

 

 

「…はぁ。あいつ、ここ最近碌に連絡も寄越さねぇで、何やってんだか…」

 

 そう愚痴を零しながら、ラミアが群れを成す洞窟を知った顔で茶髪の女性が進んでいく。外敵に敏感なラミア達も彼女のことは一瞥するだけですぐに作業に戻っていった。その様子に面倒そうな表情を浮かべて女性は最奥まで辿り着いた。

 

「ぐっ…!せ、セイカさん…、い、いい…っ!す、き…、好き…、セイカさ…、あぁ…っ!」

「は、はぁ…!ちゅる、じゅ、じゅるる…っ!ほら、もっと首絞める?ゆかりちゃん…!」

 

 その先で、こちらにも気付いていないように身体を重ねるセイカとゆかりに一層眉根に寄せる皺を深くして溜息を付いた。

 

「…おい、セイカ」

「…ん?あ、ギャラ子じゃない?どうしたのよ?」

「ぁ…」

「ごめんね、ゆかりちゃん?ちょっと、空気が読めないあのバカと話し済ませてくるから」

「…はい」

「誰が空気読めないバカだ、ぶち殺すぞ」

 

 首を絞めていた尻尾を解き明らかに物憂げな表情を浮かべたゆかりの頬に口づけを落として、セイカはギャラ子と呼んだ女性の元へ不満げな表情を隠しもせずに這い寄っていく。

 

「…それで、何よ急に。こっちは忙しいんだけど」

「何が急だ、もうかれこれ二カ月は定時連絡ほっぱりやがって」

「え、そうだったかしら?」

「こいつは…。なにしてんだと思えば、つがいなんて作りやがって。無駄に心配して損したわ」

「あんたに心配される覚えなんてないわよ」

「連絡しないやつが偉そうに言うな、全く。…それにしても。お前には勿体ないくらいに可愛い娘じゃないの。しかも、この性…。よっぽの上玉みたいじゃ」

「ギャラ子?…揶揄ってるつもりなら本気で殺すわよ。ゆかりちゃんに少しでも気がある仕草したなら、それはもう惨たらしくね」

「…おー怖い怖い。色情に狂った蛇は嫉妬深いってのは、古今東西どこでもそうなのかしらね。悪かったよ」

 

 そうただでさえ不機嫌そうな顔に隠せようもない剣呑な表情を浮かべたセイカに、ギャラ子は降参したように両手を上げながら謝罪の言葉を口にした。それでも警戒の色を一切薄めようともしないセイカの様子に、ギャラ子は呆れたように溜息を付いた。

 

「…そういや、麓の村だけど。前にも増して寂れた風になってたんだけれど、何したのさ」

「別に?ゆかりちゃんを騙して献上品のふりして生贄まがいのことした挙句に、あの子のお金使って他所から討伐隊雇うなんてふざけた真似したから、見せしめに討伐隊と長老とか偉そうなやつを何人か惨殺しただけよ。今度ふざけた真似したら来世まで後悔するような惨たらしい方法で滅ぼしてやるって脅し付きでね。脅されたときの村の奴らのあの怯えに怯えた表情、あんたにも見せてやりたかったわ」

「…あんまやりすぎて、後悔しても知らねぇぞ。まぁ、そんだけ馬鹿強くなれば少なくともそんじょそこらの野郎どもに負けることはないんだろうけどさ。で、捧げられた酒、まだ殆ど残ってるみたいだけど、酒好きなお前にしては珍しいじゃねぇか。どうしたよ」

「どうしたも何も…。ゆかりちゃんとのセックスに夢中になっちゃって飲み忘れてただけよ。それに、ゆかりちゃんの精液とか唾液の方がよっぽど美味しいし。最近は、ゆかりちゃんの栄養補給の時に一緒に飲むくらいね」

「…お前、いよいよだな」

 

 呆れと驚愕の入り混じった表情をセイカに向けるギャラ子であったが、当のセイカは自身の言葉の異常性に気付いていない様子で何を不思議がってるのか分からないといった顔をギャラ子に見せた。

 

「…あ。そうだ、ギャラ子。今、火傷薬あるかしら?」

「あー?一応一瓶なら用意があるが」

「なによ、薬学自慢の魔女が聞いて呆れるわね。まぁあるならいいわ。あのお酒、どんだけ持ってってもいいから頂戴よ」

「…まぁ、いいが。火傷するようなたまじゃないだろ、お前」

「してんのよ、口の中。ていうか、舌。ゆかりちゃんとのセックスは気持ちいいんだけれど、体温が違い過ぎてもうびりびりしっぱなしなのよ。このままゆかりちゃんが人間卒業したときに、今より体温が低い何かになってくれればもっとありがたいんだけれど」

「…もう何も言わねぇよ。…ほら」

 

 眉間に寄せた皺を今日一番深いものにして、ギャラ子は鞄の中を漁って試験管を取り出すとそれをセイカに差し出した。ありがと、と軽い調子で受け取ったセイカはそれをぐい、と一息に飲み干す。ぷはぁ、と酒か水を飲んだように声を漏らすセイカから試験管を返されてギャラ子はもう何度目かも分からない溜息を付きながら鞄に試験管を放る。

 

「…とにかく、今度の提示報告は忘れんなよ。こっちは上等なジパング酒さえ手にはいりゃ文句は言わねぇからさ。今度はもっと火傷薬も持ってきてやるよ」

「それは助かるわ。連絡はー…、善処するわね。まあ、二ヶ月に一度来てくれれば多分お酒も手に入るし」

「…あいよ。じゃあ、酒もらうわ」

 

 そこまで言って酒桶に向かうギャラ子を一瞥して、セイカは先程までの不機嫌さなどどこへやら頬を緩ませて不安げな表情を浮かべていたゆかりの元へ這いずっていく。

 

「ごめんごめん!待たせちゃったわね、ゆかりちゃん」

「セイカさん…、あの人だれですか?」

「ん~?ただの同業者よ、気にしないで!それより、もっと気持ちよくしてあげるわね。まだ、十?二十?くらいしかイってないもの。ゆかりちゃんだって、まだまだ足りないでしょう?」

「で、でも…!まだ、あの人いますし…、恥ずかしいです…!」

「いいじゃないの、見せつけてやれば!それとも、ゆかりちゃんは気持ちいいの嫌い?」

「…意地悪、です」

 

 そんな砂糖マシマシのショコラより余程甘ったるい会話を最後に、自分がいることも露知らずといった様子で快楽と苦悶に塗れた倒錯の中へ嬌声と共に沈んでいく二人に、隠すこともせず舌打ちをしたギャラ子は透明な魔術素材の袋の中に酒桶の半分以上を詰め込んで洞窟の奥地を後にした。そんなギャラ子の様子に文句ひとつもないまま、二人は行為に溺れている。そんな二人に向けて、ギャラ子は明確に悪意を込めて呟いてやった。

 

「色狂いぶりなら、お前らに勝る馬鹿なんて世界中どこにもいないだろうよ」

 

 当然、その声も二人の耳に届くことなどありえないのだが。




キャラクター紹介

【セイカ】
お酒が大好きな(大好きだった)ラミアの女王。従えているラミア自体は雌というだけで魔物娘ではなく数が多いことに目を瞑れば決して強くないが、セイカに関しては別格の力を有しており身体能力と再生能力、何より魔物娘としても強力な歌による魅了攻撃を持ち、村を襲う以前から多くの冒険者を返り討ちにしていた。実はギルドでも賞金を掛けているが、それが煩わしくなって住処を村近くに移した経緯がある。結構な嗜虐癖持ちで気に入った冒険者も性行の中でしばしば殺害しておりそれを何とも思ってなかったが、ゆかりを魅了でノックアウトしたせいで初めて恋の感情を得てしまいすっかりゆかりに溺れてしまっている。
元ネタは京町セイカ。作品のキャプションでも書きましたが、『ヘビ年だしラミアネタ書きたいな⇒ヘビって酒のイメージあるなぁ⇒ほなセイカさんにするかぁ』と結構雑に決めってしまったかもな感じです。
あと、魔女のギャラ子さんがチラッと出てましたが、こちらもいつか書きたいなぁと思いつつネタが出てこない…。魔法である程度好きに出来そうだけど、東方Projectの魔法使い系キャラクターの能力みたいに魔法の種類とか決めてそれぞれ特色付けたいな、とか思うと先に頭数出したくて後手後手です。
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