クラスター滞在もどれくらいか、すこしばかり長い課外授業になって久しい、まあこういうのもたまには悪くないかな、とヒヨリは思っていた、家族が恋しい瞬間もあるがすこしばかり早い自立の練習のようなものだ。
高校受験の事が少し頭に過ることもあれば授業が嫌いなわけじゃない、しかし学生らしくそれだけが人生ではない。
それにしても、と思っていた、最近カスミの顔を見ないな、と。ミストラルとの対決の後、最初はそれなりに顔を合わせていたのに最近はそんなこともない、何かあったのだろうか、と思うが余り心配してもつけあがらせるか、なんて思って放ってはおいた、しかしおかしい、もう1週間近く見ないのは流石にだ。
今日こそカスミが仮の部屋としているブロックに顔を出しに行こう、と心に決めた。
「って、なだか私があいつの事っ……!」
顔を真っ赤にして首を横に振った、なんかこう、いや、好きだけど、恋する乙女みたいじゃないか、これでは。
とりあえず、と、シャワーでも浴びようかな、と、ベッドから身を起こす。
今クラスターの1ブロック、山の手屋敷を借り受けていた、お嬢様グループがいたりもしたのだが今は飽きて別の所に行っているからこれ幸いと借りていたのだ。
音がする、足音だった、
「ん、誰?」
別にここは誰の物でも…あ、所有者はRR社だからここは勝手に間借していることになるのだがそれはそれとしてともかく…ないのだから誰が来てもいいのだが、何だかいきなり来られるのは怖くもある。
「よ、ヒヨリ」
だがすぐに拍子抜けした、知っている顔だったからだ、それもこのクラスターの一連の事件で仲良くなった女子、
「フブキ…珍しいわね」
「まーね、と」
扉の前に立ちながら笑って手を振っている、何だか――
「(フブキってこんな動きしてたかしら?)」
所作がいろっぽいと思った、少し前のフブキはもっとボーイッシュと言うか、中世的な所があった、女だから基本の所作は女だけれど、もっとこう、格好いい感じ、とでもいう動きだったと思うのだが、今のフブキはもっと女性的に寄っている、艶があるというか女性から見ても女っぽいというか、記憶のそれとちょっと違う気がした。
なんだろう、と思い扉に近づく、なんの為に来たのか聞かなければならないのだから。
「それで、何かあったの?」
「何かなきゃ来ちゃダメか?」
「そんなこと無いけど……」
「まあでも用事ってのは確かだよ」
フブキが笑った、淫らに。
「実はさ、オレ……カスミとセックスしたんだ」
一瞬脳がフリーズした、頭の処理が追い付かない。
「は?」
「だからさ、セックスしたんだよ、授業でもっとお堅いいい方でも、ネットのエロい動画でも見たりするだろ?ちんぽとまんこぐちゃぐちゃにするアレ」
は、と、また声が出る、何言ってるんだろうか、本当に。
「も、もぉ……冗談よしてよ」
「冗談に聞こえたか?」
じぃ、と、フブキの視線が来る、え、と、嘘でしょうと、本気で言っているのかと、
「ここ最近さ、ずっとカスミの事オレが一人占めしてたんだよね……凄いぜ、あいつ体力ないかななんて思ってたけど予想以上にあるんだよ……朝起きてちょっとロボトルしてその後はずっとまたセックスするんだ……気持ちよくて壊れちゃいそうだ」
ニヤニヤと勝ち誇った笑み、一気に脳が沸騰した、この、と、手が出そうになって抑えた。
「何よ……自慢?」
さっきまで友達と思っていた存在が一気に敵に見えた、
「ま、自慢半分だけど……」
さっきのニヤニヤとした笑みがなりを潜めて時折見せた鋭い視線が来る、
「ヒヨリ……正直に言えよ、お前もカスミ好きなんだろ?」
「何……」
「ま、本当の事言えばヒヨリに言う必要なんてないと思ってたし黙ってようと思ったけど……うん、やっぱ無理、ま、フェアにやりたいって思ったわけ……それにさー」
ぐ、と距離を詰めてくる、思わずたじろいだ。
「やっぱさ、カスミと1番長い時間過ごした女ってヒヨリしかいないんだよね……じゃあ、ヒヨリよりしっかり上ってなるならヒ正面切らなきゃずっとあいつのココロにヒヨリがいたままになるだろ…そう言うの嫌なんだよね……だから来たんだ……もう1回聞く、お前、カスミのこと好きだよな?」
っ、と、息を飲んで、心が爆発した。
「ええ、そうよ!好きで悪い!?でもアンタがもう持って行ったじゃないのっ!!」
涙が出ている、こんな事で泣くような女じゃないだろう私、なんて思っても無理だった。感情のダムが崩壊し、効かない。何を言っても叫び声にしかなりそうにない。
ふぅん、とフブキは笑う、
「正直に言えたならいいよ……んじゃ、一緒にする?」
は、と、呆けた、今フブキが何を言っていたか分からなかったからだ。
〇
「で…連れてきちゃったの?」
「おう、連れてきたぞ」
どこかニヤニヤした笑みを浮かべているフブキをよそに、燃え上がるほど真っ赤になっているヒヨリの顔をカスミは見た。感情がないまぜになってよく分からない表情になっている。
「か、カスミっ…」
「あ、は、はい」
絞り出すような声が届く、か細いとは少し違う声、こんなのは初めて聴いたかもしれない。
ヒヨリは一度、息を吐き、
「1回しか言わないからね!」
「う、うん」
「その…好きよ……」
「え!?」
「なんでそこで驚くのよっ!?」
だってとカスミが小さくつぶやく。
「ふ、普段からあたりが強いというかなんというか……」
うぐ、とヒヨリは言葉を詰まらせる、確かに……いや、まあちょっとは心上りがある、だがそれは……
「しょ、しょうがないじゃないの……て、照れるとそうなっちゃうのっ!」
「ヒヨリっ…だ、男子かよ!」
思わず、と言う風に後ろにいたフブキが噴き出した、イラ、とする、視線を向けた。
「な、何よぉっ!」
「いや、ちょっと面白すぎてさ」
腹を抱えながら笑い続ける、すこしばかり笑い続けてから落ち着き、
「あれだろ、好きな女子にイタズラする男子みたいな」
「なっ!?」
「でもやってる事、事実だろ」
「……う……」
「だから俺にカスミの最初持っていかれたわけだしな」
「うぐぐぐ……」
言われるとあまりにも事実が過ぎて言い返せない、確かに、確かにそうではあるが、と、頭を抱えてしまう、だが、だからと言ってどうしろと言うのだ……いや、これが考えすぎと言うことなのだろう、幼馴染のカスミが好きなのは事実だ、あのスぺロボ団のキリカと言うのがやたらカスミに近づいてた時に威嚇した、好意を隠さなかった、何かあればとにかくカスミを頼った、カスミの近くに居たかった。
だがそれを言葉に、伝わるようにしたことなどあっただろうか……なかった気がする、少なくとも好きだと言葉にした記憶はない。
「ぐすっ……」
唐突に涙が出る、馬鹿なのは自分じゃないか、関係性に甘えてこれくらいなら分かってくれるだろう、こいつのいいところは私が知っている、なんて思い上がっていたから横からかっさらわれたのだ、確かにフブキのやり方は自分たちの歳に合わないかもしれないがストレートに思いをぶつけているのだから。
「ひ、ヒヨリ!?」
嗚咽にカスミがあたふたとした、ピンチの時は格好いいのに、こういう時はいつものカスミだ。
「その、だ、大丈夫大丈夫、泣かないでって」
幼子を泣き止ませるように頭をなでられる、どう考えてもおかしいはずなのにどこか心が安堵している部分があった、ずっと続けて欲しいとすら思っている。しかしこの様子を後ろからじっと見つめるフブキの方を見る、どこか険しい顔になっていた、分かる、気持ちが、向こうはフェアな勝負と言って連れてきた、それは嘘偽りないだろう、しかし想い人が他の女とイチャ着くところを見せつけられたら思うことだってあるだろう。
ならば、
「いいでしょう?」
見せつけながらフブキに言う。
当然これを良い事に見せつけるに決まっている、しばらく自分の影でこそこそあってはイチャイチャしてたと自白したのだからこれくらいは必要分だ、甘え倒してこそフェアってものだろう。
「…あった時はあたふたしてたのに……切り替え速いなヒヨリ」
「悪いけどずっとくよくよしてられるほど落ち込むタチじゃないから」
フブキと視線が合う、火花が散った気がする。
「あ、あのー」
カスミが割って入ろうとし、しかし、
「んっ」
口をふさぐ、勿論キスで。
「んっ…ちゅっ…んっ…れろぉっ…♡」
「んっ、んっん~~~~~~!?」
たっぷり口の中を堪能してから唇を話す、銀色のとろりとした橋が互いにかかっている。
「楽しんでるじゃん」
明らかにイラとしたフブキの声に目を細め、
「ええ、羨ましい?」
「……言うね」
「ええ、フブキが態々塩を送ってくれたからね」
視線がぶつかり、火花が散っている気がする。
ヒヨリはフブキを今でも嫌いではない、嘘、実はちょっと嫌いになりかけて持ち直した、だが敵だ、恋敵だ、そんな相手が反撃のチャンスをくれると言うのであれば徹底的に使うのがヒヨリだ。
「まあ、先手を取られちゃったのは痛いけど…巻き返すくらいなら出来るわ」
「いうね、少し前まで手をこまねいていたのに」
もうそこで言葉を切る、これ以上の言い合いは不毛だ、ならやることは1つしかない。
ブラウスに手をかけて、脱ぐ、恥ずかしくはある、だが見て欲しいという気持ちが勝った。
「ヒヨリ……」
「フブキのは見れて、私のは嫌なんてこと、ないでしょ?」
そのままスカートも取った、下着姿だ、汗ばんでいるのが分かる、じっとりと。
そして股の方に水気があるのもわかった、濡れていた、欲情している時に出るものだ、ヒヨリだって年頃だ、自慰くらいするし体の反応は分かる。
「おい、勝手に良い雰囲気になるのはどうかと思うけど」
横から声、お邪魔虫め、気付けば同じように下着姿になっていたフブキがベッドの上に来ている、しかも下着はスケスケの水色だ、ネットでちょっと見たことのある所謂勝負下着と呼ばれる過激なものだ。
「……フェアにって言ってたくせにヤル気満々じゃないの!」
「いーだろ!どーせ今日も襲うつもりだったんだし」
「……それどこにあるの?」
「都市ブロックのモール」
「……そっか、大人がいないのは偶然だもんね……」
「そう言うこと」
「場所教えようか」
「お願い」
そんなことを話していれば、カスミの声、
「あの、さっきまでちょっと険悪な感じじゃなかった!?」
「男子から見ればそう見えるのか、別に嫌い合ってるわけじゃないし」
「そーよ、ま、カスミには分からない世界だけど」
そんなことより、と、カスミの手を取っておっぱいに押し付ける、背筋が震えたのを見た。
ふぅんと、笑み、こうも反応するならば問題ない。
「今からそんなこと考えられないくらい気持ちよくしてあげる♡」
処女の自分にそんなことが出来るか、なんて分からないが、ここで不安になって腰を引くようなヒヨリじゃない。何より少しでも後ずさりした瞬間に入り込んでくるフブキがいるのだ、多少のハンデくらい問題ない。
「カスミ♡」
「カスミ♥」
「楽しみましょ♡(もうぜ♥)」