私、稗方由佳は遊び相手に飢えていた。
土曜日の午前授業の日、時計の針が13時を指すころ、私は学校を後にした。
私をカラオケに誘うクラスメイトの誘いを無視して、駅へ向かった。
改札にICカードを当て、2番乗り場を目指す。
さっき自販機で買ったブラックコーヒーの苦みに思いをはせながら、今はやりのバンドの、エモい歌詞を聞く。
イヤホンが外界と断絶してくれるため、私はこれからすることについて専門的に考えることができた。
私は遊び相手が欲しい。
別に学校でちょっと声をかければ、数人くらい集まるのだが、一つ問題がある。
学校の子じゃ物足りない。
なんというか、同い年の子はみんな子供っぽい。
もっと、大人っぽい人としたいなと思う。
そのために今日はカバンに詰めたおしゃれな服を着て、一番できた私で向かう。
道行く人は私とすれ違うと振り返っていた。
30分揺られて、私は下りた。
階段のわきのごみ箱に缶を捨てる。
トイレに向かい、鏡を見ながら少し髪をいじる。
少し茶っぽい黒の短髪をとかす、前髪を無意味に整える。
ほかにも、細かな部分がちゃんとできているかを確認する。
構内の所定の位置につき、あの人を待っていた。
あの人というのは、昨日そういうアプリで出会った人だ。
名前は確か、田野美鈴さんという名前だったはずだ。
私も美鈴さんも、女の子が好きだった。
私は学校の子と何度か遊んだことがあったが、美鈴さんは私が初めてらしい。
楽しみで仕方がない。
しばらく待っていると美鈴さんがやってきた。
「稗方さん…ですよね?」
「そちらは、美鈴さん?」
「はい、そうです、私が美鈴さんです」
「今日はよろしくお願いしますね」
「はい、よろしくお願いします」
美鈴さんは写真で見たよりきれいだった。
つやのある黒髪に、ぱっちりとした大きな目、もちもちぷるぷるの玉肌、背は思ったより高く、私よりかなりあった。大体170㎝
しゃべり方は柔らかく、よく調律されたバイオリンのような、優雅で美しい声であった。
私は彼女に魅了され、自分の色に染めたいと感じた。
「美鈴さん、まずはご飯食べに行きましょう、まだ食べてないですよね?」
「はい、食べてないですね。」
美鈴さんは少し緊張しているのか、敬語が多かった。
顔はニコニコしていたが、どこかよそよそしい。
じーっと、私のことを見つめているようである。
昨日までチャットで話していたときは、あまり使っていなかったはずだが。
私がちゃんとリードして、楽しませようと思う。
「おすすめのお店があるんですよ、一緒に行きましょう」
「わかりました」
私は美鈴さんの手を引いて、その店へ連れて行った。
ちょっとおしゃれなパスタの店だ。
中へ入り、予約した席へ案内してもらう。
私はボロネーゼのセット、美鈴さんはカルボナーラのセットを頼んだ。
20分ほどたつと、頼んだものが並ぶ。
レタスとオニオンのサラダ、コーンスープ、ボロネーゼ。
それらが出す芳醇な香りが鼻孔を突き刺す。
思わず顔がにやついた。
美鈴さんも自分の前に並べられたカルボナーラたちに対して大体同じようなことをしていた。
「ここ、いいところでしょう?」
「ええ、とっても素敵…ありがとう、稗方さん」
私たちは談笑を重ねながら料理を食べる。
美鈴さんは話していて楽しい人であった。
話によると、彼女は24才であり、このあたりでOLをしている。
趣味は音楽を聴くことらしい。
食事中の談笑では、最近聞いている音楽についての話を多くしてくれた。
中には私の知らない物も多くあり、話し終えるころにはプレイリストの収録曲が1.3倍くらいに増えていた。
ほかにも、動物が好きらしく、特に猫を飼いたいという話を聞いた。
一人暮らしを始めてからあまり会えていないが、実家で飼っている猫のアポロの写真を見せると喜んでくれた。
美鈴さんは人の話を聞くことも好きなようで、私の学校での話をたくさん聞いてくれた。
特に交友関係についての話をよく聞いてきた。
ほかの人と遊んだ話をしてなんで楽しめるのかはわからないが、楽しんでくれるのでいくつか話すことにした。
「稗方さんはなにで女の子が好きって気づいたの?」
「う~ん…学校の子と遊ぶようになってからかな~」
「女の子にかっこいいって言われるのがうれしくて」
「そうなんだ~、稗方さん、かっこいいよっ」
「えっ…あ、ありがと……」
不意打ちでかわいいと言ってくるのは少しずるいよ。
「美鈴さんも、かわいいよ…話してて楽しいし…」
ちょっと照れ気味に顔を伏せながら小声で言った。
「ふふふ、ありがと~」
美鈴さんはテーブルの向こうから私をやさしくなでた。
そんな感じで時間をすごしたのち、食後にドリンクとデザートのジェラートを軽くたしなみ、私たちは店を後にした。
時計の時刻は15時を指していた。
「次はどこへ行きましょうか?」
「う~ん…次も稗方さんの行きたいところがいいな…」
「は~い、じゃあ…」
また私は美鈴さんの手を引いた。
このあたりには、穴場のスポットがある。
学校の子を連れて行くと、よく喜んでくれたものだ。
10分ほど歩いて、街中の少しさびれた路地に入る。
そこを抜けて、駅からはやや遠いところにそれはあった。
チケットを購入し、中へ入る。
そこはちょっとした水族館であった。
暗い館内には、明るい色のLEDでライトアップされた、熱帯魚やクラゲが泳ぐ水槽が並べられていた。
小さめなところではあるが、雰囲気がかなりいい。
こういう雰囲気重視のところは好きだ。
隅に併設されているカフェで、サンドイッチでもたしなみながら勉強をする午後の時間は私をリラックスさせ、推薦まで導いてくれた
「ここ、いいでしょ?」
「稗方さん、すごいね。こんなところ私知らなかった」
「あ、今更かもですけど…私のこと由佳でいいよ」
「あ、じゃあ…由佳…さん」
暗くてあまり見えないが、たぶん顔を赤らめている。
なんてかわいい人だろう。
大人っぽさもあるひとだた、時折見せるこういう顔もまた、乙なものである。
私は背を伸ばして、彼女の頭を撫でた。
なんとかなでられた。
「あっ、由佳さんったら…」
「美鈴さんがかわいいから、やりたくなっちゃった」
「ちょっと…お姉さんをあんまりからかわないの」
「ふふ、私じゃなくて、魚を見ましょ」
美鈴さんは話をそらした。
私はひとまずそれに乗り、魚を眺めていた。
きれいだ。
自由に揺蕩うさまは見ていて楽しく、ライトアップが映えるように計算しつくされた水槽は、常に飽きないようになっていた。
私たちはしばらくそこを堪能し、出た。
「楽しかったね、由佳さん」
「ですね、美鈴さん」
「ねえ…そろそろ、私の行きたいところについてきてほしいな。」
「え?もう結構遅い時間じゃありません?」
時刻は18時を指していた。
「大丈夫だよ、遅くなっても家までは…送るから、」
「それに、ちょっとだけ、お姉さんと……大人の階段を上ってみない?」
美鈴さんは私の顎をくいっとあげた。
大人の階段を上るというのは何だろうか?私にはわからなかった。
ここで帰っていれば、ああはならなかったのかもしれない。
「大人の階段……?わ、わかりました…やってみたいです」
どんなことをするのだろうか、私は興味に耐え切れずついていった。
美鈴さんに手を引かれ、私はきれいな建物へ入った。
ピンク色の照明に照らされた建物だ。
美鈴さんが受付を済ませ、私はさらに案内される。
あんまり内装が違うので、よくわからないが…ホテルのようだ。
美鈴さんは部屋を開けて、私を中に入れた。
ピンクの照明が照らす、ハートの意匠が施された家具や、大きなベッドが置かれてあった。
「由佳ちゃん、今日はありがとうね」
「今日一日、とってもかわいかったよ」
「え…ちょっと、美鈴さん?いきなりどうしたんで…」
「ふふ、悪いお姉さんにひっかかっちゃったね」
美鈴さんは私を抱きしめた。
「え?な、なんで?ちょっとそれは…」
私たちってまだそんなことをするような関係だったっけ?え?どういうこと?まだ早いよ?私たち恋人でもないのに?
「美鈴さん…?」
美鈴さんは私をベッドに押し倒した。
そのまま深く深く抱きしめ倒れた。
「由佳ちゃ~ん、自分のこと…かっこいいと思ってるでしょ」
「自分のこと、王子様だと思ってるでしょ」
「え?え?何これ……」
「全部、大間違い」
「由佳ちゃんはね、きっと…みんなに守られてたんだと思うよ」
「"こんなこと"も知らないなんて…ふふ、愛されてたんだねえ…末っ子みたいな感で」
「どういうこと…ねえ、美鈴さん…怖いです…やめ…」
ちゅ
口づけをされた。
私の初めては、こうして奪われた。
「うそ…私の初めて……」
「初めてなんだ…かわいいね」
美鈴さんが頭をやさしくなでる。
びくびく震えることしかできない私の体を、優しく優しく、美鈴さんが嬲っていく。
私はただそれを小動物のように受け入れることしかできない。
「今から、由佳ちゃんをほんとに女の子好きにしてあげるね」
「え?ほんとにって…どういう」
「だって、多分嘘か…ファッションレズでしょ~、それ」
「初めて会った時から、見抜いてたよ」
「自分のステータスとして振り回す姿勢…ちょっとだけいらいらしたなあ…可愛いからいいんだけどね」
「だから…お仕置として、今から、その頭を上書きして、女の子に虐めてもらえないと体がうずいてもたないくらい、滅茶苦茶にするね」
いよいよ私は震えることすらできなくなっていた。
撫でられることが、ほんの少しの安心を与えてくれていたから。
私は恐怖していないのではない、恐怖することすら奪われたのである。
美鈴さんの手は、やがて私の服をずらした。
薄灰色の下着があらわになってしまう。
「だめですっ…だめですっ…やめてください…」
かろうじて、か細い言葉として発せているだけである、心ではもう、彼女を受け入れかけてしまっている。
「だめじゃない、由佳ちゃんが選んだんだからね、全部、由佳ちゃんのせいだからね」
美鈴さんの言葉に従うことしかできなかった。
「わ、わたしの…せい」
「そうそう、由佳ちゃんが、分際を超えて調子に乗ったから…こうなったんだよ?」
「わたし…の、せい」
「うん」
納得してしまった、納得させられてしまった、納得させてもらった。
間髪入れず、美鈴さんは私の胸を弄び始めた。
知らない感覚が脳の奥を刺激する。
「ねえまって、なにこれなにこれ」
「え?こういうのも知らないんだ……」
「保健でしか性知識持ってなさそうだなこの子……猶更ぐちゃぐちゃにしたくなっちゃった」
何かが彼女をたきつけたのだろう、手はよりいじらしく、ねちっこく私をかわいがってくる。
「ああっ、もう許してください…」
「だめ」
それに集中しているからか、そこから10分程度同じことをうわごとのように繰り返していたが、全部に淡白な返事しか返さなくなった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「だめ、だめ、だ~め」
語尾にハートでもついていそうな甘い声で、私は言葉に言い表せない状態にされてしまう。
美鈴さんの右手が股に触れた。
私の腰が跳ね上がる。
「ひうっ…」
「感度いいねえ、由佳ちゃん」
下着をずらして、指を奥へ入れる。
私の体は、もう跳ねて、震えて、時折汁を吹く程度のことしかできなかった。
この時に訪れる強烈な快楽が、私の恐怖を破壊し、甘い声が、幸福に再構築していた。
それを、何度も何度も何度も何度も味あわされた。
抵抗の意思はわけなかった。
だって、私は、美鈴さんが好きになってしまったから。
最後には、もう
「好き、好き…美鈴さん…好き」
「私も……」
こんな有様だった。
何もかもが初めてだった。
どれくらい経ったかもう忘れたころ、指が抜かれた。
ティッシュでそれを拭きながら、美鈴さんは私に呼びかける。
「ねえ、立てる?」
「はい……」
私の腰は骨盤が砕けたのかというくらいに瀕死だったが、立つことを強制されて抵抗できるほど精神には余裕がなかった。
「こっちおいで」
手を引かれた。
風呂場の鏡の前に立たされた。
醜態を鑑賞させれている。
まじまじと。
この調子で発火して、死んでしまいそうなほど顔が真っ赤だ。
美鈴さんも全身を舐めるように見たのちに、こう放った。
「あなたは今日から、私のペットね」
意味が分からなかった。
「ぺっとって…なんです…か?」
「ペットはペットだよ、由佳ちゃんは、今日から私の猫として飼われてもらいます」
「きいてもわかんないです……」
「これからわからせてあげるね。ひとまず二人の時は語尾はにゃんね」
「に、にゃん……」
「よしよし、よくできました」
私は目の前がぼやけて見えた。
疲れか、涙か、何が何だかわからなかった。
現実逃避がしたかったのかもしれない。
目の前の、すべての現況しか縋り付く先がないので、彼女の胸に抱き着き、泣いた。
優しくなでてくれる、幸せだ。
時計の時刻は、もう見えない。
連載とありますが、いつでも続きを出せるようにしてあるだけであんまり更新はしないかもです。
創作意欲がわいたら出します。