呪物化した転生呪術師inダメツナが原作を崩壊させる話 作:カリヤン
この世界には7の三乗と書いてトゥリニセッテと呼ばれている究極権力の鍵、あるいは地球の進化の為の装置が存在する。
この星の環境を整えて生物に進化を齎すのだから、それを全て手に入れれば全知全能の神を名乗るに相応しい力が手に入るだろう。かといって欲しいとは欠片も思わないが。
ただこのトゥリニセッテが呪力の無い世界に呪力を齎した原因と言っても過言ではないだろう。
非術師の呪力が漏れるのは代謝の一環でもあり、それが無ければ健康を損なう事になる。強いストレスで身体を壊したりするのが一例だ。
だからなのだろう。この世界に呪術師である私が呪物化した状態とはいえやって来てしまった。
トゥリニセッテに意思があるがは分からないがストレスを呪力というエネルギーに変換するのは生物にとって良い事だ。そう判断しても不思議じゃない。
非術師から漏れ出た呪力が呪霊となってもトゥリニセッテからしたら進化の一環でしかないし、生態系的にも大きな間違いではない。てか私がトゥリニセッテの立場からしたら増え過ぎた人間を間引くのに丁度良い。
人間はストレス等の負の感情を呪力に変える事で体調を崩す人を減らせるし、発生した呪力で呪霊が産まれて人間を適度に間引けるし、いずれ人間も呪力を扱えるように進化して戦うようになる。
そしてこうなったのは全部私のせいなわけだ。
はは、本当にキツイって。これから生まれて来る呪霊の被害者は全部私が殺したようなものじゃん。
しかも呪力を持ってるのは私がこの世界にやって来た後に産まれた人だけ。それより前の人間は呪力を持ってない、多分術式もまだ沢田綱吉だけだ。いずれそれも解決するだろうけど本当に犠牲が増える。一応魂の無い呪物がいくつかあるから後天的に術師は作れるけどそれだってたかが知れてる。
――――地獄か?
まだ呪力を持ってる人は少ないから大丈夫?
確かにその通り。ただ呪力を持ってる人の基準が私だから非術師でも呪力めっちゃ多いの。で、漏出する呪力も滅茶苦茶多い。自分の戦闘力はあまり強くは無かったけど転生者だったせいか呪力だけは滅茶苦茶あった。具体的に言うと宿儺の指換算で15本分くらい。
綱吉君は宿儺の指で例えるなら20本強以上はあった。しかも非術師だった頃の話でこれなのだから末恐ろしい。この世界の他の人と比べても頭一つ飛び抜けてる。
今? 私を取り込んだ事と術師の脳になったおかげで宿儺の指40本強は軽くある。ちなみにそこらの一般人でも宿儺の指2分の1から約1本分はある。
――――地獄だな。
何がダメツナだよ加減しろよトゥリニセッテ。
これ呪術をちゃんと教えないと大惨事起きるわ。
このままだと天元の結界が無いというノウハウが無い状態で全世界が人外魔境東京に成り果ててしまう。私が転移してから約20年、正確な年数は分からないけど多分25年以上は経ってしまってるからそう遠くない内に本当に地獄になる。
タイムリミットがいつになるかは分からないけどそれまでに綱吉君には最強の呪術師として君臨して貰わなくちゃならない。
何で一応呪詛師の私が異世界の心配をしなくちゃいけないのか。
まあ原作の沢田綱吉も強くなってたしそこに呪力と術式が加われば更に強くなるだろう。
「ところで宿題はしないのかい?」
「な、何で知ってるんだよ」
「さっきも言ったけど脳を共有してるからね。ちなみに私の過去の記憶は見れないよ。この身体に入った後の記憶なら見れるだろうけど」
「オレのプライバシーが無い!!」
「一応プライバシーを守る方法が無いわけではないけどね。それも呪術の知識が必要だから早く宿題を済ませちゃおうか」
「えぇ…………別に呪術とか知りたくないんだけど。何か怖いイメージしかないし」
「怖いのは事実だけどちゃんと知っとかなくちゃ。じゃないといつか不注意で人を殺すよ」
「そんな冗談言うなよ」
「冗談じゃないよ」
君程呪力があったら本当にいつかやらかしそうで怖いんだよ。
最悪この世界での両面宿儺、もしくは悪堕ちした五条悟とかいう悪魔が産まれかねない。
「まあ呪術知識は後で教えるとして、先に宿題をやろうか。なぁに、教科書を見ながらやれば大抵のことは分かるさ」
「でもオレ分からないけど」
「教師の教え方が悪いんじゃないかな? いや、仮にも教師の身に関わらず、生徒を見下している時点で論外だが」
教科書を見ながら宿題に取り掛かる綱吉君を見て少しだけ考える。
本当は一人一人にあった教え方をしなければならないが、学校だと時間が限られてるから中々難しいと思うが。
それでも教師が見下すのは間違っていると思うが。
「ああ、そこは教科書のここに解き方が書いてるよ」
「えっ、あっ、本当だ」
「きみの場合結果だけを出そうとして分からなくなってるみたいだけどね。重要なのは過程だよ。どうしてこうなったかではなく、どうしてこうなるのかを考えれば分かるよようになるよ」
※
「さて。宿題を片付けたところで次は呪術の勉強といこうか」
「えぇ、本当にやらなくちゃダメなの?」
「何度も言うようだけどこれは本当に知っとかなくちゃいけない事だからね。君自身の為にも」
呪霊が見えるようになってしまったのだから最低限、呪力操作は覚えとかなくちゃいけない。
私自身の為にも、彼自身の為にも。
「とはいえ、長々と語って小学生の貴重な自由時間を使い潰すわけにはいかないからね。そうだな、ざっと30分だけにしようか」
今回教えるのは縛りと呪力に関してで良いだろう。
反転術式と黒閃も簡単に教えられれば良いか。
「じゃ、今から呪術知識を共有するから了承して。ちなみにこれは縛りだから」
「その縛りって何なんだよ」
「それも含めて教えるからお願い」
「わ、分かった――――あがっ!?」
受肉体となった術師は肉体の記憶を読み取る事が出来る。
それは当人が殆ど忘れている記憶であってもだ。両面宿儺が伏黒恵に受肉した際、全く覚えていなかった来栖華の事を思い出していたように、記憶を掘り返す事が可能なのだ。そしてその掘り起こした記憶は器側にも共有される。
器側に支配権が戻る事は無いからあまり意味の無い情報かもしれないが、器と共生しているタイプでも同じ事は可能である。
そして今回行ったのは逆の事で、呪術知識とともに私の過去の記憶の一部を綱吉君に流し込んだ。
結果、口頭で教わるものだと思っていた綱吉君が脳に直接ぶち込まれた事で苦しんでいるが人の話を聞き流そうとした罰だ。
「必殺、地獄の呪術師生活リフレイン」
「な、なんつー事してんだよ…………!! てか、調女だったのかよ…………!」
「言ってなかったね。まあ今となってはどうでも良いことだよ」
椅子から転げ落ちて頭を抑えている綱吉君にそう呟く。
前世は男で今生は女、そして綱吉君の身体に受肉したことでまた男に戻った。
「受肉体になった以上、今は男の身体だから気にしない気にしない」
「いや、気にしろよ!!」
全く気にしないように言うが綱吉君はツッコミを入れていた。
成る程、これがツッコミキャラというやつか。加茂家の頃は人間扱いされず、呪詛師時代はそもそも人とあまり関わって来なかったからなんか新鮮だ。
「ツっ君どうしたのー?」
さっきからドタバタと身悶えしていたせいか、階下に居る母親の心配する声がした。
「な、何でもないよ! ちょっと椅子から滑り落ちただけだから!!」
「そう? 気を付けなさいよー」
朗らかな声ながらも心配する母親に言い訳をしながら再び椅子に座る。
「取り敢えずこれで呪術について分かったと思うんだけど」
「分かったは分かったけどさ…………いきなりやれって言われても出来ないって」
「流石にそこまで無茶は言わないよ。ただ私と縛りを結んでほしくて」
「…………他者との間に結ぶ縛りって破ったらダメなやつなんだろ。そんなあっさり」
「破らなければ何も問題は無いよ。それにガッチガチに縛るんじゃなくて緩くすれば良いだけだし。メリットも薄いけどデメリットも少ない、あくまで必要な縛りだから結ぶだけだしね」
「それで、その縛りって何だよ」
「私に身体の主導権を一時的に貸し出すという縛りだよ。呪力の使い方を身体で覚えさせる方法だね」
「さっきも身体貸してたけど、危なくないの?」
「危なくなくするように縛りを入れるんだよ。ほら、綱吉君がピンチの時にすぐに代われるように」
「そんな危険な力が必要な時なんて無いと思うけど」
残念ながら近い内に呪霊の大量発生が確定してるからきみが強くなるまでは私が守らないといけないのだ。
あまり強くは無いが、だからといって何もしないのは呪術師としての矜持があるから出来ない。いや、呪術界からしたら一般呪詛師でしかないけどね。
「先ず縛りの内容としては…………一つが私が交代と言ったら身体を明け渡すこと。二つが入れ替わった場合、通常の場合時間経過で10分を過ぎたら身体の所有権は綱吉君に戻る。三つが二つで入れ替わる際に事前でも事後でも良いから私が時間の申請を行い、綱吉君がそれに応じた時は申請した時間の間だけ入れ替われるものとする。ただし一日、即ち24時間以上の時間を申請する事は出来ず、入れ替わりそのものも綱吉君の意思次第で解除されるものとする」
「…………なんか、あまりにも」
「綱吉君側にデメリットが無いって? 私は別にきみの身体を乗っ取って第二の人生を歩みたいわけじゃないんだよ」
正直な事を言うともうね、色々と疲れたんだよ。
きみの身体を乗っ取ったら間違いなく酷いことになると分かり切ってるし、今更学生をやる気にもならない。
私はきみの日常を見ているだけでも十分だ。
「それで、この縛りを受け入れる?」
「まぁオレの意思ですぐに戻れるのなら…………」
「じゃあ早速呪力操作の感覚を教えるから、30分くらい身体を動かして良い?」
「う、うん。でもあまり痛い事とかはしないでね」
「まだ呪力操作だけだから大丈夫だって。じゃあ、交代」
身体の主導権が綱吉君から私へと移り変わる。
「こうして呪力を使う感覚を身体で覚えさせればあっという間に覚える事が出来るよ。なんなら今の感覚も共有すれば良いだけだし――――って、あれは」
ふと、窓の外を見ると空に鳥のような呪霊が飛んでいるのが見えた。
等級は恐らく三級くらいだろうか。出来るのなら今の内に倒しておきたいところだ。
『あ、あれは何…………?』
「呪霊っていう、謂わばお化けのようなやつ。私達呪術師はああいうのを祓うのが仕事なの。百斂」
血液を手の中で限界まで圧縮して両手で狙いを定める。
「穿血」
両手で挟み込んだ血液を指向性を伴って一点から解放する。
それは正しく血のレーザーとも呼ぶべき攻撃であり、呪霊の核を正確に撃ち抜いた。
核を撃ち抜かれたことで呪霊はゆっくりと地面に落下し消滅していく。
「よし」
『よし、じゃねー!! てか今の何!? 血のレーザー!? オレの身体大丈夫なのー!?」』
「大丈夫だって、使った血液も補填されるし…………ってちゃんと体質や術式の事とか話してなかったね」
多分綱吉君もこっちの方が面白いだろう。
そんな事を思いながら、私の中で叫んでいる綱吉君を諌めつつ時間が過ぎていった。