冤罪で俺の人生を奪った元恋人が、俺の人生を買いに来た話【完結】 作:ドン・ドナシアン
下腹の奥に、逃げ場のない尿意の圧が張りついていた。
内側から押し広げられる力は途切れずに続いている。しかし、その出口は革帯でしっかりと閉ざされている。外へ出るはずのものが行き場を失い、内部に滞留したまま、尿意の圧だけがさらに強く押し上げられていく。
綾子は胸元を隠していた両手のうち、片手だけをゆっくりと下ろした。もう片方の手はそのまま残し、乳房の丸みを押さえたまま動かさない。
下ろした側の手は、正座した太腿の上を滑るようにして前へ移動し、そのまま股間の前に当てた。指先に力を込める。
押し当てた圧がわずかに均衡を支え、ほんのかすかにだが内側からの押し上げが鈍る。
指先は細かく震え、その振動が腹部へ伝わる。
姿勢を崩せば、その瞬間に均衡が壊れる気がした。
西園寺グループを奪え──。
また、大樹のその命令が、遅れて意識に引っかかる。
「……西園寺グループを……?」
綾子の口から戸惑いの声がかすれて漏れた。
押さえた指先に力が入る。わずかに緩みかけた瞬間、尿意の圧迫が跳ね上がり、慌てて股間に力を入れる。
「……そんな……無理です……」
言葉が切れる。
そのときだった──。
「あっ」
思わず声をあげていた。大樹の平手が頬を強く打ったのだ。
音が短く弾け、頭が横に振られる。視界が揺れ、押さえていた手の力が一瞬だけ抜けかける。
「……お前に判断はいらない。西園寺グループを奪え。これは命令だ」
大樹の声が静かに落ちる。
言葉の意味はわかる。しかし、西園寺グループは傘下企業が百を超える巨大財閥だ。しかも綾子は一族からすれば嫁にすぎず、完全な外様だ。
その現実が、命令と噛み合わない。
「でも……」
その戸惑いが綾子の口から零れ出ていた。
言葉が出かかった瞬間、二度目の平手が頬を打つ。
「あっ……」
衝撃で頭が逆側に振られる。視界が大きく揺れ、身体の均衡が崩れかける。押さえ込んでいた力がほどけかけ、慌てて押し直す。
呼吸が乱れる。言葉が続かない。
「考える内容が違う」
同じ調子で言葉が続く。
「……違う……?」
「お前が考えるのは、“どうやって”だ。それだけだ」
「……どうやって……」
かろうじて、その言葉だけが形になる。
胸を押さえた手と、股間を押さえた手に同時に力が入り、身体の中心に圧が集中する。
「……それを……」
声が震える。
言いかけて、思考が止まる。
ほかの言葉が出ない。
残るのは、そのひとつだけだった。
どうやって……。
止まっていた思考がゆっくりと動き出す。
綾子に決定する権利はない。それはすでに大樹に渡している。
食べるもの、飲むもの、一挙手一投足までも管理される立場だ。
それを忘れていた。
叩かれた意味が繋がる。
「も、申し訳……、あっ──」
思わず大きな声が漏れた。
大樹にかけられた言葉に気を奪われて、張りつめていた力が解けさせてしまったのだ。押さえ込んでいたものが一瞬だけ緩み、必死に耐えていた尿が締めつけられている革帯の内側で崩壊した。
革帯の内側で、押し止められていた圧が逃げ場を求めてぶつかる。
しかし圧迫によって出口が絞られ、流れは細く制限される。
押し出される力だけが残り、わずかな滲みとなって細く漏れ続けていく。
「あっ、いや……」
綾子は両手で股間を押さえた。
しかし、一度崩壊した尿はもう自制で止めることなど不可能だった。押し出そうとする力だけが止まらない。
出せないまま押し続けられる苦痛に、身動きが取れなくなる。
「立て」
大樹が冷たく言う。
「はい」
綾子は立ち上がる。両手で股間を押さえている。しかし、始まった放尿はもう止めることはできない。
「手は頭の後ろ。脚は跪いて肩幅に開け。それが奴隷の“立て”だ」
「はい……」
言われた通りの姿勢を取る。両手を頭の後ろに回した瞬間、押さえが外れ、内側で続いていた流れがそのまま落ちる。革帯に絞られたまま、細く、止まらずに漏れ続ける。
革帯の縁から溢れた尿が内腿を伝い、膝を濡らし、足元に静かに溜まっていく。
「漏らしたな」
大樹が静かに言った。
「も、申し訳……ありません……」
綾子は俯いたまま答える。
「また、間違う。失禁は罪じゃない」
「え……?」
思わず顔を上げる。視線が合う。
「わからないのか?」
「わ、わかりません……」
小さく首を振る。
やがて流れは細くなる。だが、内側に残る感覚が消えない。意識がそこに引きずられる。
「排泄の刻限を決めたはずだ。なぜ、そのときに出そうとしなかった?」
「そ、それは……仕事で……」
朝は緊急の連絡が入り、それを優先した。
帰宅後は残業で時間がずれ、機会を逃した。
言葉が途切れる。
「つまりは、管理よりも仕事を優先した。あのときと同じだ……。もっとも、あのときに捨てたのは、管理ではなかったがな」
大樹が自嘲気味に微笑んだ。
綾子の身体が止まる。
火照りかけていた熱が引く。
あのとき……。
十年前──。
綾子が捨てたのは……。
大樹だ──。
二人で始めた会社だった。技術は大樹が支え、経営は綾子が支えた。どちらが上でも下でもない。対等な立場で並んでいた。
小さな部屋で始めた会社が、仕事を取り、少しずつ大きくなっていく。大樹が作ったものを、綾子が売った。綾子が取ってきた仕事を、大樹が形にした。
二人三脚だった。
だが、会社が成長するにつれて、綾子の目は会社へ向いていった。
人が増え、業績は右肩上がり──。契約、資金繰り、社員の給料、取引先との信用。さらに拡大する利益──。守るものが増えていくたびに、意識はそちらへ引き寄せられていく。
そして、突然に運転資金が消えた。
そのとき、綾子が見ていたのは、大樹ではなかった。
失われた金だった。
穴を埋める手段のことしか考えてなかった。会社を絶対に潰さないための選択だった。
大樹ではなく。
会社を優先した。
会社を潰さないために奔走して、婚約者だった大樹に面会すら行かなかった。
綾子は……間違えたのだ──。
そして、失った──。
「あ、ああ……っ、ああ……」
声が崩れる。呼吸が乱れる。姿勢が揺れる。
息が浅くなる。
吸っても、足りない。
もう一度吸おうとして、うまく入らない。
「ひあっ、ああっ、あああ──」
胸が上下に小刻みに動く。喉がひくつき、空気を掻き込むように口が開く。
視界が揺れる。
身体の内側で、なにかが噛み合わなくなる。
息が吸えない──。
激しく身体が痙攣する。
「息を止めろ──命令だ」
大樹の声が落ちる。
「……んくっ……」
綾子は必死に息を止める。吸おうとする動きを押し留める。
乱れていた呼吸が、強引に断ち切られる。
「そのままだ。命令だ……」
短く言葉が落ちる。
吸いたい衝動が喉にせり上がる。胸が締めつけられる。
視界が揺れる。
それでも、止める。
「苦しいか?」
大樹が静かに問う。
「……っ……」
声にならない。
首を上下に振る。
「だが、待て」
同じ調子で言葉が落ちる。
苦しさが一段深くなる。
胸の奥が焼けるように熱を持つ。頭の内側がじわじわと痺れる。焦点が合わない。
思考がほどけていく。
力の入れ方がわからなくなる。
それでも、視線は外れない。
大樹だけを見る。
苦しい──。
必死に息を止める。
大樹の命令だから……。
すると、なぜか股間の奥に、別の熱が滲み始めていることに気がついた。
締めつけられているはずの場所が、内側からじわりと湿りだしている。
尿意ではない──。さっきまでとは違う感覚が、ゆっくりと広がる。
止められない……。
自分の意思とは関係なく、身体の内側だけが変わっていく。
苦しいはずなのに……その奥で、わずかに浮く感覚が混じる。
まだ、息は止められる……。
大樹が赦さない限り、このまま息を止めて死ぬことさえできる気がした。
そうなれば……どんなに幸せだろう……。
苦しさで、足元が不安定になる。
力が抜けかける。
視界が暗くなる。
「吸っていい──」
大樹が短く言う。
「……ぷはっ、はあっ、はっ、はっ──」
綾子は盛大に息を吸う。崩れた呼吸が一気に戻る。胸が激しく上下する。
股間の熱が引かない。
呼吸のたびに、胸の先端が内側から押し出されるように張りつめているのを感じていた。
「……戻ったな」
大樹が言う。
綾子は答えられない。まだ呼吸が整いきらない。
それでも、顔を上げる。
脚を開いて跪き、両手を頭の後ろに置いた奴隷の姿勢で──。
視線が合う。
逸らさない。
「心配するな。お前は死なさない……。生きたまま、なにも考えられない奴隷にしてやる」
低く、感情のない声が落ちる。
その言葉が落ちたとき、綾子の身体が、びくりと震えた。
「なにも考えられない……奴隷……」
息を乱したまま、かすれた声で繰り返す。
肺に流れ込んだ空気が、止まりかけていた思考を押し戻していく。
身体の感覚が戻る。
奴隷──。
その意味が、ゆっくりと内側に沈んでいく。
「それがお前への……復讐だ」
大樹が言う。
綾子は、悦びに打ち震えた。
呼吸はまだ乱れている。
それでも、何度も小さく頷く。
ああ、やっと──。
やっと、大樹に復讐してもらえるのだ──。
ただただ、その言葉を受け入れる。
「もう一度言う。綾子……西園寺グループを奪え。命令だ……」
「は、はい……」
綾子はしっかりと頷いた。
呼吸はまだ乱れている。
どうやって──。
それだけを考える。
「……西園寺ホールディング社……グループの中核となる持株会社です……ここを押さえれば……全体を支配できます……」
言葉が途切れる。だが、もう苦しくはない。
頭は明快だ。
懸命に“どうやって”を思考している。
「……株式は完全非公開……全株式は一族で分割保有……会長の宗一郎が四〇%……隆継が十五%……その弟が十二%……直人が八%……わたしが五%……残りは古参株主が……」
「ほう? つまりはその過半数をお前が握れば、グループを支配できるということだな?」
「そうです……」
綾子は頷く。
方法はまだ見えていない。
だが、考えることはひとつ……。
どうやって──だけ。
「いいだろう。四つん這いになって、尻をこっちに向けろ」
大樹が言う。
その一言で、思考が止まる。
次の瞬間、腰の後ろで小さな金属音が鳴った。
圧迫していた革帯が緩む。
締めつけが消えた瞬間、内部に溜まっていた残尿が一気に解放される。
「ひっ……」
思わず声が漏れる。
残っていた尿が、堰を切ったように股間から溢れ出す。
同時に革帯が外れ、床に落ちる。
放尿は止めることはできない。
ただ、流れ出る。
「尻だ」
大樹が立ち上がる。
綾子は慌てて四つん這いになる。
指示通りに、腰を向ける。
まだ身体は完全には落ち着いていない。
尿はようやく収まりかけている。
だが、拭く余裕はない。
「……あ、あの……まだ……」
「構わない」
その一言で、綾子の意識が切り替わる。
次の瞬間──大樹の怒張が綾子の股間を後ろから貫いた。
綾子の身体が跳ねる。
「っ、あっ、ああ──」
綾子は快感の声をあげた。