冤罪で俺の人生を奪った元恋人が、俺の人生を買いに来た話【完結】 作:ドン・ドナシアン
「ああ、そうじゃない──。なら、ガラス棒で──それで強く刺激して──お願いっ」
綾子は思わずそう口走っていた。
「あら、ガラス棒ね。わかったわ。じゃあ、あんたたち、思う存分弄ってあげて」
伶奈が筆をトレイに戻し、カメラの後ろの椅子に戻っていく。
革マスクの男たちが同時に動いて、争うようにトレイへ手を伸ばした。
綾子は、はっと息を呑んだ。
正面のカメラが視界に飛び込んできたのだ。
全身から血の気が引く。
いま、自分はなんと言った。
自分から求めた。
自分の口で言ったのだ。
そして、それが映像として残る。
男たちになにをされるかよりも先に、その事実が綾子を打ちのめした。
大樹に自分から求めたことを知られてしまう──。
その恐怖が一気に押し寄せた。
「いやああっ──やっぱりだめえ──触らないでえ──」
綾子は絶叫した。
必死に首を振る。
だが、一度口にしてしまった言葉は消えない。
「あら、本当にいいの? 狂ってしまうわよ。我慢するなんて不可能な媚薬なんだから。大樹にはそう言い訳すればいいわ。耐え続けると、さっきのアンナのように毀れるわ」
椅子に座り直している伶奈が空になっていたグラスへシャンパンを注ぎ足す。
焦点の定まらない目で虚空を見つめ、苦悶に歪んだ表情を晒していたアンナの姿が脳裏に蘇る。別人のように、男を貪る光景だけは忘れられない。
毀れた──。まさにそのとおりなのだろう。
あれは他人事ではない。
自分の未来かもしれないのだ。
これほど恐ろしい媚薬が存在するとは思いもしなかった。
「ああ、だめええっ、いやああ──」
綾子は狂ったように拘束されている裸身を悶え狂わせる。
身体は少しも落ち着かない。
じっとしていることさえ苦痛だった。
少しでも気を紛らわせようと、必死に乳房を揺らし、腰を振る。全身を濡らす汗だけじゃなく、股間から飛沫のように愛液も飛び散った。
だが、なにをしても足りない。
時間が経つほど苦しさだけが増していく。
「ああ……なんとかしてえ……。狂ううう……狂いそう……あああっ……」
綾子は呻いた。
涙が頬を伝う。
だが、それでも歯を食いしばった。
大樹にだけは知られたくない。
こんな姿だけは見られたくない。
その想いだけが、崩れかけた理性を辛うじて支えていた。
「……仕方ないわねえ。じゃあ、お前たち、乳首だけは舐めてあげなさい。でもほかのところは駄目よ。それはこいつが口にしてからね」
男たちが争うように、左右から綾子の乳房の根元を引き絞るように掴み、乳首を唇で包んできゅうきゅうと吸う。
「ひいいいっ──」
綾子は悲鳴を上げ、身体を限界までのけ反らせた。
理性が吹き飛びそうになる。
乳首を吸いあげられ、掻痒感に襲われている乳房だけじゃなく、花芯までも灼けただれ、秘肉がぎゅうぎゅうと収縮して、またもや樹液が床に迸る。
「そんなに悶えていいの? 大樹が見て驚くんじゃないの? 自分の性奴隷がほかの男に責められて快楽によがる姿なんて」
伶奈がシャンパンを口にしながら言う。
正面のカメラが視界の端に映る。回り続けるレンズが、自分の醜態を容赦なく記録していた。
全身を冷たいものが這う。
しかし、もう止められない。
我慢などできない。
「ひああっ、い、いやよお──ああっ……でも耐えられない……ああ、た、助けて……ああ、誰か……誰か……」
唾液の滴る舌で左右から乳首をねっとりと舐めあげられ、綾子はまるで電流でも流されているかのように汗みずくの裸身をがくがくと振りたてた。
顔を振り乱して啼き悶える。
乳首から全身に走るのは、おぞましいどころか、狂おしいほどの甘美感だった。
大樹以外の男に責められて、これほどまでによがり狂う──。それは紛れもなく、大樹への裏切りだろうと思った。
「ああ、こ、こんなのいやああ──」
綾子は泣き叫んだ。
だが、乳首を責められ続け、やっと綾子は伶奈が簡単に乳首を責めることを許したのかわかった。
乳首の疼きが癒えるにつれ、さっきからぐじゅぐじゅと収縮しながら樹液を放出する花芯が、さらに強い刺激を求めて、これまで以上の渇望感とともに、熱く灼けただれだしたのだ。
そして、お尻の穴──。
さらに、そこが苦しい──。
痒みも焦燥感も、坐薬を入れられた量に比例しているとわかる。
花芯とクリトリス、そして、アナルへの渇望感が膨脹して、乳首の快感を飲み込んでいく。これこそが本当の媚薬の恐ろしさなのだと理解する。
痒みがさっきまでとは比べものにならないくらいに、クリトリスと花芯、アナルで爆発する。
「ああっ、痒いいい──もうだめえ──」
綾子は狼狽え、絶叫して、新たな苦悶に悲鳴をあげた。
「乳首はもういいわ。放っておきなさい。その代わりに、前と後ろに、さっきの坐薬を一個ずつ足してあげて。アンナは十個で毀れたけど、まだその半分だから大丈夫でしょう」
伶奈が笑う。
男たちが乳首から顔を離して、トレイからさっきの坐薬の容器を取り出して、一個ずつの坐薬を手に取り、前後にしゃがみ込んだ。
「いやああっ、お願い──もう無理です──やめてええ──」
すでに入れられた媚薬だけで、これだけ苦しいのだ。
さらに、媚薬を足されるなど、耐えられるわけがない。
屈服させられる──。
その恐怖が綾子を包む。
「んぎいいいっ、あああああっ」
前後に男たちの指が潜り込む。
坐薬を奥に押しこまれるとともに、淫らに指が動き、刺激を全身に迸らせる。
「んぎいいいっ、んああああっ」
綾子は身体を振りたてて、裸身を突っ張らせた。
真っ白いものが綾子を包み、衝撃が脳天に貫く。快美感が身体を圧倒していった。だが、落ちてこない。高いところで留まっている。
股間とアナルの疼きとともに、熱がさらに引きあがっていく。
信じられなかった。
男たちがやっと指を抜く。
「あらあら、達しちゃったの、綾子。いまの姿も撮影されたわよ。きっと大樹はあなたの裏切りに大喜びね」
伶奈の嘲笑の声が聞こえた。
「ああっ、そんな……」
綾子は激しく首を左右に振る。
「……さあ、言いなさい、綾子──。まずはガラス棒…….気持ちいいわよ。そこまではいいじゃない。でも、多分、我慢できなくなる。そのときは男たち……。もしかしたら、大丈夫かもしれないわ。とりあえず、ガラス棒は受け入れようか」
伶奈が言う。
それは悪魔の誘いのようだった。
ガラス棒で疼きと痒みの頂点を刺激してもらえる──。死ぬほどに気持ちがいいに違いない。
でも、おそらく耐えられなくなる。
そのときこそ、理性を失って男たちを求めてしまうかもしれない。
アンナもそうやって、堕ちたのだと思う。
大樹をもう裏切ることはできない──。
だから、ここで踏みとどまらねば──。
「だめええ──それはだめええ──もう触らないで──絶対にだめええ──」
綾子は絶叫した。
崩壊寸前の綾子の、それが本当に最後の抵抗だった。
「ふふ、そうなの? じゃあ、もう少し時間をかけようか。お前たち、筆で責めてあげなさい。でも、肝心な場所じゃなくて、ぎりぎりのところをね……」
伶奈が男たちに指示した。
トレイから筆が手に取られる。
男たちが屈み込み、左右の内腿──しかも、亀裂のぎりぎり外側を筆でくすぐり始める。
「いやあああっ」
綾子は絶叫した。
そのときだった。
後ろで物音がした。
綾子はびくりと身体を震わせる。
だが、なにが起きたのかわからない。
頭が熱で痺れている。
荒い呼吸を繰り返しながら、なんとか顔を向けた。
続いて複数の足音が雪崩れ込むように部屋へ入ってきたのだ。
「なによ、あんたたちは──?」
異変に気づいたのは伶奈も同じだったらしい。
伶奈が驚いて立ち上がって声をあげた。
綾子は涙で滲む視界を必死に凝らした。
黒ずくめの男たちが新たに部屋に入ってきている。
五人ほどだろうか。
すると、さらに解放されている出入口からからからと車輪の音が近づいてきた。
一台の車椅子が部屋の中を進んでくる。
綾子は息を呑んだ。
車椅子に座っているのは、西園寺宗一郎──。
西園寺グループ会長だ──。
「か、会長──どうしてここに──?」
伶奈が立ちあがったまま悲鳴のような声で叫んだ。
「ご苦労だったな。伶奈。ここから先の訊問は、わしが代わろう。もっとも、勝手なことをした罰は後で受けてもらうがな」
車椅子の宗一郎が伶奈を押しのけるように、綾子の正面に位置する。周りを黒服の男たちが立つ。
「か、会長……」
伶奈は絶句している。
おそらく、ここで宗一郎が登場するのは伶奈としても予想外だったのだろう。
「そのカメラを片付けろ。そいつらも追い出せ。伶奈だけが残れ」
宗一郎の指示で、ビデオカメラが脇にどけられ、革マスクの男たちが部屋の外に追い出された。
「ああ、会長……お祖父様……助けて……助けてください──」
綾子は掻痒感に苛まれている腰を激しく揺すりたてながら声をあげた。
ほんの少しもじっとしていられない疼きと痒みだった。
「黙れ、綾子──。まさか、お前に裏切られるとは思わなかったぞ。どうやら、ホールディング社の議決権を集めておったそうじゃな。いままでにどこまで集めた。白状しろ」
宗一郎が冷たく言った。
「か、株って……なんのことだか……。ああ、お祖父様、それよりも助けて──」
綾子は掠れた声を絞り出した。
だが、宗一郎は眉ひとつ動かさない。
「黙れ──。お前たち、この女に口を割らせろ。どこまで株を支配したのか吐かせるんじゃ」
宗一郎の怒声が部屋に響いた。
黒服の男たちが顔を見合わせる。
綾子は背筋に冷たいものが走るのを感じた。
「な、なにをするつもりよ──」
綾子は絶叫した。
「綾子様、申し訳ありません。会長のご命令ですので」
男のひとりが応じる。ほかの男たちはなにも言わないで、にやにやと微笑む、
背中に冷たいものが流れる。
さらに、彼らがゆっくりと綾子を囲み始めた。
男たちが上着を脱ぎだす。全員が脇のホルスターに拳銃を収めていた。だが、それ以上に綾子の目を奪ったのは、何人かが早くもズボンのベルトを緩め始めたことだった。
なにをされるのか理解してしまう。
「いやああ──やめてええ──」
綾子は必死に首を振った。
大樹を裏切りたくない──。
ただ、その一心だった。
自分がどうなるかではない。もう大樹だけは裏切りたくなかった。二度と失望させたくない。
「お待ちください、会長。綾子には大量の薬剤を使っています。犯すのであれば、中和剤を注入しないと、そのまま続ければ本当に危険です」
伶奈が横から声をあげた。
「それならそれで構わん。二度と、わしに反乱を起こせんようになるなら、それで十分じゃ。いい見せしめになる」
宗一郎は即答する。
綾子は目を見開いた。
そのときだった。
再び背後の扉が開く気配がした。
「……それは困るな……。俺の玩具だ。勝手に壊すな」
聞き覚えのある声だった。
「えっ?」
綾子は反射的に振り返る。
信じられなかった。
入口に立っていたのは大樹だった。
「大樹さん──」
伶奈が悲鳴のような声をあげる。
大樹はゆっくりと部屋へ入ってきた。
綾子の前に立つ。
「なんだ、お前は──? どうやって入って来た──」
宗一郎が叫ぶ。
同時に黒服の男たちが一斉に動いた。
大樹に複数の銃口が向く。
張り詰めた空気が部屋を支配する。
「だめええ──撃ってはだめええ──」
綾子は泣き叫んだ。