様々なNTRの刺客がいるこの世界で、俺は彼女たちの絶対的な王になる 作:柊咲
馬車の中から覗いて見える街の雰囲気は異様だった。
大勢の女が家屋から出て騒ぎ、美味しそうな匂いがあちこちから届いてくる。
「まるでお祭りだな」
「それはそうよ。捕まっていた子が帰ってくるなんて、今まで無かったことだもの。みんな嬉しくて仕方ないのよ」
全員が全員、笑顔を浮かべていた。
その領民たちを見つめるララフレアの表情も、いつも以上に感情がこもっていた。
「それにしても、あなたってあんなに強かったのね」
「そうか? 連中が弱かっただけだろ」
「いいえ、オーガは筋力だけなら他の種族よりもずっと上よ。ましてや人間族の男が素手で圧倒するなんて……。あなた、本当に人間族なの?」
「違う種族に見えるか?」
「んー」
俺の体を隅々まで確認するララフレアだったが、大きくため息をつく。
「見た目は普通の、身長の大きい人間族ね。角も尻尾も隠していないようだし。でも、そうなると余計にあの力が何処から出ているのか不思議で仕方ないのよね」
「幼い頃から狩りをしていたから、それで強くなったんだろ」
「なんだかそれ、野性の猛獣みたいな考えね。まあ、嬉しい誤算だから別にいいんだけど」
村にいた頃、村の連中に『王国に行けばお前程度の強者ごろごろおるわ!』と言われたから、自分の実力が世界でどの辺りの位置なのか気にしたこともなかった。
熊や狼、猪なんかには勝てるが人間の中では……。
だがここまで驚かれると、村の連中が言っていたことが本当かどうかも怪しくなってきた。
俺は、この世界でどれほどの強さなんだろうか。
今回の一件で余計にそれが知りたくなった。
「とにかく、あなたのお陰で三人を救えた。本当にありがとうね」
「ああ。これで俺を助けてくれた時の借りは返せたか?」
そう問いかけると、ララフレアはにこりと微笑む。
「んー、まだ少し足りないかもしれないわね」
「なに?」
「だから、また困ったことがあったら助けてちょうだいね。もちろん、食事や寝るとこは提供してあげるから」
要するに、まだここにいてくれということか。
行き場もないことだし、俺はそのお願いに頷いて答えた。
「と、着いたわね。さっきも言ったように、あなたに付いていたメイドたちは他のとこに当てる。これで自由の身ってわけね」
「それは助かる。これでゆっくり寝られ──」
「──ますね、マキシムさん!」
隣にぴったりくっつくリリアが幸せそうな笑顔を浮かべる。
いや、ゆっくり寝られなかったのは彼女たちがいたからじゃない、リリアが一緒のベッドで寝ていたからだ。
「ふふ、今夜からぐっすり寝られたらいいわね」
ララフレアは今夜のことを想像して笑いながら部屋へ戻っていく。
「マキシムさん、わたしこのままアイーシャちゃんの様子を見てきますね!」
アイーシャも俺たちと同じ城内の部屋を与えられるらしい。
俺のようにメイドが付きっきりってわけではないが、不便がないよう最善のサポートをするとララフレアは言っていた。
その後、彼女のいたシラリリ領に帰るかどうかは、ララフレアと向こうの領主の文のやり取り次第だそうだ。
「ああ、わかった」
「夜には戻ってきますから、一人で先に寝たらダメですからね!」
リリアは友人のもとへ走って行く。
その後ろ姿だけで、再会できたことが幸せなのだとわかった。
「一人行動か」
今までマリディナや他のメイドが開けてくれていた入口の扉。
自分の手で開け、与えられた部屋まで一人で歩いて行く。
そんな当たり前のことがなぜか新鮮で、少しだけ安心する。
「おかえりなさいませ、マキシム様」
「……」
そう思ったのに、部屋の扉を開けると彼女は部屋の中にいた。
まるで部屋にいるのが当たり前のように、メイド服を着て俺をジッと見つめる。
「なぜ、マリディナがここに? 俺は解放されたはずでは?」
「ええ、その通りです。ララフレア様からマキシム様の護衛の任は解かれました。今回の一件でメイドたちの中に、その事を反対する声もありません。信用されたということになりますね」
「じゃあ、なぜお前がここに?」
「これはあくまで個人的な意思です。メイドではなく、マリディナ・ガーデンとしての」
イスに座り、脚を組む。
「率直に聞きます。あなたは何者ですか?」
「何者とは? 俺は俺だ、お前らの言葉でいうなら人間族の男だ」
「ですね。だから不思議なのです。どうしてただの人間族の男がオーガを圧倒し、そして、蹂躙できたのか。普通に考えてありえません」
「ララフレアにも言われたが俺はこれまで普通に生きてきた。おかしいと言われても、俺にはお前を納得させる回答はできない」
それ以上の返事はない。
おかしいと言われても、これが俺の普通なのだから。
マリディナは少し考え、大きくため息をつく。
「あなたは本当に突然変異した人間族の男なのか、それとも、あなたがただ何も知らないだけなのか……」
「なに?」
「わかりました。これ以上この件について何も聞きません。あなたが想像以上に強かったからといって、やはり裏から女性たちを攫う男だとも言いません。元からそうする狙いであれば、とっくに私とリリア様が処女宮の結界の外へ出たときに行動しているはずですから」
「そうしてくれると助かる」
「ただ──」
マリディナは立ち上がり、手袋をはめる。
それはオーガとの戦闘の時にはめていた黒の手袋とは違い、メイドの作業の時にはめる白の布製の手袋だ。
「マリディナ・ガーデンとしての興味から来る要件は済みました。なのでここからは、メイドであるマリディナ・ガーデンとしての要件をさせていただきます」
「メイドとして?」
「マキシム様、壁に手を突いて立ってください」
「壁に? なぜだ」
「これは必要なことなのです。お願いします」
訳が分からないが、言われた通りにするしかない。
窓の側にある壁の前に立ち、両手を前に出す。
……トン、トン、トン。
壁と窓の外しか見えない中、マリディナの足音が聞こえる。
その音は少しずつ近付いてきて、俺の真後ろで止まる。
殺意はない。
俺を殺そうというわけではないらしい。
じゃあ、何を……。
そう思ったときだった。
「──なッ!?」
後ろから抱き着かれた。
リリアと同じ大きな胸の柔らかい感触が背中から全身に伝わる。
たったそれだけで、俺の体が熱くなっていくのがわかる。
「体、熱くなっていますよ。……どうかいたしましたか?」
「それは、こっちのセリフなんだが。何をしている、マリディナ」
「マキシム様が我々の味方だということはわかりました。ですが、男という生物は、自分の意思に反して体が勝手に暴走してしまう瞬間がある生き物だそうです」
「何を……」
抱き着いたマリディナの右手が、ゆっくりと俺の下半身へと這っていく。
「そしてその衝動はとあるモノが蓄積されたことが原因だそうです。ここへ来て数日、随分と溜まっているのではないでしょうか……?」
「つっ……マリディナ、何を」
「理性が崩壊し、自我を失い、女性を襲わないよう──メイドである私が、マキシム様のこれを解放してさしあげますね」
マリディナはズボンのチャックを下ろすと、体を熱くさせていた原因のモノを優しく握った。