様々なNTRの刺客がいるこの世界で、俺は彼女たちの絶対的な王になる 作:柊咲
──あれから数日が経った。
自由が許されるというのはなんて素晴らしい待遇なのかと実感する。
城内では一人で行動して、好きな時に外へ出て、領内を散策することもできるようになった。
「あっ、あれ、ララフレア様の客人の人間族の男!」
「ほんとだ! 初めて見たけど、大きいね!」
「あの人間族の男がマリアベルさんたちを救ってくれたんだよね!」
前までは俺が歩けば戸を閉め、風が吹く音が聞こえるほど静かになったというのに、今では俺を見ても誰も逃げない。
声をかけられることは、まあ、まだないが。それでも好意的には受け止めてくれているらしい。
これも領民にふれてまわってくれたララフレアたちのお陰だろう。
ただし。
それは若い女たちであって、年齢の高い女たちからは変わらず嫌悪感を剥き出しにされる。
男へ対する憎悪と嫌悪が染みついているのだろう。たった一度のお人助け程度では心を開いてはくれない。
だから結局、歩きやすくなったとはいえ一人では街を散策することは避けていた。
それに、マリアベル、カティリナ、エリシア、そしてアイーシャという男の被害者がいる以上、あまり表に出ない方がいいだろう。
せっかく心身ともに回復したのに、俺という男を視界に入れてトラウマを呼び起こしたらいつになっても回復しないだろう。
「本を読ませてほしい?」
リリアはアイーシャのもとへ。
マリディナたちメイドは日々の雑務に忙しくしていた。
何も予定の無い俺は筋トレを毎日欠かさず行う。だが、それで一日が過ぎるわけではない。数時間程度だ。
他にやることなんてない。
必然的に暇を潰す夢中になれる何かが欲しくなる。そして目を付けたのは、ララフレアのお気に入りの本たちだった。
ララフレアに頼むと、小馬鹿にするような笑みを浮かべる。
「あなた、本なんて読めるの?」
「読めはする。今まで避けてきただけでな」
「ふぅん、まあいいけど。この屋敷の書庫にある本ならどれを読んでもいいわよ。ただし、どの書庫にいるかは事前にメイドの誰かに言っておくこと。要件があったとき探させることになっちゃうから、そこだけは注意しなさい」
「いつもお前がメイドたちに怒られているのを見ているから大丈夫だ」
「うるさいわね」
そう言って、ララフレアは何処かの書庫の扉を開けて消えていった。
俺も捜しに行くか。そして目的の本を見つけたら、メイドの誰かに伝えよう。
俺も数ある書庫へ足を運ばせたのだが。
「あ……」
ふとすれ違った彼女は足を止める。
大勢いるメイドたちの中でも一番年齢が若く背の低いメリナという女。
140ほどの小さな背丈に、肩まで伸ばしたエメラルドグリーンの巻き髪。
大人っぽいというよりもまだ子供っぽい顔付きの彼女は、俺を見て気まずそうな表情を浮かべた。
「……マキシム様、ど、どうかなされたのですか?」
「いや、ララフレアに本を読ませてもらえることになってな。それで書庫を探し歩いていたとこだ」
メイドたちの多くは俺と普通に接してくれるようになった。ただ、メリナだけは変わらず俺と会話するのを避けようとしていた。
リリアと言い合ったのを気にしているのだろう。
今回も挨拶して終わり。
そう思ったのだが、
「ど、どういった書物をお探しですか?」
「ん? どういったのかか。特に考えてはいなかったから、探してみて、気になったのを手に取ろうかと思っている」
「でしたら、ご案内しましょうか……? えっとその、ここには多くの書庫があって、迷われるかもしれないので」
そこまでこの屋敷の廊下は複雑な作りになっているわけではないし、ここに数日だが住んでいるからなんとなくはわかった。
だから問題はないのだが。
「それにここには、メイド専用のお部屋もございますから。メイド長マリディナ様のお部屋に勝手に入ったとなったら……」
別に怒ったりはせず、ただ無表情のまま何時間も詰められる自分を想像して身震いする。
「それは嫌だな。でも、いいのか? 何か仕事があったんじゃないのか?」
「いえ、今は急な業務はございませんので」
「そうか。じゃあ、頼めるか、メリナ」
「かしこまりました。メリナ・リオッテがお案内させていただきます」
一礼すると、俺はメリナの案内で書庫へ。
部屋の天井まである本棚に敷き詰められた本の数々。
それに本棚に収まりきらなかった本は床に雑に積まれていた。
「女性の身だしなみ、女性のマナー講座、女性としての意識の作り方……なんか、女性向けばっかりだな。当然といえば当然だが」
「ですね。この書庫は女性向けの、領民でも読んだことのあるアジュミラルに流通している本が多くあります。そういうのでない方がいいのでしたら、他の書庫がいいと思います」
「なるほど」
次の書庫へ。
ただそこもお目当ての本はなかった。
次へ、次へ、次へ。
どうやらメリナも、どの書庫にどんな本があるのかまでは理解していないようだ。
確認した書庫が増えれば増えるほどに、メリナが申し訳なさそうに眉を垂れさせる。
「えっとえっと、申し訳ありません、次はたぶん、女性向けじゃないと思うので……」
「謝らなくていいさ。それに、こうして散策するのも楽しいしな」
「マキシム様……。ありがとうございます」
そう言ったメリナは、少し空けてから、
「ありがとうございます」
もう一度、なぜかお礼を言った。
「ん、どうした?」
「あ、あの、ずっと言おうと思っていたんです。ただその、言うタイミングを逃してしまって。マリアベルさんたちを助けてくれて、ありがとうございました。それと、これまでのご無礼をお許しください、申し訳ありません」
「別に気にしなくていい。俺が連中を許せなかったのもあるしな」
書庫の扉を開ける。
本棚に目を向けながら会話を続けた。
「あの三人とは、メリナは特に仲が良かったんだろ?」
「……マリアベルさんと、カティリナと、エリシアは、わたしの姉妹みたいなものなんです。ずっと一緒に育ってきて、そのまま、ララフレア様にメイドとしてお仕えすることになりました」
「ってことは、あの三人もメイドだったんだな」
「はい。それと……イーディアも。今回の件を起こして、自殺した彼女も、わたしたち姉妹のように生きてきました」