様々なNTRの刺客がいるこの世界で、俺は彼女たちの絶対的な王になる 作:柊咲
「アリシア隊長!」
リリアが名を叫ぶ。
明らかに他のペガサスよりも装飾品で着飾り風格を出しているペガサスに乗る女。
随分と恨みを買っているらしい。
周りのペガサスに乗った女どもは不安や恐怖、それと少しだけ興味といった感情を表に出しているのに、アリシアという女だけは俺に向けて明らかな敵意を向けてきていた。
「リリア、どうしてその人間族の男をここへ連れて来た?」
「この人は、人間族に捕らえられたわたしを助けてくれたんです!」
「……それで、恩返しにここへ招待したと?」
「実は、わたしを助けたことで他の人間族に狙われて」
上空でペガサスに乗る女たちが何かを話していた。
だけど地上にまではその言葉は聞き取れない。
「こうなることも全てが人間族の狙いだったとは思わないのか?」
「ど、どういうことですか?」
「その男と他の人間族の男は最初から敵対していなかった、グルだった。わざと絶体絶命の状況を演出して、そこを颯爽とその男が助け舟を出す」
「そんな!」
「情にほだされたお前はその男を結界内へ招き入れる。もちろん内側から多くの女性を誘拐する為。一人より二人、二人より大勢の女性。違うか?」
「違います! こ、この人は、本当に──」
「──その男だけが他の男どもと違うと?」
リリアは何か言い返そうと口を開くが、言葉が見つからず黙ってしまった。
状況が掴めない。
ただ言えるのは、俺を助けたことでリリアが責められているということ。
「すまない、俺が何か悪いことをしたというのなら謝る。だから彼女を責めないでくれないか?」
そう問いかけた、明らかにリーダーであろうアリシアという女に。
「口を慎め、人間族の男」
だが、アリシアは俺への敵対心を解くことはない。
むしろ強めた。
彼女は右手を上げる。
その瞬間、上空を舞うペガサスたちが移動する。
俺を囲うように四方八方へ。
「マキシムさん、逃げてください!」
リリアがそう叫んだ。
「もう、遅い──ッ!」
一斉に降り注ぐ槍の雨。
拳を握り警戒する。だが、その槍のほとんどが俺に向かって飛んでこない。
数歩離れた周囲。
当てる気がない? 練度不足?
そんな疑問を抱いたが、
『女神の雷を──』
周囲から響く大勢の声。
ペガサスに乗った連中が手を合わせ、目を閉じ何かに願う。
『サン・エレイ!』
「ぐああああああ……ッ!」
足の間隔が無くなり片膝を突く。
そして足の間隔はすぐに全身へと変わり力が入らなくなった。
それだけでなく体が熱い。
火あぶりとは違う。だが、それに似た全身を襲う痛み。
無数の針で全身を刺されているようだった。
「こ、れは……!」
「マキシムさん!」
駆け寄ってこようとするリリア。
だがペガサスに乗った女どもが彼女を取り囲んで止めていた。
痛みと痺れに堪え立ち上がろうとするが、全身が言うことをきかない。
「無駄だ。処女宮の結界内で男は無力だ。女性を道具のように扱おうとしたことを悔いて、死ね……」
「ぐ、ああああぁ……ぐ、うッ、うううう……ッ!」
段々と地面に流れる雷の力が増していく。
脳が焼け、全身の毛穴から血が溢れ出しているような錯覚。いや、これは錯覚なのか。それを確認する余裕はない。
なんとかしないと、このままでは……。
周囲でぶつぶつと何かを唱えている女たちがこの謎の減少を引き起こしているのは間違いない。そして、地面に突き刺さった槍から槍へと電流が流されているのも理解した。
だがそれをなんとかしようにも体が言うことを聞かない。
そもそも一本の槍をなんとかしたところで現状を打開できるのか。できたとして、その前に俺の体が壊れる。
このまま死ぬのか?
その問いかけを、鼻で笑って一蹴する。
「ふざ、けるな……ッ!」
「──なッ!?」
痺れだけだったら全身は言うことをきかなかったかもしれないが、痛みのお陰か、死ねないという意思か、両足に微かに力が入った。
立ち上がり、片足を大きく前に出す。
「俺は、死なない……まだ……まだ!」
右、左、前へ。
地面に突き刺さった槍に手を伸ばす。
足下から溢れ出す全身を襲う電流とは比べものにならないほどの痛みが槍を持つ右手に集中する。
焼けるような痛み。
それでも、その手を離すことはない。
「ぐっ、う……ああッ!」
地面から槍を引き抜く。
それを構え、アリシアが乗ったペガサス目掛けて投げる。
「な……ッ!?」
寸前のとこで避けられた。
それでも余裕ぶっこいていたアリシアの慌てる顔が見れた。
もう一本、次は確実に──。
だが、俺の体力は限界に来た。
「立っているのだって不可能なはずなのに……この男、本当に人間族の男なの?」
朦朧となる意識の中で声が聞こえる。
どうやら、一矢報いることはできたらしい。
それだけでも圧倒的な敗北にはならなくて済んだか。
「くそ、もう……」
ゆっくりと瞼が閉じていく。
おそらく、ここで閉じたら二度と開くことはないと本能が理解している。
それでも閉じようとするのに逆らえない。
俺は、瞼を──。
『爆ぜなさい──ラ・アレフシア!』
槍の次は赤い花が周囲に咲き誇る。
それらは勢いよく爆発して、俺ごと槍を吹き飛ばした。
吹き飛ばされた痛みはあるが、お陰で全身の痺れも針に刺されたような痛みも消えた。
そして顔を上げると、口元を扇子で隠したドレス姿の女が俺を見下ろしていた。