様々なNTRの刺客がいるこの世界で、俺は彼女たちの絶対的な王になる 作:柊咲
「これはだな」
「あっ、ピクッてした! なにコレ、面白い!」
今まで当然のように感じていたモノが、この女性だけの世界では変わったモノになってしまう。
単純に興味を抱かれているだけだと思うが、これについてなんて説明したらいいのか。
そもそも説明して理解できるのか。怖がられてしまうのではないか。そんなことを考えていると、
「もう、離れて、離れてくださいまし!」
ぺしゃんこに潰されていたメリナが間に割って入る。
「そんな大勢で質問責めされると、マキシム様が困ってしまいますわ! それに温泉に入らず立ち話していたら体も冷えてしまいます!」
「あー、それもそっか。久しぶりの温泉に浸かりながら、ゆーっくり聞こうっと!」
メリナの言葉を受け各々が去っていく。
楽しく談笑しながら髪や体を洗うものに、温泉に浸かって気持ち良さそうにする者。
きっと温泉自体も久しぶりだったのだろう、各々が幸せそうな表情を浮かべていた。
「ありがとうな、メリナ」
「いえいえ。それにしてもまったく、騒がしいったらありませんわ!」
メリナは視線を少し下げ、それを見る。
「……みんながいるとこでは我慢してくださいまし」
小さな声でそう言うと、俺たちも温泉へ。
少し熱いぐらいの温度のお湯は、微かに白く濁っていた。
効能なんかはよくわからないが、気持ちいいのはなんとなくわかる。
それから、大勢での温泉を楽しんだ。
自己紹介されたが50人もいる以上、全て覚えることはできないが、それでもここにいる者たちは男である俺に抵抗はないようだ。
そして温泉を出ると、それぞれが自分の家へと帰って行く。
夜空の下。俺とメリナも、温かくなった体が夜風に吹かれて冷えていくのを感じながら帰路につく。
「夜は少し冷えるな。メリナ、寒くないか?」
「はい、大丈夫です。あっ……」
隣を歩くメリナは、前を見たまま一歩こちらに寄る。
「少しだけ、ほんの少しだけ、手が……寒い気もしますわ」
「手が?」
「は、はい! これだと、家に着く前に凍えて死んでしまうかもしれません」
「そんなにか!?」
そこまで寒くはないんだが。
すると、メリナは視線を下げたまま俺の手に自分の手をちょこんと触れる。
「……寒いですわ」
弱々しい声を漏らしたメリナ。
そういうことかと、俺は彼女の手を握った。
「あっ……」
「これで凍え死ぬことはなくなったか?」
「は、はい! いえ、やっぱり片手だけだとまだ」
「両手か? それだと歩けないだろ」
「じゃ、じゃあ、これで」
俺の大きな手をメリナの小さな両手がギュッと握る。
「これなら、マキシム様の邪魔になりませんわよね?」
「ああ、そうだな」
「では、このまま……」
メリナは嬉しそうにしながら俺の隣を歩く。
「これでは、かつてわたくしが軽蔑していた女の子たちと同じですわね」
「ん、何がだ?」
「イーディアやリリアのことですわ。男性は敵、男性は怖い存在。そうやってずっと言われて育ってきたから、あの子たちみたいに男性を……その、愛おしく思うという感情を軽蔑していましたの」
確かに初めて会ったメリナは俺にもそうだったが、俺を信じて慕ってくれるリリアに対しても敵意を剥き出しにしていた。
そんな彼女が今では俺の側にいて支えてくれている。
メリナは大きなため息をついた。
「それが今では彼女たちのように……いいえ、彼女たち以上に、その感情を持ってしまうだなんて」
「なんて言ったらいいのかわからないが、それは悪いことなのか?」
「悪いことではないと思います。ただ、前までのわたくしが今のわたくしを見たら、きっと軽蔑するだろうなとふと思ったのです」
「きっとお嬢様口調で怒鳴っていただろうな?」
「も、もう、そんなことしませんわ、きっと!」
楽し気に笑うメリナは掴んだ俺の手に力を込め、小さく言葉を漏らす。
「本に書いていた通り、女性という性別は男性に惹かれるものなんですわね……」
「ん?」
「いえ、なんでもありませんわ! それより明日から何をしましょう? まずはどんなお野菜を育てます?」
「そうだな。どんなのがいいかわからないから、メリナの希望は?」
「わたくしはですね──」
それから俺とメリナは今後の話をしながら家に帰った。
屋敷とは違い小さな家の中。
村での生活を思い出すが、あの場所よりもずっと清潔感がある。
そして就寝時。
「……メリナ、ベッドは五つあると思うんだが」
「ええ、そうですわね」
「なのに、一緒のベッドで寝るのか? このベッド、そこまで広くないよな?」
寝室には元の住民であった彼女たち用にそれぞれベッドがあった。なので一人一つのベッドを使って寝たらいいと思うのだが、就寝準備を終えたメリナは俺が寝ようとしていたベッドで横になる。
「夜はとっても寒いんですの。手とか足とか冷えて、だからこうして一緒に寝た方がいいのです」
「確かに温かいは温かいが……」
温かいというよりも熱い。
これはリリアと一緒に寝ていたときと同じ現象だ。
このままではまた俺は寝れない日々が来るのではないか。
「やっぱりその、わたくしではダメですの……? リリアは良くて、わたくしは……」
月明かりに照らされたメリナが潤んだ瞳で見つめてくる。
ベッドで俺の横に寝たまま動こうとはしない。
これはわざとやっているのか。俺が断れないのを知って。
「……駄目とは、言っていない」
「じゃあ、一緒に寝てもいいんですの!?」
「……うむ」
「ふふ、良かったですわ! じゃあ、明日から忙しくなるので早く寝ましょう!」
俺の腕をギューッと掴んだまま、メリナは目を閉じた。
漏らせないため息を飲み込み、腕を挟む胸の柔らかさを忘れようと目蓋を力一杯に閉じた。