様々なNTRの刺客がいるこの世界で、俺は彼女たちの絶対的な王になる 作:柊咲
──ここは大きな鳥籠の中。
たくさんの鳥がいて、たくさんの餌がある。
毎日が平和で、不便なことなんて一切なかった。
けれどそれだけ。
平和なのはいいことだけど、退屈な日々。
昨日の景色を今日も見た。
一昨日の景色も今日も見た。
きっと、明日見る景色も今日も見たはずだ。
どんなに遠くまで飛んでも見える景色には限界がある。
それでも鳥籠を出られれば、まだ見ぬ景色がそこに広がっていた。
窮屈な世界に縛られた鳥たちは、自然と鳥籠の外に憧れを持つようになった。
だけど、鳥籠から出ることは許されない。
周りの鳥たちも『鳥籠から出たら駄目!』と言う。
それでもやっぱり外の世界がよく見えた。
だって、ずっと先まで空が広がっているんだから。
手を伸ばせば、足を踏み出せば、羽ばたいてみたら、まだ見ぬ景色がそこに広がっている。
だから勇気を振り絞って、一羽の鳥は羽ばたいた。
──そして、その鳥は簡単に鳥籠から出られた。
どこまでも続く空、見たこともない姿の鳥たち。
鳥籠の外にいた鳥たちは、優しく声をかけてくれた。
そしてその声に導かれるように付いて行った。
憧れた外の景色。
だけど外に出て初めて知る、この鳥籠の中は退屈だけど安全だったんだと……。
「みんなの言う通り、鳥籠の外はやっぱり怖いとこでした」
おそらく夜。
寝袋の上に座ったリリアはそう言った。
悲し気な表情に、全身は微かに震えていた。
「あのまま捕まっていたら、今頃わたし……」
そこまで言ってから、リリアは無理に笑ってみせた。
「でもでも、外の世界は怖いだけじゃなかった! こうして、マキシムさんのような優しい男の人に出会えましたから!」
それは本心なのか。
きっとそうだと思う、というより、そうであれば嬉しい。
「俺も、リリアと出会えて良かった」
「ふふ、良かったです、そう言ってもらえて」
両脚を抱えて丸くなるリリアは、頬を赤く染め、ピンク色のショートカットと全身を揺らす。
「マキシムさん、傷は大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない。ただ外の景色が見えないのはな」
「空気も悪いですしね。早くここから出られたらいいですが、たぶんララフレア様次第かなって」
「ララフレアって、あの女のことか」
一応だが俺を助けてくれた女だ。
「だけど、ララフレア様がマキシムさんの味方をしてくれたのか不思議です。なんだか嫌な予感がするんです」
「嫌な予感?」
「ララフレア様は少し……というより、かなり変わった方らしくて。頭が物凄く良い方という評判以上に聞くのが、とーっても腹黒いらしいんです」
「腹黒い……」
「そんな方が何の理由もなく人助けを……それも、人間族の男のマキシムさんを助けてくれたのが不思議で。何か助けてくれた理由があるんでしょうか」
俺を助ける理由か。
まあ、見当もつかないな。
「考えていても仕方ないですよね! 疲れたから、もう寝ましょうか!」
漏らした言葉がどれも不安を煽るものだからなのか、リリアは話を止めて寝袋の中に入る。
寝るといっても何もない床に寝るのもな。
「マキシムさん、あの……」
「どうした?」
寝袋から顔を出したリリアが手を伸ばす。
「手を、繋いでもいいですか……?」
「手?」
「……その、目を閉じたら、体が震えちゃって」
笑ってみせたが、きっと村での光景を思い出すのだろう。
俺は鉄格子に背を付け座ると、リリアへ手を伸ばす。
「ああ、それで落ち着くなら」
「あ、ありがとうございます……」
温かいリリアの手。
リリアは俺の手の平を指先で押したりこねたりする。
「マキシムさんの手、大きいですね」
「そうか? まあ、リリアのに比べたらな」
「大きな手。すっごく、落ち着きます。これで、ぐっすりと寝られると思います」
「こんな硬い床でか?」
「この寝袋、意外と柔らかいんで大丈夫です」
あの、とリリアは言う。
「助けてくれて、ありがとうございました」
「何度も聞いたぞ」
「それでもです。何度でも、言いたいんです……」
「ふっ、じゃあ、何度でもどういたしましてって言ってやるよ」
「はい、言ってください。じゃあ、おやすみなさい、マキシムさん」
「ああ、おやすみ、リリア」
リリアは目を閉じた。
だから俺も目を閉じる。
今日一日で多くのことが起きた。
それに、見える景色も変わった。
明日からどうなるかわからない。現状は最悪に近い。それでも、今までの退屈な日々とは違い予想することのできない明日だから、楽しみに思っていた。
♦
「起きなさい」
遠くから声が聞こえた。
「起きなさい、二人とも」
目を開けると、そこにはララフレアがいた。
「ん、お前は……」
「おはよう。あなたへの処罰が決まったわよ」
寝ぼけた頭のまま、言葉の続きを待った。
ララフレアは口元を扇子で隠したまま、俺をジッと見つめる。
「ごめんなさい。残念ながら、死罪という決断が下されたわ」
「え、え……?」
ボーっとしていたリリアの頭が一瞬で覚ます。