様々なNTRの刺客がいるこの世界で、俺は彼女たちの絶対的な王になる 作:柊咲
それからも彼女たちはそこにいた。
気を使ってなのか監視している雰囲気は出さないよう壁際に並んで立つようなことはしないでくれているが、視線だけはずっと俺に向けられていた。
一秒一秒が長く感じる。
だから断れるだろうと思いながらも、マリディナに街中を見てみたいと提案した。
今まで自分が育った地とは違うここを、女という存在を少しでも知る為に。
すると、あっさり許可を得られた。
もちろん一人でというわけにはいかなかった。
リリアは所属する領を変更する手続きかなんかで目の前に書類を置かれ監視されていたので、マリディナを含めた三人のメイドに付き添ってもらい街中を散策することに。
「ここは五領花《ゴリョウカ》の一つ、ララフレア様が治めるリーデカルラ領でございます」
「随分と賑わっているんだな。人も大勢いる」
「リーデカルラ領は他の五領花よりも人口が多いとされていますから。もちろん、中央都市と比べたらそこまで多くないですが」
「中央都市?」
「マキシム様が最初に上陸した地と伺いました。牢屋のあった」
「ああ、あそこか」
このアジュミラルという場所はよく花で例えられているから、それに倣うなら蜜のある中央部分のことか。
「なんとか領って呼び名じゃないってことは、あそこは誰かが管轄している領ってわけではないのか?」
「中央都市は……」
マリディナは何か言いかけ、その口を閉じた。
「今は聞かなくてもよろしいかと。マキシム様はララフレア様の客人ですので、今すぐに中央都市へ行かれることはないかと思いますので」
「なるほど」
つまり、このアジュミラルにとって重要な場所で、余所者で危険人物である俺には詳しいことは話せないと。
それなら仕方ない。
無理に聞きたいわけでもないからな。
「それにしても、こんなにも男ってだけで気味悪がられることになるとはな」
街を歩きたいと言ったときからある程度は予想できていたが、街の雰囲気は想像以上だった。
俺を視認した瞬間に、笑っていた表情を一瞬にして強張らせる女もいれば、嫌悪感剥き出しにして睨んでくる女もいる。
食事時ということもあってか開放的だった商業エリアは、俺という男の登場で一瞬にして焼け野原のように静まり返る。
今朝、初めてここへ来たときに見た若い女はそうでもなかったが、こうして歩き始めてから、その若い女たちとは会えていない。
「教育が行き届いていますから。男は悪、男は怖いものと。でないと、リリア様のように処女宮の結界を出て行こうとする女性が後をたちません」
「なるほど」
そこは男とか女とか関係ないんだな。
年配の村の住人が何も知らないガキに『あの猛獣は危険だから近寄るな』と注意した感じか。
「だが、中央都市の女どもはあまり怖がらなかったな。恐怖や嫌悪感よりも、興味……に近い視線を感じた」
「中央都市の女性たちは、それぞれの領で育った子とは違って危険から離れて育ちましたから」
「結界と隣接していない離れた中心地だからか?」
「勇者と魔王の物語を読み聞かせたところで、作品に出てくる空想の魔王を怖がったりする者なんていません。怖がるのは実際に魔王を見た者だけ。それと同じで、中央都市で育った女性の多くは、生まれてから一度も男という存在を見たことも、結界の外で仲間たちがどんな仕打ちを受けているかを知らない者がほとんどなのです」
「だから俺を見ても、怖いというよりも興味の方が勝ったわけか」
「ええ、そうなりますね」
逆に、ここの連中は男という存在がどんなに恐ろしいもので憎むべき者だと目の当たりしていて、理解しているということだろう。
どんなに歩いても変わらない静まり返った街。
そんな現状を見て、マリディナは足を止める。
「おそらくどこまで行っても誰もいないと思います。お城へ戻りましょうか?」
「そうだな。すまないな、俺の我が儘に付き合わせて」
「いえ。ララフレア様から言われていますので」
「ララフレアから?」
「はい、マキシム様に街のこと、それからそこで暮らす女性たちがあなたを……男をどう感じているかを知ってもらうようにと」
「どう感じているか、か……」
男という存在は女から憎まれている。
それはよく伝わった。
そして、ここにいる以上はずっとこういう扱いを受け続けるということ。
──俺はこれからどうしたいのか。
リリアを助ける為とはいえ、流されるままここに来てしまった。
村に戻りたいかと聞かれたら別にそこまでではない。村自体に愛着があったわけでもない。
ただ村長や村の住人、ユウガには会いたいと思う。
が、あんなことをしておいてどの面下げて帰るというのか。そもそも、おかしくなってしまったあの村に帰って今まで通りの関係に戻れるか。
おそらく無理だろう。
俺は、どうしたいのだろうか……。
「では、戻りましょうか」
「ああ」
早く決めるべきだろう。
俺という存在がいるだけで、街の女たちを生き辛くさせているのだから。
♦
それから夕食へ。
リリアは一緒にいたが、ララフレアはその場にはいなかった。
まだ聞けていないこともあったのだが、予定が合わないなら仕方ない。
そして当然のように、食事のときもマリディナを含めメイドたちは側にいた。
まるで王様のような扱いだが、彼女らの真意を聞いた今となってはただの囚人と変わりはない。
「……これ、寝るときもなのか?」
「ええ、もちろん」
夜、ベッドにて。
高そうなベッドに喜ぶべきなのだが、少し離れたとこに置かれたイスに座るメイドたちが気になって喜ぶことなんてできない。
寝るときぐらい一人でいさせてくれ……。
とも思うが、寝静まった時間帯がもっとも悪さしやすい時間帯なのは俺でも想像できるから、この対応は当然といえば当然なんだが。
「武器も持っていない男相手に五人も見張る必要あるのか? お前たちにも、ララフレアのような力があるんだろ?」
あの爆発する花みたいなのを生成できる力。
あれがどういう原理で使えているのかは俺にはわからない。
王国の人間の中には”魔法”という力を使える者もいたらしいが、それと同じだろうか。
どちらにしろ、魔法と似た力があるのであれば、魔法を使えない俺を見張る必要なんてない。
そこら辺にばら撒き、俺が怪しい行動をしたら起爆させればいいだけだ。
「あれは、五領花《ゴリョウカ》の領主であるララフレア様だけの力です。女性だからといって全員が使えるわけではありません」
「そうなのか?」
「詳しくお話しできませんが。だからといって、戦う術が何も無いわけではありません、なので変な気は起こさないようにお願いします」
「ああ」
見張られているのはあまり気分がいいものではない。
ただ、俺が変なことをしなければ彼女たちは何もしてこない。
会話だって普通にしてくれる。まあ、他のメイドたちに話しかけてもほとんどの会話をマリディナが遮って代わりに返事してくるんだが。
そういうところも徹底しているのだろう、メイドがいらんことを俺に話さないようにと。
仕方ない、とにかく今日は寝よう。
そして明日、ララフレアから詳しい話を聞いて今後のことを考えよう。
──コンコン。
そう思ったときだった。
扉がノックされ、開けられる。
「こんばんは、マキシムさん!」
部屋の中に明るい声が響いた。
いつもの二の腕と太股を出した軽装とは違い、長袖のピンク一色のパジャマ姿。
胸元のボタンをいくつか開けているから大きな胸が目に入り、村で起きた全身が熱くなるような衝動に襲われる。
「リリアか、どうした?」
「えっとですね」
リリアはちらっとメイドたちを見る。
そして俺が横になろうとしていたベッドの側に立つと、そこに自室から持ってきた枕を置く。
「今夜も一緒に寝たいな……なんて、思いまして。……えへへ」