様々なNTRの刺客がいるこの世界で、俺は彼女たちの絶対的な王になる 作:柊咲
「一緒に?」
「はい。まだその、一人で寝るのが怖くてですね」
村でのことがトラウマになっているのだろう。
ただ理由はそれだけではないらしく、マリディナたちの方へちらちらと視線を送る。
「それにそれに、こんなメイドさんたちに見張られながら一人で寝るの、マキシムさんも緊張しちゃうんじゃないかなって」
「それはそうだが」
「ダメ、でしょうか……?」
潤んだ瞳で聞かれると断りにくい。
マリディナたちに視線を送ると、彼女は大きくため息をつく。
「どうぞ、ご自由に」
とだけ言った。
「俺も構わない」
「本当ですか!? じゃ、じゃあ、その……失礼しまーす」
ベッドの中へとリリアが潜り込んでくる。
さっきまで広すぎだと感じていたベッドも、リリアが隣にいると少し狭く感じる。というよりも、リリアが俺にぴったりくっ付いているから空きスペースは一人で寝るときとほぼ変わらない。
「マキシムさん、あったかい……」
「いやこれ、むしろ暑くないか?」
「そんなことないです! こうやって、ギューってするとあったかくて落ち着きます!」
抱きしめられた腕に力が込められる。
やはり温かいよりも暑い。
それに押し付けられた胸の感触が、俺の全身を余計に熱くさせる。
なんだこの感覚。
村の時にも感じた。いや、それ以上に喉が渇く症状。
まるで熱でもあるみたいだ。
「どうかしましたか、マキシムさん?」
「いや、なんでもない」
リリアが喋ると吐息が首筋にかかる。
彼女は俺の異変にも気付かず、嬉しそうな表情を浮かべながら目蓋を閉じた。
「今日もぐっすり眠れそうです。おやすみなさい、マキシムさん」
「ああ、おやすみ」
意識しないように強く目蓋を閉じる。
けれど脳内は右腕に押し付けられた胸の感触に持っていかれる。
本当に、なんなんだこれは……。
これが男には無い、女だけが持つという力だというのだろうか。
意識を無理矢理に別の方へ持っていき、俺は自分自身に眠れ眠れと何度も暗示をかけた。
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「マキシム様、こんなにも天気のいい朝だというのに随分と暗い表情でございますね。昨夜はよく眠れなかったのですか?」
「……そんなとこだ」
「まあ、それは残念。何かベッドメイキングに不手際でもございましたか?」
「気付いていて、わざと聞いているのか?」
「いいえ、別に」
──次の日の朝。
朝食時にはいなかったララフレアに部屋へ呼ばれ、彼女のもとへ向かう途中、前を歩くマリディナが表情も変えず聞いてくる。
俺のことを心配そうにしている口振りだが、理由に気付いていてあえて聞いているのだろう。
「それに対して、リリア様はとても清々しい表情をしていましたね。よっぽどマキシム様と一緒に寝られて安心できたのでしょう。これからも毎日、一緒に寝たいそうですよ?」
「なっ……そ、そうか。まあ、村でのこともあったからな。一人で眠れるようになるまでなら」
「……彼女が一人でも眠れると言ってくれることは、今後一切ないと思いますが」
「何か言ったか?」
「いえ、なんでも」
そんなやり取りをしながら長い廊下を歩く。
初めてこのリーデカルラ領の城に来たときも思ったが、ここは無駄に広いな。
ここに住んでる奴もララフレアやメイドたちだけで、一階と二階、それと屋上とあるが使われていない部屋ばかり。とはいえ、その空き部屋のほとんどが書庫となっているらしい。
ララフレアは本を読むのが好きらしく、暇さえあえば何処かの書庫に入り浸るのだとか。
どの書庫にいるのかメイドたちに言わず勝手にいなくなるから、彼女を探すときに全部の書庫を確認しないといけないのが面倒だとメイドがぼやいていたのを耳にした。
──コンコン。
どうやら目的の部屋に着いたらしい。
マリディナがノックをする。
「ララフレア様、マキシム様を──」
そこでマリディナの言葉が止まる。
部屋の前で固まるマリディナを見て、俺も部屋の中を覗く。
「んっ、あ、そこ……はあっ、ん……メリナ、いいわよ」
「れろっ、れぇろっ、ちゅ……は、はい、ララフレア様……っ!」
そこにいたのは下着姿のララフレアと、昨日リリアに怒りをぶつけていたメイドのメリナという少女だった。
メリナはララフレアの目前で床に膝を突き、イスに座ったララフレアの両脚を持って下半身へ顔を寄せる。
「ララフレア様、気持ちいい……ですか?」
「ええ、とっても……あんっ、そこいいわ。もっと、舐めて……?」
「はい、舐めさせていただきます、ララフレア様……!」
俺からは背中しか見えないメリナは足先から這わせた舌を太股へ、そして股間へと移動させる。
ララフレアはその奉仕とも呼べる行為を受け恍惚とした表情を浮かべていた。
が、俺とマリディナの視線を感じると、クスッと笑みを浮かべる。
「メリナ、お客さんが来たみたいだから今回はここまでよ」
「え、あ……」
振り返ったメリナは唇を艶やかに濡らし、頬を真っ赤に染める。
そして三秒ほど硬直すると、軽く俺たちに会釈して逃げるように部屋を出て行く。
「……こほん。ララフレア様、マキシム様をお連れしました」
「ありがとう。マリディナは下がっていいわよ」
「いえ、ですが」
「二人で話がしたいの。下がっていいわ」
「……かしこまりました」
俺と主を二人っきりにすることを心配したマリディナだったが、ララフレアに強く言われ、一礼すると部屋の扉を閉める。
ここはララフレアの寝室。
下着姿だったララフレアは、ゆっくりと脱いでいたドレスを着ていく。
「何してたんだ?」
「何って、ああ、さっきの。あれはただのスキンシップよ。従者は服従を誓う主人の身体を隅々まで舐めて気持ち良くさせる。これは愛撫とも呼ばれる行為ね。男同士ではそういうことしないの?」
「……ああ」
「そう、お互い気持ちよくなれて幸せな行為なのに。まあ、私がしてあげたことはないけど」
「主人だからか?」
「ええ、もちろん。一人にしてあげたら全員にしてあげないといけなくなるでしょ? だからしないの、そこの扉に耳を付けて聞いているマリディナでさえもね」
振り返る。
閉じた扉は静かだったが、どうやらマリディナが盗み聞きしているらしい。そして、さっきの行為をあのマリディナもしているのか。
無表情で真面目な彼女も、主の身体を舐めて頬を赤らめるのか。
少し見てみたい気もあったが完璧タイプの彼女のことだ、そんな油断した姿を見せてくれることはないだろう。
ドレスを着たララフレアはイスに座る。
金色の長髪を靡かせ、肘置きに頬杖する。
「それと、ああいう行為をさせるのには他にも理由があるの」
「他に?」
「私に依存させること。何かに依存させると、他の何かに目が向かないでしょ? そうすれば、わざわざ危険を冒してまで処女宮の結界の外に出ようなんて考える子もいなくなる」
「そういうものなのか?」
「ええ、そういうものよ。ここを出て行こうとする子の多くが”鳥籠の中での生活に飽きたから”なの。だからここでの生活を飽きなければ、ここでの幸せを捨てたくないと考えさせれば、自ずと外の景色に憧れなくなる。……もちろん、絶対ではないのだけど」
確かに目の前に幸せがあるのなら、ずっと遠くにある幸せを無理して掴もうなんて考えないか。
「実際、リリアだって、もう外に出ようだなんて考えないでしょうね」
「リリアが? 彼女に関しては、外で怖い思いしたんだから当然なんじゃないか?」
「もちろんそれもあるでしょうが……まあ、当人が何のことだがわからないのなら、無理に他人が教えてあげる必要もないわね」
一人で問いかけ、一人で回答を導き出し、一人で納得された。
会話相手の俺は謎にもやもやしているというのに。
「にしても、私の下着姿を見たのに表情も変えないなんて心外ね。そんなにあなたから見て私の下着姿は魅力的に映らなかったの?」
「ん? いや、そういうわけじゃない。ただ何をしているのかが気になって、そっちに意識がいっただけだ」
「あらそう、それならいいわ。リリアにしか反応しないのかと思ったわ」
「なに?」
「昨夜は随分とお楽しみだったみたいだから。メイドたちがボヤいていたわよ?」
「お陰様で寝不足だがな」
「ふふ」
イスに座るよう促される。
そしてようやく本題に入れるようだ。
「それで、俺をここに呼んだ理由を聞かせてくれるか?」