BIOHAZARD-PALADISE・LOST- 作:秋乃楓
リナが拘束されてから約6時間後。
大きな物音と共に開かれた理事長室の扉、それを開けたのはレイラで理事長であるフレイヤへ詰め寄った。
「どういう事ですか!?リナを拘束しただなんて...!! 」
「...彼女は事実無根である集団感染事件を引き起こし、数多の生徒を危険に晒し...挙句に私の事を愚弄した。その代償です 」
「ッ...!! 」
「よって2週間と10日の謹慎処分とします。彼女は留学生であり在校生ではないという事を配慮した適正な処分です......この事実は例え抗議した所で覆りませんよ 」
「ですが私や他の生徒も前にバケモノを見ました!!アレはどう見ても人間なんかじゃない...それにリナが引き起こしたっていう証拠は有るんですか!? 」
「...戻りなさい。貴女の下らない話を聞いている程、私達は暇ではないのです 」
冷たくあしらわれたレイラは唇を噛み締め理事長室を後にする。そこにはクレアの他に
カイルが居て2人もまたリナの拘束に対し異を唱えていた。彼女の様子を見たクレアは自ずと口を開く。
「どうだった? 」
「ダメ...聞く耳を持ってくれなかった 」
「リナ...どうなっちゃうんだろ? 」
「2週間と10日...それまでリナは監禁されたまま。それに何処に居るのかなんて検討もつかない 」
「そんな...... 」
クレアが塞ぎ込んでしまうと今度はカイルが口を開いた。
「...俺達だけで島の外へ出ないか? 」
「ちょっと...まさかリナを見捨てる気!?そんなのダメ、絶対ダメ!! 」
クレアが詰め寄るがレイラがそれを制止させる。間を開けてから彼は話を続けた。
「これ以上はもう俺達じゃ無理だ......島の外へ出てB.S.S.A.や米軍に島へ踏み入ってもらうしかない。島の現状を俺達で伝えるんだ!! 」
「待って、どうやって此処から出る気? 」
「確かゲート前の軍事施設にトラックが有った筈だ、アレで島から外へ出よう...!! 」
「でも...リナはどうするのよ? 」
「......反対されるのは解ってるけど此処に置いていく。アイツならきっと転んでもタダじゃ起きない筈だぜ 」
腑に落ちない様子のクレアをレイラが宥め、リナを学園に残し学園を出る事を決意する。
それからカイルの友人でカーターという茶髪にすらっとした見た目の生徒と共に行動へ移した。
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同じ日の夜の事。
部屋にクラシック調の音楽が流れている。
その華やかな女性の歌声は途中から歌い始めた男性の声も相まって聞く者の感情を掻き立てる様に高らかで何処か雄々しい様にも感じられた。
部屋に飾られたカレンダーにある日付けには丸が付けられ、机の周りには写真が飾られている。
その写真に写るは笑顔で微笑んでいる女子生徒2人組で
似た様な写真が何枚か有る他に1人1人写った物もそこにはあった。
「……そう。島から逃げ出そうとしている生徒が居るのね?伝えてくれてありがとう…グレース 」
浴室から出て来た裸の少女は灰色の髪を持つ少女を撫で、それから着替えた後にタブレット端末を手にする。
慣れた手付きでリストを開くと[RELEASE]という項目へ辿り着いた。そこにあるタイトルは[PROJECT-PANDORA]という物で被検体として選ばれた留学生達や学生の名がそこへ記されている。
「これでこの学園は変わる……さようならマザー。貴女の楽園は此処でお終いです 」
小さく含みのある笑みを浮かべたその人物は躊躇いもせずそのボタンを押した。同時に名前のリスト横に浮かんだのは[INFECTION]という文字で名前が中に印字された枠組みが次々と赤く染まっていく。
それから微かに聞こえ始めたのは悲鳴、それから大きな物音。つまりリストタグを身に付けた者達が次々と人ならざる者へ変化しては誰かを襲っているという事を現すに相応しい。学校の至る所から悲鳴や人ならざる者の叫び声が聞こえて来るがまるで知らぬ存ぜぬの様な振舞で廊下へ出ると彼女が向かったのはC棟にある会議室。そこへ踏み入れるとフレイヤが奥の椅子へ腰掛けたまま入って来た生徒の方を真っ直ぐに睨む形で見据えていた。
「...楽しんで頂けていますか?自由と楽園の崩壊、この世の地獄を 」
「......やはりこの騒ぎは貴女の仕業だったのですね。
「貴女はこれまでの事を無視し続けた...都合の悪い事実を全て隠蔽し、真実を捻じ曲げ、そして闇に葬った。憶えていますか?グレースの事......! 」
「ッ...!?あ、あれは...不幸な事故だった......それだけのこと...... 」
「不幸な事故?...バカ言わないで!!私の...私の大切な親友を奪っておきながら大した調べもせず自殺と決め付けた癖に!!
」
「黙りなさいッ!! 」
フレイヤが
「...そんな
破裂音と共に1発の弾丸がアイラの胸部を撃ち抜いた。そして赤黒い血液が噴き出したが彼女は怯む事無く立ち尽くしている。
続けて2発目がアイラの左目を撃ち抜き、反動でアイラは背中から倒れた。背を向けたフレイヤは島の外部へ脱出する為の手段を
他の教師へ伝えるべく会議室を出ようとする。
「はぁ...はぁはぁ...ッ......!こ、壊されてたまるものですか...この学園は......此処は...あのお方の...大事な...... 」
「......貴女の本当の正体。それは貴女は裏でコネクションという組織の人間と繋がっているという事。そしてこの島は
振り返ると前髪をだらんと下げたアイラが立っていて被弾した右目からは夥しい血液が滴り落ち、赤く輝いている。
再び振り返ったフレイヤが右肩や腹部を立て続けに射抜いたがやはり効果はなく再生してしまった。
そして右肩の傷口から溢れ出した黒いカビの様な物が覆い尽くすと鋭利な鉤爪が出現しそれを突き出すと
フレイヤの腹部を刺し穿った。見開かれた両目は変貌した少女の容姿を捉えたがその身体は大きく宙を舞う様に会議室の
机に思い切り叩き付けられてしまった。
「ごふぅッ...!?あ...が......ッ...! 」
「......さようならマザー、お元気で 」
虫の息である彼女の姿を見下ろし、アイラはその場から立ち去った。
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監禁部屋のベッドで眠っていたリナが目を覚ます頃には既に外は真っ暗。
身体を起こすと自分の身に起きた事を理解しつつどうするかを考えていると外から悲鳴が聞こえ、咄嗟に窓の外を見た。
そこに居たのは自分が散々目にして来たゾンビ達でその姿はどう見ても学生服を着用している。
つまり自分が監禁される前に見た光景がそのまま繰り返されていたのだ。
そして廊下からも悲鳴やゾンビの物である呻き声や肉を引き裂く様な音が聞こえて来た。
「嘘でしょ...何で...ッ!? 」
部屋を出ようにも鍵が掛かっていて出られずにいるとドアをノックされ、返事を返すと
自分を此処へ監禁したイアンが立っていた。2人は廊下へ出ると安全を確保しつつ歩いて行く。
「早く出ろ!!此処に居たらお前も食われるぞ!! 」
「...何がどうなってるんですか!? 」
「私にも解らない。1人の男子生徒が
「...
「大学の生徒に教師達含むほぼ全員...そして留学生達も感染していると見て間違いはないだろう 」
「...!?じ、じゃあ...レイラ達は──!?」
「......残念だが私は見ていない 」
その言葉の意味を理解した彼女はそれ以上何も言わず、思いの丈を噛み殺した。
脱出手段を確保すべく一度大学の外にある車庫へ足を運んだが既に車両類は全て破壊され尽くした後、
踵を返し外へと戻ると数名のゾンビが2人を襲って来た。
「イアンさんッ、武器は!? 」
「下がっているんだ...アイツを斬ったら直ぐに行くぞ 」
「...くッ! 」
襲って来たゾンビをリナが蹴り飛ばし、イアンも左腰に下げているサーベルで応戦し頭部を斬り付けては怯んだ隙にその場から逃げ出す。校内へ再び戻ってロバートの居る警備室へと向かおうとしたが後少しの所で灰色の髪を持つ女子生徒が2人の行く手を阻まれた。
「...あの子誰!? 」
「
「...え...ッ? 」
少女が可視化に微笑んだ瞬間、右腕を突き出すと袖口から黒い触手の様に蠢く何かが放たれて
リナはイアンにより突き飛ばされた事で難を逃れた。再び立ち上がろうとした際に鈍い悲鳴が左から上がると
イアンの腹部がそれに突き刺されていた。赤黒い血液が彼の身に付けている上下白のスーツを染め上げていく。
それは廊下の狭さでは躱せないと判断した彼の判断からであった。
「イ...イアンさん...ッ!? 」
「私に構わず...に、逃げろ...ッ......早く...!! 」
「で、でも...ッ! 」
「お前の...言った事は...正しかった......それを...素行不良の...生徒の言う事だと......ごほッ、ごほッ!!き、決め付けた...我々が......悪い......当然の...報い...だ......行け...り、リナ...クロフト......逃げろ...私の分まで...生き延びて...くれ......! 」
サーベルが手元を離れ落下、引き寄せられたイアンはグレースと呼ばれた少女により投げ捨てられると
壁に激突し絶命する。標的がリナへ移行するとリナは唇を噛み締めてはその場から逃げ去った。
背後からはグレースの足音が響くも目もくれず警備室へ逃げ込むとそこで机の引き出しを物色し自分が使っていた
彼女が去った後に部屋を出て生存者を探しに向かった。
だが何処もかしこもゾンビが徘徊し、人間の死体を貪り食う者や状況に耐えられず身を投げた者も居る様子で
まさにこの世の地獄と呼ぶに相応しい光景がノートレス大学内部で広がっていた。
見覚えのある者、自分と話した事がある者、食事に誘ってくれた者、今その誰もが人ならざる者へ変貌し
リナへ牙を剥いて来た。
「...生き延びる。絶対に生きて此処から脱出するんだ!! 」
躊躇いを殺し、引き金を引いて彼等の身体や眉間を的確に射抜き射殺。
仕留め損なったならばサーベルを突き刺しトドメを刺すといった行為を幾度か続けた末に辿り着いたのは
職員室。警戒しつつ連絡手段を探したが見当たらず手を拱いていると奥の部屋から物音がし
ドアを開けて銃口を差し向けるとそこに居たのはゴルフクラブを頭上に構えたアダムだった。
「止めろ、来るな!う、撃つな!それ以上近付けばどうなるか...!! 」
「...待って!私です、校長先生! 」
「き、キミは...リナ・クロフト!?どういうつもりだ、何故此処にキミが居る!?イアンはどうした!! 」
「...死にました。グレースって子に襲われて。それよりそれ下ろしてくれませんか? 」
リナの声掛けに応じた彼はゴルフクラブを下ろし、彼女も拳銃を下ろした。
「......グレースを見ただと!?確かなのか!? 」
「...誰なんですか?グレースって。私にも知る権利がある、その子がバイオテロを引き起こしたかもしれない!! 」
「落ち着け!!グレース・ベルベットは既に
「...でもイアンさんは確かに言ってました。あれはグレースだって...... 」
「......グレースはこの大学では優秀な生徒だった。伝統ある我が校の規律を守り、明るく振舞っていたよ。だが...この島は知っての通り外部へのアクセスが殆ど無い。それに島を開発する際に移住した家族の何割かは富裕層、そして外部から来た彼女は貧しい家庭だった事から彼女をターゲットとした悪質な虐めや嫌がらせが生徒間で始まった。他の生徒から相談を何度も受けていたがマザーはそれを公表せず、罰する事もしなかった...事実、校内で起きた暴行事件、自殺未遂、傷害事件等...全て表沙汰にはせず我々が処置して来た 」
「...そんなの教師がする事じゃない!!アンタが...アンタ達がグレースっていう子を殺したのと同じじゃない!! 」
「そうだな...だがグレースは
アイラ・スチュワート......。今の生徒会長である彼女は幾度も私へこの件を相談し訴え掛けた、校長でありながらマザーの指示に従う事しか出来なかった事に罪悪感を感じていた私は彼女の抗議内容を素直に聞き入れ...マザーへそれを報告した。だが結果は既に見えていた、校長の私ですら揉み消された以上彼女に従うしか道は無いのだと悟った。ジョン・グラニカスから継いだノートレスを守るべくマザー...いやフレイヤもまた必死だったのだろう......だからあらゆる事件を蔑ろにする必要があった。そしてグレースの虐めは何時からか再び悪化しその約3ヶ月後に大学裏にある森の奥深くで自ら命を絶った......これが事の真相だ 」
「......アイラはその事を知ってるんですか? 」
「知っているさ...唯一無二の親友だったのだから。三日三晩、彼女の遺体に泣き付いていたのを憶えている......話は終わりだ 」
「...行きましょう、化け物が来る前に 」
リナはそれ以上追求せずアダムと共に職員室から出ようとすると彼はリナへ声を掛けた。
「待つんだ!この学校の屋上には非常事態に備えて外部への緊急アクセスを行う為のヘリがある、それで此処から逃げよう 」
「...ヘリが!?私、生存者を探して来ます。先生はヘリの方へ向かって下さい! 」
「あ、あぁ解った!だが...長くは待てない。キミが戻った時点で直ぐにヘリを飛ばす、それからこれを。準備が整い次第連絡する 」
彼が戸棚から持ち出して手渡して来たのは2台分のトランシーバー、周波数を合わせるとお互いにそれを携帯し
成すべき事を成すべく職員室から出ては別れて駆け出した。
この地獄の様な状況下で生存者など居るのだろうか。その一抹の不安が過る中ではあるが必死になって生存者を探す。
絶望的な状況下なのは自分が一番良く理解している...だが彼女は諦めようとはしなかった。
B.S.S.A.に所属している父親であれば絶対に諦めたりなどしない、救える命が有るのであれば絶対に救い出す。
その思念と考えは彼女にも伝わっていた。
(お願い...力を貸して父さん!私は確かに落ちこぼれで、バカで何も出来ないかもしれない......でも父さんが私に教えてくれたんだ、
廊下を駆けている最中に現れたゾンビらへ発砲し撃退、掴み来るならサーベルで斬り裂いて応戦し突破口を開く。
すると曲がり角の先から悲鳴が聞こえそこへ駆け付けると女子生徒が変貌したゾンビに襲われそうになっていた黒髪の女子生徒を見付けては「伏せて!! 」と叫び、後頭部を撃ち抜き撃退。駆け寄ると彼へ左手を差し出し立たせる。
「あ、ありがとう...助かった...... 」
「...緊急脱出用のヘリがある、屋上へ向かって。それから1つだけ聞いても良い? 」
「え...な、何? 」
「...
「解らない...でもみんなが付けていたタグが急に赤く点滅して変な事をずっと繰り返し喋っていたのは憶えてる。そうしたら突然男子1人が苦しみ出して、他の子も...... 」
「...どうして貴女は無事なの? 」
「2日前にタグを壊しちゃって、予備を貰う筈だったんだけどもう少し掛かるって言われた。だから外してた 」
彼女の話を聞いたリナは頷くとヘリへ向かおうと歩き出した。しかし靴音と共に向かいの通路から現れたのはアイラで
その制服は返り血に染まっていた。表情は何処か暗く、まるで今のこの光景を楽しんでいる様にも見え、制服の右腕側が
破れていて痛々しい傷が残されていた。
「あら...生きていらしたんですね?リナさん 」
「...アイラ!?その姿は...それより今は一緒に逃げよう、今ならまだ──! 」
「......逃げる?何処へですか。逃がしませんよ...誰1人としてこの大学から。貴女達も此処で死ぬんです 」
「...は?何言ってんの、冗談は止して!! 」
「冗談ではありませんよ...
「...!?まさか── 」
「ええ、貴女が今考えた事で合っています。ですから死んで頂こうと思いまして...... 」
「...此処を地獄に変えたのも、大勢の罪もない人の命を奪ったのも......!! 」
「そうです...全て私がやったんです。ふふふッ、あっはははははははは!! 」
ギリッと歯を食い縛ったリナはアイラへ銃口を差し向け、背後に居た少女へ話し掛けた。
「...聞くの忘れてた。名前は? 」
「林・翠蘭(リン・スイラン)...... 」
「...翠蘭、私が合図したら直ぐに逃げて。大丈夫...後から追い付くから気にしなくて良い。私はリナ、リナ・クロフト...
無事に此処から出られたら一緒にお祝いでもしよう? 」
微笑み掛け、アイラが動き出した瞬間に翠蘭の胸元を左手で押して「走って!! 」と叫ぶ。
リナはアイラへ向け発砲し彼女を強く睨み付けた。
「......抵抗するつもりですか?無駄な事を 」
「...アンタを行かせない。アンタは此処で私が止める!! 」
「身の程知らずの部外者が...良いでしょう、ならばその目に刻み付けなさい。ゼノの素晴らしさを!! 」
右手を付き出したと同時に右腕が人の持つ物から変化しまるで鋭利な黒い刃物の様な状態へと変化した。
振り翳して来たそれを左手のサーベルで受け止めては幾度も刃を交わし鈍い金属音が響き渡る。
「ばッ、化け物...!! 」
「ふふッ、腰が引けてますよ?リナさんッ──!! 」
右から放たれた薙ぎ払う様な攻撃を後退し躱したが掠めただけで上着と中のシャツを裂いた。
そしてリナも反撃で3発程発砲したが弾かれ、その際に弾切れを起こした所で攻撃を躱しつつ
予備のマガジンを
「うッ...ぁ......!? 」
「これで終わり──ッ!! 」
隙を突いたリナがサーベルで心臓の位置を確実に刺し貫くとアイラはガクンと項垂れた。
心臓さえ貫けば命あるモノは必ず息絶える筈...だがアイラは違った。
「
「な...ッ──うぐぅううッ!? 」
直後に左手で突き上げられる様に腹部を殴られた事から鋭い痛みが走った。
リナが苦しんでいる所へ右腕が再び変化し首へ巻き付くと思い切り締め上げ、そのまま右側へ大きく振り付けて
壁へ叩き付けると教室の中へ放り込まれてしまう。机や床に身体をぶつけながらリナは蹲って激痛に悶えていた。
「あ...ぐ...っ、ふぅ...ふうぅ...ッ...! 」
「どうです、痛いですか?...私がこの大学で受けた痛みはこんなモノじゃない。もっともっと辛く、苦しかった!! 」
胸部へ刺さったサーベルを引き抜き、教室へ入ると今度は右腕が頭上から襲い掛かってリナを串刺しにしようとするが彼女はそれを左へ転がる様に躱しアイラへ向け発砲、だが同じ様に変化した左腕がそれを全て防ぎ切るとアイラは口角と吊り上げて笑っていた。見てみると貫いた筈の胸部の傷が白い煙と共にみるみる塞がっていくのが解る。
「...傷口が再生してる...!? 」
「これがゼノの力...E型特異菌の強靭的な再生力とTウイルスの感染性を併せ持ったハイブリット。私へ刃向かった時点で貴女に勝ち目なんかない!! 」
立ち上がったリナを見て嘲笑う。そしてリナはポケットを漁ると自身が窮地に追い込まれているのを悟った。
(残りのマガジンは後2つ...そして入ってる弾は後8発......! )
相手は未知のウイルスを宿す化け物、完全に倒すには再生を阻む以外他はない。
しかし肝心なサーベルは先程の交戦の末にへし折られてしまった、まさに万事休すという状況下だが
リナは諦めた訳ではなかった。
「...所詮、アンタは...此処の世界しか知らないんだ 」
「......?何ですって? 」
「...この島の事しか解らない、知らない癖に...島の中でしか生きられない癖に......女王サマでも気取ってるつもり?バカにすんな!! 」
「この...ッ、言わせておけば!! 」
振り下ろされた両腕の攻撃を右へ飛んで躱し、教室から抜け出す。そして通路を自身から見て左へ突き進んで
階段を駆け上がると非常灯が点いている場所を見付け、中にあるそれを取り出すべく叩き壊した。
リナが手にしたのは消火斧、それとほぼ同時に足音が聞こえ振り返ると離れの通路にアイラが佇んでいてリナを視界に捉えると襲い掛かって来る。怒りの形相から放たれた刺突を消火斧で弾き上げ、胸部と頭部へ弾丸を打ち込んで怯ませては自ずと肉薄し
アイラの頭上から勢い良く消火斧を振り下ろした。脳天へ刃が突き刺さると両目が見開かれ、口からは赤黒い血液を吐き出した。
「ごふぅぅッ!?ち、調子に...乗るなぁあッ!! 」
突き飛ばされたリナの右脇腹と左肩、右足太腿を鋭利に尖った指先が貫通し刺し貫く。
激痛に苛まれるも彼女はそれを噛み殺し左手の消火斧を振り下ろしアイラの右肩へ刃を突き立てて肉と骨を切り裂く。
至近距離でお互いに睨み合い、リナはアイラの顔を覗き込んだ。
「はぁ...はぁはぁ......ッ...このまま...アンタと...殺り合うのも......わ、悪くない...けど......いい加減くたばって!! 」
「黙りなさい...下等生物の......落ちこぼれの...分際で......私に...楯突くなど...ッ......!! 」
「アイラ...ッ......!! 」
「私の...私の復讐は...終わらない......こんな所で...終わってたまるものかぁああぁああぁぁあああぁッ!! 」
リナを強引に突き飛ばし、肉体が更に変貌する。黒い髪を振り乱す女性の様な身体付きを持つそれは
一糸纏わぬ灰色の化け物へと変貌しきった。彼女が持つ黒色の瞳がリナを捉え襲い掛かって来る、そして振り下ろした
右腕の爪がリナへ向けられるが彼女は消火斧で受け流し腹部を撃ち抜く。しかし大したダメージは与えられず、彼女は
不意に襲って来た吐き気と共に床へ吐血してしまった。
(ヤバい...このまま長引かせたら......本当に... )
既に肋骨数本折れ、右脇腹と左肩に右足太腿にそれぞれ刺し傷を負っている。
何だったら打撲や擦過傷はほぼ全身にあるといっても良い程にリナはボロボロに傷付いていた。
[私だ。生徒を1人保護した、キミも早く戻って来るんだ!!そろそろ此処も限界が近い!! ]
アダムからの通信が入ったリナは眼前の敵を見据えてから拳銃をしまい、トランシーバーを手に取ると返事を返した。
「...先に...行って下さい...... 」
[何だと!?無茶だ、これ以上の捜索はキミの命に──!! ]
「先に行って!!......お願いします...どうしても......どうしても...
[......解った。死ぬんじゃないぞ ]
「......はい... 」
[必ず...必ず戻るからな......! ]
通信を終えるとリナはトランシーバーを放った。そして最後のマガジンを装填し化け物を見据える。
「...エルザ...ごめん......あんな酷い事言っちゃって...エルザは...私にとって...理想の...憧れの存在で...良いお姉ちゃんだった......もっと、
もっと...沢山......色んな事...話せば良かったな...... 」
この騒ぎは時期に島全体へ拡散する、そうなればエルザも助からないかもしれない。
でも無事で居て欲しいと願う気持ちは変わらない。もしまた会えたら...会えたのなら何を話そうか。
エルザが抱えていた気持ちは痛い程、あの時知ったから。
姉妹だから些細な事で喧嘩もするし、いがみ合ったりもする...でも最後は必ず仲直りしてお互いに笑い合っている。
またあの日に戻りたい...こうなるずっとずっと前に戻りたいとリナは思っていた。
此処へ来て多くの友人が出来た...けれど彼等の行方は解らない。感染し変わり果ててしまい彷徨い歩いているか、それとも
運良く此処から逃げおおせているか。それとも......
「......血出し過ぎて頭クラクラする。アイラも...辛かったんだよね......此処で色々あって...友達を助けられなくて...その事実をも無かった事にされて......最後に辿り着いたモノがウイルスしかなくて......だから...こんな事を引き起こした......外部の人は此処を...楽園って呼んでる...でも......
唸り声を上げたアイラだった者がリナへ迫り来る。彼女は唇を噛み締めて呟いた。
「......もう終わりにしよう?もう十分...伝わったから......!! 」
そしてリナは真っ向から彼女へと立ち向かっていった。
銃声、悲鳴、それは最後の1発を撃ち尽くすまで止む事は無かった。
血飛沫に塗れようが殴られようが何をされようが最後までリナは抗い続けた。
動かなくなった化け物はリナの前でコンクリート片の様に石化し最後は砕け散った。
リナもまた背中から床へ倒れると額に汗を滲ませつつ足音や呻き声を聞きながら横たわったまま動けぬままで
霞む視界には此方へ近付いて来る灰色髪の少女の姿が写るとそれはリナの前に来て見下ろしていた。
だがもう何かをする気力も何も残されていない。
「まさか......あ、貴女が...グレー...ス...... 」
僅かに彼女の表情を捉えたと同時にリナの意識は少しずつ遠のいていく。
それから静かに眠る様にリナは動かなくなってしまった。
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ノートレス大学で発生した未曾有のバイオテロは大勢の教師や生徒が犠牲となる痛ましい事件として世界中に報道された。
後に介入したB.S.S.A.によりバイオテロは鎮圧される運びとなったが行方不明者、犠牲者リストの中にもリナ・クロフトの名は記載されていなかった。そしてそれとは別で現地へと赴く
To be continued......?