※この作品はR-18です。

BIOHAZARD-PALADISE・LOST-   作:秋乃楓

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CHAPTER04 蠢く影

──話は遡る事約4ヶ月前の4月半ばへ戻る。

リナ達がエスペランサへ旅立つ前。

2年前に警察署内で発生した未曾有のバイオハザード...それが起きた現場から離れにある病院へ1台の黒い車が停車し

そこから降りて来たのは30代半ばのブロンド髪の男性で右目の方は前髪で隠れる程の長さ、首から下はモデルの様な手足と程良く鍛えられた筋肉質の身体に対し灰色の上着の上に黒のジャケットを羽織ると共に下は黒のジーンズにブーツ。

受付に来て自身の身分証を出して待機しているとそこへ耳元で切り揃えた茶色い髪をした白衣姿の若い白人の男性が来て彼へ一礼すると彼を連れて部屋へと向かう、彼の名はルイスといってこの病院に勤務している外科医で

2年前に発生したバイオハザードにおけるその実態と使用されたウィルスをとある機関の依頼で調べていた。

 

「どうぞ此方へ 」

 

 

「何か手掛かりは掴めたか? 」

 

 

「精密検査の結果、未知のウィルスによる感染症だという事が解りました。ラクーン事件で使用されたTウィルスやGウィルス...他のバイオテロで用いられたウィルスとはまた異なるタイプで間違いないでしょう 」

 

 

「そうか...何となくだがそんな気はしていたよ 」

 

 

「送った調査書の通り感染したのはピーター・ヘルナンデス、カリフォルニアにある大学に通う20代男性で事件が起こる直前に警官2名が彼を保護し警察署での調査を行った後、突然様態が急変し発症...事態の収拾に当たった関係者が襲われて感染者が拡がったというのが事件の全容になります 」

 

 

「現場に落ちていたリストタグには外部操作で何かしらのシステムが起動しウィルスを注射する仕掛けが備わっていた...そしてその彼は楽園という孤島から逃げて来たと聞いている。もし何かあるとすればその島か...... 」

 

 

「島の名は確かエスペランサ...アルヴェーヌという一族が管理している島だとか 」

 

 

「アルヴェーヌ?確か米国政府が島の大規模な開発を行うにあたって支援を名乗り出た名門貴族だったな。何れにせよ調べてみる必要がある 」

 

 

「私も詳しくは解りませんがあの島は都市開発を進めている一方で何かと妙な噂も耳にするんです。もし行かれるのであればくれぐれもお気を付けて 」

 

 

「ありがとう、後は此方で対処する。それにそういうのは慣れてるんでね 」

 

男はそう言い残し立ち去ると共に病院を出て車へ乗り込むと車内で端末を起動しまた別の誰かと

会話を始める。その相手は女性で彼は運転席から外の景色を見ていた。

 

「俺だ。署内のバイオテロで使用されたのはやはりウィルス...それもどうやら新種らしい 」

 

 

[そうなるとやはりあの事件はバイオテロ...? ]

 

 

「そこは定かじゃないがな。それと感染者はリストタグによる外部感染で間違いなさそうだ。そっちはどうだ、何か解った事は? 」

 

 

[20代の若者が此処最近男女問わず相次いで失踪している事件を調べてみたんだけど、その若者達が最後に話していたのは楽園という言葉...そこから先の足取りは一切不明。A.S.S.O.という学生支援団体が学生達に何かしらの形で関与していた事は解っているんだけど...... ]

 

 

「...?どうかしたのか? 」

 

 

[彼等に関するデータが一切見つからないの。支援団体のHPを見る限りスタッフが居るのは間違いない筈なんだけど ]

 

 

「それは如何にも怪しいな。B.A.C.の事は? 」

 

 

[そっちも今調べてるからもう少し待って頂戴、何か解ったらデータを送信するから ]

 

 

「なら俺はA.S.S.O.の本社へ向かおう、そっちが教えてくれないなら直接話に行くのみだ 」

 

 

[...気を付けてね、レオン ]

 

 

「......あぁ 」

 

レオンと呼ばれた男は通話を切って端末を上着のポケットへしまった。

レオン・S・ケネディ...彼は1998年にラクーンR.P.D.(Raccoon Police Department)に

新米警官として配属されたがラクーンシティで発生したバイオハザードに巻き込まれ脱出を余儀なくされてしまう。

そしてその後、彼の持つサバイバル能力を当時の政府高官に見い出されるとエージェントとしての厳しい訓練と鍛錬を

重ねると共にエージェントとしてD.S.O.(Division of Security Operations)に所属し今日に至るまで様々な事件を解決へと導いてきた。今回の事件もウィルス絡みであると同時にこの国に対する脅威を取り除く為にこうして動いている。

彼は車のナビゲーションシステムを起動し本社があるビルの方へと赴くのだった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

約30分後、車は20階建てのビルのある付近の駐車場へ訪れるとゲートを抜けて別の車の近くへ停車。

レオンは右側の運転席から降りてビル正面の受付へ訪れるとブロンド髪の女性係員が先に彼へ声を掛けた。

 

「ようこそライディアルタワーへ。何かご用ですか? 」

 

 

「すまないがA.S.S.O.のあるフロアは何階か教えてくれないか? 」

 

 

「10階になります...差し支えなければお答えいただける範囲で構わないのですか事前に何かアポイントメントは取られていますか? 」

 

 

「......知り合いがそこに務めていてね、忘れ物を届けに来たんだ。長居はせずとも直ぐに帰るよ 」

 

 

「畏まりました。では此方の用紙にお名前と時間帯をご記入下さい 」

 

彼は渡された用紙とボールペンを用いて名前を書き記していく。

当然だがそこに書き記すのは偽名で本名など書くわけがなかった。

それを再び返すと女性は青い紐と[GUEST]という文字が透明なケースに入ったパスを手渡して来る。

 

「此方を首から下げてご使用下さい。お帰りになる際は此方の受付にてご返却を 」

 

 

「ありがとう、恩に着るよ 」

 

軽く会釈してからパスを首から下げ、他のスーツ姿の男女らに紛れる形でエレベーターホールへ訪れると

エレベーターへ乗り込んで10階を目指す。その背後は強化ガラスで外の近代的な風景を一望する事が出来る造りになっているが

高所恐怖症高所の人からすればたまったものではないのは一目見て解る。

そして10階へ到達するとレオンだけがそこで降り、既に彼以外は他のフロアで降りるかそれより上の階で降りる様子だった。

 

「...此処だな。もう少し日当たりの良い場所にスペースを取るべきなんじゃないのか?全体的に暗すぎだ 」

 

明かりの無い廊下を歩いて突き当りを右へ曲がると[A.S.S.O.コミュニティセンター]と書かれた表札が目に入り

そこにある白いドアのノブへ手を掛けて中へ入る。そこには人の姿は無く、有るのは呼び鈴と団体を紹介するパンフレット冊子が縦2列に置かれている棚だけで他は特に変わった所はない。

呼び鈴を押して待っていると奥から出て来たのは褐色肌に丸い眼鏡を掛けたスーツ姿の男性、此方を見ると彼は一礼する。

 

「ようこそA.S.S.O.コミュニティセンターへ。私はセンター長のショーンと申します 」

 

 

「...メイソン・ウィンターズです。実は娘が此処の施設に興味があると話していて気になったもので 」

 

 

「そうでしたか。娘さんはおいくつで? 」

 

 

「...まだ18です。自分も将来は誰かの役に立つ仕事に就きたいと話しているものですから 」

 

 

「まだお若いのに随分と立派な思想をお持ちの様で。どうぞ、奥でお話ししましょう 」

 

招かれるとそのままショーンに続いて奥の方へ。

他に居るのは若い男性職員達とそれに比例し女性職員を合わせて15人程、その誰もが私服姿で

目の前にあるPCでの作業や電話応対といった形で仕事に励んでいるのが解る。

レオンが通されたのは奥に在る応接室、そこで机を挟んで向かい合うような形で腰掛けた。

 

「何かお飲み物をお持ちしましょう。何が良いですか? 」

 

 

「すいませんがコーヒーを。ブラックで 」

 

 

「畏まりました。我がセンターのパンフレットです、此方をご覧になって少々お待ち下さい 」

 

ショーンが応接室の入口の直ぐ横にあった冊子を1冊取ってそれを机の上へ置くと退室する。その間に

レオンは冊子を開いて中身を見始めた。

 

「学生の明るい未来の為に...か。関係者一覧にB.A.C.の名前がある、やはり此処と向こうは繋がっているのは間違いないみたいだ。それに使われている写真の何枚かは既に消息を絶った学生達の物......そうなると彼等の生存は絶望的だろうな 」

 

実は此処へ訪れ、捜査しているのは彼と関係のあるとある人物を介しての依頼だった。

切っ掛けは一本の電話でその相手は嘗て共にラクーン事件から生還したクレア・レッドフィールドという女性。

彼女はB.S.S.A.(Bioterrorism Security Assessment Alliance)に所属する兄クリスの妹で

その彼女はNGO団体であるテラセイブに務めている。

 

『ねぇレオン...この世に楽園(ユートピア)と呼ばれている島があるって言われたら貴方は信じる? 』

 

 

『バカンスの誘いか?悪いが生憎、今は忙しくてそれ処じゃないんだ...他を当たってくれ 』

 

 

『違うわ、そうじゃないの。実は先日...うちに来た人が息子が帰って来ないって急にヒステリックを起こしたのよ。訳を聞いたら警察にも掛け合ったけど相手にされなかったって。その彼はA.S.S.O.に援助を受けて大学に通っていてそこからの勧めで留学しないかって言われ、ご両親が相談に応じたのが最後の会話だったみたい。将来は弁護士になるんだって話してたからご両親は相当ショックを受けているみたい 』

 

 

『両親は許可を出したのか? 』

 

 

『資金援助の件も有ったし何せ周囲からの評判が良かったから特に疑わなかったみたい。私も気になって色々調べたんだけど行き先はエスペランサという島、それ以外の事は何も解らなかった 』

 

 

『エスペランサ...確かあの島は米国政府が一部の国と共同建設した場所で建設に10数年と膨大な資金で造られ、最新鋭のインフラを設備し今じゃ世界各国から大勢の見物客が訪れている海上都市。豊かな自然と海に囲まれ、発電は全て太陽光蓄積システム・アポロヌスによる物...考え方を変えればまさに楽園だな。悪魔で目的は観光地、集客数の為にそういうきな臭い噂は出回らない様に根回しされてるんだろうさ 』

 

 

『でもそこで人が消えた。本来の留学期間を過ぎても戻らないなんて幾ら何でも可笑しいと思うわ 』

 

 

『滞在期間は? 』

 

 

『確か1週間だった筈。それ以上は移住になるからパスポートの手続きとかが必要になるってHPに書いてあった 』

 

 

『解った、俺の方で少し調べてみよう。何か解ったら連絡する...失踪した人物の名前とか解る範囲で良い、教えてくれ 』

 

その通話を最後にレオンは居なくなった学生の名がエリックという20代の青年であり有名な公立大学の法学部に所属している事をD.S.O.のPCから調べて突き止める事に成功する。アメリカ大使館にエスペランサへ移住する際のパスポートを発行したか有無を確かめたものの、彼の名で登録された物は一切存在しなかった。

そして同時期に発生していたのが相次ぐ大学生の連続失踪事件...何れも共通していたのがA.S.S.O.という学生支援団体だった事から少しずつ探りを入れる形で捜査を進めていたのだった。

それから少し経つとショーンがトレイに2人分の紙コップを乗せて戻って来ると再び椅子へ腰掛けた。

それを飲みつつ話し合いが幕を開ける。

 

「お待たせしましたメイソンさん。どうです、ご理解はして頂けましたか? 」

 

 

「...あぁ、大体は。留学先の行き先に関してなのですがどうしてエスペランサを? 」

 

 

「彼処は豊かな自然と海に囲まれた島ですし、何より話題の観光都市でしょう?学生達もその方が気分も良いでしょうし

旅行でエスペランサへ行こうものなら費用も掛かってしまう...だから留学という形でご提案させて頂いているんです。お陰様で大人気ですよ 」

 

彼がそう話した後、頷きながら再びレオンが口を開く。

 

「すいません...こんな事を聞くのは野暮だと思うのですがエリックという学生をご存じですか? 」

 

 

「エリック...?もしかしてエリック・アンダーソンの事でしょうか? 」

 

 

「ええ。実は彼の住んでいる家と私の家はお隣同士で近所付き合いもある程で、何より娘が心配しているんです...昔はよく一緒に遊んでくれたのに今はどうしているんだろうって。彼について何かご存じではありませんか? 」

 

 

「...申し訳ございませんが個人情報を開示するのは業務違反になりますので 」

 

 

「そうですか......もしかして何か言えない事情でも? 」

 

 

「個人情報...ですので慎重に取り扱う必要があるのですよ。ははは...... 」

 

視線を向けるとショーンはそれに対し僅かに視線を逸らすのだが何かを隠している様な気がする、

レオンは雰囲気でそれを感じ取ったのか話を続けた。

 

「下手に失踪者の事を公にすれば団体の名に傷が付くし業務に支障が出る...それだけじゃない、アンタの立ち位置も怪しくなる。違うか? 」

 

 

「と...突然何を言い出すんですか、言い掛かりは止して下さい! 」

 

 

「もう既に20人以上は失踪していて何れもエスペランサで消えている。なら此処を疑うのは必然だ、生憎...私の職業はジャーナリストでね。そういう話は幾らでも耳に入って来る...この事は私と貴方だけで内密にしますから教えてくれますね? 」

 

 

威圧を掛ける様な口調で問い詰めるとショーンは俯いたまま重い口を開いた。

 

「......B.A.C.という企業はご存じですか? 」

 

 

「えぇ、知っています 」

 

 

「実は我々A.S.S.O.はそこと共同し事業を進めているのです。そもそもB.A.C.は自然保護と環境に配慮をスローガンにした製薬会社で近年で最も伸びしろがある企業なのは勿論、様々な事業のスポンサーとして携わる事で更に事業拡大を図っているのです 」

 

 

「成程... 」

 

 

「その企業の社長、ルーク・シルヴェーヌは未だ歳は若いですが彼のカリスマ性に惹かれて集まる者は大勢居ます。それ故に企業としての成長も著しく...近年ではエスペランサ開発支援のバックアップを行った事で知名度も爆発的に上がりました、留学先をそこへ決めたのも全て社長であるルークによる決定事項なのです。そしてもう1つ......彼には裏の顔がある、それは── 」

 

彼が更に話を切り出そうとした瞬間、ドアがノックされ若い黒髪の女性が入って来る。

その顔立ちは東洋系で腰の中程まで伸ばしたロングヘアを後ろで白いリボンで結んだポニーテール。そして格好は灰色の上着に同色のスカート丈が短いスーツの様な物を着用し中に着ているワイシャツは胸元のボタンを開けているせいか谷間が見えている。スカートから下は黒いタイツにヒールのある靴。やや吊り上がった目じりと左右の黒い瞳が印象的な20代後半の美人だった。

 

「所長、そろそろ会議の時間です。遅れるとまたいびられますよ? 」

 

 

「そうだったな...すまない。では詳しいお話はまた何れ。すまないがこの方を出口まで案内してくれないか? 」

 

 

「畏まりました。では此方へ 」

 

女性に続く形で出口へ訪れ、廊下へレオンと共に出ると女性は徐ろに話始めた。

 

「......職業がジャーナリストだなんてウソでしょう? 」

 

 

「何を突然。言い掛かりは止してくれないか?俺は── 」

 

 

「...アメリカ合衆国政府大統領が設立したバイオテロ組織、Division of Security Operations......通称D.S.O.。そこに勤務しているのが貴方。違う?メイソン・ウィンターズ...いえ、レオン・S・ケネディ 」

 

 

「...何処でそれを?まさか俺の熱烈なファンか何かか? 」

 

 

「そこの解釈はご自由にどうぞ?悪いけど邪魔しないで頂けないかしら。下手に嗅ぎ回られると仕事に支障を来すから面倒なのだけれど 」

 

 

「悪いがこれが俺の仕事だ。エスペランサで何が起こっているのかを突き止め、その真実を明らかにする...今更はいそうですかと退く事なんて出来ない相談だ 」

 

 

「...そう。流石は数々の難事件を解決して来た凄腕のエージェント...言うだけの事はある 」

 

 

「お前こそ何処の誰だ?単なる秘書じゃないだろう、さながら何処かのスパイか何かじゃないのか? 」

 

レオンが右腰のホルスターから拳銃(H&K USP)へ手を掛けようとした瞬間、空気が張り詰める。

下手をすればこの場で銃撃戦となり兼ねない中で女性は小さく含みのある笑みを浮かべて呟いた。

 

「......、それは世界のバランスを大きく覆し変革を促す 」

 

 

「...何? 」

 

 

「それと私の名は。また何処かでお会いしましょう?合衆国のエージェントさん 」

 

それだけを言い残し彼女は踵を返し施設の中へ消えると

一方のレオンは彼女が残した言葉の意味に対し疑問符を抱きながら立ち去るのだった。

異質なるものとは果たして意味し...そしてその裏では何が蠢いているのかは誰も知る由が無い。

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