BIOHAZARD-PALADISE・LOST- 作:秋乃楓
「──此方アルファ、都市部警備用B.O.W.と
数多の銃声が響き、B.O.W.と呼称された化け物が咆哮する。約3mの身長を持つそれは何かを探すかの様に暴れ続けていた。
すると黄色い腕章を右腕に付けたガスマスクの兵士達が交戦中の部隊の後方から出現し構えたのは拘束用のワイヤーが備わった専用の銃、そして1人が右腕を振った瞬間それが放たれる。
空を切ったそれはB.O.W.の両腕、胴体と結び付くと地面へ先端部にある鉄製の杭が突き刺さって身動きを封じると
最後に現れた上下黒のスーツに対し銀髪をオールバックにした碧眼に痩せ型の男が兵士を掻き分けた末に引き抜いたのは銀色の拳銃の様な物、それを拘束したB.O.W.へ向けて引き金を引くと小型の針が内蔵された特殊弾が首筋へ命中し動きを止めた。
「警備用B.O.W.の沈黙を確認...各自事態の収拾を開始せよ。B.O.W.はコンテナへ搭載後に再拘束を!お手数をお掛けし申し訳ございません......ルーク様 」
赤い腕章を付けたガスマスクの男が彼へそう話すとルークと呼ばれた男は右手を上げて静かに頷いた。
「...警備用として多額の資金を利用し導入したB.O.W.、ネメシス。だが調整が必要らしい。奴が動いたという事は何かを感知したという事...か 」
「新たに導入した被検体達は全部で25名の内死亡したのは1名、その他24名は未だにあの学園で過ごしていますが実験日は何時になさいますか? 」
「そうだな…本来のプランと差し支えなければ早い段階でも構わない。失敗した場合は速やかに被検体を殺処分し痕跡を一切残すな、それから奴には再び新たな被検体確保の要請を送れ。確かな確証が得られさえすれば我々の計画はより進歩するだろう 」
「畏まりました 」
敬礼した兵士が立ち去るとルークと呼ばれた男は運ばれていくネメシスを見た後、端末へ送られて来たデータを見ながら呟く。
「流石はあの女が作ったウィルスだ…Tウィルスの性質に加え、E型特異菌が持つ特性を組み合わせる事で生まれたのがゼノ……高い感染率と共に支配する側の者が感染する事で感染者を支配し中枢核の存在となり意のままに操る事が出来る。まさに異質とも呼べる存在なのは間違いない 」
彼は鼻で笑い、その場から兵士数人と共に立ち去ると1人の兵士からタブレット端末を差し出されるとそれを受け取った。
そのタブレット端末には数多くの非検体の名が連なっており[DEAD]という文字か[INFECTION]が名前の横へ並んでいる他に
それ以外には[ALIVE]の文字が記述されている。そして中には当然リナ達の名前も記載されているがリナの名前の横には[UNKNOWN]と記されていてそれを見た彼は眉間に皺を寄せる。
「...聞き分けの悪い個体が居る様だが 」
「リナ・クロフトですか?部下が調べた所、彼女が通っている大学はクズ共の集まりの様で彼処にはまともな学生はそれなりにしか居ませんでした。彼女が選ばれたのはエドワードという叔父の推薦のようですが...如何なさいますか? 」
「好きにさせておけ。どうせ何も出来んクズには変わりは無い......万が一の事態があれば処分しろ 」
端末を突き返した彼は隔壁で覆われた場所へと歩みを進め、その奥へと消えた。
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あれは夢なのか。俄かには信じ難いが自分でも良く解らないままだった。
醜悪な見た目をした嘗て人間だった筈の何かであるゾンビ、自身の身長を上回る程の巨躯をした全身黒づくめの化け物。
特に後者に追い掛け回されて生死の危険を感じたのは言うまでもない。
横たわっていたのかリナは身体を起こすと白い壁に木目調の床がある事から自分が居るのは学校の中という事は解ったのだが真っ暗で何も見えない、ライトを手探りで探してそれを拾って点けると目の前にはゾンビが居て彼女へ襲い掛かる。
「ひッ!?く、来るな...こっちに来ないで!! 」
強引に跳ね除けて足首を掴まれそうになるがそれを振り払って後方へ振り返るとそこには
生徒達がゾンビと変わり果てて彼女を見るや集団で迫って来る。その中には他の留学生も教師やスタッフらも含まれているだけではない。クレアとレイラもゾンビと変わり果てていて彼女達の手がリナへ迫り来る。そして彼等は、ひと塊り分の餌を喰らう家畜の様に眼前の少女へ狙いを定めて続々と迫り来る中でリナは目を覚ました。
「イヤああああああぁああぁぁぁッ──!? 」
「リナ、落ち着いて!此処は大丈夫だから!! 」
額から大粒の汗を流しつつ荒い呼吸と共に周囲を見回す。そこに居たのはレイラともう1人、眼鏡を掛け褐色肌をしウェーブ掛かった艶のある黒髪を後ろでバレッタを用いて短く纏めた30代の女性。2人は此方を心配そうな眼差しで見つめていて何とか落ち着きを取り戻すと女性の方から先に声を掛けて来た。
「貴女が部屋の入口で倒れていたのをこの子が起きたタイミングで気付いて偶々、夜勤だった私に知らせてくれたのよ。此処が何処だか解る? 」
「…医務室? 」
「そう。私はエマ・グレイス、此処の学校の保険医でこの島の医者よ。 」
「…あ、あのッ…!私…… 」
「着ていた服と下着なら大丈夫、洗濯機に入れてあるから。代わりの服はこの子が持って来た貴女の鞄に入ってる 」
「…はい、ありがとうございます 」
下着姿のリナは恐らくあの事も知られたのだろうと思うと恥ずかしい気がしたがエマは服の事に関してそれ以上何も言わなかった。少し間が空くと再び話し始める。
「貴女、リストタグを付けていないようだけど…それはどうして? 」
「…そ、それは…ッ……その…無くしたというか…わざとじゃないんです!本当に…わざとじゃ…… 」
リナが話すのを渋っているとエマは事情を察し頷いていた。
「……大丈夫よ、誰にも言わないから。このリストタグが何なのかは既に知ってると思うけど、これにはヒトを化け物へ変えるウィルスが本当に仕込まれている。禁止区域へ近付けば警告音が鳴ってそれでも立ち退かない場合は口封じという形でウィルスを体内へ流し込まれる…でもそんなのは連中が考えた真っ赤なウソで正直に言えばいつどうなるかなんて誰にも解らない 」
「…やっぱりアレは本当だったんですね。てっきり向こう側が用意したデモンストレーションかと思ってた 」
「簡単に言えば見せしめよ。過去にこの島へ訪れた留学生の男の子が突然、原因不明の吐血と発熱を引き起こして此処へ運び込まれてね...この島にまだしっかりとした医療施設が無くてその時も私が対応したんだけどその頃にはもう手遅れだった。アレはもう人じゃなくてバケモノ、ホラー映画に出て来るゾンビと同じだったわ 」
「...私、昨日の夜に街へ行きました。此処へ来たのは行方不明の姉を探す為です。そうしたらアパートでゾンビに襲われて、そうしたら今度は大きな人型の化け物に追い掛けられて 」
エマの方を見つつ話すと彼女は小さく頷いて彼女の左手へ自身の右手を添えて話し掛けた。
「実はエスペランサには住宅街と観光街が一緒になった居住エリアとはもう1つ別で旧居住エリアがあるの。そこはフェンスの先にある場所でもう誰も彼処には住んでいない...何故なら軽度の
「...エスペランサで? 」
「試験的に島へ移住した約100人の男女が突然、先程と同様の症例を発症し一夜であの街は地獄と化した。事態を重く見た政府は軍を派遣し一晩掛けて鎮圧したそうだけどその詳細な事実は一切知らされていない。そこを隔離し無かった事にして大きな鉄製の壁とフェンスを敷いて隠蔽し今日に至る......それと彼処はB.A.C.の研究者が住んでいたエリアと近いから貴女が訪れた場所は社員が使っていた施設で間違いないと思うわ 」
「...でもどうして先生がその事を知ってるんですか? 」
そう尋ねるとエマは徐に椅子から立ち上がって彼女が普段使用している机の方へ。
そして金色の丸い形状の写真入れが付いたペンダントを手にして戻って来ると2人へその写真を見せて来ると
そこには白い肌をした若い茶髪の男性とエマが写っていた。
「私も此処で恋人を亡くしたから。彼も医者だったんだけど...さっき話した災害に巻き込まれて命を落とし、私が向かおうとした時にはもう島への立ち入りは禁止されていて亡くなったのを知ったのは全ての事態が終息した後。遺体は惨い状態なのと感染している可能性が高いからって理由で見せてもらえなかった 」
話を聞いたリナとレイラは何も言わずにいたが拳を握り締め、意を決しレイラが今度は口を開いた。
「私達は...簡単に言えばモルモットって事ですよね。海が綺麗な人気の観光都市で、島に住む同じ世代の子と学んで遊んで1週間過ごして......その経験を将来に役立てる切っ掛けにする為の留学なのに...... 」
彼女はつたない言葉で話すが途中から嗚咽が混ざり出し、少しずつそれが鮮明になっていく。
「私、帰りたい...!クレアと一緒に学園に、私のパパとママが居るイギリスへ......帰りたい!!最初は...我慢すれば大丈夫だと思ったけど...先生とリナの話を聞いてから...何だか......凄く怖くなっちゃって... 」
初日にあんなモノを見せられている以上、当然だがレイラも正気で居られる筈がない。
恐らく此処に居る留学生全員がそういう心境なのは変わりないだろう。
島に居るこの学校の生徒や教職員達は慣れているのか...或いは感情を押し殺しているだけなのかは解らないが。
そしてレイラはその間、俯いたままスカートを握り締めて大粒の涙を零していた。
「...私、校長先生と話して来る。レイラをお願い出来ますか? 」
「良いけど...1人で大丈夫? 」
「...平気です、大人と話すのは嫌でも慣れてますから 」
ベッドから出た彼女は鞄から紺色のジーンズと袖の無いノースリーブの黒いシャツを出し双方へ着替えると
付近の鏡で軽く髪型を整える。改めて自分の姿を鏡で見ると左頬や右手首には包帯や絆創膏が丁寧に巻かれたり付けられていた。ハンガーに掛けられていた上着から昨日手に入れた拳銃を右ポケットへしまって保健室を出る、道案内の看板を頼りに
校長室へ赴くと途中で生徒会長のアイラと鉢合わせる。
「貴女は確か留学生の...リナさんですよね?もう授業は始まっていますから速やかに指定された教室へ── 」
「...ごめん、退いてくれる?今急いでるから 」
「何方へ行かれるのですか、明確な理由も無しに勝手な行動は...! 」
「いいから退いて!! 」
強引に振り切るとそのまま校長室へ訪れたリナはノックも無しにドアを開け放つと黒い椅子へ腰掛けている白髪交じりの黒い髪をした中年男性を見てそのまま真っ直ぐ近寄る、彼の名はアダムといってこの学園の校長でもあった。
「な、何だねキミは!?ノックもせずにいきなり入って来るとは非常識だぞ!? 」
「...留学生のリナ・クロフトです、留学生を早急に此処から避難させてくれませんか!?勿論、学校の生徒達も...関係者全員も含めて!!此処に居るのは危険です!! 」
「バカを言うな、唐突に言われてもそんな事出来る訳無いだろう!?何1つ証拠が無いというのに!! 」
「...入場ゲート先の建物、そこで留学生の1人がリストタグの実演でガスマスクを付けた軍人らしき人に射殺されました。そのリストタグには人間を化け物へ変貌させる薬が含まれていて、それで──!! 」
だが彼女の言葉は1人の女性が放った「何の騒ぎですか 」という言葉により掻き消された。奥の部屋、応接室から出て来たのは赤茶色の髪を肩辺りで切り揃えた人物で首から下は修道服で首から金色の十字架を下げていた。
彼女はフレイヤ・グラニカスといってこの学園の副校長でもある。
「それは何かの間違いでしょう。下手な騒ぎを起こせばトラブルになり兼ねない...それに我が校は設立当時から続く由緒正しい学校です。くだらない映画の様に信ぴょう性を疑う様な話が有る訳がないでしょう? 」
「...でも!この目で確かに見たんです!! 」
「貴女位の歳の子...中でも学校の校則や社会のルールに従わぬ者は真面目に勉学に励む者へそういう虚言を口にする。そうすれば注目を浴びて貰えるし、相手もして貰える...貴女もそういう側の人間だと此方の行った事前調査で解っています。その話を信じる者は我が校には居ませんよ 」
「ッ......! 」
「理解したのなら速やかに立ち去りなさい、貴女のすべき事は他にある筈ですよ。アイラ、彼女を連れて此処を出なさい...良いですね? 」
その言葉を聞いたアイラは頷き、リナの手を引いて校長室を後にする。
暫く歩いてからリナはその手を振り払った。
「...どうして私の話を信じてくれないの!?私だけじゃない...他の留学生達もみんな見たんだってば!!それを嵌めてたらゾンビみたいな化け物になるんだよ!? 」
「落ち着いて下さい!...そんな話、信じろと言うのが無理があると思います。それに他の方が見ていたとしても忘れたいんじゃないですか?その時に何を言われたか私は解りませんが......無理に先導し問題を解決しようというのは得策じゃないと思います 」
「...そうだけど...でも、でもこのままじゃ...ッ!! 」
「リナさん。私達は今日までこの学園で生き、多くの仲間達と過ごし学び、時には島の外から来る留学生の皆さんと過ごした事もありました......それに貴女の言葉が嘘じゃないのは私も何となくですが解る気がします 」
「......え? 」
「貴女は真っ直ぐで純粋な目をしている...とても嘘や冗談でそういう事を軽々しく言ったりなんかしない。私は貴女の話を信じます、でも授業だけは真面目に受けて下さいね? 」
リナの右手を両手で握り、微笑み掛ける。それから彼女は立ち去ると残されたリナは握られた手を見て小さく笑った。
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その日は昼過ぎから突如として雨が降り始めた。
雨脚や風が強まる中、人影がフラフラと森林から出て校舎の方へ歩み寄るのだがそれは黒いレインコートを着ていて
両足は何も履いていないのか素足で白い肌には所々擦り傷があった。フェンスを越えた所で見回りに訪れていた男子2人と
鉢合わせ、ライトの明かりを向けられる。
「おい!お前何年だ?こんな所で何やってる、校舎へ早く入るんだ!! 」
その相手は頭部の右側を黒くウェーブ掛かった髪で隠し、左から覗く瞳の色は金色で
白い肌と少し吊り上がった目が印象的で歳は10代半ば程。首には銀色のチョーカーの様な物が取り付けられていた。
「...... 」
話さず黙っている事に苛立ったのかもう1人が近寄って相手の胸倉を掴む。
「此奴、黙ってないで何か──ッ!? 」
彼女はレインコートの下に何も身に付けていない、つまり裸だった。
雪の様な白い肌をした成長途中の平坦で薄いバストは華奢な身体と相まって美しいく妖艶にも感じられる。
彼が邪な考えを巡らせたまま硬直している中で少女は視線を彼に合わせてから口を開く。
「......られない 」
「は?何だよ、もっとはっきり── 」
「誰も...此処から......逃げられない...... 」
顔を近付けて来た少女は彼の唇を奪うと強引にキスをし
口を離すと銀糸が2人の合間に引くが直後に彼は地面へ蹲ると共に苦しみ出して
両目と口から血を流し倒れ込んでしまった。
「おい大丈夫か!?しっかりしろ、おい!おいったら!! 」
「う...ぁ......ぐゥ......グルルゥアァアアアァアァァァッ──!! 」
突然起き上がった男子生徒は既にゾンビと化してもう1人へ襲い掛かる、そして悲鳴を上げている相手の血肉を貪り始めていた。
断末魔の叫びは雷鳴に掻き消され何1つ聞こえる事は無く変貌した彼はフラフラと次の獲物を求めて校内へ向けて彷徨い歩く、
少女もまたその足で校舎の裏口から中へと侵入。時刻は夜23時で予期せぬ形で発生した出来事だった。