第八十五区画。
第八十九区画以降の変化で、悠人はもう、アオイの見取り図なしでは先に進めなくなっていた。
異変の数は区画ごとに増え続け、壁の色調、天井の高さ、床のタイルの枚数、空気の湿度、反響音の微妙なずれ——人間の知覚の限界に挑むような微細な変化が十数個も同時に仕掛けられている。見取り図がなければ、全てを拾い上げることは不可能だ。
アオイに依存している。
その自覚はあった。だがそれ以外に道はなかった。
第九十区画のカウンター。アオイが座っている。今回は——
ブレザーを着ていない。ブラウスのボタンが上から三つ外れ、胸の谷間までが大きく開いている。スカートの丈は太ももの半ばまで短くなり、ストッキングは履いていない。生足の白い太ももが、ダウンライトの光を反射して艶っている。
悠人の息が止まった。
一気にここまで変わっている。今までの微細な変化とは次元が違う。アオイの身体が——かなりの部分が露出している。
「異変だ。服装が大幅に変わってる」
声が上ずった。アオイの胸元から目を逸らせない。ボタンの隙間から見える谷間の影、ブラジャーのレースの縁、肌の白さ。網膜が全部拾ってしまう。
「はい。通路の指定により、服装が大幅に変更されました。申し訳ございません」
アオイが事務的に答えるが、姿勢を崩さない。その毅然とした態度が、却って露出した肌とのコントラストを生んでいる。
悠人の股間はとっくに限界を越えていた。ズボンの前面がテントのように張り出し、歩くたびに布地と擦れて鈍い快感が走る。この状態でアオイの前に立っているのは拷問に等しい。
「お客様。次の区画の見取り図です」
アオイがクリアファイルを差し出す。前かがみになったその姿勢で、ブラウスの胸元がさらに開いた。乳房の上半分が押し出されるように見え、悠人は思わず息を飲んだ。
ファイルを受け取るとき、指が触れた。アオイの指は温かかった。人間の体温。その温もりが、腕から肩を伝って、悠人の下腹部の熱と合流した。
——この女に触れたい。たまらない。
悠人はファイルを握りしめ、早足でカウンターから離れた。
*
第九十一区画。異変十四個。
見取り図に従って一つずつ確認していく。十三個まで見つけた。十四個目は——「案内係」。
カウンターのアオイを確認する。
悠人は凍りついた。
アオイがカウンターの上に突っ伏していた。その姿勢で——ブラウスのボタンが全て外れ、前側に大きく開いていた。カウンターに押しつぶされた乳房が横に潰れ、白いブラジャーから溢れ出しそうなほどに形を変えている。スカートは腰までずり上がり、黒い下着と生の尻の曲線が無防備に広がっている。
悠人の脈が跳ね上がった。下腹部に熱い血が集中する。
「アオイ——」
アオイが顔を上げた。異変だ。引き返すべきだ。だが悠人の目はアオイの胸元に釘付けにされていた。ブラジャーのレース越しに見える乳輪の形。押しつぶされて変形した肌の柔らかさ。
「……申し訳ございません。通路の指定で、服装が——」
アオイは姿勢を正そうとしたが、起き上がる動作でブラウスがさらにずれ、右の肩から完全に滑り落ちた。肌襦のままの肩と、ブラジャーの紐が一本、白い肌の上に横たわっている。
「っ——」
悠人の股間が脱げて痛い。
「お客様、引き返してください。これは異変です」
アオイがブラウスを話そうとするが、ボタンが全て外れていて留められない。悠人はカウンターの向こう側に回り込んでいた。初めてアオイと同じ側に立つ。
近い。
アオイの身体が、目の前にある。半ば脱げたブラウス。ブラジャーから溢れかけた乳房。ずり上がったスカートの下の、引き締まった太もも。
異変だ。引き返せ。今すぐ引き返せ。
だが悠人の身体は別の命令を出していた。何十区画もかけて蓄積された性的興奮が、もう理性では押さえきれない水位に達していた。
「……お客様は、引き返さなければなりません」
アオイが小さく首を振った。
「私が泣いているのは異変です。通路がそう仕掛けました。引き返してください」
「分かってる」
「分かっているなら——」
「分かってるけど、無理だ」
悠人はアオイの両肩を掴んだ。
その瞬間、何十区画もかけて蓄積された性的興奮が、堰を切ったように溢れ出した。アオイの肌の感触。温かい。柔らかい。指の下で震えている。
「お客様、引き返して——」
「無理だ」
声がかすれた。欲望で嗄潰れた声だった。
「何十区画もお前を見てきた。ボタンが外れるたび、スカートが短くなるたび、体がたまらなくなっていった。今——もう限界だ」
悠人の手がアオイの半ば脱げたブラウスの襟を掴んだ。残っていたボタンが弾け飛び、ブラウスが完全に開いた。白いブラジャーに包まれた胸が、目の前にある。
「っ——お客様!」
アオイが口を押さえた。だが悠人の手は止まらなかった。ブラジャーのホックに指をかけ、外す。小ぶりだが形の良い乳房が零れ出た。先端は薄桃色で、既に硬く尖っている。何十区画も想像し続けた、あの布の下の形。
——想像通りだ。
悠人は貪りついた。飢えた獣のように乳房に唇を落とし、口で先端を含み、舌で転がし、強く吸った。もう片方の手でもう一つの乳房を揉み、指の間で先端を挟んだ。
「あっ——あぁっ……っ」
アオイの背中が反った。事務的な声が剥がれ、動物的な嘆声が通路に響いた。悠人は口を離さず、歯で先端を軽く挟みながら、アオイの下腹部に手を滑らせた。
スカートのファスナーを下ろし、腰から引き剥がした。
アオイの下半身が——黒い下着一枚だけになった。引き締まった太もも、滑らかな下腹部、腰骨のライン。
悠人の理性はとっくに蒸発していた。残っているのは、何十区画分かけて蓄積された、制御不能の欲望だけだった。
*
何十区画分の欲望が悠人を暴走させていた。
アオイをカウンターの内側に押し倒し、脱がした衣服の上に寝かせる。アオイの身体が目の前に広がっている。むき出しの乳房、汗に濡れた腹部、黒い下着に包まれた最後の砦。
悠人はまずアオイの乳房に顔を埋めた。何十区画ものあいだ想像し続けた感触が、ついに舌の上にある。薄桃色の乳首を口に含み、舌先で弾くように転がす。左手でもう片方の乳房を鷲掴みにし、指の間で先端を挟み、引っ張り、捻った。柔らかな肉が指の間から溢れ、形を変え、また戻る。その弾力に脳が痺れた。
「あっ——あ、あぁっ……そんなに、強く——っ」
アオイの背が反り、腹筋が波打った。悠人が歯を立てて軽く噛むと、アオイの口から堪えきれない嬌声が弾けた。乳首は唾液にまみれて赤く充血し、舌を離すたびに蛍光灯の光を受けてぬらぬらと光っている。
悠人の舌がアオイの腹部を這い下りた。臍を舐め回し、下腹部の薄い産毛を唇で辿り、黒い下着の縁に到達する。
最後の一枚に指をかけた。
「あっ——お客様……そこは……」
下着を引き下ろす。アオイの陰部が露わになった。整った形。薄い恥毛の下から、ぷっくりと膨らんだ陰唇がすでに蜜を滴らせていた。ぬめるような透明な液体が、太ももの内側を伝って床に糸を引いている。アオイ自身の意思とは関係なく、身体が完全に反応していた。
「こんなに濡れてる。身体は正直だな」
「……言わないで……ください……」
アオイが太ももを閉じようとした。悠人はそれを両手で押し開いた。
「開けよ」
低い命令。何十区画も蓄積された欲望が、もう礼儀も遠慮も消し飛ばしていた。
太ももが開かれた。充血した陰核が、肉のひだの間から覗いている。悠人はまずそこに舌を這わせた。
「ひっ——あぁぁっ!!」
アオイの腰が跳ね上がった。悠人は両手で太ももを押さえつけ、逃がさない。舌先で陰核を包み込み、左右に転がし、吸い上げる。同時に中指を膣口に押し込んだ。
アオイの膣内は狭く、温かく、吸い付くように柔らかかった。指を入れた瞬間、内壁が痙攣的に締め付けてきた。悠人の指を離すまいとするように、ぬるぬると粘膜が絡みつく。指を引くたびにじゅぷ、と淫靡な水音が通路に響き渡った。
二本目の指を加えた。かき回すように動かしながら、舌は陰核から離さない。吸って、舐めて、弾いて——指と舌の二重攻撃にアオイの身体が制御を失っていく。
「あっ、あっ——お客様——そこ——だめ、だめっ——おかしくなる——っ」
声を抑えようと唇を噛むが、もう無駄だった。指を動かすたびに、アオイの全身がびくびくと跳ねる。膣壁の奥で指先に当たる凹凸を探り当て、そこを集中的にこすり上げると、アオイの膣内から透明な液体がどろりと溢れ出し、悠人の掌を湿らせた。
「あぁっ——何か、出て——お客様、止め——止めないで——っ!」
アオイの太ももがぶるぶると震え、腹筋が限界まで収縮した。悠人が陰核を唇で強く吸い上げた瞬間——アオイの膣壁が一斉に締まり、びしゃっ、と大量の愛液が悠人の顔面を濡らした。
「——ひぁっ——」
アオイの目が裏返り、全身が痙攣した。初めての絶頂。意識が飛ぶほどの快感に、アオイは口をだらしなく開けたまま、涎を垂らしていた。
悠人は顔についた愛液を拭いもせず、ベルトのバックルを外した。ジッパーを下ろす。何十区画ものあいだ張り詰め続けていた陰茎が解放された。ずっと勃起し続けていたそれは、限界まで充血して怒張し、先端からは透明な先走りが糸を引いて垂れている。
アオイの手が悠人のものに触れた。震える指が、熱く硬い肉棒の形をなぞるように包み込む。
「……大きい……こんなの……」
悠人はアオイの太ももを大きく開き、自分のものを入り口に当てた。先端が膣口に触れた瞬間、先ほどの絶頂で溢れた愛液がぬるりと絡みつき、アオイが全身を強張らせた。
「力を抜いて」
「……怖い……でも……入れて……」
アオイ自身が、もう求めていた。
ゆっくりと押し入る。亀頭が膣口を押し広げ、じわじわと沈み込んでいく。狭い膣壁が陰茎のかたちに合わせて押し広げられ、きつく締め上げながらも奥へと引きずり込む。アオイの爪が悠人の背中に食い込んだ。
「あぁっ……あ……はいって、くる……裂けちゃう……っ」
根元まで全てが入った瞬間、アオイの子宮口に先端がこつん、と当たった。アオイの目から新しい涙がこぼれた。苦痛ではない。身体の奥底まで埋め尽くされた充足感の涙だった。
「動くぞ」
「……はい……」
ゆっくりと腰を引く。膣壁がぴったりと吸い付いたまま、陰茎を逃すまいと締め上げる。ずるり、とした摩擦の感触に二人同時に声が漏れた。そしてゆっくりと押し込む。奥まで、奥まで。
じゅぷっ、ずちゅっ——結合部から淫靡な水音が響く。愛液がペニスの根元から溢れ、アオイの尻を伝い、床に染みを作った。
「ん……んぅ……そこ……お客様、そこ——っ」
奥にある一点に先端が当たったとき、アオイの膣壁全体がぎゅう、と締まった。背中が小さく反り、アオイの口から甘い悲鳴がほとばしる。
「ここか」
「はい……そこ……いい、です……もっと、強く……」
悠人はその角度を固定し、腰を打ちつけ始めた。最初はゆっくりと、やがて我慢しきれなくなり、速く、激しく。肉と肉がぶつかるぱちん、ぱちんという湿った音が等間隔に通路に反響する。
「あっ、あっ、あっ——お客様——すごい——奥、奥ぅっ——」
アオイの声はもう制御を失っていた。事務的な口調の欠片もなく、ただ肉欲に溺れた雌の声だけが残っている。涎が顎を伝い、汗がシーツ代わりの衣服を濡らし、乳房が突きのリズムに合わせてぶるんぶるんと揺れる。
悠人はアオイの脚を両肩に担ぎ上げた。角度が変わり、さらに深く突き込める体勢。アオイのむき出しの陰部が丸見えになり、結合部から泡立った白い愛液が溢れ出ているのが見えた。膣口は陰茎のかたちにぴったりと張り付き、引くたびに陰唇の肉が引っ張られ、押し込むたびにぐちゅっ、と卑猥な音を立てて飲み込む。
「あぁぁっ——そんな、体勢——恥ずかしい——見ないで——っ」
「見てる。全部見てる。お前のここが俺を咥え込んでるの、全部見えてる」
「やぁっ……言わないで……でも、止めないで——もっと——もっと奥——っ」
悠人は腰の動きをさらに速めた。アオイの身体を折り畳むように押さえつけ、真上から打ち下ろすように叩きつける。子宮口を何度もこじるように突き上げるたびに、アオイの全身が痙攣し、膣壁が波打つように収縮した。
「何か——来ます——また来る——お客様——だめ、だめぇ——」
「いけ。いっていい」
「いく——いっちゃう——あぁっ——あぁぁぁっ——」
アオイの膣壁が一斉に痙攣した。全身が弓なりに反り返り、口から涎の糸を引きながら声にならない絶叫を上げる。膣内がめちゃくちゃに収縮と弛緩を繰り返し、悠人のペニスを根元から先端まで搾り上げるように蠢いた。愛液がびしゃびしゃと結合部から溢れ、二人の恥骨を濡らす。
「っ——もう無理だ——出す——」
「中……中に……ぜんぶ……ください……」
アオイが絶頂の余韻の中で、うわ言のように呟いた。
悠人は最後の数突きで腰を限界まで叩きつけた。一突きごとに子宮口をこじ開けるような衝撃。アオイの膣壁がそのたびにきゅう、きゅう、と締め上げる。
——最後の一撃。
悠人は奥の奥、子宮口に先端を押し当てたまま腰を止め、射精した。どくん、どくん、どくん——脈打つように熱い精液が何度も何度も放出される。何十区画分の蓄積が一気に解き放たれた射精は、今までで最も長く、最も激しかった。
「あ——あああぁぁっ……熱い……中、熱い……いっぱい、出てる……っ」
アオイの目が焦点を失い、全身が細かく震え続けた。膣壁が精液を搾り取るようにぺこぺこと痙攣し、一滴も逃すまいと悠人のペニスを締め上げ続ける。子宮の奥が精液で満たされていく感覚に、アオイは再び小さく絶頂した。
「——っ、んんっ……」
長い長い射精が終わり、悠人が腰を引くと、栓を抜かれたように結合部からどろりと白濁した液体が流れ出した。精液と愛液が混じり合った粘つく液体が、アオイの陰裂を伝い、太ももを汚し、衣服の上に水たまりを作る。
アオイの股間は完全に精液で汚れていた。開いたままの膣口からぷくり、と気泡混じりの精液が溢れ、陰毛に白い糸を引いている。
悠人は荒い息のまま、自分のものを引き抜いた。まだ半勃起のそれは愛液と精液にまみれ、ぬらぬらと光っていた。アオイの膣口からは、悠人が抜けた隙間をふさぐように、どろどろの精液がゆっくりと流れ続けている。
荒い息が重なる。
通路が静まり返っている。蛍光灯が一つ、ちかちかと明滅した。汗と精液と愛液が混じった、甘くむせ返るような体液の匂いが通路に充満していた。
「……アオイ」
返事がない。アオイは悠人の腕の中で目を閉じ、涎と涙で顔を汚したまま、穏やかな寝息を立てていた。股間から流れ出る精液が太ももを伝い続けている。
——眠っている。
カウンターの内側。衣服の上に横たわるアオイの寝顔を、悠人はしばらく見つめていた。涙と涎の跡が残る頬。少し開いた唇。汗に濡れた前髪。露わなままの乳房は汗と唾液にまみれ、先端がまだ硬く尖っている。開かれたままの太ももの間には、白濁した精液が名残のように溜まっている。
——俺は、何をしている。
三度目だ。三度目の、異変への敗北。
案内板が視界の端に入る。
『八番出口 →残り——区画』
掠れた文字の向こうに、数字は見えない。大幅に後退したはずだ。七十二区画分の積み重ねが、どこまで巻き戻されたのか。
だが悠人が感じていたのは、後悔よりも深い渇望だった。
ユキの後は後悔した。レイの後は自己嫌悪した。だがアオイの後は——
もう一度したいと思った。身体が、まだアオイの膣内の感触を覚えている。あの吸い付く粘膜、あのきつい締め付け、精液を搾り取るような痙攣。頭ではなく、腰が、ペニスが覚えている。射精したばかりの陰茎が、もう新しい勃起の兆しを見せていた。
「——最悪だ」
悠人は呟いた。だが下半身は、既に次の交合を求めて疼いていた。
*
通路がリセットされた。
だが今回は、何かが違った。
悠人が歩き出すと、通路の壁が変わり始めた。コンクリートでもタイルでもない。壁が——透明になっていく。
壁の向こうに、風景が見えた。
ユキが座っていたベンチがある。ユキが——いた。白いワンピースで、素足で、ベンチに座って項垂れている。最初に出会ったときと同じ姿。
反対側の壁の向こうには、レイがいた。作業着を着てモップを持ち、床を掃除している。金髪のショートカットが蛍光灯の光に輝いている。
そして正面——通路の先に、アオイがいた。カウンターに座り、背筋を伸ばし、悠人を待っている。
三人が同時に。
通路の壁が完全に透明になった。三つの空間が重なり合い、悠人は四方を三人の異変に囲まれていた。
ユキが顔を上げた。潤んだ瞳が悠人を捉える。
「——悠人」
名前を呼ばれた。初めて。
レイがモップを止めた。切れ長の目が悠人を射抜く。
「やぁ、久しぶり。待ってたよ」
アオイが立ち上がった。カウンターから出てくる。今度は——何も着ていなかった。最初から、裸だった。
「悠人さん。おかえりなさい」
三つの声が重なる。三つの身体が近づいてくる。ユキの冷たい指。レイの熱い指。アオイの温かい指。六つの手が悠人の身体に触れた。
——引き返せ。
頭の奥で、声がした。もう消えかけている声。だがまだ——まだ鳴っている。
悠人は一歩、後ろに退いた。
六つの手が離れかけた。三人の表情が変わった。レイが眉を寄せ、アオイの微笑みが揺らいだ。
——引き返せば、進める。三人がいる。つまり異変だ。引き返せ。
悠人は踵を返そうとした。
「——悠人」
ユキの声だった。怯えた、か細い声。
「行かないで……ひとりは……怖い……」
最初に出会ったときと同じ台詞。同じ震え。同じ潤んだ目。
だが悠人は見た。ユキの瞳の奥に——あの光。あのとき見逃した、硝子のように冷たい光。観察する目。記録する目。
「……お前」
「ユキ」ではない何かが、ユキの顔で悠人を見ていた。
ユキの唇の端が——ほんの僅かに、吊り上がった。
「……逃がさないよ」
ユキの声ではなかった。レイの口調でもなかった。三人の誰のものでもない、通路そのものの声。
その瞬間、六つの手が同時に悠人を掴んだ。シャツのボタンが弾け飛び、ベルトが引き抜かれ、下着が下ろされた。抵抗する間もなく裸にされた悠人の身体に、三つの温度が重なった。
「行かないで」
「ここが気持ちいいでしょ?」
「ここが、あなたの場所です」
ユキが跪いた。冷たい唇が悠人の陰茎に触れる。レイが背後から密着し、熱い乳首を背中に押し当てた。アオイが悠人の手を取り、自分の濡れた股間に導いた。
三つの快感が同時に全身を蹂躙し、最後の理性が破断した。悠人は獣になった。
ユキを押し倒し、冷たい膣内に一気に突き入れた。覚えている。この感触を覚えている。冷たく、きつく、吸い付いてくる。ユキが痙攣して果てる前に引き抜き、仰向けのレイに叩き込んだ。灼熱の内壁が陰茎を焼く。これも覚えている。レイの表情が崩れていく。それも堪えずに引き抜き——アオイの前に立った。
アオイが四つん這いになっていた。引き締まった背中、細い腰、突き出された尻。太ももの間から蜜が糸を引いている。
「悠人さん。私を——めちゃくちゃにしてください」
何十区画分の渇望を叩きつけるように、背後からアオイに突き入れた。ぎゅうっ、と馴染んだ膣壁が悠人を迎え入れる。
「あぁっ——やっぱり——悠人さんので——いちばん——合う——っ」
三人の身体を次々と貪った。ユキの冷たさ、レイの熱さ、アオイの温かさ。三つの膣を往復しながら、悠人の人格が快楽の中で輪郭を失っていく。
最後はアオイの中で果てた。子宮口に先端を押し当てたまま、射精した。何十区画分の蓄積が一気に解き放たれた射精。精液がアオイの子宮を満たし、溢れ、太ももを伝った。
ユキとレイが這い寄り、溢れた精液を舌で拭い取った。悠人のまだ硬い陰茎を二人の舌が交互に舐め、また勃たせていく。
何度果てただろうか。何度射精しても三人は消えなかった。通路全体が体液の甘い匂いで飽和していた。
快感の果てに、悠人の意識が薄れていく。自分の名前が——
「桐山——」
出てこない。
「悠——」
名前の端が崩れていく。アオイの膣内で射精しながら、レイの舌に耳を舐められながら——ふと、ユキの目が見えた。
ユキは笑っていた。潤んだ怯えの目ではなく、硝子の目で。最初からずっとこの目だったのだと、今ようやく分かった。
「——」
三人の腕に抱かれ、三人の体液にまみれたまま、悠人の意識は通路の闇に沈んでいった。