※この作品はR-18です。

Exsilium : The Rule of Seven// Candy&Cherry   作:まるたん・しもんず

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第二話です。
よろしくお願いします。


第2話 元ウェイトレスはバウンサー

荒野を走る一台の車。

1969年式のフォード・マスタング BOSS 429。

その車体は明るいキャンディアップルレッドだがどれだけ荒野を走っているのだろうか、すでにかなりの土埃でその鮮やかさを失っていた。

 

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ここはプラネタ・シャン・グリラ。

外宇宙に進出した人類が重い罪を犯した連中を閉じ込めた流刑惑星。

しかしそんな事実はとっくに忘れ去られボンクラどもが幅を利かす最高にサイテーな惑星だ。

 

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「なあキャンディ、まだ次の街つかねーの?」

 

助手席でダッシュボードの上に脚を投げ出したチェリーがキャンディに声をかける。

 

「もうすぐじゃない?また欲求不満?」

 

クールに返すキャンディ。

 

チェリーはボーッと外の景色を見ながら呟いた。

 

「いやさ、あたしら今、金持ってなくね?」

 

そう。2人は金欠だった。

 

「そうね。あなたのペットは?持ってないの?」

 

ルームミラー越しにヒロを睨みつけるキャンディ。

 

「持ってないですよ!着のみ着のまま連れてこられてるんですから…」

 

「そうだよ。ヒロはいいんだよ!金なんかより立派なもんぶら下げてんだからよ!」

 

「全く…で?どうするの?次の街でバイトでもするつもり?」

 

「いやだよ!てかそんなことキャンディはぜってーしないじゃん。」

 

「あなたが働けばいいじゃない?元ウェイトレスさん。」

 

意地悪な笑みを浮かべ助手席のチェリーを見つめるキャンディであった。

 

「…やめろよ、昔の話は…」

 

嫌そうなに顔を顰めるチェリー。

 

ヒロが興味があるのか目を輝かせてチェリーに聞いた。

 

「えっ!?チェリーさんってウェイトレスしてたんですか?意外だなぁ。いつまでしてたんですか?ちゃんと接客できてたんですか?」

 

「チッ!うるせーよ!余計なこと喋んな。次おんなじこと言ったらケツの穴にグロック突っ込んでぶっ放すぞ!」

 

チェリーは明らかに不機嫌そうだった。

なぜならキャンディに出逢ったばがりの頃の話をされたから。

 

「ねえ、なんで突っ込むのがあなたのベレッタじゃなくて私のグロックなのかちゃんと説明してくれるわよね?」

 

いつもより少しだけ語気が強いキャンディは冷静にみえてかなり気分を害しているようだった。

 

「まあ、いいじゃねーかよ。それよりはやく次の街着かねーのかよ!」

 

そんな、キャンディが見れたことにチェリーは少しだけ自身の機嫌の悪さが解消されたことに口元を緩ませた。

 

「全く…もう着きそうよ。」

 

少しあたりが薄暗くなってきた道の先、ギラギラと光るネオンサインが近づいてくる。

 

ダッシュボードにのせた脚を下ろしたチェリーがボヤく。

 

「なんかよ、どの街も変わり映えしねーよな。なんなら"オールドマンバレー"が逆に特殊だったって思えてくるぜ…」

 

「だいたい人が集まる場所なんてそんなもんよ。だから言ったでしょ…あそこはいい所だって。」

 

そういってチェリーを嗜めるキャンディ。

 

「へぇ、オールドマンバレーってあの"楽園の星空"が見れるってとこですよね?いいですねぇ…ロマンチックで。」

 

口を挟むヒロ。

 

「まあ、住んでるのはジジイとババアだけで本当に楽園ってかあの世に片足突っ込んでるみてーなとこだけどな…」

 

ネオンサインを見つめながらチェリーはそう呟いた。

 

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街に入り、マスタングを適当に路肩に停める。

 

まずキャンディとチェリーが降り、チェリーがシートを前に倒して後部座席からヒロを引っ張り出す。

 

その背後からキャンディが

 

「どうする?」

 

と声をかけた。

 

「どうするも何もまずは食い扶持見つけねーと…マジで金ねーからなぁ。」

 

そんな会話をしていると一人の短く髪を刈り込んで顎髭を蓄えた無駄を削ぎ落としたような引き締まった筋肉質な体の男が近づいてきた。

 

「おう!やっぱりあの跳ねっ返り娘どもじゃねーか!?こんなとこで何やってんだ?」

 

と三人に声をかけた。

 

「あっ?」

 

そう言ってチェリーが振り返りその男の顔を見上げると…途端に笑顔に変わる。

 

「なんだよ。おやっさんじゃん!なんでこんなとこにいんの?しかも何だよその格好は!?」

 

親しみがこもったいつもより無邪気な声でその男が着ているライトグレーの丈の短めな男の体には小さ過ぎるスリーピーススーツにツッコミを入れる。

 

「似合ってるだろ?トムブラウンの三揃いだぜ!」

 

おやっさんと呼ばれた男は自慢げにジャケットを広げて戯けたように見せつける。

明らかにその体に対してタイトすぎる。

 

キャンディは少し驚きつつ

 

「お久しぶり…噂で聞いたのだけど…ブラックマンバに噛まれたって…」

 

聞いた噂について尋ねる。

 

「ああ、その通りさ。5日間もがき苦しんで…ヘビの野郎がおっ死んじまいやがったがな!!」

 

おやっさんはそう言って豪快に笑った。

 

「なんだよ!それ!?相変わらずおもしれーな、おやっさんは。」

 

「まあ、あなたが死ぬなんてありえないと思っていたわ。」

 

チェリーは笑い。キャンディも普段見せないような笑みを浮かべた。

 

「で、お前らはまだ街から街へのその日暮らしか?」

 

そうおやっさんに問われ、

 

「まあな…いまさら戻れねーしどっかに住み着くってーのもな。」

 

「まあ、私はいつでも戻ってもいいのだけど…大事な子置いてきたままだし。」

 

それぞれがそんな反応を見せる。

 

「あのぉ…この人は?」

 

ヒロが二人に聞くが、

 

「は?おやっさんはおやっさんだよ。昔、色々世話になったことがあるんだ。」

 

とチェリーが答えるだけ。キャンディは完全無視だ。

 

おやっさんが豪快に笑い、

 

「今よ、この町で酒飲める店やってんだ。俺もオーナー様ってわけだ。お前らも寄ってけよ。」

 

と言ってくれるが、いかんせん二人は金欠。

 

渋い顔でチェリーが

 

「いやぁ、行きたいんだけどさ…マジで金がないんだわ。」

 

とその懐事情を語る。

 

それを聞いたおやっさんはまたも笑い

 

「ならお前らをうちのバウンサーとして雇ってやるよ。そういうのは得意だろ?」

 

そう提案してきてくれる。

 

それを聞いてキャンディの方が珍しく乗り気で

 

「そうね。あなたには世話になってばかりだけど今回も助けてもらうわ。」

 

と快諾した。

 

「ついでにそのひょろ長い小僧は裏方やってもらうからな!」

 

とヒロを指差しておやっさんは何度目かの笑い声をあげた。

 

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「おやっさんの店ってこれ?」

 

チェリーはそう言ってその建物を見上げた。

 

三階建ての豪奢な外観をした木造の建物は荒野にポツンとある街の中で一際目立つ建物だった…良くも悪くも。

 

「すげぇだろ?3階はダンスフロア、2階はプールバーでよ。1階は本格チャイニーズだぜ!このために金積んで一流の厨師を引き抜いたからな。」

 

自慢げに語るおやっさん。

 

キャンディも驚きを隠さずにいる。

 

「よくそんな貯めたわね?」

 

「お前らみたいに無計画で生きてねーからよ!」

 

「チェリーはそうかもしれないけど私はいつも考えてるわ。」

 

「やっぱり自覚ねーのがいちばんやべーんだよなぁ」

 

「たはは…」

 

そんなふうに会話しながら4人は建物内に入った。

 

バックヤードでおやっさんがそれぞれに指示を出す。

 

「チェリーとキャンディはそれぞれ1階と2階にある上り階段に立っててくれ。特に3階のダンスフロアでキメちまった奴は2階に入らないようにしてくれよ。小僧は1階で皿洗いだ!」

 

そう言っておやっさんは1階の厨房にヒロを引き摺って入っていった。

 

「なあ、どっちがどっちに立つよ?」

 

「私は1階。チェリーが2階でいいんじゃない?」

 

「お前、絶対そっちの方が楽だとわかってるだろ?」

 

バウンサーのユニフォームとのことで渡された黒のパンツスーツに黒のドレスシャツ、さらには黒いナロータイを締めたチェリーとキャンディが話す。

 

そう。一通りみてまわって明らかに1階と2階の客と3階の客の質が違うのだ。

 

1階のレストランは比較的中流家庭といった感じ家族連れや食事会をしているビジネスマンが主流で2階のプールバーはさらに上流階級のカップルがメインだ。

それに比べて3階は専用のエレベーターでの入場であるように他のフロアと少し隔離されているようになっておりわかりやすい下層の人間の集まる場所になっていた。

2階から3階への階段もプールバーの利用客が刺激を求めてダンスフロアに行くためのもので2階から階段を上がった側からしか扉は開かない作りになっているのだが…その扉が開いたタイミングで降りてくる客もいてトラブルの元になっているとか。

 

「わかったよ…じゃあ1階は任せたよ。」

 

渋々了承するチェリー。

 

「ええ頑張ってちょうだい。」

 

少し気分が良さそうにキャンディは応えた。

 

------

 

チェリーが2階に上がり3階に続く階段の前に行くとすでに1人同じく黒で統一されたスーツスタイルの細身で長髪の男が立っていた。

男はチェリーに声をかける。

 

「オーナーから聞いてるよ。今夜一緒にここを担当するジョナサンだ。よろしくな。」

 

「ジョナサンね…よろしく頼むわ。あたしはチェリー。」

 

チェリーは笑顔で挨拶する。

 

「オーナーからは荒事に慣れてるって聞いてたからまさかあんたみたいないい女だとは思ってなかったよ。」

 

「ジョナサンも中々に色男だぜ。」

 

「そうかい?なら仕事の後に一杯付き合ってくれるか?」

 

「うーん…まあおごってくれるなら一杯だけ付き合うぜ。その後は悪りぃが専用のがいるんでね。」

 

「OK。あんたみたいな女とならそれでも構わないさ。」

 

「あんがとよ。」

 

階段の前に並び会話が弾む2人であった。

 

30分ほどしてビリヤードに興じていた1組のカップルがダンスフロアに行こうとチェリーとジョナサンが並ぶ階段の前にやってきた。

 

「チェリー、すまないが俺は2人をアテンドするからここ任せるな。もし他のお客様が3階希望されても俺が戻るまで待って貰えばいい。」

 

「ああ、わかったよ。気を使わせてすまないな。」

 

2人はそう確認を取り合い、ジョナサンが客を3階へと連れていく。

 

残されたチェリーはあらためてプールバーを見渡す。

 

(なんか普段のあたしらなら縁のない雰囲気だな…ああ、でもキャンディは…)

 

そう物思いにふけていると階段の上からジョナサンの叫び声が耳に届く。

 

「チェリー、すまない!1人キマってるのが降りてっちまった。上に戻してくれ。」

 

「了解っと。」

 

チェリーが階段を見上げると、やたらとオーバーサイズのTシャツにバギージーンズを穿き髪をコーンロウに編み込んだ黒人の少年とも青年ともとれる年代の男が1人ふらつきながら降りてくる。

その手に2つ重ねた紙コップに紫色の炭酸で割った液体が入っていた。

 

「悪いなブラザー、3階からはここ入れねーんだ。」

 

階段の前に立ちチェリーが黒人男の侵入を防ぐ。

 

「なんら?バウンサーりしては、かわいい女じゃねーの?」

 

黒人男は体を揺らしながら呂律が回っていないようにチェリーに話しかける。

 

「リーンかよ…面倒だな…いや、本当に悪いけど上に戻ってくれ。あたしも抜きたくねーからよ。」

 

チェリーは面倒くさそうにスーツジャケットを広げて肩のホルスターに収まったベレッタM9をちらつかせた。

 

「ああん…いや、悪かっらよ。いやちょっとふらけらだけらってばさ…もどりますろ〜」

 

ベレッタを見た黒人男は狼狽えつつ踵を返し階段を上り始める。

 

「ふぅ…上手くやれたんじゃないか?」

 

それを見てチェリーは独りごちて、上にいるジョナサンに

 

「ジョナサン!今からお一人様、そっちに戻るぜ。」

 

と声をかけた。

 

その時、下の階から聞き慣れたグロック 17の銃声が2発、響いてきた。

 

(嘘だろ!?全くよぉ…)

 

チェリーは顔を顰めながら頭を掻いた。

 

------

 

ここは忘れられた流刑地「プラネタ・シャン・グリラ」

 

人々のDNAに刻まれた「7日の掟」。

それはどんな罪だろうと7日間逃げ延びればチャラになる。

 

そんなふざけたルールが許されるボンクラどもの掃き溜めへようこそ。

 

 

 

 

 

 




三話に続きます。

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