呪い。
この世界には魔法的な力があるけれど、それは『魔法』とは呼ばれていない。
僕らが勝手に『魔法』と呼んでひとまとめにしている力には、大別して二種類存在する。
『
そして重大なことだが、この二つの魔法的な力、どちらもこの世界の人は使えない、という事実がある。
ただし例外もあって、たとえば『魔法的な力による契約』……僕が結ばされたようなものは、太古の昔の人が、聖力か呪力を込めて置いておいたものから、力を取り出す形で行われる。
つまり、この世界の人にとって、『魔法的なもの』は、『先人が遺した資源を食いつぶす行為』に他ならない。
だから、まず、僕が結ばされたような契約は、この世界では使われない。あの形式の契約方法が使われるのは、本当にごく一部の、国家機密を保持するような場合のみだ。
あとは『魔道具』という『それ自体が永続する呪術か聖術なので、魔法めいた現象を起こせる』というアイテムもあるが、もちろん、貴重品だ。貴族の家に代々受け継がれているものが一個あればいい方、ぐらいのものになる。
これはネタバレだが、僕らを召喚する時の力は何から取り出しているかと言えば、その召喚はダンジョン最奥の淫魔女王が力を貸している。
この国の王族はどこまでも淫魔と癒着し、異世界から若者を拉致し、資源をむしりつつ生贄としてダンジョン奥に送り込んでいる、というわけだ。
呪力に適性があるか、聖力に適性があるかは、生まれつき持っているスキルに左右される。
この『生まれつき持っているスキル』というのがいわゆるところの『女神の加護』と呼ばれており、この『生まれつきのスキル』がないとそもそも呪力も聖力も使えない。
なので女神に見捨てられたこの世界の人たちは、『生まれつきのスキル』がなく、呪力も聖力も使えない──という仕組みなわけだ。
聖力は、女神に近しい魂の持ち主が、扱いに長ける。
ナナミさんがそうであるように、魂の性質が『聖』寄りの人が得意、というわけだ。
対して、呪力は淫魔に近しい魂の持ち主が扱いに長ける。
……『淫魔』と言われてしまうとアレだが、まあ、光か闇かで言えば、僕は断然、闇の者だというのは自覚がある。
この世界の淫魔は『えっちなモンスター』という枠では収まらない、もっとおぞましくて圧倒的で邪悪なものなので、まあ、通俗的な淫魔っぽさは僕にはないが、この世界の邪悪な淫魔っぽさなら、かなりあると言えるだろう。
だから……
「私が治療をしようとしたら……もっと、酷くなって……」
聖女が呪術によるバッドステータスを治癒しようとすると、反発して、反応が酷くなる。
「……怖くなっちゃったの。でも、それでも、治療を続けた方が、よかったのかな……」
「いや、やめて正解だよ」
しかも、『それでもかけ続ければ消える』というようなものではない。
これは淫魔が女神の加護持ちを生贄に捧げさせようとしている理由でもあるのだけれど、淫魔にとって、聖力というのは、その持ち主まで含めて、非常に栄養価が高く美味なエサらしい。
なので呪術に聖力を与えると、それを食べて呪術が成長する。
逆もそうだ。まあ、聖力によるバッドステータスというのは知らないのだけれど(麻痺や毒は別に聖力の状態異常ではない)、そもそも、ダンジョンの資源というのはかつて、女神への供物だった。
呪力がたっぷり籠もったその供物は、女神にとって、極上の栄養源らしい。
だからこそ。
供物を独占するため、女神の選定を受けた極上の聖力使い──『勇者』を罠にハメてダンジョンの奥に封じ込めた人間たちは、女神の加護を失ったわけだが。
「さて、呪いを解くけれど──ああ、これは、少し、酷い光景になるかもしれない。見ない方が、いいと思うよ」
レイナの呪術紋の位置は下腹部、つまり子宮だ。
しかも、かなり強いのが、見ただけでわかる。
十五階層のボス。転移者が初めて遭遇する淫魔。
……僕が知っているゲームにおいて、主人公は転移者だった。
そいつはクラスメイトたちと協力して……クラスメイトたちの中から三人の仲間を選んでダンジョンにアタックするという方式で、ダンジョンを攻略していった。
そうしてダンジョンを最奥までクリアし、淫魔女王を倒すことに成功する……というのが、僕の知るゲームの
……これは言い訳なんだけれど、僕はえっちな要素に惹かれてやり込んだのではなく、ゲーム性と、救いのない世界観にのめりこんだ。
なので、わかる。……僕らは『主人公』ではない。ゲームの主人公がいたクラスとは、構成メンバーが明らかに違う。
そして今は、ゲームの時間軸でもない。
恐らく、少しだけ未来なのだと思う。つまり……
ゲームの主人公は、
ここは、主人公敗北後の世界だ。
スラムで集めた情報が、その結論を僕に抱かせた。
ようするに今、この世界の淫魔たちは、ゲームの時点よりも多くの聖力を喰っていて、そのぶんだけ強くなっているのだろう。
今の僕の力では……対抗は可能だが、ちょっとだけ、おかしなことをしなければならなくなる。
それは、レイナみたいな妹でもかわいがっている、ナナミさんにとって、つらいものになるだろう。
……でもまあ……
「……ううん。見届ける。……見届ける責任があると、思う」
こう言うんだよな、彼女は。
責任。覚悟。
……その言葉を聞いて僕は『立派な人だな』とは全然思えない。
むしろ、その言葉を聞くたびに、ナナミさんへの評価が下がってしまうので、やめて欲しいなとも思うんだけれど。……まあ、ひがみだ。
もしも彼女に、責任だの、覚悟だのを感じる心があったら……
どうして僕を、半端に救ったのか。……いや、わかってるんだよ。クラス全体が関わっているようないじめを、たった一人で止められるわけがない。僕をあまりにも助けすぎて、ナナミさんが次の被害者にならなくてよかったと、そう思ってさえいるんだ。
でも、覚悟、責任とか強調されてしまうと、どうしても胸に刺さるものは、ある。
「……わかった。じゃあ、始めるよ。でも……何が起きても、邪魔をせず、僕を信じて、ただ見ていること。いいかな」
「……はい」
君の覚悟を信じよう。
裏切られたら、まあ、その時は──レイナが治らないだけ、だな。
僕はぐしょぐしょのベッドに靴のまま上った。
レイナの分泌物に満ちたシーツを、靴底以外で踏みたくなかったからだ。
そしてレイナの片脚を掴むと、強引に持ち上げる。
「……」
ちらりと窺えば、ナナミさんはびっくりした顔をしていた。
手つきがあまりにも乱暴だったからだろう。
でも、邪魔はしてこないし、異論も唱えない。
ひとまずは合格としておこう。でも……
たったこれだけのことで、そんな様子で、ここから先、耐えられるだろうか?
僕は持ち上げたレイナの膣に指を入れた。
あまりにも濡れていた。あまりにも熱い。
本当は何か適当な棒とかでやりたかったんだが、手ごろな、呪力を伝導できる棒がなかった。
所持もしていない。僕は第二王子に追い詰められてから、道具に頼るような状況にならないように気を付けている。
二本の指がすんなり入るマンコを進んでいく。
イきまくりで、指がかなり締め付けられる。ざわざわと搾り取るような動き。なかなかの名器だ。ヤナウエもよっぽど気持ちよかっただろうな。
イきまくってるお陰で、子宮はかなり降りていた。
その子宮の口に指先を突っ込みながら、呪力を流し込む。
解呪──
子宮に呪術をかけられているのだから、子宮に直接触れて解呪をするのが、一番確実性がある。
片足を掴んで持ち上げられたレイナが、ガクガク跳ねながら、噴水のように汁を分泌する。
この世界において魔力──たぶん、レイナの場合は聖力だろう。聖力や呪力がある限り、男も女も、いくらでもイける。
しかしイくという行為は、この世界においては、水分や精子以上の、もう一つの生命力とも言うべき、聖力・呪力を吐き出すということだ。
これが続くと死ぬ、が……
「レイナはどのぐらい、この状態?」
ナナミさんが僕の言葉に応じるまでに、三秒ほどの時間がかかった。
「あ、え、えっと、今日の……朝に、様子がおかしくて、その時に治療して、それから、この……酷い状態で……」
「だったら、おおむね五時間ぐらいかな。……思ったよりかなりの聖力を持ってるな……」
「……もう、お昼なんだね」
「この世界はいつでも曇ってて時間がわかりにくいからね」
女神の加護を失ったのは、この世界に住まう人であり、この世界そのものでもある。
だからこの世界はいつでもどんよりと曇っている。
……だからこそ、この世界にはますます多くの『ダンジョン資源』が必要なんだ。その資源の中には、太陽に代わるものがあるから。この世界は、女神の微笑──太陽光により育つ作物が、多いから。
「……い、ギッ♡」
レイナは今自分がどんな状態かもわかっていないだろう。
まさか、僕に、マンコに指突っ込まれて、子宮に触られてるなんて、こいつの頭の中では、ありえないんだろうな。
いい体をしている。
胸が大きくて、肌が白くて。
ちょっと筋肉がついたか? ほとんど姫プレイだったとはいえ、ヤナウエについて最前線に行くことも多かったもんな。
こいつのチートはなんだっけ。やっていた役割は魔法使いっぽかったけれど、発してたのは聖力だったように思う。そもそも、呪術師は僕一人だから、呪力適性はない……
……まさか、聖女だったりするのか?
人間は基本的に聖力に適性があって、その生命力は聖力らしい。
だから呪力適性がある人間がそもそも珍しい──ようするに僕は、デフォルトで聖属性生物の人間のくせに、魂の在り方が淫魔に近すぎて呪力使い、というわけだ。
魂というのは、どうだろう。設定には、なんてあったかな……
ともかく『双子であれば、魂も同じ顔をしている』みたいな記述を覚えている。となるとやっぱり、ナナミさんと同じ、聖女か。
……黙ってたのは、比べられたくなかったから、だろうな。
レイナはいつでも、ナナミさんを意識してた。対抗心があった。
そのくせ、ナナミさんには触れなかった。ヤナウエたちを味方につけても、ナナミさんには、何もできなかったんだ。
たぶん、負けると思っていたから。
髪を金色に染めているのも、聖女アピールをしなかったのも、『ナナミさんと同じだと、比べられて、その結果、負ける』と思っていたから……
なのかも、しれない。
「いぐうううううう♡♡♡」
愛液の量が多すぎて、突っ込んだ指が押し流されそうだ。
呪力の
……もしこいつが聖女なんだったら、きっと、淫魔にとってはごちそうだろう。
聖女はバフと回復の才能であり職業だ。それを攻撃転用していたのもたぶん、ナナミさんと『同じこと』をして比べられたくなかったから、なのだろうけれど。
淫魔も驚いたろうな。なぜか聖力をそのままぶつけてくる聖女がいたら。
いわゆる魔法使い系は、聖力か呪力を『現象』に変えてぶつける。実は『炎という物理現象で攻撃している』というようなものだ。
だから、聖力を直接放っても、その衝撃で淫魔以外倒せるかもしれないが……
淫魔にとっては、エサにしかならない。
……だから、気に入られて、こんなにガッチリ、紋様を刻み込まれたのか。
でも……
「……経路、掌握。ナナミさん、
「え? あ、は、はい!」
「掴んだ! 引っ張るぞ!」
「うぎいいいいいいいいいいいいいいいいい♡♡♡♡♡」
レイナの胎の中で、『何か』が暴れる。
下腹部がぼこんぼこんと激しく、中から形を歪められた。
僕は、子宮に突っ込んだ人差し指と中指で、それを掴む。
それは──
──それは本来、物質ではない。
だが、呪力で出来たそれに呪力を与えて物質化してやることで、『呪術』という、本来なら形のないものを、抜き出すことが可能になる。
指先で掴んだものを、思い切り引っ張り出す。
「はひいいいいいいいいいいいいい♡♡♡♡♡」
すさまじい、喉も嗄れるような──ここまで以上の声が、レイナの口から出て……
とてつもなく長いものが、レイナのマンコから、引っ張り出された。
それは赤黒い肉の触手。
長い。長さはそのまま、向こうの呪術の強さだ。
3mぐらいはあるだろうか。完全に抜き出して、床にたたきつけて、踏みつけた。
物質化した呪術はただのひと踏みで奇妙な高い鳴き声を挙げながら、じゅわりと空気に溶けるように消える。
「あ……♡ あ……♡」
呪術が溶けたあとに見れば、レイナの下腹部の紋様は消えていた。
イき狂っていたレイナも落ち着いて、失禁しながら、意識を失った。
それを床に捨てて、ナナミさんの方を向く。
ナナミさんは、怯えていた。
……まあ、妹の性器から、3mもの長さの赤黒い触手がずるるるるるるると出てきたら、そうなるか。
イき果てたレイナの、まだ潮を吹く性器は、なるほど魅力的に見える。
部屋にこもった女のニオイの濃さも、性欲を刺激する。
でも、実際に、あんなモノがマンコから出てきた女を抱く気にはなれない。
「……約束は果たした。レイナは助けたよ」
「……あ、あ! ありがとう、ございます……」
「そちらも、対価を支払うように」
「………………はい」
ここで……
ここで、レイナを連れ帰って、強引に奴隷にしてしまうことが、僕にはできる。
けれどしない。
放って帰ろうと思う。何せ……
これは、ナナミさんが、僕に支払うべき、対価だから。
なあなあで、どさくさで、僕が、僕の力で、レイナを自分の元まで運ぶことには、なんの意味もない。
ナナミさんの意思で、妹を差し出してもらおう。
「僕の居場所は──まあ、第二王子に聞いたんだろうね。あのあたりに住んでいるみんなには、君を安全に通すように言っておく。支払期日は……そうだな、三日、あげようか」
「……」
「手段は問わない。必ず連れて来い。今日の夜、明日の夜、そして、明後日の夜が終わる前に、お前の覚悟を見せてみろ」
この時僕が、ナナミさんの返事を聞かずに部屋を出たのは、彼女の反応が怖かったからだ。
『やっぱり代わりに自分を捧げます』とか、『もう少しだけ時間が欲しい』とか、そんなことを言われてしまったら、彼女に失望してしまう。
僕は、彼女に失望したくなかった。
特に、目の前にいる時に、僕が失望するような言動をして欲しく、なかった。
裏切られるとしても、僕の知らないところで、裏切って欲しい。
……もちろん、できれば裏切らないで欲しい。
さて。
僕がいなくなったあと、クラスメイトはどういう反応をするか──
ドアを開ける。
「あ、アサギ…………その、俺……」
何か、いた。
無関係な他人だ。視線も交わさずに通り過ぎる。
──やっぱり、どうでもいいな。
クラスメイトの反応は、気にならないように思う。
だから……
ナナミさんが、僕にとって、無関係な他人にならないでくれれば、それが、一番、いい結末で……
それ以上は、存在しないような気がした。