※この作品はR-18です。

もし落第騎士の1モブテロリストにTS転生者の気振りショタコン女が居たなら   作:尾根ショータ

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私は私の信じる道を征こう

  

 

 

 

 

 現代に生きる魔術師「伐刀者」。

 己の魂を武装として戦う彼ら彼女らを育成する、日本の教育機関「破軍学園」。

 ここの近くには、全国展開してる某ショッピングセンターが存在している。

 

 で、おやつタイムくらいな時間、ここを襲撃するのが今日の私たちの任務なのだけれども。

 

「(…………正直詰んでる未来が確定してるから、襲撃自体は気乗りねーんだよな)」

「何か言ったか? 尾根(おね)」

「何でもないぜ、傘下(さんか)」

 

 今日、一緒の任務についてる同僚のイカツい男にため息をつきながら、私はマスクを被りなおした。

 

 さて。私の名前は尾根(おね)ショーコ。二十九歳女。

 ごく一般的な伐刀者テロ組織「解放軍(リベリオン)」に所属している、木っ端のあわれな一般伐刀者(ブレーザー)だ。

 能力の発動条件が特殊すぎる関係もあり、組織では上位に行けないこともあってか。こんな下っ端がこなす襲撃任務に割り当てられることが決定している。

 

 だが、この時点ですでに私の運命は詰んでいるのだ。

 

 解放軍のスパイが流してくれる情報で、破軍学園状況はよくわかっている。だからこそこの日、このタイミングでショッピングモールの襲撃は、失敗が確定している。

 なぜならここには、黒鉄一輝がいる。

 なぜならここには、ステラ・ヴァーミリオンがいる。

 

 後者はともかく前者に注目しているのなんて、襲撃犯のチームの中でも私だけだろう。というより、その姿を、情報を見知って思い出した。

 

 ────これ、「落第騎士(らくだいきし)の英雄譚(キャバルリィ)」じゃん! あれ、あなたたち主人公とヒロインでございますですよねェ!?

 

 つまり異世界転生というか、ラノベ世界転生をしたらしかった。

 落第騎士自体は原作もテキトーに読んではいた。最終巻は読んでないけど、まーアレはアレでなんかうまいことなんやかんやあってハッピーエンドになるだろうと、そういう確信が出来るくらい安心できるラノベなシリーズではあった。

 途中で人死にとかも出はするけど、世界観が厳しめな作風だしまあそんなものかという気はしていた。

 

 問題はそこじゃない。

 彼女たちが試合をして、仲良くなって。

 その後に主人公の妹が現れてなんやかんやあって三人(プラス妹の友人一人)でデートしに行くことになるのが、第一巻の割と中盤くらいの展開だ。アニメだと3話くらいだったけど、つまりそこと私たちの襲撃が重なることが確定しているのだ。 

 つまり、なんやかんやあって私たちは木っ端の雑兵なのである。

 なんなら主人公ですらないゲストモブのような誰それかに倒されることが確定しているのだ。

 

 これに気づいたのは二週間前で、もはや私に(社会的に)生き残る術なし。テロ組織で任務拒否なんざ出来るわけはないし、悲しいことに私はとても健康女子だった。

 かろうじて伐刀者に転生はしたものの、おそらく私の前世の魂の影響か能力は戦闘的には微妙極まりない。《空間》干渉系能力で、後方支援向きの能力ではあるのだけれど、それを活かせるだけの練度も何もなく、またかつて所属していた学園でも評価は芳しくなかったようだ。

 それが切っ掛けで私がテロリストになってるのは間違いないだろうが……。

 

「でもまあ、せっかくならば悔いなく生き残りたいものだぜ平賀クン」

『ははは、何を言ってるんですかねぇ? ショーコ』

「いやこれ本心。なーんかこう、上手くいかない気がしててさあ。今の破軍の生徒のメンツを考えると」

『気のせいじゃない? ま、ワタクシとしてはま(・)た(・)面白い画(え)が撮影できれば、それで満足ですがねぇ、えぇ』

 

 なので私は、襲撃犯とは別なインカムのスイッチを入れて相(・)方(・)に連絡を入れた。

 名を、平賀玲泉。

 原作でも序盤……というか国内編での敵である暁学園に「解放軍」から招集されているピエロのような恰好をした男。

 実際の正体については…………、原作後半の方のネタバレになるので自重するが、その男と、前世を思い出す前の私は何故か繋がりがあった。

 いや、何と言うか、私の趣(・)味(・)に興味をもった彼が声をかけてきたというのが正解かもしれないが。

 いわく「新しい人権の蹂躙の姿を見た」とのこと。お前人権とかそんな言葉知ってるんだ……。

 いやでも、まあ、私としては単なるえ(・)っ(・)ち(・)な(・)お(・)姉(・)さ(・)ん(・)の(・)推(・)し(・)活(・)みたいなつもりってだけなんだが……。

 

 その延長でなんだかんだ交流が続いていて、今日の襲撃の日に至っている。

  

『ワタクシとしましてはねぇ? アナタが今回の作戦にて並々ならぬ準備をしていたことがちょっと不思議でしてね? いつもならシ(・)チ(・)ュ(・)エ(・)ー(・)シ(・)ョ(・)ン(・)は(・)最(・)初(・)強(・)く(・)当(・)た(・)っ(・)て(・)メ(・)ン(・)タ(・)ル(・)揺(・)さ(・)ぶ(・)っ(・)て(・)、(・)あ(・)と(・)は(・)流(・)れ(・)で(・)お(・)願(・)い(・)し(・)ま(・)す(・)みたいな感じだというのに』

「まあ、この程度大したことはない。どうせ誰も口には出せないんだから、せいぜい楽しませてもらおうかなあと」

 

 何がと問われればそう、私の伐刀絶技(ノウブルアーツ)の最悪レベルの活用方法である。

 タイミングは一回、今日、私が襲撃犯としてとらえられるだろうことを考えれば、これ以上はないシチュエーションである。

 

 私が残り少ない自由でやりたいことを一言でまとめるなら、つまり。

 

 ──(第一巻の)全裸土下座……? そんなの勿体ない! 我が伐刀絶技であの状況における本人たちにしか気づかれない最高の激エロシチュエーションを提供してあげようじゃねぇの!

 

 ということだ。

 人生を賭ける価値があるかどうかはちょっと微妙だが、それくらいヤケクソだと思ってもらいたい。

 

 あっそうだ(唐突)、ちなみに私の前世は男、いわゆるTS女なので、提供するシチュエーションはだいぶ拗れたシュミをしていることをここに宣言しておく。

 

 

 

 

 

 †  †  †  †  †  †  †  †

 

 

 

 

 

「────お母さんをいじめるなぁっ!!」

 

 

 

「(まずいことになったかもしれないわねぇ)」

 

 破軍学園一年のアリス、有栖院(ありすいん)凪(なぎ)は嘆息する。

 場所はショッピングモール、開けたフードコート部の上。

 上層階のとある一角に隠れているのは、彼(・)女(・)と、彼女の友人の兄である黒鉄(くろがね)一輝(いっき)。あまりに傷つきすぎて自分の傷すらわからなくなってしまった、努力の天才か隣の少年であるが。

 そんな彼と共に見下ろす眼下では、状況が目まぐるしく展開していた。

 

 《解放軍(リベリオン)》。

 この世界で最も知られた犯罪組織の一つであり、伐刀者(ブレイザー)を最も優れた新人類と考える選民思想の集団だ。

 ゆくゆくは伐刀者による人類支配をもくろんでいる彼らは、一輝たち大勢が所属している《連盟》たちの築き上げた社会構造の破壊をもくろんでいる。

 

 そんな彼らの下っ端と思われるテロリストたちによる、ショッピングモールの占領状況。

 アリスの伐刀絶技(ノウブルアーツ)により辛うじて襲撃者たちの視線を躱して難を逃れた一輝たちだったが、人質たちを囲う犯人たちの別動隊の人数が多すぎる。

 そんな中、せめて息子たち子どもだけでも解放してあげてくれと懇願したとある女性を、一人のテロリストの男が殴り飛ばし。

 

 母親をいじめるなと、勇敢にも挑みかかった男の子。

 人質の、小学生くらいの男の子の突撃で、彼の手に持っていたアイスクリームが兵士に投げつけられたのが切っ掛けだ。

 

「このガキがッ!」

 

「あ…グッ」

「シンジ!」

 

 頭に血が上った兵士が男の子を殴り飛ばし、親子ともども銃を構えたのを、見過ごせるような彼(・)女(・)ではない。

 一切の躊躇なく引き絞られた引き金と、飛び散る幾数十もの鉛玉。

 

「────《妃竜の羽衣(エンプレスドレス)》」

 

 その全てが彼女、ステラ・ヴァーミリオンの前には無力!

 

 割と有名人なこともあり顔が割れていた彼女、一輝のルームメイト(兼・奴隷?)でもあるステラだが、彼女のまとう炎熱のオーラの前には近代兵器など無力も同然。

 恐慌に陥るテロリストたちも、彼女の王(・)者(・)の(・)一(・)括(・)の前には恐怖からか背筋を震わせざるをえない。

 

「ヴァーミリオン皇国の第二王女じゃありませんかぁ。ヒヒヒッ」

「その法衣、解放軍(リベリオン)が着用してるやつよね、刺繡とか」

 

 だからこそ、お前たちのリーダーと人質を代表して交渉をさせろ、というステラの要求に、現れ出たフードの男は、ビショウ、というらしい。

 男はそのまま、人質に手を挙げた部下たちを りつけ。

 しかし、途中で下卑たる笑みに早変わり。

 

 人質の男の子……、シンジといったか。短い髪の活発そうな男の子だ。

 

「な、何するつもり!? 人質には手を出さないんじゃなかったの!!?」

「そりゃ大人しくしてれば、の話でさァ。このガキはそうじゃなかった。まあ、大人と違って分別はついちゃいないから仕方ないかもしれませんが……」

 

 《解放軍》の兵士、自称名(・)誉(・)市(・)民(・)である彼らに泥を塗るような真似をしたケジメをつけないといけない、と。

 命をもって贖われなければいけないというその下種な男に、ステラが己の固有霊装(デバイス)を構え瞬間、斬りかかるのは当然のことであった。

 

 もっともいかに強力な伐刀者といえど、未だ子供。

 相手の固有霊装によりあっさりとくじかれた彼女に、勝者の余裕からか男はいやらしげな笑みを浮かべる。

 

「しかしまあ、感心しましたぜお姫様やぁ。大人しく隠れてりゃ良いものを、一国の皇女である御身がこんなつまらねぇガキ一匹のために身を挺するとは……。

 そ(・)う(・)い(・)う(・)趣(・)味(・)か?」

「は?」

「いや、何でもねえでさァ」

 

 突然、真顔で妙なことを言ったビショウはすぐさま頭を左右に振る。

 

「そうですねこのビショウ、ステラ姫の勇気に免じてあのガキの命を救う方法を提案致しやしょう。

 ────ショーコ」

「……はいよ、ビショウの旦那」

 

 男の言葉に、テロリストたちの中から女性が現れる。

 偽名なのか本名なのかは定かではないが、おそらく客に紛れていたのだろう、妙に高身長で長い黒髪に白い帽子とワンピースをした、緑の戦闘用ベストな女性だ。

 美人と形容できるだろうが、あいにく顔面偏差値の高いライトノベル絵な世界においては埋没する程度の個性。

 その彼女は肩にかついだライフルの他に、腰にもポーチをつけており。

 

 そこからシ(・)ョ(・)ッ(・)キ(・)ン(・)グ(・)ピ(・)ン(・)ク(・)の(・)色(・)を(・)し(・)た(・)薬(・)品(・)が(・)入(・)っ(・)た(・)試(・)験(・)管(・)を取り出し、ゴム栓を外して少年にふりかけた。

 

「────ぁ、が、がああッ!」

「シンジ!?」

「ちょ、ちょっと、いったい何をしたのよ!!?」

 

「何って、毒さ。見た通り丸わかりじゃないかい」

 

 何でもないことのように言う彼女は、そのまま母親から少年を無理やり取り上げ肩に担ぐ。

 続けてビショウが、ニヤニヤと笑いながら言う。

 

「本当なら全裸で土下座、というのも悪くはねェんですが、Aランクの伐刀者を相手に慢心するのはいけねぇ。

 何、そう難しいことは言わねぇ、少しの間そこのショーコについていって、この場を離れてもらいましょう」

 

 そうすればショーコはそこのガキを解毒してやるさ、と笑うビショウ。

 つまりステラを屈辱で辱めるよりも、この場から引き離して身代金要求の続行を決断したということだ。

 不確定要素としても、その地力の強さとしても、ある意味でとても冷静な判断が下されている。間違っても三下悪役のように、あからさまなほどに ぼんっ! きゅっ! ボンッ! な肌色に下卑た笑みを浮かべたりはしないらしい。

 むしろそれが、アリスが状況に対してまずいと判断する原因でもあった。

  

「ダメよ、跳び込んじゃ」

「けど……ッ、わかった」

 

 一瞬「全裸で土下座」という、ただただ彼女を辱めるだけのフレーズが出たときに鬼のような顔をした一輝であるが、相手の作戦らしきそれがまだ常(・)識(・)の(・)範(・)囲(・)に(・)収(・)ま(・)り(・)そ(・)う(・)なことを見て、わずかばかり冷静さを取り戻す。

 

「……わかったわ。その代わり約束して。人質には金輪際手を出さないって」

「もちろん、ご安心を。……まあ身代金と俺たちの逃走が成功するまで、アンタの身柄も預かることになるでしょうがねぇ」

 

 おそらく何かしら伐刀者の力を無力化する方法があるのだろう、それを想起させる物言いだ。

 

 状況を伺いながらも、相手が1体1になるのならステラにも挽回の余地があると踏んでいるのだろう、一輝は息をひそめて状況を見守る。

 対するアリスは、む(・)し(・)ろ(・)安心して状況を見守っていた────彼、あるいは彼女にとって、そのショーコというテロリストはよほど、連中の中では話の分かる相手だったからだ。そのことを、知っていたのだ。

 

 果たして、約束したわよ、と吐き捨てるように言いながら、ステラはショーコと言われた彼女の後に続き、フードコートを離れていくことになり。

 

 

 

「────ごめんな? 苦しいよな、でも、もうちょっと待ってろ? もう少ししたら楽にしてやるから、な? 

 あっ、皇女殿下は下手な反抗とかしようとせず、こっちの更衣室まで着いて来てもらうぜ? 繰り返すけど、下手な反抗は止めろよ? 今、解毒薬持ってないから私殺すとこの子も死んじゃうし」

 

「………………いえ、あなた何なの? テロリストのくせに何? それ」

 

 

 

 ……他のテロリストたちが周囲にいなくなったのを見計らってから、少年をお姫様抱っこして「痛いところ他にないか? さっきのビショウの旦那のパンチ痛かったもんなぁ」とか「アイスは後(・)で(・)代(・)わ(・)り(・)に(・)な(・)る(・)モ(・)ノ(・)やるから、な?」など、なんだろう、ものすごく可愛がるように介抱しながら運んでいた。

 

 なお一人、ステラが注意を引いている間に反抗の準備をしていた黒鉄珠雫(しずく)は、ショーコの恰好とか身長とかからなんとなく、妖怪の八尺様的な何かを想起していたとか何とか。

 

 

 

 

 




※今日はもう一話投稿予定
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