君の身(からだ)は。〜入れ替わる体温と、忘れない快楽〜 作:坂本太郎
【憧れという名の引力】
ある雨の日のバイト帰り。瀧は奥寺先輩の傘に入れさせてもらい、駅までの道を歩いていた。
一つの傘の下、肩が触れ合うほどの距離。以前、三葉が自分の身体に入っていた時に先輩とデートしたという話は聞いていたが、自分自身の意識でこうして密着するのは、やはり心臓に悪い。
「瀧くん、なんだか今日は……すごく静かだね」
先輩がふふっと微笑み、瀧の顔を覗き込む。都会的で洗練された女性の香り。三葉の身体で感じたあの甘い匂いが、今は瀧自身の鼻腔を直接くすぐっている。
三葉がセットしてくれた「デート」の余韻が、まだ二人を包んでいるかのようだった。
(……俺は、先輩のことが好きだったはずだ)
瀧は自分に言い聞かせるように拳を握る。目の前の奥寺先輩は、自分のような高校生には勿体ないほど美しく、優しく、そして今、明らかに誘うような視線を向けている。
けれど、その瞬間に脳裏をよぎるのは、飛騨の山、組紐、そして自分を叱る三葉の眩しい笑顔だった。
「先輩、俺……」
言いかけた言葉は、先輩の細い指によって遮られた。彼女は雨音に紛れるような小さな声で、「私の家、すぐそこなんだけど。雨が止むまで、雨宿りしていかない?」と囁いた。
それは明確な誘いだった。
男としての本能が、憧れの女性を手に入れるチャンスだと叫ぶ。
三葉への想いはまだ名前のない、正体不明のモヤモヤに過ぎない。対して、目の前の先輩は実在する温もりだ。
瀧は、自分の未熟な欲望と、胸の奥でチリチリと燃える三葉への忠誠心の間で激しく葛藤しながらも、吸い寄せられるように先輩のマンションへと足を踏み入れた。
【欲望と贖罪の螺旋】
シャワーの湯気が立ち込める浴室。奥寺先輩は恥じらうことなく一糸まとわず瀧の前に立った。都会的な洗練された裸身が、LEDライトに艶めく。
「瀧くん……こっちへおいで」
差し伸べられた手はしっとりと温かい。瀧は導かれるように浴槽の縁に座らされた。眼前にはミキの成熟した肢体が揺れている。シャワーの雫が双丘の谷間を伝い落ちる様は、三葉の幼い胸ではあり得ない濃厚な官能を湛えていた。
「緊張しているのね」
ミキは微笑んで彼の頬を撫でた。指が首筋を辿り鎖骨を越え、硬直した股間へと降りていく。
「優しくするから……力を抜いて」
その言葉どおり、彼女の手つきは魔法のようで——
シュルッ……くちゅ……
指先が輪を作り、瀧の勃起を上下に扱き始めた。滑らかな動きに加え、時折親指の腹で亀頭を撫でる繊細なタッチ。
「あっ……先輩っ……」
瀧の喉から漏れる声が浴室に反響する。早漏ぎみの彼は十数秒で限界を迎えた。
「もうイッちゃう?」
揶揄うような笑みを浮かべた次の瞬間——
ピューーッ! ドピュッ……びゅるっ……
白濁が弧を描いて飛び散った。ミキは掌で受け止めた粘液を見せびらかすように眺めると、躊躇なく口元へ運ぶ。
ぺろり……ずぞっ……
「若いわね。とっても美味しい」
恍惚とした表情が瀧の支配欲を刺激する。同時に胸の奥で燻ぶる嫉妬と困惑。まるで他人の記憶を盗み見るような奇妙な感覚があった。
ベッドに戻ると体勢を入れ替えた。ミキが瀧の顔に跨る形になるシックスナイン。目の前に迫った桃色の割れ目から甘酸っぱい芳香が立ち昇る。
「私が教えた場所……覚えてる?」
指先が恥骨の隆起を示した。三葉と同期していた際に仕込まれた性感帯知識が甦る。瀧は躊躇なく舌を突き出し——
れろぉ……じゅぱっ……
「あんっ……上手っ……!」
ミキの腰が跳ね上がり、喉奥まで肉棒が押し込まれる。歯が当たらないように慎重に含むうち、またしても硬度を取り戻していく。
ジュルルッ……ちゅぱっ……
「瀧くんのお口……気持ちいいっ……もっと……深くまでちょうだいっ!」
要求に応えるため顔を傾ければ、視界いっぱいに潤む媚肉が映った。三葉の未熟な秘裂と重なる錯覚。それでも舌先は正確に陰核を捉え続け——
「いっ……イクわぁっ! んんんっ——!!」
プシッ! シャアァーー……!
潮が瀧の顔面を濡らす。その塩気と温もりを感じるうちに理性は完全に吹き飛んでいた。
「今度は私の番よ……」
ミキがマウントを取り直す。瀧は仰向けに押さえつけられ、彼女が肉棒に跨ってくる瞬間を待った。
メリッ……ぐちゅっ……
「おっきい……!」
結合部分から軽い悲鳴が漏れる。瀧の巨根が狭い膣道を押し拡げる感覚に身震いした。
「ゆっくり……動かすわね……」
上下運動が始まる。奥寺先輩の内側は温かく絡みつくようで、三葉が持つ清冽さとは全く違う。しかし——
パンッ! パチンッ!
(これは三葉じゃない……でも……)
異物感が快感に変わりつつある刹那、記憶の底から『組紐』のイメージがフラッシュバックした。山深い飛騨の空気。藁の匂い。そして無邪気に笑う少女の横顔。
「瀧くん……? 何考えてるの?」
問い詰めるように速度を増すストローク。子宮口が亀頭を何度もノックする。
「あっ……先輩っ……だめだ……!」
射精衝動と罪悪感が交互に押し寄せて思考が混乱する。ミキが突然体勢を変え、四つん這いになった時も現実逃避できずにいた。
「後ろから……犯してみて」
白い尻肉が誘う。瀧は犬のように覆いかぶさり——
ズブゥッ!
「ひゃああんっ!」
一突きごとに肉襞が絡みつき、睾丸が重たくなる。抽送を繰り返すうち、頭の中の三葉が霞んでいった。
ぐちょっ……ぢゅぽっ……
「すごっ……瀧くん……もっと……壊してぇっ!」
奥寺先輩の嬌声が遠くなる。腰を打ちつける音と己の荒い吐息だけが世界を支配する。
「先輩っ……イキそうです……!」
「中でっ……! 全部ちょうだいっ!」
「ぐぅっ……出すぞっ……!」
どくんどくんっ……! びゅるるるっ……!
子宮口めがけて噴き出す灼熱。放出の途中で抜かれることはなく、最後の一滴まで搾り取られていく。
「あったかい……瀧くんの……いっぱい……」
陶然とした声が部屋に残った。瀧は虚脱状態で横たわり、窓越しに見える雨雲を見つめた。
「……三葉」
思わず呟いた名前に、奥寺先輩の動きが止まる。彼女は何も言わず毛布を被せてくれた。その優しさが却って瀧の胸を締め付けた。
雨脚は強まりつつある。遠雷が低く唸っていた。二人を包む静寂は、これから訪れる嵐の序章だった。
【拭えない違和感】
雨音だけが響く、静かな寝室。
瀧は、奥寺先輩の柔らかな肌の感触を腕に残しながら、ぼんやりと天井を見つめていた。
夢にまで見た、憧れの先輩との時間。満足感はあるはずなのに、なぜか心の中心には、ぽっかりと穴が開いたような虚しさが居座っている。
「……瀧くん、どうかした?」
先輩が瀧の胸に手を置き、心配そうに顔を上げる。その優しさが、今の瀧には痛かった。
「いえ……なんでもないです。ただ、なんだか不思議な気分で」
瀧は嘘をついた。本当は、抱き合っている最中、無意識に「組紐」を探してしまっていた自分に気づいていた。先輩の香水の奥に、三葉が纏っていたであろう「田舎の空気」を求めてしまっていたことに。
「……君は、誰か別の女の子のことを考えているわね?」
先輩の鋭い指摘に、瀧は言葉を失う。彼女は寂しそうに、けれど全てを見透かしたような聖母のような微笑みを浮かべた。
「いいのよ。今の瀧くんは、すごく一生懸命で……素敵だったから」
瀧は、先輩の寛大さに救われながらも、自分が本当に求めているのは「ここ」ではないどこかにいる「あいつ」なのだとはっきりと悟った。
都会の雨は、瀧の火照った身体を冷やしていく。
この一夜の経験は、瀧を少しだけ大人にした。そして同時に、三葉への想いがもはや引き返せないところまで来ていることを、残酷なまでに浮き彫りにした。
「……すみません、先輩」
瀧は、隣で眠りに落ちようとする先輩の肩をそっと抱き寄せた。これが、自分にとっての「憧れ」への決別であり、見知らぬ空の下にいる三葉への、本当の恋の始まりだった。