※この作品はR-18です。

君の身(からだ)は。〜入れ替わる体温と、忘れない快楽〜   作:坂本太郎

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第10話:カタワレ時の境界線:三葉(中身は瀧)× 瀧(中身は三葉)

【時空の裂け目で】

糸守の御神体、カルデラの縁。

夕陽が沈み、世界から色が失われる「誰そ彼」の時間。目の前には、自分自身の姿をした「三葉」が立っている。そして三葉(自分)の視界には、自分自身の肉体である「瀧」が映っている。

 

「……瀧くん? 本当に、そこにいるの……?」

 

瀧の声(中身は三葉)が震える。

 

「三葉……、やっと、会えた……っ」

 

三葉の声(中身は瀧)が、涙とともにこぼれる。

 

二人は、本来出会うはずのなかった三年の時空を超え、カタワレ時の魔法によってついに触れ合った。互いの手を取った瞬間、電気が走ったような衝撃とともに、今まで入れ替わりで経験してきたすべての記憶、感覚、そして「相手の身体を勝手に弄った背徳感」が、濁流のように流れ込んでくる。

 

三葉(中身は瀧)は、自分の肉体であるはずの「瀧」の、逞しい肩や広い胸を、三葉の細い指で確かめるように撫でた。そこには、三葉(中身)が慣れない手つきで自慰に耽った時の熱がまだ残っているような気がした。

一方、瀧(中身は三葉)もまた、憧れていた自分の「三葉」としての肉体に触れ、その柔らかさと、瀧(中身)が暴いた秘密の場所に思いを馳せ、顔を真っ赤にする。

 

「……お前、俺の身体で……変なこと、しただろ」

「瀧くんこそ……、私の身体に、ひどいことした癖に……」

 

責める言葉とは裏腹に、二人の身体は強烈に引き寄せ合っていた。

自分でありながら、相手でもある。

この肉体を愛することは、相手を愛することであり、同時に自分を愛することでもある。

世界の境界が曖昧になる黄昏時、二人はどちらからともなく、互いの唇を重ねた。

 

【鏡像の螺旋:禁忌の果実】

 

御神体を囲む岩肌に映る夕陽が、琥珀色に溶けていく。

三葉(中身は瀧)は、目の前に立つ自分の本来の肉体である「瀧」の頬に手を添え、その瞳を覗き込んだ。三葉の視界から見る自分(瀧)の姿はどこか歪んでいて、でもそれがなぜか狂おしいほどに愛おしい。

 

「ああ。……夢みたいだけど……これって、間違いなく現実だよな?」

 

瀧(中身は三葉)もまた、自分の本来の肉体である「三葉」の唇にそっと触れた。その柔らかさと香りは三葉自身が毎日鏡の前で味わってきたものだが、今は「瀧」の五感で感じるそれは、信じられないほど蠱惑的で、男としての本能を激しく揺さぶる。

 

「瀧くん……本当にそこにいるんだね。私のなかに、君がいて。君のなかに、私がいる」

 

互いの身体を交互に「使用」し、隠された秘密を暴き合ってきた者同士だからこそ分かる、皮膚の下にある熱。その共犯関係の証が、この瞬間、時空の裂け目で共有されている。

瀧(中身は三葉)は、男の逞しい腕を使い、三葉(中身は瀧)の細い太腿を掴むと、荒々しく左右に広げた。

 

「あっ……!」

 

三葉の股間は、自分自身の本来の持ち主を前にしてか、すでに隠しきれない湿り気を帯びていた。瀧(中身は三葉)の指先が秘裂をなぞるたびに、三葉(中身は瀧)は、今借りている三葉の肉体が「本来の感度」で反応する感覚に、鳥肌が立つのを感じる。

 

「……やっぱり、私、ここ弱いんだね」

「な、何がだよ……」

「知ってるよ、自分なんだから。ここ……こうされるのが、一番くるんでしょ?」

 

瀧(中身は三葉)が、自分自身の身体の最も敏感なポイントであるクリトリスを的確に指先で弾くと——

 

「やぁんっ! やめろ……っ!」

三葉(中身は瀧)は三葉の可憐な声で高く叫んだ。まさに先週、入れ替わった際に自分が発見し、散々弄り倒したポイント。相手に「知られすぎている」という全裸にされる以上の羞恥が、瀧の精神を激しく昂らせた。

 

「私だって……瀧くんの身体のこと、知ってるんだから」

 

三葉(中身は瀧)は三葉の身体で膝立ちになると、瀧(中身は三葉)の下半身へとしなやかな手を伸ばす。そそり立つ「自分自身の肉塊」を三葉の小さな手で握りしめた瞬間、三葉の精神を宿した瀧は、喉を鳴らして息を呑んだ。

 

シュルッ……くちゅっ……

「くぅ……! なんでそんな……手つき、うまくなってんだよ……」

「だって……瀧くんが(私の身体を使って)教えてくれたじゃない……ここ……こうやって扱えば、気持ちいいんだって……」

 

三葉(中身は瀧)は、三葉の繊細な指使いで「自分(瀧)のペニス」のカリ首を執拗に撫で回す。数回上下させるだけで、瀧(中身は三葉)の腰はガクガクと浮き上がった。

 

「もう……我慢できねぇっ……! 三葉、こっち向け!」

 

瀧(中身は三葉)が、強引に三葉(自分)の唇を奪い返す。互いの唾液が糸を引き、飛騨の山奥に淫靡な水音が響く。

 

「んっ……! 瀧くん(私)の舌……熱い……っ!」

 

互いに飢えた獣のように、相手の「身(からだ)」を貪り合い、衣服は見る影もなく剥ぎ取られていった。

 

とうとう全裸になって向き合う二人。瀧(中身は三葉)の猛々しい屹立と、三葉(中身は瀧)の濡れそぼつ秘裂が、磁石のように互いを誘い合う。

 

「上に、乗ってくれ……」

「うん……」

 

三葉(中身は瀧)は膝立ちのまま、瀧(中身は三葉)の腰を跨ぎ、自分の本来のモノを、今借りている身体(三葉)の入口にあてがった。すでに蜜液で溢れかえっているため、挿入は驚くほど滑らかだった。

 

ズブッ……ぐちゅうっ……!

「あっ! はぁぁっ! 入ってくる……私(瀧)のが……私(三葉)の中に……っ!」

 

自分自身の肉棒を、自分自身の子宮で受け入れるという、究極の自己愛を超えた倒錯的な質量。三葉(中身は瀧)は驚愕に目を見開きつつも、嬉々としてその腰を深く落としていく。

 

「やばいっ……三葉(お前)の身体……狭すぎて、壊れそうだ……!」

「私もっ……瀧くん(私)のが……大きすぎて……っ! 頭が、真っ白になる……っ!」

 

騎乗位で繋がったまま、二人はしばし、時空の狭間で重なり合う拍動を確かめ合った。しかし、西の地平線に沈みゆく夕陽は、残酷にも二人の猶予を削っていく。

 

「もっと……早く動かなきゃ……カタワレ時が、終わっちゃう……!」

 

三葉(中身は瀧)は、三葉の大きな瞳に涙を溜めながら、猛烈な上下運動を開始した。

 

パンッ! パチンッ! ジュクチュッ!

「はっ! あんっ! 瀧くん、見てっ……私たち、今……本当の意味で一つになってる……っ!」

 

結合部からは、透明な愛液と先走りが混ざり合った白濁が滴り落ちる。瀧(中身は三葉)は、男の身体に宿る剥き出しの征服欲に突き動かされ、下から突き上げた。

 

ぐちょっ! じゅぽっ!

「くっ……! 三葉っ……今度は、後ろから……!」

 

体位を入れ替えようと腰を浮かすが、三葉(中身は瀧)がそれを強く制止した。

 

「だめっ……! このままがいい……! 瀧くん(私)の顔、ずっと見てたいの……! 忘れさせないで……っ!」

 

四つん這いにされる直前のギリギリのところで、三葉の華奢な腕で瀧(中身は三葉)を押し倒し、再び正常位の形で深く繋がり合う。

 

瀧(中身は三葉)は、もはや自分が「三葉」なのか「瀧」なのかも判別がつかなくなるほどの快楽の螺旋に身を投じ、渾身の力で突き上げを開始した。

 

ズプッ! ドチュッ! ドリュリュッ!

「やあぁぁっ! 深い……っ! そこ、三葉(わたし)の一番大事なとこ……叩かれてる……っ!」

 

三葉(中身は瀧)は、半狂乱になって自分自身の背中に爪を立てた。その痛覚すらも愛おしい証として、二人の境目は完全に溶け合っていく。

 

「三葉……! 好きだっ……! お前を、絶対に、絶対に忘れたくない……!」

「私もっ……瀧くん……ずっと一緒だよ……っ! あぁっ……もう、ダメっ……来るっ……!」

 

カタワレ時の消えゆく薄暗がりの中、二人の律動はついに頂点へと達する。三葉(自分)の膣壁が激しく痙攣し、瀧(自分)の射精寸前の怒張を執拗に締め上げた。

 

「イクぞっ……! 俺の全部、受け止めてくれ……っ!」

「きてっ……! 私の一番奥に……瀧くんの全部っ……!」

ドクンッ!! ビュルルルッ!!

「あああぁぁーーっ!!」

 

自分自身の精液が、自分自身の子宮へと注ぎ込まれる、熱く、重く、逃れられない奔流。その熱量に、二人は絶叫した。世界の境界線が閉じる間際、二人の身体は糸が切れた操り人形のように重なり合い、魂ごと混ざり合うかのように、最後の一滴まで激しく交換し合った。

 

【消えゆく輪郭】

空の残光が失われ、星々が瞬き始める。

重なり合っていた二人の鼓動は、次第に遠のいていく。

瀧(中身は三葉)は、三葉(中身は瀧)の胸に顔を埋め、消えゆく温もりを必死に繋ぎ止めようとしていた。

 

「……瀧くん、もうすぐ……終わっちゃう」

「ああ。……でも、忘れない。絶対に忘れないから」

 

瀧は、三葉の身体を通して得た、魂が震えるような充足感を噛み締めていた。

自分の肉体(瀧)を抱きしめる三葉(自分)の腕の強さ、そして三葉の肉体(自分)を貫く瀧(自分)の熱。

それは、二人という個を超えて、一つの命の円環が完成したような、神聖な静寂だった。

 

「名前……書こうぜ。忘れないように」

 

フェルトペンを握る手も、もうすぐ離れ離れになる。

二人は、行為の余韻で微かに震える指先を重ねた。

三葉の肌に残る瀧の愛撫の記憶、瀧の肉体に刻まれた三葉の情熱。

それらは、時が経てば「夢」として処理されてしまうのかもしれない。けれど、魂の深い場所に刻まれたこの「まぐわい」の記憶だけは、隕石が落ちても、世界が書き換わっても、決して消えることはないと確信していた。

 

「……すきだ」

 

どちらが言ったのかも分からない言葉が、冷えゆく空気の中に溶けていく。

カタワレ時の魔法が解ける直前、二人は最後にもう一度だけ、互いの「自分ではない、けれど愛しい肉体」を強く、壊れるほどに抱きしめ合った。

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