君の身(からだ)は。〜入れ替わる体温と、忘れない快楽〜 作:坂本太郎
【男同士の共鳴、女の体温】
糸守の空き地に放置された、テッシーの秘密基地である廃バス。
夏の終わりの湿った夜気が、鉄板に囲まれた狭い室内に熱を閉じ込めている。三葉(中身は瀧)は、機械いじりに没頭するテッシーの隣で、不機嫌そうにコーラを煽っていた。
「……なあ、テッシー。お前さ、本当はこの町のこと、どう思ってんだよ」
瀧(中身)は、三葉の身体を借りて、男同士のようなぶっきらぼうな口調で問いかけた。
テッシーは手を止め、少し驚いたように三葉(瀧)をた。
「……何や、藪から棒に。……まあ、嫌いやないよ。ただ、この閉塞感がな……。お前だって、東京に憧れとるんやろ?」
そう言って笑うテッシーの横顔には、同性としての瀧が共感してしまうような、やるせなさと優しさが混在していた。瀧(中身)はふと思う。こいつは、三葉のことをずっと見てきたんだな、と。
(……こいつ、三葉が好きなんじゃねーのか?)
そう考えた瞬間、三葉の身体の奥が、瀧の意志とは無関係にキュンと疼いた。それは三葉自身の潜在的な意識なのか、それとも瀧が感じた奇妙な嫉妬なのか。
瀧(中身)は少し意地悪をしたくなり、三葉の細い指で、テッシーの油で汚れた腕にそっと触れた。
「……じゃあさ、東京に行く前に。私に、この町の外のことを教えてよ」
三葉の潤んだ瞳で見つめ、わざとらしく身体を寄せる。テッシーは露骨に動揺し、顔を真っ赤にした。
「み、三葉……? お前、今日はおかしいぞ」
「おかしくねーよ。……ほら、テッシーの心臓、めっちゃ速い」
瀧(中身)は面白がっていた。だが、テッシーが三葉(自分)を抱き寄せ、その大きな手が三葉の背中に触れた瞬間、遊び心は一気に吹き飛んだ。
そこにあるのは、自分と同じ「男」の、切実で剥き出しの欲望だった。三葉の身体は、幼馴染の強引な腕の中で、抗うことを忘れたように熱を帯びていく。
【偽りの巫女、本心の剛直】
テッシーの腕は思った以上にガッシリしていて、三葉(中身)はその温もりと力強さに身動きが取れなくなった。いや、身体はむしろ喜んでいる。これは三葉が長年培ってきた信頼の表れなのだろうか。それとも……。
「み……三葉……お前ホンマに今日どうしたんや……? いつもと全然違うやん」
テッシーの声は掠れていた。戸惑いと興奮が入り混じっているのが手に取るように分かる。瀧(中身)は内心で毒づいた。(バーカ、俺は瀧だっつの)
「テッシーこそ……こんな時に『いつも』とか言うなよ。今が一番大事だろ」
三葉の甘い声で、わざと挑発する。テッシーはハッとしたように顔を上げ、そして次の瞬間には三葉を車体に押し付けて唇を奪っていた。それは、三葉への十数年来の想いを凝縮したような、荒々しく、けれどどこか優しいキスだった。
「ん……っ! んんぅっ!」
三葉(中身)は驚きと同時に、男の衝動的な欲情に身体がゾクゾクと粟立つのを感じた。これがテッシーの本性か。しかもそれは「瀧」ではなく「三葉」に向けられている。
テッシーは三葉の巫女装束の襟を乱暴に引き下ろした。さらけ出された白い肌に彼の視線が釘付けになる。
「……綺麗や。ホンマに綺麗や……三葉」
指がゆっくりと乳房に伸びてくる。その動きは性急さを帯びながらも、まるで壊れやすい宝物に触れるかのようで。テッシーの長年の「想い」がそこにはあった。瀧はそれに少し不愉快になる。この身体は今、自分(瀧)なのだ。
「触り方がヘタクソだな」
思わず出た瀧らしい軽口に、テッシーは一瞬怯んだ。が、「あかんか……」と寂しそうに呟いただけで、すぐに愛撫を再開した。そして指先がへそを通り過ぎ、ショーツのクロッチ部分に到達した時、三葉の身体は「はぁっ」と息を呑んだ。テッシーの指が布地の上から優しく円を描くたびに、中から蜜がじんわりと溢れ出してくるのが分かる。
(こいつ……マジでずっと三葉を見てたんだな)
瀧は三葉の身体の中から、幼馴染の切ない感情が染みてくるのを感じた。それは腹立たしくもあり、けれどどこか羨ましくもある複雑な感情だった。
「脱がすぞ……」
テッシーが下着に手をかけた。三葉(中身)は反射的に腰を浮かせた。するりと引き下ろされると同時に、テッシーの大きな手が茂みに触れ、秘裂を割り開いた。
「……お前のもここ、熱いんやな」
囁きと共に、顔が下腹部へ近づいてくる。その熱い吐息だけで三葉のそこはヒクつき、新たな愛液がたらりと垂れた。
「ちょっ……待てテッシー……!」
「待たん」
テッシーの唇が吸い付いた。
じゅるっ! ぴちゃぴちゃっ……!
「ひぃああぁぁーーっ!!」
三葉の身体は弓なりに反り返った。男の、粗野だが的確な舌技が秘部を蹂躙していく。三葉の身体は歓喜に震え、腰が勝手に浮き上がる。テッシーはそれを押さえつけ、さらに奥まで舌を差し入れてきた。
「甘い……三葉……」
その言葉に瀧(中身)は歯噛みした。今味わわれているのは「三葉」の味であり「瀧」ではないのだ。
「そっちばっかり楽しむなよ。こっちにも……お礼くらいさせろ」
三葉(中身)は身体を翻し、テッシーを下敷きにすると、逆さまにシックスナインの体勢をとった。眼前には彼の膨らんだ下腹部がある。テッシーは驚きながらも期待に目を輝かせている。
「な……なにするつもりなんや?」
「大人の遊びってやつだよ」
三葉の細い指がテッシーの腰紐を解き、褌を引き下げた。ボロンと飛び出したモノは瀧自身のものとは比べ物にならないほど大きく、赤黒く怒張していた。これが男同士の嫉妬心か。三葉(中身)は内心で舌打ちしながらも、意地になってそれを口に含んだ。
ぢゅぽっ! ぢゅるっ……! んぐっ……!
「みっ……三葉ぁ……っ! そんなん……どこで覚えよったんや……っ!」
テッシーは三葉の口淫に腰を浮かせて悶えた。一方で彼の舌も健在で、三葉の秘所を容赦なく舐め回している。二人の下腹部で二つの性が絡み合い、淫靡な水音がバスの中にこだました。
「もう……我慢できひん……三葉! お前の中に入りたい!」
テッシーの咆哮と共にシックスナインが解かれる。テッシーは三葉を押し倒し、正常位の体勢で濡れた秘裂に自身の剛直を押し当てた。
「痛かったらすぐ言えよ」
「大丈夫……だから早く」
瀧(中身)が言った瞬間だった。
ずぶりゅっ!!
「くぁああーーっ!! 熱っ……! 太いぃぃっ!!」
瀧は三葉の身体の中で衝撃に耐えた。男である自分が決して経験することはないであろう感覚。テッシーの猛々しいものが胎内を押し広げる痛みと快感に、三葉の意識はクラクラとした。
「全部……入ったで……三葉……お前のナカ、すご……めっちゃキツくて……暖かい……」
テッシーの声が遠くに聞こえる。瀧は三葉の身体を動かし、テッシーの頬に手を添えた。
「まだ……これからだろ。俺をちゃんと満足させろよ」
三葉の声で瀧らしく煽ると、テッシーは一瞬キョトンとしたが、次の瞬間には獰猛な獣のように腰を振り始めた。
ぱんっ! ぱんっ! じゅぷっ! ズニュッ!
結合部から卑猥な音が響く。三葉の秘所は既にテッシーの形に順応し始め、抽送のたびに吸い付いては離れない。瀧(中身)の意識は徐々に朦朧としていく。
「あんっ……! んあっ……! テッシーの……バカみたいに大きいっ……!」
「お前がエロいからやろ! こんなん我慢できるわけないやんっ……!」
テッシーの指が三葉の小さな蕾を摘み上げた瞬間、強烈な電流が走った。
「ひぃあぁぁーっ!? そこ触るなぁぁっ!!」
「ここか? やっぱり三葉も女なんやな。めっちゃ可愛ええ声出すやんけ」
テッシーは上体を起こすと三葉の両脚を担ぎ上げた。所謂松葉崩しの体位だ。角度が変わることで今まで以上に深く突き刺さる。
「んぎぃぃっ! 深いぃぃっ!! 子宮に当たってるぅぅっ!!」
「あかん……もう限界や……出すぞ……三葉! 中に出すで!」
「やめろ馬鹿……!」
瀧が制止したその瞬間、テッシーの動きがピタリと止まった。次の瞬間、彼は三葉を抱き上げると背面座位の体勢に変えた。より深い挿入が可能になる危険な体位だ。
「いやあっ! 待って……今動いたら……!」
「もう待てん!」
ズンッ!
「お゛っ……!? あぁぁぁぁーーっ!!」
瀧(中身)の抵抗も虚しく、テッシーは三葉の奥底目がけて猛烈なストロークを始めた。
「全部受け取れ! 俺の全部……三葉……お前が好きや……っ!」
その言葉に三葉(中身)の心がズキンと痛んだ。今この身体を支配しているのは自分なのに。本来の三葉は今頃何を考えているんだろう。そう思うと同時に、男の絶頂が近いことを本能的に悟った。
「くっ……! 出るっ……! み……三葉ぁぁぁーーっ!!」
ドビュッ! ビュルルルッ!! ゴプッ!
「あああぁぁーーっ! 熱いのが来てるぅぅーっ!!」
体内を焼く灼熱の奔流に三葉の身体は弓なりにのけぞった。瀧(中身)もまた、他人の精を受け止めるという未知の快感に意識が塗り潰されていく。テッシーは最後の一滴まで出し尽くすと、三葉の背中から力なく抱きついてきた。
「好きや……お前が……ホンマに好きなんや……」
その呟きを聞いて、瀧(中身)は静かに涙を零した。嬉しいはずがない。けれど三葉の身体が勝手に震えてしまう。この身体はやはり「三葉」なのだ。「共犯」の感覚。
【鉄の匂いと密やかな熱】
古びたシートの上、二人の重なり合った影が、街灯の微かな光に照らされていた。
三葉(中身)は、テッシーの胸板に顔を埋め、彼の荒い鼓動を全身で受け止めていた。
「……三葉。俺、お前のこと……」
テッシーが言いかけた言葉を、瀧(中身)は三葉の指で彼の唇を塞いで止めた。
言わせてはいけない気がした。それを聞いたら、三葉が自分だけのものではなくなってしまうような、言いようのない独占欲が瀧の胸を締め付ける。
「……言わなくていいよ。分かってるから」
三葉の声で囁くと、テッシーは愛おしそうに三葉の頭を抱きしめた。
瀧(中身)は、三葉の肉体が感じている、長年の絆が肉体関係へと昇華された瞬間の深い安らぎに浸っていた。男同士の友情とは違う、もっと泥臭くて、けれど何よりも温かい「共犯」の感覚。
テッシーの腕は逞しく、三葉の華奢な身体を包み込むには十分すぎるほどだった。
(……三葉。こいつ、マジでお前のこと大事にしてるぞ)
心の中で本来の持ち主へ語りかけながら、瀧は三葉の身体を使い、テッシーの首筋にそっと甘えるように顔を寄せた。
廃バスを叩く雨の音が、二人の静かな時間を外界から切り離す。
この秘密基地で起きた出来事は、明日になれば「なかったこと」になるのかもしれない。けれど、三葉の肌に残るテッシーの熱だけは、瀧の記憶に深く、深く刻み込まれていた。