クールな学園の王子様(♀)は童貞オタクに堕とされる ~BSSから始まるイケナイ関係~ 作:九泉
突き抜けるような青空が、どこまでも広がっていた。
三月。春の訪れを告げる風はまだ少しだけ冷たいが、その中に含まれた陽光の暖かさが、新しい季節の始まりを予感させる。
今日は、俺たちの卒業式だ。
「……終わるんだな」
校門の前で立ち止まり、見慣れた校舎を見上げる。
三年間通った学び舎。入学したての頃は、この退屈な日々が永遠に続くように思えた。友達もできず、ただ筋トレに明け暮れるだけの、灰色の毎日。
だが今は違う。この場所は、俺にとってかけがえのない思い出が詰まった、特別な場所になった。
一人の、王子様のような少女と出会ったことで、俺の世界は色鮮やかに塗り替えられたんだ。
「よう、赤城! 卒業おめでとさん!」
「おう、お前もな!」
登校してくるクラスメイトたちと、ぎこちないながらも挨拶を交わす。
泉と付き合い始めてから、俺を見る周囲の目はすっかり変わった。今では趣味の合う仲間もでき、教室はもう、檻の中のゴリラにとっての居場所ではなくなっていた。
それもこれも全部、泉のおかげだ。
体育館へ向かう生徒たちの流れから少し外れ、俺は校門の脇で、愛しい恋人の姿を探していた。
卒業後、俺は地元の大学へ。そして泉は、俺の想像を超える決断をした。
「君の行く大学に、ボクも行く」。そう言って、推薦枠をあっさりと蹴り、一般入試で俺と同じ大学への合格を勝ち取ったのだ。
「君の隣で、ただの白崎泉として生きたい」。そう誓った彼女の言葉は、本物だった。俺たちの未来は、もう離れることなく繋がっている。
その事実が、俺の心を絶対的な幸福感で満たしていた。
ざわめきが、俺の思考を中断させた。
校門の向こう、生徒たちの視線が一斉に同じ方向へと注がれている。なんだ、芸能人でも来たのか?
俺も訝しんでそちらに目を向け、そして、息を呑んだ。
人だかりの中心に、一人の少女が立っていた。
見慣れた紺色のブレザー。だが、その下はスラックスじゃない。学校指定の、品の良いチェック柄のスカートが、春の風にふわりと揺れている。
すらりと伸びた、信じられないほど形の良い脚。いつもはワックスで無造作にセットされている黒髪は、今日は手を加えられていないのか、さらりと首筋のあたりで柔らかく揺れていた。
その姿は、俺が今まで見たどんなモデルや女優よりも、輝いて見えた。
周囲から、驚嘆と戸惑いの声が上がる。
「おい、誰だあの子……めちゃくちゃ可愛くないか?」
「うちの学校に、あんな子いたか?」
「待って、あの顔、どこかで……」
誰もが、その少女の正体に気づかずにいる。
だが、俺には分かった。分かるに決まっている。俺が、世界で一番愛している女の子だ。
「……泉」
俺が呆然と呟いた、その時だった。
彼女が、ざわめきを気にする素振りも見せず、まっすぐにこちらへ歩いてくる。
その一挙手一投足に、周囲の視線が釘付けになる。やがて、誰かが気づいた。
「嘘……あれ、白崎様じゃない!?」
「えっ、あの〝王子〟が!? 女子の制服……!?」
「マジかよ、元から綺麗な顔はしてたが、とんでもない美人だったんだな……」
驚き、称賛、そして後悔。様々な感情が入り混じった声が、あちこちから聞こえてくる。
だが、そんな喧騒も、今の俺たちの耳には届いていなかった。
泉は、俺の目の前でぴたりと足を止めると、少しだけはにかむように、ふわりと微笑んだ。
「待たせたな、大和くん」
その声は、もう芝居がかった王子様のものではない。
少しだけ高い、柔らかなソプラノ。俺だけが知っていた、彼女の本当の声。
「どうかな? 君の、彼女として」
悪戯っぽく、泉が小首を傾げる。
その瞬間、俺の世界から、音が消えた。
視界に映るのは、朝日を浴びてキラキラと輝く、俺の彼女の姿だけ。
心臓が、痛いくらいに締め付けられる。愛おしさが、胸の中で爆発しそうだった。
似合うとか、可愛いとか、そんな陳腐な言葉では到底足りない。
俺は、この日のために、この笑顔を見るために、生まれてきたのかもしれない。そんな運命論さえ、信じてしまいそうになる。
「……ああ」
ようやく絞り出した声は、自分でも驚くほど、震えていた。
俺は、込み上げてくる感情を抑えきれず、彼女の細い手を取った。
「世界で、一番だ」
俺の言葉に、泉の頬が、ぽっと桜色に染まる。その顔は、もう王子様の仮面を被ってはいない。俺が愛してやまない、たった一人の女の子の顔をしていた。
俺たちは、どちらからともなく笑い合う。周囲のざわめきなんて、もはやただのBGMに過ぎない。
「行こうぜ」
「うん」
繋いだ手を、強く絡め、握りしめる。
泉の指が、それに応えるようにぎゅっと握り返してきた。その温もりが、俺たちの確かな未来を物語っているようだった。
俺たちは、生徒たちの視線が作る一本の道を、胸を張って歩き出した。
目指すは、体育館。俺たちの高校生活が終わり、そして、新しい人生が始まる場所だ。
卒業証書授与。在校生送辞。卒業生答辞。
式は、滞りなく進んでいく。
壇上で名前を呼ばれ、卒業証書を受け取る泉の姿を、俺は自分の席から眩しいものを見るように見つめていた。
女子生徒用の、ひだが美しいスカートを履いた彼女が、凛とした立ち姿で一礼する。その姿は、男子の制服を着ていた頃よりも、ずっと堂々として見えた。
もう、彼女は自分を偽っていない。本当の自分で、ここに立っている。
その事実が、俺の胸を熱くした。
式が終わり、教室に戻って最後のホームルームが始まる。
担任の、涙ながらの最後の挨拶。クラスメイトたちの別れを惜しむ声。
黒板には、誰かが書いた寄せ書きが、カラフルなチョークで埋め尽くされている。俺の名前の周りにも、いつの間にかたくさんのメッセージが書かれていた。
『赤城、大学行ってもTCGやろうぜ!』『筋トレ教えてくれてサンキュ!』
そんな言葉たちに、鼻の奥がつんとする。
最後のホームルームが終わり、教室が最後のざわめきに包まれる中、俺と泉は誰にも気づかれないように、そっと視線を交わした。
そして、どちらからともなく頷き合うと、喧騒を抜け出して、俺たちだけの場所へと向かった。
体育館裏の、古びた準備室。
俺たちの全てが始まった、この秘密の場所。
ギィ、と懐かしい音を立ててドアを開けると、中は埃とカビの匂いが混じり合った、独特の空気に満ちていた。窓から差し込む午後の光が、空気中を舞う塵を照らし、まるで時が止まったかのようだ。
「……なんだか、懐かしいな」
泉が、ぽつりと呟いた。
スカート姿の彼女がこの場所にいるのは、なんだか不思議な感じがする。
「ああ。ここで、お前と初めてカードバトルして……事故で、キスもしたな」
「……言うな、馬鹿」
顔を赤らめて、泉が俺の胸を軽く叩く。その仕草すら、どうしようもなく愛おしい。
俺たちは、あの時と同じように、長机を挟んで向かい合って座った。
だが、もうそこにカードデッキはない。俺たちの視線は、ただお互いのことだけを、まっすぐに見つめていた。
「色々あった」
「ああ。特に、この一年は」
「君と出会って、ボクの全てが変わった」
泉は、俺の手の上に、自分の手をそっと重ねた。
「君が、ボクを王子様の呪いから解放してくれた。ボクに、女の子でいることの喜びを教えてくれた。……感謝してもしきれない」
「やめろよ、柄じゃねえ。俺の方こそお前には感謝してる」
俺は、重ねられた彼女の手に、自分の手を乗せた。
「お前がいなかったら、俺は今でも、教室の隅で一人ぼっちのゴリラのままだった。お前が、俺の世界を広げてくれたんだ」
静かな時間が、流れる。
俺たちの間には、もう言葉は必要なかった。ただ、お互いの手の温もりを確かめ合うだけで、全ての気持ちが伝わってくるようだった。
やがて、泉が名残惜しそうに立ち上がった。
「……そろそろ、行かないとね」
「そうだな」
俺も立ち上がり、泉と並んで準備室のドアへと向かう。
この場所とも、今日でお別れだ。
俺は最後に、この部屋の隅々まで、目に焼き付けるように見渡した。
そして、泉の隣で、小さな声で呟いた。
「なあ、泉」
「ん?」
「この後、どうする?」
俺の問いかけに、泉は一瞬、きょとんとした顔をした。だが、すぐにその意味を察したのだろう。彼女の白い頬が、夕日のように、じわりと赤く染まっていく。
「……それは、君に、任せる」
「そうか」
俺は、にやりと口の端を吊り上げた。
その表情を見た泉は、何かを覚悟したように、こくりと頷く。その潤んだ瞳は、期待に濡れていた。
俺たちは、ゆっくりと準備室のドアを閉めた。
バタン、という頼りない音が、俺たちの高校生活の終わりを告げる合図のように響く。
もう二度と、この場所のドアを開けることはないだろう。
夕暮れの廊下を、俺たちは無言で歩く。
繋いだ手から伝わる泉の体温だけが、確かな現実だった。校舎の外に出ると、卒業を祝う花束を抱えた生徒や、その親たちでまだ賑わっている。俺たちはその喧騒を避けるように、裏門からそっと校舎を後にした。
「どこか、行くか?」
俺がそう尋ねると、泉は少しだけ考えるそぶりを見せた後、こくりと頷いた。
「ボクの家に、来ない?」
「いいのか? 親御さんは……」
「お祝いは別の日にしてくれるって。両親には、今日は友達と打ち上げだって言ってあるんだ」
「それって」
「うん。ボクがいないなら、ってことで、二人でデートに行ってるみたい。……それに」
泉は、俺の顔を下から覗き込むように見上げた。その潤んだ瞳が、熱っぽく俺を捉える。
「君と二人きりで、卒業を祝いたい」
その誘いを、俺が断れるはずもなかった。
俺たちは、どちらからともなく頷き合うと、俺の家へと続く道を歩き始めた。道すがら、俺は今日一日、何度も脳内で
「それにしても、今日の泉は……本当に、すごかったな」
「……そうだろうか」
「ああ。度肝を抜かれた。周りの奴ら、みんなお前に釘付けだったぞ。明日から『伝説の美少女』って語り継がれるんじゃないか?」
「ふふ、大袈裟だな」
泉は嬉しそうに笑う。その笑顔が、俺の心を温かくする。
やがて、見慣れた泉の家の前に着いた。彼女は慣れた手つきで鍵を開け、「どうぞ」と俺を中に招き入れる。
一歩足を踏み入れると、ふわりと彼女の家の匂いがした。それは、もう俺にとって、安心できる香りの一つになっていた。
泉の部屋に入ると、彼女はまず、卒業証書の筒を大事そうに机の上に置いた。そして、窮屈そうにしていたブレザーを脱ぎ、Yシャツの袖をまくる。スカート姿の彼女が、自分の部屋でくつろいでいる。その光景が、なんだか不思議で、そして猛烈に愛おしかった。
「コーヒー淹れるよ」
「ああ、頼む」
泉が部屋を出ていくと、俺は一人、彼女の部屋を見回した。
白と黒を基調とした、シンプルで洗練された空間。だが、そこかしこに彼女の「好き」が散りばめられている。大きな本棚に並んだ、少年漫画やTCGの専門誌。棚に並ぶぬいぐるみ。ベッドサイドに置かれた二人の写真を見たときは思わず頬が緩んだ。
やがて、コーヒーの香ばしい匂いと共に、泉が戻ってきた。
マグカップを受け取りながら、俺はふと、彼女が机の上に置いた卒業証書に目をやった。
「なあ。泉はさ、後悔してないか?」
「何がだい?」
「大学のことだよ。お前なら、もっと上の、東京の大学だって行けただろ。俺なんかに合わせちまって……」
それは、ずっと俺の心のどこかにあった、小さな罪悪感だった。
泉の未来の可能性を、俺が縛り付けてしまったのではないか。
だが、泉は俺の言葉を遮るように、静かに首を横に振った。
「後悔なんて、あるわけないだろう」
彼女は俺の隣に座ると、その大きな瞳でまっすぐに俺を見つめた。
「ボクは、自分で選んだんだ。君の隣にいる未来を。それが、ボクにとって一番の幸せなんだよ。どんなに有名な大学に行くよりも、ずっと価値がある」
「……泉」
「君は、ボクが王子様の仮面を脱ぎ捨てて、ただの女の子になることを許してくれた。今度は、ボクが君の隣で、君を支えたい。……それじゃ、だめかな?」
潤んだ瞳でそう問われて、俺が「だめだ」と言えるはずもない。
俺は持っていたマグカップをそっとテーブルに置くと、彼女の華奢な身体を、そっと引き寄せた。
「だめなわけ、ねえだろ……」
俺の腕の中で、泉は安心したように、ふぅ、と息を吐いた。
俺たちはしばらくの間、そうして抱きしめ合っていた。窓の外は、もうすっかり夜の闇に包まれている。部屋の中は、間接照明の柔らかな光だけが、俺たちを照らしていた。
やがて、泉がゆっくりと顔を上げた。
その頬は上気し、瞳は熱っぽくとろりと蕩けている。その表情が、何を意味するのか、俺にはもう分かっていた。
「……大和くん」
甘く、掠れた声が俺を呼ぶ。
「もう一度……ボクを、抱いてほしい。卒業した、記念に」
「……ああ」
俺は、彼女の唇に、自分のそれを重ねた。
最初は、お互いの愛情を確かめ合うような、優しいキス。だが、それはすぐに熱を帯び、お互いを貪るような激しいものへと変わっていく。
舌を絡め、お互いの唾液を交換し合う。酸欠で頭がぼうっとするのも構わず、俺は彼女の全てを味わい尽くそうとした。
「ん……っ、んん……!」
泉もまた、俺の首に強く腕を回し、必死にしがみついてくる。
俺は彼女を抱き上げると、そのままベッドへと運んだ。ふかふかのシーツの上に、彼女の身体が沈み込む。
俺は彼女の上に覆いかぶさると、ブラウスのボタンを、一つ、また一つと外していく。あらわになった白い肌、そして卒業を機に新調したのだろうか、少しだけ大人びたデザインのレースの下着。その全てが、俺の欲望を容赦なく掻き立てた。
俺は、彼女の全てを確かめるように、その身体の隅々までキスを落としていく。
首筋に、鎖骨に、そして、豊かな双丘に。
「ひゃっ……! あっ、ん……!」
泉の身体が、びくん、びくんと快感に震える。
その反応の一つ一つが、俺をさらに興奮させた。
俺は彼女のスカートを捲り上げ、その最後の砦である下着ごと、ずり下ろした。そして、滑らかな太ももの感触を楽しみながら、さらに奥へと指を進める。
そこは、もうすでに熱く、蜜で濡れそぼっていた。
「もう、欲しいんだろ?」
「んっ……、ぁ……んぅ……!」
もう、彼女は言葉を発することもできない。ただ、俺の与える快感に、身を捩らせるだけだ。
「き、てぇ……」
泉が濡れた陰唇を両手で開いた。挑発するように小さく笑みを浮かべる。
その姿を見て、俺ももう限界だった。
自分のズボンと下着を乱暴に脱ぎ捨てると手早くゴムを被せ、すでにちぎれんばかりに硬くなった俺の熱を、彼女の入り口に押し当てた。
これまでのセックスとは、何かが違う。
卒業という節目が、俺たちの気持ちをより大胆にさせているのかもしれない。
これは、ただのセックスじゃない。俺たちの、新しい門出を祝うための儀式だ。
そう思った、その時だった。
泉が、俺の腕を掴んだ。
そして、熱に浮かされたような、潤んだ瞳で俺を見つめてきた。
「お願い、大和くん……」
震える声で、彼女が囁く。
「今日は……君の全部、ボクの中にちょうだい」
その言葉が、雷のように俺の脳天を貫いた。
君の全部を、ボクの中に。
それが、何を意味するのか。理解できないほど、俺は子供じゃない。
コンドームを、着けないでほしい。
生で、出してほしい。
彼女は、そう言っているのだ。
俺は一瞬、思考が停止した。
もちろん、そのリスクは分かっている。まだ俺たちは学生だ。万が一のことがあれば、俺たちが描く未来は、大きく変わってしまうかもしれない。
だが、目の前で、俺の愛する女が、それを望んでいる。
俺の全てを受け入れたいと、その潤んだ瞳で訴えかけている。
その覚悟を、俺が拒絶することなど、できるはずもなかった。
それに、俺自身も、心のどこかでそれを望んでいたのかもしれない。何の隔たりもなく、泉の全てを感じたい。俺の全てで、彼女を満たしてやりたい、と。
「……泉」
俺は、彼女の頬を両手で包み込んだ。
そして、その瞳をまっすぐに見つめ返す。
「後悔、しないか?」
「しない」
即答だった。その瞳に、迷いは一切ない。
「君の子どもなら、ボクは……」
そこまで言って、泉は恥ずかしそうに言葉を詰まらせた。
だが、その言葉だけで、十分だった。
俺の中で、最後の理性の糸が、ぷつりと音を立てて切れた。
もう、迷いはない。俺は、こいつの全てを受け入れる。そして、俺の全てを、こいつに捧げる。
「……分かった」
俺は短く答えると、泉の唇に、誓いのキスを落とした。
そして、一度被せたそれを外すと、彼女の足の間に、もう一度自分の身体を割り込ませる。
何の隔たりもない、俺の熱。
それが、彼女の濡れた入り口に、直接触れた。
びくり、と泉の身体が大きく震える。生々しい感触が、俺の背筋を駆け上がった。
ず、ず、と、ゆっくり、彼女の奥深くまで、自分の全てを沈めていった。
「あ……っ!」
これまでとは、まるで違う感覚。
薄いゴム一枚隔てていないだけで、伝わる熱も、感触も、何もかもが、あまりにも鮮烈だった。
彼女の内壁が、俺の形を記憶するように、ぬるりと
俺たちは、本当の意味で、一つになったんだ。