クールな学園の王子様(♀)は童貞オタクに堕とされる ~BSSから始まるイケナイ関係~ 作:九泉
あれから、一週間が過ぎた。
俺と泉の奇妙な関係は、まだ続いている。
だがそうして振る舞っているうちに、なんというか、俺たちはまた、本当に自然に振る舞えるように戻った。
さて、放課後の準備室は、今や完全に俺たちの聖域と化していた。
誰にも言えない秘密の関係。恋人、というにはあまりにも歪で、友達、と呼ぶには生々しすぎる。
俺たちはここでカードゲームをしたり、他愛のない話をしたりした。
今のところ、あの日のような行為はしていない。だが、妙にスキンシップが増えた。
泉は俺の身体に強い好奇心を持っているようで、俺の筋肉を確かめるように触ったり、匂いを嗅いだりしてきたりする。そのたびに俺の下半身は正直に反応し、泉はそれを嬉しそうに、そして少しだけ困ったように見つめるのが常だった。
「大和くんの身体は、硬くてすごいな」
「……お前が触るからだろうが」
「ボクは、君の筋肉に触れているだけだけど? なにと勘違いしたのかなあ?」
そう言って、小首を傾げる泉は本当にタチが悪い。
俺の腕や胸筋を、まるで美術品でも鑑賞するように撫でながら、彼女は無垢な顔で俺を煽る。そのくせ、俺が少しでも反撃しようと彼女の身体に触れようとすると、顔を真っ赤にして「な、何をするんだ!」と叫んで逃げ腰になるのだから、全くもって食えないやつだ。
それでも、この関係は不思議と心地よかった。
学校では完璧な「王子様」を演じている泉が、この部屋でだけ俺に見せる、不器用で、好奇心旺盛で、少しだけエッチな素顔。それを知っているのは、世界で俺だけだ。その事実が、俺の心を優越感で満たしていた。
その日も、俺たちは準備室の長机で向かい合っていた。
カードゲームで俺が圧勝し、ふてくされた泉が頬を膨らませている。
「もう一回だ。次はボクが勝つ」
「はいはい。何回やっても同じだって」
軽口を叩きながら、俺はぼんやりと泉の姿を眺めていた。
男子用の制服を着ていても、彼女の身体のラインは華奢でしなやかだ。すらりとした手足、細い腰。だが、一か所だけ、そのイメージにそぐわない部分があった。
胸だ。
普段の彼女は、胸の膨らみが全くない。男子生徒と言われても信じてしまいそうなほど、その胸元は平らに見えた。
だが俺は知っている。あの日、俺に覆いかぶさってきた時に感じた、柔らかさと弾力。彼女はきっと、とんでもないものを隠している。
その秘密の正体は、彼女が制服の下に常に身に着けている、分厚いサポーターだった 。
今日も、Yシャツの第一ボタンまで几帳面に留めているが、その下にあるサポーターの存在がうっすらと透けて見える。あれで、あの豊かな胸を無理やり押しつぶしているのだ。
「……なあ、泉」
俺は、ずっと気になっていたことを口にした。
「ん? なんだい? 敗者に追い打ちする気?」
「そうじゃなくて。お前がいつも着けてる、その……胸のやつ」
俺がそう言った瞬間、泉の表情が凍り付いた。
さっきまでの楽しげな雰囲気は霧散し、彼女の瞳に、鋭い警戒の色が浮かぶ。
「……サポーターのことか。それが、どうかしたのか」
「いや……。それ、苦しくないのかって、ずっと思ってて」
俺の言葉に、泉はあからさまに顔をしかめた。
それは、彼女にとって触れられたくない話題だということが、痛いほど伝わってくる。
しまった、地雷を踏んだか。俺は内心焦ったが、一度口にした言葉はもう止められない。
「だって、見てるだけで息苦しそうだ。毎日ずっと着けてるんだろ? 身体に悪いんじゃねえか?」
俺の言葉は、純粋な心配から出たものだった。
だが、泉にはそうは聞こえなかったらしい。彼女は俺からすっと視線を逸らすと、吐き捨てるように言った。
「君には、関係ないだろ」
それは、今まで聞いたこともないような、冷たくて硬い声だった。
俺たちの間に、気まずい沈黙が落ちる。
泉は固く唇を結び、その表情は完璧な王子の仮面で覆われていた。これ以上この話はするなという、明確な拒絶のサインだ。
だが、俺は引けなかった。
この秘密の部屋でだけ素顔を見せてくれる彼女が、まだ何か大きなコンプレックスを抱え、一人で苦しんでいる。そう思うと、放ってはおけなかった。
「関係なくは、ねえだろ。俺たちは、その……」
何と言えばいいのか分からず、言葉に詰まる。
友達、でもない。恋人、でもない。俺たちのこの関係を、何と呼べばいい?
俺が言い淀んでいると、泉はふっと自嘲するように笑った。
「
その言葉が、ナイフのように俺の胸に突き刺さった。
セフレ。三文字が、俺の頭の中で何度も反響する。
違う、と叫びたかった。俺たちの関係は、そんな安っぽい言葉で片付けられるものじゃない。
だが喉まで出かかった反論は、音にならなかった。じゃあ、何なんだと問われたら、俺も答えられないからだ。
「……違う、だろ」
ようやく絞り出した声は、自分でも驚くほどか細かった。
「何が違うんだい。やっていることは、それと変わりないじゃないか」
泉は自嘲するように、そう言い放つ。
その顔は完璧な王子様の仮面のままだが、俺には分かった。彼女もまた、傷ついている。自分たちの関係を自分自身で貶めることで、何かから必死に心を守ろうとしている。
「変わるだろ! 俺は……俺は、お前とカードバトルするのも、くだらねえ話するのも、全部好きなんだよ。お前が身体に触れてくるのだって、別にそれだけが目的じゃねえだろ!」
「……!」
泉の肩が、びくりと揺れた。
彼女の瞳から、完璧な王子の仮面がわずかに剥がれ落ちる。
「ボクは……君の……男の身体にしか興味がないのかもしれない」
「嘘つくな。じゃあなんで、俺が飯買いに教室出ようとするだけで、つまらなそうな顔してるんだよ」
「そ、それは……」
「なんで、俺が勝つとムキになって、負けるまで勝負を挑んでくるんだよ」
「それは、君が生意気な顔で煽ってくるからだ……!」
「全部、お前が俺自身を見てるからだろうが!」
俺は勢いのまま、机に手をついて泉に顔を近づけた。
泉は俺の気迫に押され、たじろいでいる。その瞳には、もう拒絶の色はなかった。ただ、深い混乱と、そしてほんの少しの怯えが見える。
「俺は、お前が誰にも見せない顔を知ってる。この部屋でだけ、ただの女子になるお前を、俺は……」
好きだ、という言葉が、喉の奥でつっかえて出てこない。
俺は彼女の、何なんだ。友達か? 恋人か? セフレか?
分からない。分からないが、一つだけ確かなことがある。
「俺は、お前が無理してるのを見るのが嫌なんだよ。そのサポーターだってそうだ。そんなもんで自分を縛り付けて、苦しそうな顔して。そんなお前を見るのが、俺は一番嫌なんだ」
まっすぐに、彼女の目を見て言い切った。
俺の言葉は、今度こそ泉の心の奥に届いたようだった。
彼女はしばらく、何も言わずに俺の顔をじっと見つめていた。その大きな瞳が、ゆっくりと潤んでいく。
やがて、彼女はふい、と顔を背けた。
「だって……嫌なんだ」
ぽつり、と呟かれた言葉は、弱々しく震えていた。
「大きいのが嫌なんだ。この男みたいな顔に、こんな胸がついているのが……気持ち悪いだろう」
初めて聞く、泉の弱音だった。
いつも自信に満ち溢れた王子様からは想像もつかない、コンプレックスの告白。
俺は一瞬、言葉を失った。だが、すぐに腹の底から、わけのわからない怒りに似た感情がこみ上げてきた。
「……意味がわからん」
俺は心底、本気でそう言った。
「は?」
泉が、怪訝な顔でこちらを振り返る。
「意味がわからんと言った。巨乳は正義だ」
俺は真剣な顔で、そう断言した。
準備室に、一瞬の沈黙が落ちる。
泉は、俺が何を言っているのか理解できないという顔で、ぽかんと口を開けていた。
「だって……男に胸がついてるみたいじゃないか」
「? なにを言ってるのかわからん。お前はどっからどう見ても女だろ」
俺のあまりにも真剣な反論に、泉の顔が困惑に染まっていく。
「お世辞はいいよ……。ボクは、昔から……」
「お世辞じゃねえ」
俺は彼女の言葉を遮ると、泉の耳元に顔を寄せて、小声で囁いた。
「俺は男相手に勃起する趣味はない」
その言葉は、泉の心の壁を溶かすのに十分すぎたらしい。
彼女の顔が、ぼん、と音を立てるように真っ赤に染まった。さっきまでの冷たい雰囲気は完全に消え去り、そこにはただ、混乱して狼狽える一人の女の子がいるだけだった。
「な……っ、な、な、何を……!」
「事実だろ。俺がお前に興奮するのは、お前がどうしようもなく魅力的な女だからだ。胸がデカいのも、その魅力の一つだ。何一つ、気持ち悪いことなんてねえよ」
俺は続けた。
もう、ためらいはなかった。
「お前がそれをコンプレックスに思うなら、俺が全部肯定してやる。お前の全部を、俺が一番好きだって言ってやる。だから、そんなもんで自分を傷つけるのは、もうやめろ」
泉は、何も言えずに俯いていた。
長いまつ毛が震え、その先端に、涙の粒が光っている。
彼女が身に着けている王子という名の鎧が、一枚、また一枚と剥がれ落ちていくのが分かった。
長い、長い沈黙が流れた。
窓の外では、日が傾き始め、部屋の色がオレンジから深い青へと変わり始めていた。
俺はただ、彼女が顔を上げるのを、じっと待っていた。
やがて、泉はゆっくりと顔を上げた。
その瞳は、涙で濡れていたが、そこにはもう怯えや拒絶の色はなかった。
何かを、覚悟したような、強い光が宿っていた。
彼女は、おもむろに立ち上がると、俺の前に立った。
そして、自分のYシャツのボタンに、震える指をかけた。
「……泉?」
俺が戸惑いの声を上げると、彼女は俺をまっすぐに見つめたまま、首を横に振った。
やめてくれ、という意味じゃない。何も言うな、という意味だ。
一つ、また一つと、ボタンが外されていく。几帳面に留められていたYシャツの前が、ゆっくりとはだけていった。
白い肌が見え、そして、その下にあるサポーターの分厚い生地が露わになる。
彼女は一度、ぐっと唇を噛みしめると、ためらうように、そのサポーターに手をかけた。
そして、意を決したように、それを一気に捲り上げた。
息を、呑んだ。
今まで、分厚いサポーターで無理やり押さえつけられていたものが、重力に従って、その圧倒的な存在感を主張する。
信じられない光景だった。
男子用の制服を着こなし、すらりとして見えた彼女の身体。その華奢な胴体には不釣り合いなほど、豊かで、大きく、そして見事な形をした双丘が、そこにあった。
西日の最後の光が、窓から差し込んでいる。
その光に照らされて、彼女の肌は白く輝き、その膨らみは神々しいまでの曲線を描いていた。
俺は、言葉も出せず、ただその光景に釘付けになっていた。
これが、泉の秘密。
彼女がずっと、嫌悪し、隠し続けてきたもの。
それは、俺が今まで見たどんなものよりも、美しかった。
「……この胸は」
泉が、震える声で呟いた。
恥ずかしさで、頬も耳も、そして白い胸の谷間までもが、真っ赤に染まっている。
彼女は、俺の視線から逃れるように、潤んだ瞳を伏せた。
「君にだけ見てほしい。君にだけ……触ってほしい」
それは、懇願にも似た、囁きだった。
俺の思考は、完全に停止していた。
目の前にある、信じられないほど美しい光景。
そして、耳に残る彼女の、か細くも芯の通った願い。
――君にだけ、触ってほしい
ゴクリ、と生唾を飲み込む。
俺なんかが、触れていいのか。
彼女がずっと隠してきた、聖域のようなその場所に。
だが、俺を見つめる泉の瞳は、もう迷っていなかった。
そこにあるのは、恥じらいと、期待と、そして何よりも、俺に対する絶対的な信頼の色だった。
その瞳に、俺は覚悟を決めた。
ゆっくりと、震える右手を持ち上げる。
筋トレで硬くなった、ごつごつとした俺の手。こんな手で触れたら、彼女の柔らかな肌を傷つけてしまうのではないか。そんな恐怖すら感じた。
だが、引くことはできなかった。
俺の指先が、その豊かな膨らみの、頂点にそっと触れる。
「んっ……!」
泉の身体が、びくりと大きく跳ねた。
肩を震わせ、小さな唇から、甘い悲鳴が漏れる。
その反応に、俺の心臓も馬鹿みたいに跳ね上がった。
指先から伝わる、信じられないほどの熱と、柔らかさ。
それは、あの日、俺に覆いかぶさってきた時に感じた感触と同じ。だが、今は服一枚隔てていない。ダイレクトに伝わるその感触は、俺の脳を痺れさせた。
俺は、まるで貴重な宝物でも扱うかのように、その膨らみを、手のひらで優しく包み込んだ。
俺の大きな手でも、収まりきらない。
その重みが、ずしりと腕に伝わる。これが、泉がずっと抱えてきた重み。
「……あったけえ……」
思わず、声が漏れた。
柔らかくて、温かくて、そして命の弾力を感じる。
俺の言葉に、泉の身体がまた、小さく震えた。
「きれいだ、泉……。すごく、きれいだ」
それは、心の底からの本心だった。
俺の言葉が、泉の最後の躊躇いを溶かしたのかもしれない。
彼女は、潤んだ瞳で俺を見つめ返すと、一歩、俺に近づいた。
そして、恥じらいを振り払うように、その豊かな双丘を、俺の顔にゆっくりと押し付けてきた。
「ん……っ!」
鼻腔を、泉の甘い匂いが埋め尽くす。
シャンプーみたいな匂いと、女の子特有の、なんだか分からないけどめちゃくちゃ良い匂い。
頬に、両側から信じられないほどの柔らかさが押し付けられる。視界は、彼女の白い肌でいっぱいになった。
息が、できない。
だが、苦しいなんて少しも思わなかった。むしろ、このまま窒息して死んでもいいとすら思った。
「いずみ……」
俺が掠れた声で彼女の名前を呼ぶと、泉はこくりと頷き、さらに強く俺に身体を寄せた。
俺の顔を、その柔らかさの中に、深く、深く埋めていく。
まるで、これが自分だと、全身で教えてくれているかのようだった。
彼女が隠してきた秘密。彼女が嫌悪してきた身体。その全てを、俺は今、全身で受け止めている。
その事実が、俺の心をどうしようもなく満たしていく。
俺は、その圧倒的な柔らかさに身を委ねながら、そっと両腕を彼女の背中に回した。
華奢な背中。俺の腕の中に、すっぽりと収まってしまう。
その背中と、腕の中にある豊満な胸とのアンバランスさが、どうしようもなく愛おしかった。
この身体の全てが、白崎泉なんだ。
俺が知っている、誰よりもカッコよくて、意地っ張りで、そして誰よりも可愛い、俺だけの。
「……大和くん」
耳元で、泉が囁いた。
その声は、熱っぽくとろりと蕩けている。
「君の……熱いのが、欲しい」
熱いの。それが何を指すのか、理解できないほど鈍くはなかった。
俺の下半身は、彼女の言葉と、頬に押し付けられた柔らかさによって、とっくに限界を迎えていた。
泉がゆっくりと俺の顔から身体を離す。
その顔は、情欲と恥じらいで真っ赤に染まり、潤んだ瞳は熱っぽく俺を捉えていた。
彼女は俺の前に膝をつくと、ためらうことなく、俺の学生ズボンのベルトに手を伸ばした。あの日の、ぎこちない手つきとは違う。そこには明確な意志があった。
カチャリ、とバックルが外れる。
ファスナーが下ろされる生々しい音が、静まり返った準備室に響いた。
露わになった俺の熱は、すでにちぎれんばかりに膨れ上がっている。
泉はそれを、畏敬の念のこもった瞳で見つめた。
「すごい……」
感嘆の息が漏れる。
そして、彼女は俺のそれを手で優しく包むと、自分の胸の谷間へと、ゆっくりと導いていった。
「っ……!」
信じられない光景だった。
泉は、自らの豊かな双丘で、俺の熱を挟み込んだ。
左右から押し寄せる、蕩けるような柔らかさと弾力。そして、肌と肌が直接触れ合うことで伝わってくる、尋常ではない熱。
今まで経験したどんな快感とも違う。脳の芯が、直接揺さぶられるような感覚。
「あ……ぁ……」
泉からも、苦しげで、甘い声が漏れた。
彼女は自分の胸の中で、さらに存在を主張する俺の熱を、信じられないというように見下ろしている。
そして、覚悟を決めたように、その胸をゆっくりと上下に動かし始めた。
「んっ……、く……ぅ……!」
声にならない悲鳴が、俺の喉から迸る。
目の前で、自分が一番コンプレックスに感じていたはずの胸で、懸命に奉仕してくれる泉の姿。
その表情は、苦痛と快感と、そして未知の行為に対する戸惑いがごちゃ混ぜになっていた。その全てが、どうしようもなく俺を煽った。
彼女の動きが、少しずつ大胆になる。
どうすれば俺が気持ちよくなるのか、確かめるように。
そのたびに、俺の腰は意思とは無関係に跳ねた。
誰だ、パイズリはたいして気持ちよくないとか言ったやつは。大嘘じゃないか。
「やまと、くん……すごい、熱い……硬い……」
泉の言葉は、もはや俺を限界の向こう側へと突き落とす呪文だった。
目の前が、白く点滅する。
泉の顔が、蕩けた瞳が、俺の熱を挟み込みながら揺れる胸が、スローモーションのように見えた。
「いずみ……っ、もう、むりだ……!」
俺の絶叫に、泉の動きが一瞬止まる。
そして、まるで俺の最期を見届けるかのように、再び、強く、深く、その胸を扱いた。
「ああああああああっ!」
熱い奔流が、俺のすべてからほとばしる。
泉の白い胸の谷間に、その周辺に、俺の欲望がぶちまけられた。
ビクン、ビクンと痙攣する俺の身体を、泉はただ、自分の胸で受け止めてくれていた。
長い時間が過ぎたように感じた。
やがて、俺の身体から力が抜けていく。激しい動悸と、骨の髄まで溶かしてしまいそうなほどの倦怠感。
はっと我に返った俺の目に映ったのは、自分の胸の上で白濁した液体を見つめ、呆然としている泉の姿だった。
彼女は、はっと我に返ると、慌ててハンカチで自分の胸と俺の後始末を始める。その顔は、耳まで真っ赤だった。
後始末を終えても、泉は何も言わずに、ただ俺の胸に自分の額をこてん、と預けてきた。
解放された彼女の胸の柔らかさが、汗ばんだ俺の胸に伝わる。
「……すごい、ね。ボクが……するなんて」
ぽつりと、泉が呟いた。
「ちょっと前のボクに言っても、絶対信じないと思う」
「……ああ」
俺は、それしか答えられなかった。
ただ、彼女のショートカットの髪を、優しく撫でる。
もう、俺たちの間に言葉は必要なかった。
この日、俺は彼女の秘密に触れた。
そして、彼女もまた、俺の全てを受け入れてくれた。
王子様の仮面の下に隠されていた、臆病で、コンプレックスの塊で、そしてどうしようもなく愛おしい、たった一人の女の子。
その全てを、俺は守りたいと、心の底から思った。
夕闇が支配する準備室で、俺たちはただ、お互いの体温を感じながら、しばらくの間、静かに寄り添っていた。