※この作品はR-18です。

クールな学園の王子様(♀)は童貞オタクに堕とされる ~BSSから始まるイケナイ関係~   作:九泉

4 / 11
第4話:「王子様」の秘密

 あれから、一週間が過ぎた。

 俺と泉の奇妙な関係は、まだ続いている。

 

 あの翌日(・・・・)は、それはもうぎこちないものだった。だが、耳を真っ赤にしながらも何もなかったかのように振る舞う泉をどうして無視できる? 必死に合わせてやるしかないだろう。

 だがそうして振る舞っているうちに、なんというか、俺たちはまた、本当に自然に振る舞えるように戻った。

 

 さて、放課後の準備室は、今や完全に俺たちの聖域と化していた。

 誰にも言えない秘密の関係。恋人、というにはあまりにも歪で、友達、と呼ぶには生々しすぎる。

 俺たちはここでカードゲームをしたり、他愛のない話をしたりした。

 

 今のところ、あの日のような行為はしていない。だが、妙にスキンシップが増えた。

 泉は俺の身体に強い好奇心を持っているようで、俺の筋肉を確かめるように触ったり、匂いを嗅いだりしてきたりする。そのたびに俺の下半身は正直に反応し、泉はそれを嬉しそうに、そして少しだけ困ったように見つめるのが常だった。

 

「大和くんの身体は、硬くてすごいな」

「……お前が触るからだろうが」

「ボクは、君の筋肉に触れているだけだけど? なにと勘違いしたのかなあ?」

 

 そう言って、小首を傾げる泉は本当にタチが悪い。

 俺の腕や胸筋を、まるで美術品でも鑑賞するように撫でながら、彼女は無垢な顔で俺を煽る。そのくせ、俺が少しでも反撃しようと彼女の身体に触れようとすると、顔を真っ赤にして「な、何をするんだ!」と叫んで逃げ腰になるのだから、全くもって食えないやつだ。

 

 それでも、この関係は不思議と心地よかった。

 学校では完璧な「王子様」を演じている泉が、この部屋でだけ俺に見せる、不器用で、好奇心旺盛で、少しだけエッチな素顔。それを知っているのは、世界で俺だけだ。その事実が、俺の心を優越感で満たしていた。

 

 その日も、俺たちは準備室の長机で向かい合っていた。

 カードゲームで俺が圧勝し、ふてくされた泉が頬を膨らませている。

 

「もう一回だ。次はボクが勝つ」

「はいはい。何回やっても同じだって」

 

 軽口を叩きながら、俺はぼんやりと泉の姿を眺めていた。

 男子用の制服を着ていても、彼女の身体のラインは華奢でしなやかだ。すらりとした手足、細い腰。だが、一か所だけ、そのイメージにそぐわない部分があった。

 

 胸だ。

 普段の彼女は、胸の膨らみが全くない。男子生徒と言われても信じてしまいそうなほど、その胸元は平らに見えた。

 だが俺は知っている。あの日、俺に覆いかぶさってきた時に感じた、柔らかさと弾力。彼女はきっと、とんでもないものを隠している。

 その秘密の正体は、彼女が制服の下に常に身に着けている、分厚いサポーターだった 。

 

 今日も、Yシャツの第一ボタンまで几帳面に留めているが、その下にあるサポーターの存在がうっすらと透けて見える。あれで、あの豊かな胸を無理やり押しつぶしているのだ。

 

「……なあ、泉」

 

 俺は、ずっと気になっていたことを口にした。

 

「ん? なんだい? 敗者に追い打ちする気?」

「そうじゃなくて。お前がいつも着けてる、その……胸のやつ」

 

 俺がそう言った瞬間、泉の表情が凍り付いた。

 さっきまでの楽しげな雰囲気は霧散し、彼女の瞳に、鋭い警戒の色が浮かぶ。

 

「……サポーターのことか。それが、どうかしたのか」

「いや……。それ、苦しくないのかって、ずっと思ってて」

 

 俺の言葉に、泉はあからさまに顔をしかめた。

 それは、彼女にとって触れられたくない話題だということが、痛いほど伝わってくる。

 しまった、地雷を踏んだか。俺は内心焦ったが、一度口にした言葉はもう止められない。

 

「だって、見てるだけで息苦しそうだ。毎日ずっと着けてるんだろ? 身体に悪いんじゃねえか?」

 

 俺の言葉は、純粋な心配から出たものだった。

 だが、泉にはそうは聞こえなかったらしい。彼女は俺からすっと視線を逸らすと、吐き捨てるように言った。

 

「君には、関係ないだろ」

 

 それは、今まで聞いたこともないような、冷たくて硬い声だった。

 俺たちの間に、気まずい沈黙が落ちる。

 泉は固く唇を結び、その表情は完璧な王子の仮面で覆われていた。これ以上この話はするなという、明確な拒絶のサインだ。

 

 だが、俺は引けなかった。

 この秘密の部屋でだけ素顔を見せてくれる彼女が、まだ何か大きなコンプレックスを抱え、一人で苦しんでいる。そう思うと、放ってはおけなかった。

 

「関係なくは、ねえだろ。俺たちは、その……」

 

 何と言えばいいのか分からず、言葉に詰まる。

 友達、でもない。恋人、でもない。俺たちのこの関係を、何と呼べばいい?

 俺が言い淀んでいると、泉はふっと自嘲するように笑った。

 

「あれ(・・)から始まったんだ……セフレ、みたいなもの、だろう? ボクたちは」

 

 その言葉が、ナイフのように俺の胸に突き刺さった。

 

 セフレ。三文字が、俺の頭の中で何度も反響する。

 

 違う、と叫びたかった。俺たちの関係は、そんな安っぽい言葉で片付けられるものじゃない。

 だが喉まで出かかった反論は、音にならなかった。じゃあ、何なんだと問われたら、俺も答えられないからだ。

 

「……違う、だろ」

 

 ようやく絞り出した声は、自分でも驚くほどか細かった。

 

「何が違うんだい。やっていることは、それと変わりないじゃないか」

 

 泉は自嘲するように、そう言い放つ。

 その顔は完璧な王子様の仮面のままだが、俺には分かった。彼女もまた、傷ついている。自分たちの関係を自分自身で貶めることで、何かから必死に心を守ろうとしている。

 

「変わるだろ! 俺は……俺は、お前とカードバトルするのも、くだらねえ話するのも、全部好きなんだよ。お前が身体に触れてくるのだって、別にそれだけが目的じゃねえだろ!」

「……!」

 

 泉の肩が、びくりと揺れた。

 彼女の瞳から、完璧な王子の仮面がわずかに剥がれ落ちる。

 

「ボクは……君の……男の身体にしか興味がないのかもしれない」

「嘘つくな。じゃあなんで、俺が飯買いに教室出ようとするだけで、つまらなそうな顔してるんだよ」

「そ、それは……」

「なんで、俺が勝つとムキになって、負けるまで勝負を挑んでくるんだよ」

「それは、君が生意気な顔で煽ってくるからだ……!」

「全部、お前が俺自身を見てるからだろうが!」

 

 俺は勢いのまま、机に手をついて泉に顔を近づけた。

 泉は俺の気迫に押され、たじろいでいる。その瞳には、もう拒絶の色はなかった。ただ、深い混乱と、そしてほんの少しの怯えが見える。

 

「俺は、お前が誰にも見せない顔を知ってる。この部屋でだけ、ただの女子になるお前を、俺は……」

 

 好きだ、という言葉が、喉の奥でつっかえて出てこない。

 俺は彼女の、何なんだ。友達か? 恋人か? セフレか?

 分からない。分からないが、一つだけ確かなことがある。

 

「俺は、お前が無理してるのを見るのが嫌なんだよ。そのサポーターだってそうだ。そんなもんで自分を縛り付けて、苦しそうな顔して。そんなお前を見るのが、俺は一番嫌なんだ」

 

 まっすぐに、彼女の目を見て言い切った。

 俺の言葉は、今度こそ泉の心の奥に届いたようだった。

 彼女はしばらく、何も言わずに俺の顔をじっと見つめていた。その大きな瞳が、ゆっくりと潤んでいく。

 やがて、彼女はふい、と顔を背けた。

 

「だって……嫌なんだ」

 

 ぽつり、と呟かれた言葉は、弱々しく震えていた。

 

「大きいのが嫌なんだ。この男みたいな顔に、こんな胸がついているのが……気持ち悪いだろう」

 

 初めて聞く、泉の弱音だった。

 いつも自信に満ち溢れた王子様からは想像もつかない、コンプレックスの告白。

 俺は一瞬、言葉を失った。だが、すぐに腹の底から、わけのわからない怒りに似た感情がこみ上げてきた。

 

「……意味がわからん」

 

 俺は心底、本気でそう言った。

 

「は?」

 

 泉が、怪訝な顔でこちらを振り返る。

 

「意味がわからんと言った。巨乳は正義だ」

 

 俺は真剣な顔で、そう断言した。

 準備室に、一瞬の沈黙が落ちる。

 泉は、俺が何を言っているのか理解できないという顔で、ぽかんと口を開けていた。

 

「だって……男に胸がついてるみたいじゃないか」

「? なにを言ってるのかわからん。お前はどっからどう見ても女だろ」

 

 俺のあまりにも真剣な反論に、泉の顔が困惑に染まっていく。

 

「お世辞はいいよ……。ボクは、昔から……」

「お世辞じゃねえ」

 

 俺は彼女の言葉を遮ると、泉の耳元に顔を寄せて、小声で囁いた。

 

「俺は男相手に勃起する趣味はない」

 

 その言葉は、泉の心の壁を溶かすのに十分すぎたらしい。

 彼女の顔が、ぼん、と音を立てるように真っ赤に染まった。さっきまでの冷たい雰囲気は完全に消え去り、そこにはただ、混乱して狼狽える一人の女の子がいるだけだった。

 

「な……っ、な、な、何を……!」

「事実だろ。俺がお前に興奮するのは、お前がどうしようもなく魅力的な女だからだ。胸がデカいのも、その魅力の一つだ。何一つ、気持ち悪いことなんてねえよ」

 

 俺は続けた。

 もう、ためらいはなかった。

 

「お前がそれをコンプレックスに思うなら、俺が全部肯定してやる。お前の全部を、俺が一番好きだって言ってやる。だから、そんなもんで自分を傷つけるのは、もうやめろ」

 

 泉は、何も言えずに俯いていた。

 長いまつ毛が震え、その先端に、涙の粒が光っている。

 彼女が身に着けている王子という名の鎧が、一枚、また一枚と剥がれ落ちていくのが分かった。

 

 長い、長い沈黙が流れた。

 窓の外では、日が傾き始め、部屋の色がオレンジから深い青へと変わり始めていた。

 俺はただ、彼女が顔を上げるのを、じっと待っていた。

 

 やがて、泉はゆっくりと顔を上げた。

 その瞳は、涙で濡れていたが、そこにはもう怯えや拒絶の色はなかった。

 何かを、覚悟したような、強い光が宿っていた。

 

 彼女は、おもむろに立ち上がると、俺の前に立った。

 そして、自分のYシャツのボタンに、震える指をかけた。

 

「……泉?」

 

 俺が戸惑いの声を上げると、彼女は俺をまっすぐに見つめたまま、首を横に振った。

 やめてくれ、という意味じゃない。何も言うな、という意味だ。

 

 一つ、また一つと、ボタンが外されていく。几帳面に留められていたYシャツの前が、ゆっくりとはだけていった。

 白い肌が見え、そして、その下にあるサポーターの分厚い生地が露わになる。

 彼女は一度、ぐっと唇を噛みしめると、ためらうように、そのサポーターに手をかけた。

 

 そして、意を決したように、それを一気に捲り上げた。

 

 息を、呑んだ。

 今まで、分厚いサポーターで無理やり押さえつけられていたものが、重力に従って、その圧倒的な存在感を主張する。

 信じられない光景だった。

 男子用の制服を着こなし、すらりとして見えた彼女の身体。その華奢な胴体には不釣り合いなほど、豊かで、大きく、そして見事な形をした双丘が、そこにあった。

 

 西日の最後の光が、窓から差し込んでいる。

 その光に照らされて、彼女の肌は白く輝き、その膨らみは神々しいまでの曲線を描いていた。

 俺は、言葉も出せず、ただその光景に釘付けになっていた。

 

 これが、泉の秘密。

 彼女がずっと、嫌悪し、隠し続けてきたもの。

 それは、俺が今まで見たどんなものよりも、美しかった。

 

「……この胸は」

 

 泉が、震える声で呟いた。

 恥ずかしさで、頬も耳も、そして白い胸の谷間までもが、真っ赤に染まっている。

 彼女は、俺の視線から逃れるように、潤んだ瞳を伏せた。

 

「君にだけ見てほしい。君にだけ……触ってほしい」

 

 それは、懇願にも似た、囁きだった。

 

 俺の思考は、完全に停止していた。

 目の前にある、信じられないほど美しい光景。

 そして、耳に残る彼女の、か細くも芯の通った願い。

 

 ――君にだけ、触ってほしい

 

 ゴクリ、と生唾を飲み込む。

 俺なんかが、触れていいのか。

 彼女がずっと隠してきた、聖域のようなその場所に。

 

 だが、俺を見つめる泉の瞳は、もう迷っていなかった。

 そこにあるのは、恥じらいと、期待と、そして何よりも、俺に対する絶対的な信頼の色だった。

 その瞳に、俺は覚悟を決めた。

 

 ゆっくりと、震える右手を持ち上げる。

 筋トレで硬くなった、ごつごつとした俺の手。こんな手で触れたら、彼女の柔らかな肌を傷つけてしまうのではないか。そんな恐怖すら感じた。

 だが、引くことはできなかった。

 

 俺の指先が、その豊かな膨らみの、頂点にそっと触れる。

 

「んっ……!」

 

 泉の身体が、びくりと大きく跳ねた。

 肩を震わせ、小さな唇から、甘い悲鳴が漏れる。

 その反応に、俺の心臓も馬鹿みたいに跳ね上がった。

 

 指先から伝わる、信じられないほどの熱と、柔らかさ。

 それは、あの日、俺に覆いかぶさってきた時に感じた感触と同じ。だが、今は服一枚隔てていない。ダイレクトに伝わるその感触は、俺の脳を痺れさせた。

 

 俺は、まるで貴重な宝物でも扱うかのように、その膨らみを、手のひらで優しく包み込んだ。

 俺の大きな手でも、収まりきらない。

 その重みが、ずしりと腕に伝わる。これが、泉がずっと抱えてきた重み。

 

「……あったけえ……」

 

 思わず、声が漏れた。

 柔らかくて、温かくて、そして命の弾力を感じる。

 俺の言葉に、泉の身体がまた、小さく震えた。

 

「きれいだ、泉……。すごく、きれいだ」

 

 それは、心の底からの本心だった。

 俺の言葉が、泉の最後の躊躇いを溶かしたのかもしれない。

 彼女は、潤んだ瞳で俺を見つめ返すと、一歩、俺に近づいた。

 

 そして、恥じらいを振り払うように、その豊かな双丘を、俺の顔にゆっくりと押し付けてきた。

 

「ん……っ!」

 

 鼻腔を、泉の甘い匂いが埋め尽くす。

 シャンプーみたいな匂いと、女の子特有の、なんだか分からないけどめちゃくちゃ良い匂い。

 

 頬に、両側から信じられないほどの柔らかさが押し付けられる。視界は、彼女の白い肌でいっぱいになった。

 息が、できない。

 だが、苦しいなんて少しも思わなかった。むしろ、このまま窒息して死んでもいいとすら思った。

 

「いずみ……」

 

 俺が掠れた声で彼女の名前を呼ぶと、泉はこくりと頷き、さらに強く俺に身体を寄せた。

 俺の顔を、その柔らかさの中に、深く、深く埋めていく。

 まるで、これが自分だと、全身で教えてくれているかのようだった。

 

 彼女が隠してきた秘密。彼女が嫌悪してきた身体。その全てを、俺は今、全身で受け止めている。

 その事実が、俺の心をどうしようもなく満たしていく。

 

 俺は、その圧倒的な柔らかさに身を委ねながら、そっと両腕を彼女の背中に回した。

 華奢な背中。俺の腕の中に、すっぽりと収まってしまう。

 その背中と、腕の中にある豊満な胸とのアンバランスさが、どうしようもなく愛おしかった。

 この身体の全てが、白崎泉なんだ。

 俺が知っている、誰よりもカッコよくて、意地っ張りで、そして誰よりも可愛い、俺だけの。

 

「……大和くん」

 

 耳元で、泉が囁いた。

 その声は、熱っぽくとろりと蕩けている。

 

「君の……熱いのが、欲しい」

 

 熱いの。それが何を指すのか、理解できないほど鈍くはなかった。

 俺の下半身は、彼女の言葉と、頬に押し付けられた柔らかさによって、とっくに限界を迎えていた。

 

 泉がゆっくりと俺の顔から身体を離す。

 その顔は、情欲と恥じらいで真っ赤に染まり、潤んだ瞳は熱っぽく俺を捉えていた。

 彼女は俺の前に膝をつくと、ためらうことなく、俺の学生ズボンのベルトに手を伸ばした。あの日の、ぎこちない手つきとは違う。そこには明確な意志があった。

 

 カチャリ、とバックルが外れる。

 ファスナーが下ろされる生々しい音が、静まり返った準備室に響いた。

 露わになった俺の熱は、すでにちぎれんばかりに膨れ上がっている。

 泉はそれを、畏敬の念のこもった瞳で見つめた。

 

「すごい……」

 

 感嘆の息が漏れる。

 そして、彼女は俺のそれを手で優しく包むと、自分の胸の谷間へと、ゆっくりと導いていった。

 

「っ……!」

 

 信じられない光景だった。

 泉は、自らの豊かな双丘で、俺の熱を挟み込んだ。

 

 

 左右から押し寄せる、蕩けるような柔らかさと弾力。そして、肌と肌が直接触れ合うことで伝わってくる、尋常ではない熱。

 今まで経験したどんな快感とも違う。脳の芯が、直接揺さぶられるような感覚。

 

「あ……ぁ……」

 

 泉からも、苦しげで、甘い声が漏れた。

 彼女は自分の胸の中で、さらに存在を主張する俺の熱を、信じられないというように見下ろしている。

 そして、覚悟を決めたように、その胸をゆっくりと上下に動かし始めた。

 

「んっ……、く……ぅ……!」

 

 声にならない悲鳴が、俺の喉から迸る。

 目の前で、自分が一番コンプレックスに感じていたはずの胸で、懸命に奉仕してくれる泉の姿。

 その表情は、苦痛と快感と、そして未知の行為に対する戸惑いがごちゃ混ぜになっていた。その全てが、どうしようもなく俺を煽った。

 

 彼女の動きが、少しずつ大胆になる。

 どうすれば俺が気持ちよくなるのか、確かめるように。

 そのたびに、俺の腰は意思とは無関係に跳ねた。

 誰だ、パイズリはたいして気持ちよくないとか言ったやつは。大嘘じゃないか。

 

「やまと、くん……すごい、熱い……硬い……」

 

 泉の言葉は、もはや俺を限界の向こう側へと突き落とす呪文だった。

 目の前が、白く点滅する。

 泉の顔が、蕩けた瞳が、俺の熱を挟み込みながら揺れる胸が、スローモーションのように見えた。

 

「いずみ……っ、もう、むりだ……!」

 

 俺の絶叫に、泉の動きが一瞬止まる。

 そして、まるで俺の最期を見届けるかのように、再び、強く、深く、その胸を扱いた。

 

「ああああああああっ!」

 

 熱い奔流が、俺のすべてからほとばしる。

 泉の白い胸の谷間に、その周辺に、俺の欲望がぶちまけられた。

 ビクン、ビクンと痙攣する俺の身体を、泉はただ、自分の胸で受け止めてくれていた。

 

 長い時間が過ぎたように感じた。

 やがて、俺の身体から力が抜けていく。激しい動悸と、骨の髄まで溶かしてしまいそうなほどの倦怠感。

 はっと我に返った俺の目に映ったのは、自分の胸の上で白濁した液体を見つめ、呆然としている泉の姿だった。

 

 彼女は、はっと我に返ると、慌ててハンカチで自分の胸と俺の後始末を始める。その顔は、耳まで真っ赤だった。

 後始末を終えても、泉は何も言わずに、ただ俺の胸に自分の額をこてん、と預けてきた。

 解放された彼女の胸の柔らかさが、汗ばんだ俺の胸に伝わる。

 

「……すごい、ね。ボクが……するなんて」

 

 ぽつりと、泉が呟いた。

 

「ちょっと前のボクに言っても、絶対信じないと思う」

「……ああ」

 

 俺は、それしか答えられなかった。

 ただ、彼女のショートカットの髪を、優しく撫でる。

 もう、俺たちの間に言葉は必要なかった。

 

 この日、俺は彼女の秘密に触れた。

 そして、彼女もまた、俺の全てを受け入れてくれた。

 

 王子様の仮面の下に隠されていた、臆病で、コンプレックスの塊で、そしてどうしようもなく愛おしい、たった一人の女の子。

 その全てを、俺は守りたいと、心の底から思った。

 

 夕闇が支配する準備室で、俺たちはただ、お互いの体温を感じながら、しばらくの間、静かに寄り添っていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。