クールな学園の王子様(♀)は童貞オタクに堕とされる ~BSSから始まるイケナイ関係~ 作:九泉
泉のはにかんだ笑顔は、俺の脳に焼き付いて離れなかった。
夜の住宅街を、俺たちは言葉もなく歩く。さっきまでの熱っぽい空気とは違う、穏やかで、少しだけ甘い沈黙が心地よかった。時折、隣を歩く泉の指先が、俺の手に
好きだ。
その一言が、喉まで出かかっている。
だが、言えない。その言葉を口にしたら、きっと何かが変わってしまう。その変化が怖くて、俺は意味もなく夜空を見上げた。
なあ、泉。
俺たちって、一体なんなんだろうな。
友達、というには、淫靡すぎる関係だ。だがセフレと呼ぶには、お互いの心に触れすぎた。
この曖昧で、居心地のいい関係。でも、俺はもう、それだけじゃ満足できない。
泉のあの笑顔を、俺だけのものにしたい。王子様としてじゃない、俺の彼女として、隣で笑っていてほしい。
「……大和くん」
不意に、泉が立ち止まった。
俺もつられて足を止める。彼女の家の近くだろうか。街灯の光が、彼女の真剣な横顔を照らしていた。
「ボクたちは……その、なんなんだろうな」
俺が考えていたことと、全く同じ言葉。
心臓が、どくんと大きく鳴った。彼女も、同じことを考えてくれていたのか。
「……友達、ではないな」
「ああ、だよね」
俺がそう答えると、泉はゆっくりと俺の方に向き直った。
その大きな瞳が、街灯の光を反射して、きらきらと潤んでいる。覚悟を決めたような、強い光を宿して。
まるでこれから何かを言おうと――ああ、それはだめだ。
俺から言わせてほしい。
もうごまかすのは終わりだ。俺は、腹を括った。
「泉」
俺の言葉に、泉の肩が跳ねる。
ごくり、と生唾を飲み込む。自分の声が、少しだけ震えているのが分かった。
「俺は、お前のことが好きだ。どうしようもなく、好きだ」
飾りのない、まっすぐな言葉。それしか、俺には言えなかった。
「初めて会った時は、恋敵だと思ってムカついてた。けど、カードで対戦して、お前の素顔を知って……準備室で、お前の弱さに触れて……。いつの間にか、お前のことばかり考えるようになった」
泉は、何も言わずに俺の言葉を聞いている。その頬が、みるみるうちに赤く染まっていく。
「俺は、お前がいい。他の誰でもない、お前がいいんだ。だから……俺と、付き合ってほしい」
言い切った。
返事を待つ時間が、永遠のように長く感じられる。心臓の音がうるさくて、耳が痛い。
もし、ここで断られたら。もし、泉が望んでいるのが恋人という関係じゃなかったら。
不安が胸をよぎった、その時だった。
「……ボクもだ」
か細い、だがはっきりと通る声。
「ボクも、大和くんのことが好きだ。初めて、ボクを〝王子様〟としてじゃなく、ただの人間として見てくれた。ボクのコンプレックスも、弱いところも、全部受け止めてくれた。君の前でだけ、ボクは本当の自分でいられる」
泉の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
「だから……ボクを、君の彼女にしてほしい」
その言葉は、俺の世界の全てを肯定する響きを持っていた。
俺は込み上げてくる感情のままに、泉の華奢な身体を強く抱きしめていた。腕の中で、泉が小さく震えているのが分かる。
「ありがとう、泉」
「……うん」
しばらくの間、俺たちはそうして抱きし合っていた。
やがて、ゆっくりと身体を離すと、俺は彼女の潤んだ瞳を見つめた。
だが泉は目を伏せ、ぽつりと尋ねてきた。
「……いいの? 佐々木さんじゃなくて」
その言葉に、俺は思わず苦笑した。
今言われて初めて気づいた。あれだけ頭の中を占めていた彼女が、泉と関わるようになってからどこにもいなくなっていたことに。
「もう一度言うぞ。俺は、お前がいい。お前じゃなきゃだめだ」
「大和くん……」
「その、逆に聞きたいんだが、『誰かと特別な関係になるつもりはない』って言ってなかったか?」
「あれは……」
顔を上げた泉は躊躇うように視線を
「ボクは『
思わず叫びだしたくなった俺を誰が責められようか! だが俺は野生のゴリラではない。理性をもってその衝動を必死に抑えた。
代わりに俺は、その細く小さな手に自分の手を伸ばす。
泉の指が、びくりと震えた。だが、彼女はそれに応えるように、俺の手をぎゅっと握り返してきた。
初めて繋ぐ、恋人の手。柔らかくて、少しひんやりとしていて、そして何よりも愛おしかった。
「じゃあ……」
名残惜しいが、そろそろ帰らないと。いや、もう遅い。家までは送ろうか。そう思った時だった。
「…………このまま、ボクの家に来ないか?」
泉が、俺の手を握ったまま、そう言った。
その顔は真っ赤で、瞳は熱っぽく俺を捉えている。
「え……?」
「今日は……両親が、旅行で留守なんだ」
その言葉の意味を、理解できないほど俺は鈍くはない。
ごくり、と喉が鳴る。
「だから……もっと、君と一緒にいたい。君の、本当の彼女に、なりたい」
それは、紛れもない誘いだった。
俺の心臓が、さっきとは違う種類の激しい動悸を打ち始める。
泉の真剣な瞳から、目が離せない。その瞳の奥には、恥じらいと、期待と、そして少しの不安が渦巻いていた。
俺は、その全てを受け止める覚悟を決めた。
「……ああ。行くよ」
俺がそう答えると、泉は嬉しそうに、そして安心したように、ふわりと微笑んだ。
その笑顔は、今までで一番、綺麗だった。
泉に手を引かれるまま、俺たちは再び歩き出した。
やがて俺たちは、一軒の大きな家の前にたどり着く。表札には「白崎」と書かれていた。
ここが、泉の家。彼女のプライベートな空間。しかもご両親は不在だという。
その事実に、俺の緊張は最高潮に達していた。
◆
静まり返った家の中は、俺の心臓の音だけがやけに大きく響いていた。
泉は慣れた様子で鍵を開け、「どうぞ」と俺を中に招き入れる。ふわりと、彼女の家だけの匂いがした。それは、泉自身の匂いに似た、清潔で、どこか甘い香りだった。
「汚いところだけど、上がってくれ」
「お、お邪魔します……」
ぎこちなく靴を脱ぎ、廊下に上がる。綺麗に整頓された玄関。几帳面な彼女の性格が表れているようだった。
泉は俺の緊張を見透かしたように、くすりと小さく笑った。
「そんなに緊張しないで。取って食べたりはしないさ」
「……善処する」
軽口を交わしてはみるものの、心臓は正直だった。今にも口から飛び出してしまいそうだ。
泉は俺のコートを預かると、「こっちだ」と階段の方へ俺を導いた。
一歩、また一歩と階段を上るたびに、俺の覚悟と緊張が交互にせり上がってくる。泉の部屋。彼女だけの場所。そこに、俺は足を踏み入れようとしている。
二階の廊下の突き当り。泉がドアの前で立ち止まった。
「散らかっているが……ボクの部屋だ」
開かれたドアの向こうには、俺が想像していた通りの、いや、それ以上に彼女らしい空間が広がっていた。
部屋は、白と黒を基調とした、シンプルで落ち着いた雰囲気だった。大きな本棚には、専門書やハードカバーの小説がびっしりと並んでいる。少年漫画の背表紙も見える。
だが、その一方で、ベッドサイドには可愛らしい動物のぬいぐるみがちょこんと置かれていたり、窓辺には小さな観葉植物が飾られていたりした。王子様としての彼女と、年相応の女の子としての彼女。その両方が、この部屋には同居していた。
そして、部屋の中央には、大きなベッド。
シーツには一つもシワがなく、完璧に整えられている。その存在が、俺にこれから起こることを否応なく意識させた。
部屋に入り、ドアが静かに閉められる。
二人きりの、密室。甘い沈黙が、俺と彼女の間に落ちた。何を話せばいいのか分からない。泉も同じようで、ただ俺の隣に立ったまま、床の一点を見つめている。
その沈黙を破ったのは、泉だった。
彼女は、ふぅ、と小さく息を吐くと、震える手で、自分の制服のYシャツのボタンに手をかけた。
「泉……?」
「ボクを……君の、本当の彼女にしてくれるんだろう?」
俺を見上げるその瞳は、潤んでいた。
恥じらいと、不安と、そして何よりも強い覚悟の色を宿して。
俺は何も言えず、ただこくりと頷いた。
一つ、また一つと、ボタンが外されていく。
あらわになる、白い肌。サポーターから解放された豊かな双丘が、月明かりに照らされて、神々しいまでの曲線を描いていた。
泉はYシャツを脱ぎ捨てると、スカートのホックにも手をかける。やがて、彼女の身体を包むものは、下着だけになった。
その完璧な肢体を前に、俺は息を呑む。
しなやかに引き締まった筋肉。細い腰。そして、その華奢な身体には不釣り合いなほど、豊かな胸。
彼女がずっとコンプレックスに感じていた身体。それは、俺が今まで見たどんな芸術品よりも、美しかった。
「大和くんも……脱いで?」
恥ずかしそうに、だがはっきりと彼女は言った。
俺は、まるで操られるかのように、自分の服を脱ぎ捨てていく。
やがて、俺たちはお互いの全てを晒したまま、ベッドの上で向かい合った。
「……きれいだ、泉」
「……うん」
俺はそっと手を伸ばし、彼女の頬に触れる。熱い。俺と同じくらい緊張しているのが分かった。
俺は彼女の身体を傷つけないように、壊してしまわないように、ゆっくりとベッドに横たえる。そして、そのか細い身体の上に、自分の身体を静かに重ねた。
肌と肌が直接触れ合う感触に、ぞくりと全身が震える。
「……泉。怖いか?」
「少し……。でも、君となら……大丈夫」
彼女はそう言うと、俺の首に腕を回し、ぎゅっと目を瞑った。その震える身体が、どうしようもなく愛おしい。
俺は、彼女の唇に、自分のそれを優しく重ねた。最初は戸惑いがちだった泉の唇も、やがて熱を帯び、俺のキスに応えてくる。
もう、抑えきれなかった。
首筋、胸、脚、性器……身体のどこを触っても熱い。
燃え上がる情欲のままに、俺は彼女の身体を求める。
やがて俺は泉の太ももの間に膝を割り入れ、ゆっくりと自分の熱を押し当てた。
泉の身体が、びくりと大きく跳ねる。
「……っ!」
「大丈夫だ、泉。力を抜いて」
俺は彼女を安心させるように、何度も髪を撫で、額にキスを落とす。
泉はこくりと頷くと、覚悟を決めたように、俺を受け入れる準備をした。
俺は、ゆっくりと、慎重に、自分の先端を彼女の入り口に導く。
そこは信じられないほど熱く、そして、まだ誰も受け入れたことのない硬さで、俺の侵入を拒んだ。
彼女の処女を、初めてを、俺が奪う。
その事実に、背徳的な喜びと、彼女を傷つけてしまうかもしれないという恐怖が入り混じる。
俺は一度動きを止め、泉の顔を覗き込んだ。彼女は、唇を強く噛みしめ、痛みを堪えるように眉を寄せている。
「泉……やっぱり、やめ」
「だめ」
俺の言葉を、彼女は遮った。
「続けて……。ボクは、君のモノに、なりたい」
潤んだ瞳で、まっすぐに俺を見つめてくる。
その瞳に、俺は覚悟を決めた。
俺は、彼女の全てを受け止める。痛みも、快感も、全部。
ゆっくりと、腰を進めた。
薄い何かが、俺の熱を阻む感触。
それに、俺の熱が、突き当たった。
俺は、彼女の瞳に映る自分を見つめ返した。
もう、迷いはない。
俺は意を決して、ぐっと腰を押し進めた。
「いっ……!」
泉の身体が、弓なりにしなる。
薄い膜が破れる、生々しい感触。そして、俺の全てが、彼女の奥深くまで侵入していく。
息が詰まるほどの熱と、締め付け。俺たちは、完全に一つになった。
「……ぁ……ッ、い、たい……」
泉の瞳から、大粒の涙が流れ落ちた。
その涙を見て、俺は我に返る。しまった、と後悔が胸を刺した。燃え上がる情欲のままに、彼女を傷つけてしまった。
「ごめん……っ、泉、ごめん……痛かったよな」
俺はすぐに動きを止め、彼女の涙を指で優しく拭った。キスを落とし、汗で濡れた髪を何度も撫でる。
「大丈夫……大丈夫だから……」
泉は、痛みに耐えながらも、ふるふると首を横に振った。
「ううん……大丈夫。嬉しい、痛みだから……。大和くんが、ボクの中に、いる……」
そう言って、彼女は俺の背中に腕を回し、ぎゅっとしがみついてきた。その健気さに、俺の胸は締め付けられる。
俺は、泉が俺の存在に慣れるまで、しばらく動かずに彼女を抱きしめ続けた。
やがて、泉の身体から少しずつ力が抜けていくのが分かった。
俺は、彼女の様子を窺いながら、試すように、ゆっくりと腰を動かし始めた。
「……んっ」
泉の身体が、小さく跳ねる。
さっきとは違う、戸惑うような、甘い声。
俺は、その反応を確かめながら、さらにゆっくりと、深く、動きを繰り返す。
「ぁ……ん……っ、は……なに、これ……」
泉の表情が、痛みから、次第に未知の感覚に対する驚きへと変わっていく。
眉間に寄っていたシワが緩み、その唇が、わずかに開かれる。吐き出される息は、どんどん熱を帯びていった。
「へん、な、かんじ……。奥の方が、きゅって……なって……」
その初々しい反応の一つ一つが、俺の興奮を限界まで高めていく。
普段、完璧な王子様を演じている彼女が、俺の腕の中で、ただの女の子として、初めての快感に乱れていく。その姿が、どうしようもなく愛おしかった。
「いずみ……好きだ……」
「ん……っ、ボクも、すき……やまと、くん……っ、あ……!」
俺はもう、自分を抑えることができなかった。
優しく、深く、時には激しく。お互いの全てを確かめ合うように、何度も、何度も体を重ねた。
泉も、最初は戸惑っていたが、やがて快感の波に身を委ね、俺の動きに応えるように腰を揺らし始める。
王子様が、俺だけのために乱れる。その背徳的な光景に、俺の昂りは最高潮に達した。
「だめ……っ、もう、だめ……! なにか、くる……っ!」
「いいんだ、泉。全部、俺に任せて」
俺がそう囁くと、泉の身体が、びくん、と大きく痙攣した。
「あああああっ!」
甲高い悲鳴と共に、彼女の奥が、きゅうっと強く俺を締め付ける。彼女が、初めての絶頂を迎えたのだと分かった。
その瞬間、俺もまた、熱い奔流を、彼女の奥深くに注ぎ込んでいた。
「……ッ、はぁっ、はぁ……っ」
激しい運動を終えた後のように、二人分の荒い呼吸だけが部屋に響く。
俺は結合したまま、汗でぐっしょりと濡れた泉の身体を、力いっぱい抱きしめた。
心地よい疲労感と、それ以上に大きな幸福感。泉と完全に一つになれたという、絶対的な一体感が、俺の心を満たしていく。
「……すごかった」
泉が、俺の胸に顔を埋めたまま、ぽつりと呟いた。
「ああ……」
俺も、それしか言えなかった。
しばらくそうして寄り添っていると、やがて泉の身体からすう、と安らかな寝息が聞こえ始めた。
初めての経験で、疲れてしまったのだろう。俺の腕の中で、彼女は安心しきった顔で眠っていた。
その寝顔は、もう〝王子〟ではなかった。俺が愛してやまない、たった一人の女の子の顔だ。
俺は、彼女の額にそっとキスを落とす。
もう、離さない。離したくない。
この腕の中にある温もりを、俺が一生、守っていく。
夜が更けていく中、俺は腕の中の愛しい恋人を見つめながら、静かにそう誓ったのだった。