※この作品はR-18です。

クールな学園の王子様(♀)は童貞オタクに堕とされる ~BSSから始まるイケナイ関係~   作:九泉

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第8話:芽生える独占欲

 泉との初めてのデートと、それに続いた嵐のような夜が明けてから、俺たちの関係はまた一つ、新しいステージへと進んだ気がする。

 教室で目が合えば、泉は少しだけ困ったように、でも嬉しそうに微笑むようになった。俺もまた、その笑顔を見るたびに、胸の奥が温かくなるのを感じる。

 クラスの女子たちからの視線は相変わらずだが、もはやそんなものは気にならなかった。俺には、泉がいればそれでいい。

 

 そんな浮かれた気分でいた俺に、思いがけない変化が訪れた。

 

「なあ、赤城。お前、この前のTCGの新弾、もう買ったか?」

 

 昼休み、俺が一人で飯を食っていると、珍しいことにクラスの男子から話しかけられた。そいつは、今まで俺のことを遠巻きに見ていた、オタクグループの一員だった。

 

「え? ああ、まあ一応」

「マジで!? どうだった? あの新しいシステムのやつ、結構強くね?」

 

 それを皮切りに、今まで俺を敬遠していた他のオタクたちも、おそるおそる、しかし興味津々な様子で俺の机の周りに集まってきた。

 

「赤城くんってソシャゲ何やってるの?」

「先週のあれ(アニメ)、見た? ラストのマジでヤバかったよな!」

 

 信じられない光景だった。

 俺がずっと渇望していた趣味を共有できる仲間。その輪の中に、俺は今、確かにいる。

 原因は、恐らく泉だろう。クラスの頂点に君臨する〝王子〟である泉と俺が親しくなったことで、俺に対する周囲の評価が「ただの怖い奴」から「会話のできるゴリラ」へと変化したのだ。

 

「ああ、あの展開は熱かったよな! 特に、主人公機が覚醒するシーンで流れるBGMが最高でさ!」

「分かる! 俺サントラ即ポチったわ!」

 

 俺は、我を忘れて彼らとの会話に夢中になった。

 今まで一人で燻(くゆ)らせてきた情熱を、誰かと共有できる喜び。それは、俺がずっと孤独だった学校生活の中で、初めて感じる種類の幸福だった。

 

 だが、その時。俺は気づいていなかった。

 教室の窓際、自分の席で本を読むふりをしながら、一人の少女が、俺たちの姿をじっと見つめていることに。

 そして、その完璧な王子様の仮面の下で、彼女の胸に小さな痛みが走っていたことなど、思いもよらなかったのだ。

 

 放課後。

 俺は、昼休みに話したオタク仲間たちと、教室でカードバトルを繰り広げていた。

 

「うおっ、そのコンボえげつねえ!」

「赤城、お前強すぎだろ!」

 

 そんな軽口を叩き合いながらカードを並べる時間は、純粋に楽しかった。

 だが、ふと視線を感じて顔を上げると、教室の入り口に、泉が腕を組んで立っていた。その顔は、いつもの涼やかな王子スマイル。だが、その瞳だけは、笑っていなかった。

 

「……泉」

 

 俺が彼女に気づくと、周りのオタクたちも「あっ、白崎様」と動きを止める。

 泉は、そんな彼らには目もくれず、まっすぐに俺だけを見つめていた。

 

「……楽しそうだな、大和くん」

 

 その声は、どこか平坦で、温度を感じさせない。

 

「ああ。こいつらと、ちょっとな」

「そうか。ボクとの〝約束〟よりも、そちらの方が楽しいと見える」

 

 約束。

 その言葉に、俺ははっとした。そうだ、今日は金曜日。いつものように、放課後は準備室で二人きりで過ごす、暗黙の約束があったはずだ。

 完全に、頭から抜け落ちていた。

 

「わ、悪い! 今すぐ行くから!」

 

 俺は慌ててカードを片付け、周りの連中に「じゃあ、またな!」と声をかける。彼らも気さくに返してくれた。

 俺はカバンを掴むと、泉の元へと駆け寄る。

 

「待たせたな、行こうぜ」

 

 俺がそう言うと、泉は何も言わずに踵を返した。

 その背中が、いつもより冷たく、そして頑なに見えたのは、気のせいではなかった。

 

 いつもの準備室。

 ドアを閉めた瞬間、それまでの和やかな空気は完全に消え去った。

 重い沈黙が、俺と泉の間に落ちる。泉は窓際に立ち、こちらに背を向けたまま、何も言おうとしない。

 

「……あのさ、泉」

 

 俺は、気まずい空気に耐えかねて口を開いた。

 

「今日は、その……悪かった。お前との約束、忘れてた……」

「別に、構わないさ」

 

 俺の言葉を遮り、泉は静かに言った。

 

「君にも、君の付き合いがあるんだろう。ボクにばかり構っている必要はない」

「いや、そういうわけじゃ……」

「それに、ボクも見ていて思ったよ。君は、ボクと二人きりでいる時よりも、ずっと楽しそうだった」

 

 その言葉には、チクリとした棘があった。

 泉が、怒っている。いや、違う。これは、拗ねているんだ。

 俺が、自分以外の人間と楽しそうにしていたことに。

 

 その事実に気づいた瞬間、俺の胸に、怒りとは違う、温かくて、どうしようもなく愛おしい感情が込み上げてきた。

 

「……なんだよ、それ。もしかして、妬いてんのか?」

 

 俺が少しだけ茶化すように言うと、泉の肩が、ぴくりと震えた。

 彼女は、ゆっくりとこちらを振り返る。その顔は、頬をかすかに赤らめ、唇をきゅっと結んでいた。図星、といった表情だ。

 

「……別に。そんなわけ、ないだろう」

 

 ぷい、とそっぽを向く泉。その姿が、たまらなく可愛いと思ってしまった。

 俺は彼女に歩み寄ると、その華奢な身体を、後ろからそっと抱きしめた。

 

「ひゃっ!?」

 

 泉の身体が、驚きに大きく跳ねる。

 

「な、何をするんだ、大和くん!」

「いいから、黙ってろ」

 

 俺は、彼女の耳元に顔を寄せて、囁いた。

 

「俺が、一番好きなのは、お前だけだ。お前さえいれば、他のものは全部、捨てたっていい」

 

 俺の腕の中で、泉の身体がカチンと固まったのが分かった。

 それは慰めや気休めなどではない。俺の腹の底から湧き上がってきた、醜くて、どうしようもなく純粋な独占欲の告白だった。他の誰でもない、お前だけがいればいいという、身勝手な祈りだ。

 

 泉がどんな反応をするか、俺は息を詰めて待った。拒絶されるかもしれない。重いと、気味が悪いと、突き放されるかもしれない。

 だが、腕の中の泉は、ゆっくりと、固く強張っていた身体からふっと力を抜いた。そして、俺の胸に、自分の額をこてんと預けてくる。その仕草が、どうしようもなく愛おしい。

 

「……ばか」

 

 か細い、だが震える声に確かな熱がこもっていた。

 

「君は、どうしていつも……ボクが一番言ってほしい言葉を、そんなに簡単くれるんだ」

 

 その声は、もう拗ねてはいなかった。俺の剥き出しの独占欲を、泉は真正面から受け止めてくれたのだ。俺は安堵と、それ以上の喜びで胸が熱くなるのを感じながら、彼女の身体をゆっくりと離した。そして、その両肩を掴み、自分の方へと向き直らせる。

 潤んだ瞳が、不安と、それ以上の歓喜をたたえて俺をまっすぐに射抜いていた。その瞳を見つめ返しながら、俺は正直な気持ちを口にする。

 

「俺だって同じだよ。この前『王子様』が俺以外の奴らと楽しそうにしてるの見かけて……正直、めちゃくちゃ面白くなかった」

「……!」

「俺の前でしか見せない顔があるくせに、俺じゃない相手に笑ってるのが、許せなかった。……ガキっぽいか?」

 

 俺が自嘲気味に問うと、泉はふるふると首を横に振った。そして、俺のシャツを強く握りしめる。

 

「ううん。嬉しい」

「え?」

 

「君が、ボクに嫉妬してくれたことが、嬉しい。……ボクもだ。ボクも、同じ気持ちだった。君がボク以外の女の子と……いや、男とでも、あんなに楽しそうにしているのは見たくない。君の特別は、ボクだけであってほしい」

 

 初めて聞く、泉からのストレートな独占欲の言葉。

 その言葉が、俺たちの間に漂っていた最後の遠慮や理性を、跡形もなく吹き飛ばした。嫉妬という、醜くて、でも純粋な感情が、俺たちの心を完全に一つにする。俺たちはお互い、同じくらい相手を欲している。その事実が、たまらない興奮となって身体中を駆け巡った。

 

「そうかよ」

 

 俺は、口の端に獰猛な笑みを浮かべた。

 目の前の、世界で一番愛おしい俺の女。こいつを、俺以外の誰にも渡したくない。こいつの視線も、感情も、身体も、思考のひとかけらすら、全部俺だけのものにしたい。

 

「じゃあ、他の奴のことなんて考えられなくしてやるよ。俺のことだけで、頭をいっぱいにしてやる」

 

 俺は泉の顎をくいと持ち上げると、もうためらわなかった。乱暴にその唇を塞ぐ。

 いつものような、お互いを確かめ合う甘いキスじゃない。相手を支配し、自分のものだと刻みつけるような、激しいキス。

 

「ん……っ、ふ……んんっ……!」

 

 泉は驚きに目を見開きながらも、すぐに応えてきた。

 俺の首に強く腕をまわし、負けじと舌を絡めてくる。嫉妬の炎が、互いの欲望に火をつけた。俺たちはまるで獣のように、お互いを求め合った。

 

 俺は泉の身体を抱え上げると、いつもカードを並べている長机の上に、乱暴に押し倒す。ガタン、と大きな音がして、机の上のカードが数枚床に散らばったが、もはやどうでもよかった。

 俺は泉の上に覆いかぶさり、そのYシャツのボタンを、引きちぎるように外していく。プラスチックのボタンが、ぱち、ぱち、と音を立てて床に落ちた。

 

「お前は、俺だけのものだろ、泉」

 

 下着だけになった彼女の白い肌に、所有の証を刻むように、赤い噛み跡をいくつもつけた。首筋に、鎖骨に、そして豊かな胸の谷間に。

 

「あっ……! うん……っ、そう、だ……! 君も、ボクだけのものだろう……?」

 

 泉もまた、恍惚とした表情で喘ぎながら俺の背中に爪を立てる。じくりとした痛みが、逆に俺の興奮を極限まで煽った。こいつは王子様なんかじゃない。俺にだけ身体を許し、俺に支配されることを望む、俺だけの女だ。

 

 俺は彼女のスカートを乱暴に捲り上げると、その最後の砦である下着ごと、引き裂かんばかりにずり下ろした。

 何の準備も、前戯もなく、ただ欲望のままに。

 

「んっ……! ぁああッ!」

 

 突然の侵入に、泉の身体が弓なりにしなる。

 だが、その表情は苦痛ではなく、むしろ待ち望んでいたとでも言うように、悦びに歪んでいた。

 その証拠に、泉のそこは、俺が触れるまでもなくとろとろになっていた。

 

 俺たちは、お互いの名前を呼び合いながら、激しく腰をぶつけ合った。嫉妬の炎に身を焦がし、お互いの独占欲をぶつけ合うように。

 それは、これまでで最も荒々しく、そして最も愛情に満ちたセックスだった。

 

「やまと……くん、好きだ……っ、ボクだけを、見て……!」

「見てるさ……! お前しか、見えねえよ……っ!」

 

 俺の視界には、俺の下で乱れる泉の姿しか映らない。

 完璧な王子様の仮面は完全に剥がれ落ち、そこにはただ、嫉妬と欲望に溺れる、一人の愛おしい女の子がいるだけだった。

 その全てを、俺が受け止める。俺だけのものにする。

 

 机がギシギシと悲鳴を上げるのも構わず、俺はさらに深く、激しく、彼女の奥を貫いた。

 準備室に、俺たちの喘ぎ声と、肌がぶつかり合う生々しい音だけが響き渡る。

 

「もっと、欲しいか……? 俺ので、ぐちゃぐちゃになりたいんだろ?」

「んんっ……! なりたい……! 君ので、めちゃくちゃに、して……っ!」

 

 その言葉が、引き金だった。

 俺は彼女の両足を高く持ち上げると、自分の肩に担ぐ。そうすることで、俺の熱はさらに深く、彼女の最も敏感な場所に突き刺さった。

 

「あああああっ! そこっ、だめ、いちばん、奥……!」

 

 泉が、これまで聞いたこともないような甲高い嬌声を上げる。

 その反応に、俺の理性の箍は完全に外れた。

 もう、何も考えられない。ただ、目の前の愛しい存在を、俺の色で、俺の快感で、完全に満たしてしまいたい。

 その一心で、俺は無我夢中で腰を振り続けた。

 

 目の前が、白く点滅する。

 絶頂が、すぐそこまで来ているのが分かった。

 

「いずみ……っ、出る……!」

 

 俺の悲鳴じみた声に、泉の身体がびくんと大きく痙攣した。

 それに応えるように、彼女の奥が、きゅううっと強く俺のものを締め付ける。まるで、俺の全てをその胎内に吸い尽くしてしまおうとするかのように。

 その強烈な収縮が、最後の引き金になった。

 

「うおおおおおおおおっ!」

 

 思考が、真っ白に爆ぜる。

 熱い奔流が、俺の身体の奥深くから、泉の胎内へと叩きつけられた。

 俺の腰が意思とは無関係に、ビクン、ビクンと大きく痙攣を繰り返す。泉もまた、俺の絶頂に引きずられるように甲高い嬌声を上げた。

 

「ああああっ、イっちゃう、やまとくんので、いっぱいに……!」

 

 二人の絶頂が完全に重なり合う。

 快感の波が、何度も、何度も、俺たちの身体を打ち付けた。

 それは、これまで経験したどんなものよりも深く、暴力的で、そしてどうしようもなく甘美な一体感だった。

 

 どれくらいの時間が経っただろうか。

 嵐のような快感の波がようやく過ぎ去り、俺の身体から力が抜けていく。

 

 俺は結合したまま、汗でぐっしょりと濡れた泉の上に、覆いかぶさるように倒れ込んだ。

 ギシリ、と長机が最後の悲鳴を上げる。

 

 しん、と静まり返った準備室。

 二人分の荒い呼吸と、ドクドクと鳴り響く互いの心臓の音だけが響いている。

 心地よい疲労感と、それ以上に大きな幸福感。泉と、嫉妬という醜い感情すら共有し、完全に一つになれたという絶対的な満足感が、俺の心を満たしていく。

 

 俺の腕の中では、気を失ったようにぐったりとしている泉が、浅い呼吸を繰り返していた。その頬は紅潮し、潤んだ瞳はとろりと蕩けて焦点が合っていない。完璧な王子の仮面は跡形もなく、ただ俺に身を委ねる一人の女の子の顔がそこにあった。

 

 俺は、汗で額に張り付いた彼女の髪を、指で優しく払ってやる。

 

「……すごかったな」

 

 俺が掠れた声で呟くと、泉はこくりと小さく頷いた。

 言葉を発するだけの体力も残っていないらしい。

 

「お前が、あんなに独占欲強いなんて、思わなかった」

「……君こそ」

 

 ようやく絞り出したような声で、泉が言い返す。その声には、まだ熱の余韻が色濃く残っていた。

 

「君の隣は、ボクだけの場所なんだ」

「当たり前だろ」

 

 俺は即答した。

 彼女の身体から自分のものをゆっくりと抜き取ると、俺は机の上に落ちていた泉のYシャツで、お互いの身体を乱暴に拭った。そして、乱れた服を整えながら、倒れ込んだままの泉の華奢な身体を、そっと抱き起こす。

 

「お前が俺だけのものであるように、俺だってお前だけのものだ。他の奴らと話すのが、どれだけ楽しくたって、お前といる時の比じゃねえよ」

「……ほんとう?」

「ああ。俺の全部は、お前のものだ」

 

 俺はそう言うと、彼女の唇に、今度は優しくキスを落とした。さっきまでの、互いを支配しようとする激しいものではない。ただひたすらに、愛おしさを伝えるだけの、甘いキス。

 泉は、今度は抵抗なくそれを受け入れた。その瞳から、ぽろり、と一筋の涙がこぼれ落ちる。

 

「……ばか。そんなこと言われたら、ボクは……ますます君を手放せなくなるじゃないか」

「手放すなよ、一生。俺も、お前を離す気はねえから」

 

 俺たちはしばらくの間、そうして抱きしめ合っていた。

 床に散らばったカード。破れて床に落ちたボタン。俺たちの情事の激しさを物語るそれらが、西日の最後の光に照らされている。

 

 嫉妬という感情は、醜くて、苦しいものだと思っていた。

 だが、泉と共有するそれは、俺たちの繋がりをより強く、より深くしてくれる、最高のスパイスになったのかもしれない。

 

 こいつのこんな顔を引き出せるのは、世界で俺だけだ。

 そして、俺の独占欲を真正面から受け止めて、同じ熱量で返してくれるのも、世界でこいつだけだ。

 

 俺は腕の中にある温もりを確かめながら、静かにそう誓った。

 この愛おしい俺だけの王子――いや、お姫様(・・・)を、誰にも渡すものか。

 

 夕闇が完全に準備室を支配する頃、俺たちはようやく落ち着きを取り戻し、どちらからともなく身体を離した。

 気まずさはない。ただ、全てを曝け出した者同士の、穏やかな空気が流れていた。

 

「……帰るか」

「……うん」

 

 二人並んで、誰もいない廊下を歩く。

 繋いだ手の温もりが、さっきまでの熱とは違う、確かな愛情の温度で俺の心を温めていた。

 もう、この手を離すことはないだろう。

 俺と泉の奇妙な関係は、嫉妬の炎を経て、また新しい形へと変わったのだった。

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