クールな学園の王子様(♀)は童貞オタクに堕とされる ~BSSから始まるイケナイ関係~ 作:九泉
泉との初めてのデートと、それに続いた嵐のような夜が明けてから、俺たちの関係はまた一つ、新しいステージへと進んだ気がする。
教室で目が合えば、泉は少しだけ困ったように、でも嬉しそうに微笑むようになった。俺もまた、その笑顔を見るたびに、胸の奥が温かくなるのを感じる。
クラスの女子たちからの視線は相変わらずだが、もはやそんなものは気にならなかった。俺には、泉がいればそれでいい。
そんな浮かれた気分でいた俺に、思いがけない変化が訪れた。
「なあ、赤城。お前、この前のTCGの新弾、もう買ったか?」
昼休み、俺が一人で飯を食っていると、珍しいことにクラスの男子から話しかけられた。そいつは、今まで俺のことを遠巻きに見ていた、オタクグループの一員だった。
「え? ああ、まあ一応」
「マジで!? どうだった? あの新しいシステムのやつ、結構強くね?」
それを皮切りに、今まで俺を敬遠していた他のオタクたちも、おそるおそる、しかし興味津々な様子で俺の机の周りに集まってきた。
「赤城くんってソシャゲ何やってるの?」
「先週の
信じられない光景だった。
俺がずっと渇望していた趣味を共有できる仲間。その輪の中に、俺は今、確かにいる。
原因は、恐らく泉だろう。クラスの頂点に君臨する〝王子〟である泉と俺が親しくなったことで、俺に対する周囲の評価が「ただの怖い奴」から「会話のできるゴリラ」へと変化したのだ。
「ああ、あの展開は熱かったよな! 特に、主人公機が覚醒するシーンで流れるBGMが最高でさ!」
「分かる! 俺サントラ即ポチったわ!」
俺は、我を忘れて彼らとの会話に夢中になった。
今まで一人で
だが、その時。俺は気づいていなかった。
教室の窓際、自分の席で本を読むふりをしながら、一人の少女が、俺たちの姿をじっと見つめていることに。
そして、その完璧な王子様の仮面の下で、彼女の胸に小さな痛みが走っていたことなど、思いもよらなかったのだ。
放課後。
俺は、昼休みに話したオタク仲間たちと、教室でカードバトルを繰り広げていた。
「うおっ、そのコンボえげつねえ!」
「赤城、お前強すぎだろ!」
そんな軽口を叩き合いながらカードを並べる時間は、純粋に楽しかった。
だが、ふと視線を感じて顔を上げると、教室の入り口に、泉が腕を組んで立っていた。その顔は、いつもの涼やかな王子スマイル。だが、その瞳だけは、笑っていなかった。
「……泉」
俺が彼女に気づくと、周りのオタクたちも「あっ、白崎様」と動きを止める。
泉は、そんな彼らには目もくれず、まっすぐに俺だけを見つめていた。
「……楽しそうだな、大和くん」
その声は、どこか平坦で、温度を感じさせない。
「ああ。こいつらと、ちょっとな」
「そうか。ボクとの〝約束〟よりも、そちらの方が楽しいと見える」
約束。
その言葉に、俺ははっとした。そうだ、今日は金曜日。いつものように、放課後は準備室で二人きりで過ごす、暗黙の約束があったはずだ。
完全に、頭から抜け落ちていた。
「わ、悪い! 今すぐ行くから!」
俺は慌ててカードを片付け、周りの連中に「じゃあ、またな!」と声をかける。彼らも気さくに返してくれた。
俺はカバンを掴むと、泉の元へと駆け寄る。
「待たせたな、行こうぜ」
俺がそう言うと、泉は何も言わずに踵を返した。
その背中が、いつもより冷たく、そして頑なに見えたのは、気のせいではなかった。
いつもの準備室。
ドアを閉めた瞬間、それまでの和やかな空気は完全に消え去った。
重い沈黙が、俺と泉の間に落ちる。泉は窓際に立ち、こちらに背を向けたまま、何も言おうとしない。
「……あのさ、泉」
俺は、気まずい空気に耐えかねて口を開いた。
「今日は、その……悪かった。お前との約束、忘れてた……」
「別に、構わないさ」
俺の言葉を遮り、泉は静かに言った。
「君にも、君の付き合いがあるんだろう。ボクにばかり構っている必要はない」
「いや、そういうわけじゃ……」
「それに、ボクも見ていて思ったよ。君は、ボクと二人きりでいる時よりも、ずっと楽しそうだった」
その言葉には、チクリとした棘があった。
泉が、怒っている。いや、違う。これは、拗ねているんだ。
俺が、自分以外の人間と楽しそうにしていたことに。
その事実に気づいた瞬間、俺の胸に、怒りとは違う、温かくて、どうしようもなく愛おしい感情が込み上げてきた。
「……なんだよ、それ。もしかして、妬いてんのか?」
俺が少しだけ茶化すように言うと、泉の肩が、ぴくりと震えた。
彼女は、ゆっくりとこちらを振り返る。その顔は、頬をかすかに赤らめ、唇をきゅっと結んでいた。図星、といった表情だ。
「……別に。そんなわけ、ないだろう」
ぷい、とそっぽを向く泉。その姿が、たまらなく可愛いと思ってしまった。
俺は彼女に歩み寄ると、その華奢な身体を、後ろからそっと抱きしめた。
「ひゃっ!?」
泉の身体が、驚きに大きく跳ねる。
「な、何をするんだ、大和くん!」
「いいから、黙ってろ」
俺は、彼女の耳元に顔を寄せて、囁いた。
「俺が、一番好きなのは、お前だけだ。お前さえいれば、他のものは全部、捨てたっていい」
俺の腕の中で、泉の身体がカチンと固まったのが分かった。
それは慰めや気休めなどではない。俺の腹の底から湧き上がってきた、醜くて、どうしようもなく純粋な独占欲の告白だった。他の誰でもない、お前だけがいればいいという、身勝手な祈りだ。
泉がどんな反応をするか、俺は息を詰めて待った。拒絶されるかもしれない。重いと、気味が悪いと、突き放されるかもしれない。
だが、腕の中の泉は、ゆっくりと、固く強張っていた身体からふっと力を抜いた。そして、俺の胸に、自分の額をこてんと預けてくる。その仕草が、どうしようもなく愛おしい。
「……ばか」
か細い、だが震える声に確かな熱がこもっていた。
「君は、どうしていつも……ボクが一番言ってほしい言葉を、そんなに簡単くれるんだ」
その声は、もう拗ねてはいなかった。俺の剥き出しの独占欲を、泉は真正面から受け止めてくれたのだ。俺は安堵と、それ以上の喜びで胸が熱くなるのを感じながら、彼女の身体をゆっくりと離した。そして、その両肩を掴み、自分の方へと向き直らせる。
潤んだ瞳が、不安と、それ以上の歓喜をたたえて俺をまっすぐに射抜いていた。その瞳を見つめ返しながら、俺は正直な気持ちを口にする。
「俺だって同じだよ。この前『王子様』が俺以外の奴らと楽しそうにしてるの見かけて……正直、めちゃくちゃ面白くなかった」
「……!」
「俺の前でしか見せない顔があるくせに、俺じゃない相手に笑ってるのが、許せなかった。……ガキっぽいか?」
俺が自嘲気味に問うと、泉はふるふると首を横に振った。そして、俺のシャツを強く握りしめる。
「ううん。嬉しい」
「え?」
「君が、ボクに嫉妬してくれたことが、嬉しい。……ボクもだ。ボクも、同じ気持ちだった。君がボク以外の女の子と……いや、男とでも、あんなに楽しそうにしているのは見たくない。君の特別は、ボクだけであってほしい」
初めて聞く、泉からのストレートな独占欲の言葉。
その言葉が、俺たちの間に漂っていた最後の遠慮や理性を、跡形もなく吹き飛ばした。嫉妬という、醜くて、でも純粋な感情が、俺たちの心を完全に一つにする。俺たちはお互い、同じくらい相手を欲している。その事実が、たまらない興奮となって身体中を駆け巡った。
「そうかよ」
俺は、口の端に獰猛な笑みを浮かべた。
目の前の、世界で一番愛おしい俺の女。こいつを、俺以外の誰にも渡したくない。こいつの視線も、感情も、身体も、思考のひとかけらすら、全部俺だけのものにしたい。
「じゃあ、他の奴のことなんて考えられなくしてやるよ。俺のことだけで、頭をいっぱいにしてやる」
俺は泉の顎をくいと持ち上げると、もうためらわなかった。乱暴にその唇を塞ぐ。
いつものような、お互いを確かめ合う甘いキスじゃない。相手を支配し、自分のものだと刻みつけるような、激しいキス。
「ん……っ、ふ……んんっ……!」
泉は驚きに目を見開きながらも、すぐに応えてきた。
俺の首に強く腕をまわし、負けじと舌を絡めてくる。嫉妬の炎が、互いの欲望に火をつけた。俺たちはまるで獣のように、お互いを求め合った。
俺は泉の身体を抱え上げると、いつもカードを並べている長机の上に、乱暴に押し倒す。ガタン、と大きな音がして、机の上のカードが数枚床に散らばったが、もはやどうでもよかった。
俺は泉の上に覆いかぶさり、そのYシャツのボタンを、引きちぎるように外していく。プラスチックのボタンが、ぱち、ぱち、と音を立てて床に落ちた。
「お前は、俺だけのものだろ、泉」
下着だけになった彼女の白い肌に、所有の証を刻むように、赤い噛み跡をいくつもつけた。首筋に、鎖骨に、そして豊かな胸の谷間に。
「あっ……! うん……っ、そう、だ……! 君も、ボクだけのものだろう……?」
泉もまた、恍惚とした表情で喘ぎながら俺の背中に爪を立てる。じくりとした痛みが、逆に俺の興奮を極限まで煽った。こいつは王子様なんかじゃない。俺にだけ身体を許し、俺に支配されることを望む、俺だけの女だ。
俺は彼女のスカートを乱暴に捲り上げると、その最後の砦である下着ごと、引き裂かんばかりにずり下ろした。
何の準備も、前戯もなく、ただ欲望のままに。
「んっ……! ぁああッ!」
突然の侵入に、泉の身体が弓なりにしなる。
だが、その表情は苦痛ではなく、むしろ待ち望んでいたとでも言うように、悦びに歪んでいた。
その証拠に、泉のそこは、俺が触れるまでもなくとろとろになっていた。
俺たちは、お互いの名前を呼び合いながら、激しく腰をぶつけ合った。嫉妬の炎に身を焦がし、お互いの独占欲をぶつけ合うように。
それは、これまでで最も荒々しく、そして最も愛情に満ちたセックスだった。
「やまと……くん、好きだ……っ、ボクだけを、見て……!」
「見てるさ……! お前しか、見えねえよ……っ!」
俺の視界には、俺の下で乱れる泉の姿しか映らない。
完璧な王子様の仮面は完全に剥がれ落ち、そこにはただ、嫉妬と欲望に溺れる、一人の愛おしい女の子がいるだけだった。
その全てを、俺が受け止める。俺だけのものにする。
机がギシギシと悲鳴を上げるのも構わず、俺はさらに深く、激しく、彼女の奥を貫いた。
準備室に、俺たちの喘ぎ声と、肌がぶつかり合う生々しい音だけが響き渡る。
「もっと、欲しいか……? 俺ので、ぐちゃぐちゃになりたいんだろ?」
「んんっ……! なりたい……! 君ので、めちゃくちゃに、して……っ!」
その言葉が、引き金だった。
俺は彼女の両足を高く持ち上げると、自分の肩に担ぐ。そうすることで、俺の熱はさらに深く、彼女の最も敏感な場所に突き刺さった。
「あああああっ! そこっ、だめ、いちばん、奥……!」
泉が、これまで聞いたこともないような甲高い嬌声を上げる。
その反応に、俺の理性の箍は完全に外れた。
もう、何も考えられない。ただ、目の前の愛しい存在を、俺の色で、俺の快感で、完全に満たしてしまいたい。
その一心で、俺は無我夢中で腰を振り続けた。
目の前が、白く点滅する。
絶頂が、すぐそこまで来ているのが分かった。
「いずみ……っ、出る……!」
俺の悲鳴じみた声に、泉の身体がびくんと大きく痙攣した。
それに応えるように、彼女の奥が、きゅううっと強く俺のものを締め付ける。まるで、俺の全てをその胎内に吸い尽くしてしまおうとするかのように。
その強烈な収縮が、最後の引き金になった。
「うおおおおおおおおっ!」
思考が、真っ白に爆ぜる。
熱い奔流が、俺の身体の奥深くから、泉の胎内へと叩きつけられた。
俺の腰が意思とは無関係に、ビクン、ビクンと大きく痙攣を繰り返す。泉もまた、俺の絶頂に引きずられるように甲高い嬌声を上げた。
「ああああっ、イっちゃう、やまとくんので、いっぱいに……!」
二人の絶頂が完全に重なり合う。
快感の波が、何度も、何度も、俺たちの身体を打ち付けた。
それは、これまで経験したどんなものよりも深く、暴力的で、そしてどうしようもなく甘美な一体感だった。
どれくらいの時間が経っただろうか。
嵐のような快感の波がようやく過ぎ去り、俺の身体から力が抜けていく。
俺は結合したまま、汗でぐっしょりと濡れた泉の上に、覆いかぶさるように倒れ込んだ。
ギシリ、と長机が最後の悲鳴を上げる。
しん、と静まり返った準備室。
二人分の荒い呼吸と、ドクドクと鳴り響く互いの心臓の音だけが響いている。
心地よい疲労感と、それ以上に大きな幸福感。泉と、嫉妬という醜い感情すら共有し、完全に一つになれたという絶対的な満足感が、俺の心を満たしていく。
俺の腕の中では、気を失ったようにぐったりとしている泉が、浅い呼吸を繰り返していた。その頬は紅潮し、潤んだ瞳はとろりと蕩けて焦点が合っていない。完璧な王子の仮面は跡形もなく、ただ俺に身を委ねる一人の女の子の顔がそこにあった。
俺は、汗で額に張り付いた彼女の髪を、指で優しく払ってやる。
「……すごかったな」
俺が掠れた声で呟くと、泉はこくりと小さく頷いた。
言葉を発するだけの体力も残っていないらしい。
「お前が、あんなに独占欲強いなんて、思わなかった」
「……君こそ」
ようやく絞り出したような声で、泉が言い返す。その声には、まだ熱の余韻が色濃く残っていた。
「君の隣は、ボクだけの場所なんだ」
「当たり前だろ」
俺は即答した。
彼女の身体から自分のものをゆっくりと抜き取ると、俺は机の上に落ちていた泉のYシャツで、お互いの身体を乱暴に拭った。そして、乱れた服を整えながら、倒れ込んだままの泉の華奢な身体を、そっと抱き起こす。
「お前が俺だけのものであるように、俺だってお前だけのものだ。他の奴らと話すのが、どれだけ楽しくたって、お前といる時の比じゃねえよ」
「……ほんとう?」
「ああ。俺の全部は、お前のものだ」
俺はそう言うと、彼女の唇に、今度は優しくキスを落とした。さっきまでの、互いを支配しようとする激しいものではない。ただひたすらに、愛おしさを伝えるだけの、甘いキス。
泉は、今度は抵抗なくそれを受け入れた。その瞳から、ぽろり、と一筋の涙がこぼれ落ちる。
「……ばか。そんなこと言われたら、ボクは……ますます君を手放せなくなるじゃないか」
「手放すなよ、一生。俺も、お前を離す気はねえから」
俺たちはしばらくの間、そうして抱きしめ合っていた。
床に散らばったカード。破れて床に落ちたボタン。俺たちの情事の激しさを物語るそれらが、西日の最後の光に照らされている。
嫉妬という感情は、醜くて、苦しいものだと思っていた。
だが、泉と共有するそれは、俺たちの繋がりをより強く、より深くしてくれる、最高のスパイスになったのかもしれない。
こいつのこんな顔を引き出せるのは、世界で俺だけだ。
そして、俺の独占欲を真正面から受け止めて、同じ熱量で返してくれるのも、世界でこいつだけだ。
俺は腕の中にある温もりを確かめながら、静かにそう誓った。
この愛おしい俺だけの王子――いや、
夕闇が完全に準備室を支配する頃、俺たちはようやく落ち着きを取り戻し、どちらからともなく身体を離した。
気まずさはない。ただ、全てを曝け出した者同士の、穏やかな空気が流れていた。
「……帰るか」
「……うん」
二人並んで、誰もいない廊下を歩く。
繋いだ手の温もりが、さっきまでの熱とは違う、確かな愛情の温度で俺の心を温めていた。
もう、この手を離すことはないだろう。
俺と泉の奇妙な関係は、嫉妬の炎を経て、また新しい形へと変わったのだった。