【完結】露蜜のカンバス~メスなボクでも幸せになりたい 作:渦螺しお
呼吸もままならないほど人間が詰まった電車内。そんな朝の地獄ルーチンの中、井山理央──リオは、自分のやわらかなお尻をそっと撫でる手に気が付いた。
(──! やだっ。
美大で『SA』──スチューデント・アシスタントをしているため、仕方なく身体をねじ込むこの時間。知らない者同士で触れてしまうのは当然。だがこの手は、明らかな意図があって、リオのお尻をまさぐっている。
乗客に挟まれ逃げ場はない。腰下までかかったオーバーサイズのデニムシャツを押し上げ、白のスキニーパンツ越し、ごつっとした手が少しずつお尻の割れ目に近づく。如何に腰をよじろうが、その指先がかわされることはなく。やさしくも強引に、するりと股間の奥──前へと滑り込んできた。
(ひあっ)
リオはやわらかな
(やめて、もうわかったでしょ……ボクは〝男〟なんだから)
羞恥で頬が赤らみ、目が潤む。しかし切なる願いは、いつも叶うことがない。
指先はおかまいなしに、双胞と花芯をねっとりと撫でまわして熱を帯びさせる。そして……手は尻から前へと移り、硬く大きくなった芯を、ゆっくりと指の腹で上下にさすり始めた。
「はんっ」
甘い声が小さく漏れる。戸惑いと不快さが、その巧みな指先で気持ちのいい刺激へと変わっていく。
リオはぎゅっと前に抱えていたトートバッグを腰下へずらした。未熟とはいえ大きくなれば、タイトなパンツ越しに目立ってしまう。しかしそれは、相手にも好都合。手を隠されたことで、遠慮なく容赦なく、その動きを激しくしていく。
「んんっ……んっ」
吐息を飲み込むたび、身体はどんどん熱くなる。パンツ越し、はっきりと硬く、輪郭を出してしまった花芯。二本の指先がその一番敏感な部分を挟み込んで、摩擦し始める。そして……
(──! だ、だめ! そこだけはっ!)
新たな指先がお尻の間にぐっと突っ込まれ、リオの密やかな
(ぁ、あ、あ……だめ、〝開いちゃう〟)
窪みから頭の先へ、ビリビリと快楽の電気が貫く。
ウェーブがかったショートボブと襟元の間から覗く、リオの陶器のような白いうなじ。みるみる内に紅潮し、しっとりとし始めた。
それを見た男の、獣のように興奮した鼻息がリオの
前後からやってくる快感に胸の先端までもうずく。シャツの下、キャミソールのパッドに擦れ、意図せず硬くなる。
壊されていく。涙できらきらと光る、琥珀色の瞳。なぜ、こんなに狙われるのだろう。その答えを教えるように、耳元で中年男の声がささやいた。
「はぁはぁ……君、めちゃくちゃかわいいね。女の子なんてお呼びじゃないくらいだ」
恐怖の中で、かすかに一瞬、心が揺らぐ。
(かわいい、なんて……言わないで)
欲望だけをぶつける男に、自分の魅力が不本意に捻じ曲げられる。敏感で弱いのは罪じゃない。侵す者が悪いはず。だが、その正論がここで役に立つわけもなく。興奮を抑えた低い声が、耳の奥へ響いてくる。
「もっと……はぁはぁ、もっとよくしてあげる」
「ひぁっ」
窪みを責めていた手が、スキニーの腰回りから滑りこむ。素肌に触れる手は背中を撫でつつお尻の上部を這い、窪みを直接触れようとしている。
これ以上されると、もう取り返しがつかない。特異体質のせいで、既に濡れ始めているこの
(誰か、助け──)
<<──次は「下野」。お出口は右側です>>
不意に轟く車内アナウンス。リオはその助け舟に乗り、我に返って男の手を振り払う。ゆっくりと停車していく中、リオは混みあう人を必死でかき分け、ドアへと向かう。開くなり、どっとあふれ出る人々。その流れに乗ってリオは、何とか逃げ出した。
改札を抜けても、身体の中には、まださっきの熱が残っている。リオは脇目もふらず美大への道を足早に進んでいく。研究室で機器を立ち上げるのは、SAの大切な仕事。
(……ぐすん)
涙を飲み込む。そして忘れ去るべく、駆け出した。
(ボクの身体は、「誰かと幸せになるためのもの」なんだ。もう……堕ちたりするもんか!)
心の中で強く叫ぶ。かつて望まざる中で望み得た、特異な自分を呪いながら。
数奇の運命に集う男たちから、自分の肉体が快楽で溶かされる。そんな未来など、想像することもなく──
◆Pixivで先行公開中です。
https://www.pixiv.net/novel/series/15593975
※無料(R18につき要アカウント) / 主人公の衣装挿絵付き
※本作は下書き完結済 です!