※この作品はR-18です。

【完結】露蜜のカンバス~メスなボクでも幸せになりたい   作:渦螺しお

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10 クリニック③

──『ささがわクリニック』

 

「ぁ、あ、あっ……あああっ!」

「いや~すごいすごい。こんなにずぽずぽと。君の肛門から直腸までさあ、エストロゲン受容体が異常発現して、日増しにメスの組織へ作り替えられてきてるよこれ。しかも外部投与無し(ノンホル)の天然モノ!」

 

 人気のない木曜午後の診察室で、リオの嬌声が響き渡る。笹川はリオの反応と窪み(アヌス)の愛液量を見ながら、ピストンマシンの張り型(ディルド)部分を操作。その様子を流暢に解説しては記録を繰り返していた。

 

「……はぁ、はぁ……──あぅぅ……」

「よ~し休憩。この肛門が特に最高。本来は乾いているはずの場所が、ホルモンに反応してこれほど肥厚(ひこう)して潤うなんて。もうこれ膣口そのものだ」

 

 メスイキ──神経過反射が起こるたび、マシンを止めては「膣内」と称する腸内をカメラで撮る。そしてまた、張り型(ディルド)起動を再開する。最初の診察から、約二週間に一度。リオが笹川からの肉体の『調整』を受け続けて、早や一年以上が経っていた。

 

「よーし、じゃあもう一回イってみよう!」

 

 スイッチが押され、再び起動するマシン。ぐちゅぐちゅと音を立てて、白いディルドが窪み(アヌス)を往復し始める。無機質なモーター音が、リオの熱っぽい喘ぎに塗り替えていく。

 

「……──!? ぁあっ! あ、あ、あんん!!!」

 

「甘酸っぱい匂いが立ち上がってきた。排泄場所なのに、常在菌叢(マイクロバイオーム)が乳酸菌優位って。腸内が嘘みたいに清潔。これなんて医学の常識がひっくり返っちゃう話だよ、あははは!」

 

 早口で発見を宣(のたま)い、狂喜の顔でビデオを回し、PCのキーを一心不乱に打つ笹川。その横でただただ快楽に身をゆだね、果てて──リオの身体は圧倒的に女性寄りの肉体へと変貌を遂げていった。

 

 

「──はいはい、今日もお疲れ様。ブーボのチョコ食べる? 疲れたときは甘いものに限るよ」

「いえ……要らないです」

「そう? 美味しいのに」

 

 調整を終え……検査着一枚を身体にかけ、暗く気落ちしたリオを前に、ハート形の高級チョコをパクパクと口に放り込む笹川。

 いわく、経過は上々。一方でリオの様子が芳しくない。人の機微に疎い笹川も、さすがに精神的ケアを始めていた……が、こちらは思ったように上手くいっていない。

 

「あの、先生。この調整って、いつまで続くんですか」

「モグモグ……そうだねえ、今は五合目ってところかな。だからあと一年? その頃ってちょうど思春期の肉体形成が終わる頃だから。そっから経過観察かなあ」

 

 リオは思った以上の長い期間が返ってきたことに、今日までの悩みを噴出させた。

 

「こんなのおかしいです。ボクだって馬鹿じゃない。ネットでもみんな書いてる……これがいやらしくて『悪いこと』だって!」

 

 叫びとともに、琥珀色の瞳が潤んで、ポロポロと涙がこぼれる。

 

「それは違うよ。リオ君」

 

 笹川は、くるりと真剣な表情に変わり、リオの両肩をつかんだ。

 

「その快感は、世界中の誰もが平等に得られるものなんだ。独りぼっちにならないようにね」

「独り……じゃない?」

「そ。君は、その身体で、いつか好きな誰かを受け入れる。そうすれば、自分も相手もハッピーになれる。どお? 素敵なことだと思わないかい?」

 

 考えてもみなかった。

 独りよがりだと思っていたことが、誰かのためになる。その言葉が、快感を司っていたお腹の中心に、ぐっと響く。そこから、不思議なほどに心の黒い靄(もや)が晴れていった。

 

 (確かに、ボクが女の子っぽくなればなるほど、ママは喜んでくれている。ママが一生懸命作った服を、誰よりも美しく着こなせる。そんなボクを、いつか、誰かが──)

 

 思春期真っ只中の、未完成な肉体。それが笹川という大人の手で変えられる歪さは、こうして幸福の名のもとに霧散していった。

 いいことを言った体で締めると、笹川はまたPCのデータを睨み始める。

 

「う~ん……やっぱり乳腺周りのデータがもう少し欲しいな。乳首の刺激を変えて──リオ君ごめ~ん。もうちょっとだけ付き合って? チョコをお土産に渡すから」

「はい……」

 

 再び診察台に横たわり、機器に拘束されながら、リオは呆然と天井のライトを見つめていた。

 

(ママはきっと、ここまでやっていることは知らないんだろうな。「カワイイ」の代償が、これだってわかったら……)

 

 多忙な合間であろうとも、欠かさず愛情を与えてくる美佐緒。その一方で、デザイナーの仕事ゆえか娘欲しさの性(さが)か、変わりゆく我が子への盲目的な賛美と歓喜を繰り返す。

 

(──んっ)

 

 中に襞(ひだ)が付いたシリコン吸盤を装着される。この、見た目にもおぞましい器具が、今からどれほどの快感を与えるのか。

 

「この情動刺激で、どれぐらい神経共鳴が変わるかってことで……それじゃあ、いくよっ!」

「──!? ふぁあっ!」

 

 びりびり、うねうねと。痺れるようなくすぐったいような、絶妙な刺激が両胸から脳へと走り抜ける。

 

「(ぃぃ、言えない……こんなこと、言えない。だけどもう、身を任せるしか、なぃ──)んんんあぁんっっ!!!」

 

 リオの背中がぐぐぅっと大きく反りかえり……また、果てる。

 診察室内にこだまし続ける、リオの嬌声。もはやこの狂おしい悦楽を止める者は、誰一人としていない。「調整」が未完の結末を迎える、その日まで──





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