※この作品はR-18です。

【完結】露蜜のカンバス~メスなボクでも幸せになりたい   作:渦螺しお

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13 友人宅

「これ、ママから。近所のパティスリーの焼き菓子」

「おっ、ありがとう。んじゃ飲み物はっと……コーラでいいか」

「コーヒーか紅茶がいいかな」

「わかった。え~っとティーバッグどこにしまってたっけ……ちょ、適当に座って、待っててくれ」

 

 住宅街の角地、レンガ調のタイルに覆われた川辺の自宅。

 部屋へと上がるなり、川辺は軽くパニックになった様子で慌てて出ていく。リオはフローリングに置かれたクッションに独り座り、部屋を見渡した。

 

(これが、普通の男の子の部屋なんだ)

 

 本棚には漫画や雑誌が雑然と並び、壁には外国のミュージシャンのポスターが貼ってある。

 

(何か……いいな、こういうの)

 

 パステル調のかわいい色で整えられた自分の部屋と比べ、好きなものが好きなように詰め込まれているこの空間が、リオには少しうらやましく思えた。

 

「わりぃ、待たせた」

 

 慣れない手つきでカチャカチャと音を立て、トレーを小机に置く。白磁のティーカップには、浸かったままのティーバッグから、紅茶が色濃く出ていた。

 

「ありがとう、いただきます」

 

 渋い紅茶も、川辺の気遣いを思えば悪い気がしない。

 川辺はスマホからワイヤレススピーカーに曲を飛ばす。気だるいロックをBGMに、焼き菓子をかじりながら、学校のことなど、どこかぎこちなく、とりとめなく雑談が進んだ。

 

「──あ、この曲、聴いたことある」

「CMとかにも使われてたからな。名曲だぜ。歌ってるのがこのバンド」

 

 今どき珍しいCDジャケットが手渡される。スリーブには小汚いような、オシャレなような外国人が数人、投げやりな調子で写っている。

 

「ね、どれが歌ってる人?」

「ああ、これ。この真ん中で寝てるやつ」

 

 川辺はジャケットを指さしながら、顔をぬっと近づける。そのまま隣に身体を寄せ、いろいろと説明し始めるも……リオは川辺の息遣いを感じ、肌が紅潮し始めた。

 

「リオって、前から思ってたんだけど、いい匂いするな」

「そ、そう? シャンプーかな」

「いや、そういうんじゃなくてこう、甘酸っぱいっていうのか」

 

 心拍が上がる。笹川がいつも言っている、窪み(アヌス)の蜜から漂うというジャスミンの香り。川辺がすんすんとするなり、全身の産毛がくすぐられるような気持ちになる。

 

「なあ、手、握ってもいいか」

 

 無言で頷(うなづ)くなり、静脈の浮いた手が、なめらかなリオの手をぎゅっと握った。

 

「──ひゃっ」

「ごめん、痛かった?」

「う、ううん。びっくりしただけ」

「やわらかいなあ。ずっと握っていられる」

 

 指の間ひとつひとつに、川辺の指が滑り込む。じわり、お互いの手のひらに滲む汗。合わせて、起き上がった花芯(ペニス)の粘膜が下着を突き、窪みがひくひくと開く。乳首は硬く、ゆっくりとキャミソールのパッドと擦れ始める。手を愛撫されただけで、上へ下へと湧き上がってくる快感。

 

 川辺の別の手が、ニーハイの太腿に触れた。その瞬間はっと我に返り、リオはその手を払い、少し後ろへ退いた。

 

「嫌っ!」

「え、あ……」

 

 いい雰囲気だと思っていたところを拒絶され、ショックを受ける川辺。リオは胸に手を当て、呼吸を整える。そして……伝えなければならないことを、何とか声にした。

 

「……ひとつ、聞いておきたいことがあるの」

「な、何」

「ボクのことを知って、わかっていて……こういうこと、してる?」

 

 全く要領を得ない顔をする川辺の目を、真っすぐ見る。リオは意を決して告げた。

 

「ボク、男だからね」

「は?」

 

 沈黙。BGMは鳴り止み、静寂が二人を包む。川辺はふと何かを思い出した顔でつぶやいた。

 

「そういえば……学校にそういう子がいるって、聞いたことが……それが、リオなのか」

 

 リオは黙って頷(うなづ)く。その切ない表情を見つめながら、川辺は再びリオの手を取った。力が入っていない手を、やさしく撫でまわす。

 

「なあ、証拠を見せてくれないか」

「……どうやって?」

「胸を、見せてくれるとか」

「ヤダ。そんな恥ずかしいこと、絶対できない」

 

 当たり前の拒否。なのにどこか、許してしまいそうになる自分。川辺は顔をそむけるリオに食い下がった。

 

「頼む。俺、このままだと頭がバグって、どうしようもなくなる。それに正直、そんなのどっちでもいいんだよ」

「えっ。今、何て」

「俺はリオだから触れたい。リオだからもっと見たい。それだけなんだ」

「ボク、だから……?」

 

 絆(ほだ)される。許していく。こんな自分を知ろうとしてくれている相手に。特異な自分がいいと言ってくれる〝男〟に。

 川辺はさっと両手を床について、頭を下げた。

 

「頼む! 君が好きなんだ、リオ!」

 

 最後の防壁がぐしゃりと崩れる音が、頭の中に響く。きっと、ずっと、言われたいと望んでいた言葉。笹川の言う「幸福(ハッピー)を分かち合う相手」が、川辺なのか。

 

 わからぬまま、呆然と。リオの手がニットのボタンにかかる。ぷつ、ぷつと、ひとつずつ。まばたきひとつしない川辺の目に晒されながら。全てを外し、脱ぎ捨てると、キャミソールの裾をつかみ、ゆっくりと胸の下までめくり上げた。

 うっすらと桃色に染まった、白い肌。小刻みに震えるそこへ、川辺の手が伸びてくる。

 

「んっ……」

 

 両手のひらが胸の下に、吸い付くように貼りつく。川辺はその手先を、するりとキャミソールの胸パッドの内側へ滑り込ませた。

 

「ふあぁんっ」

 

 思わず出た嬌声に、口を押える。川辺の両手が、そのままベッドの縁へリオの背中を押しやる。逃げ場を失ったところで胸の上までめくり上げられ……愛らしくも硬くなった、ピンク色の乳首が現れた。

 

「はあ、はあ……すごい……すごい綺麗だ」

 

 男性のそれとは明らかに違う、グミのようにぷるぷるとした、大きな乳首。川辺は手のひらで少しふっくらした乳房を揉みしだき、指先でゆっくりと乳首を転がし始めた。

 

「んぁ、はぁん」

「乳首がぷにぷにして、指先に引っ付くみたいで……触るだけで、何でこんなに気持ちいいんだ。何だよ、何なんだよ、これ」

「──っ、ぁ、あ……」

 

 指先の加減で、時々小さな痛みが走る。それなのに快感は増し続け、吐息の温度はどんどん上がる。

 しつこく執拗に両胸を揉みしだき、乳首をいじりつづける川辺。やがてその右手を、リオの股間へと滑らせた。

 

「!!! ああっ、ダメっ! そこはっ……んあんんっ」

「ほんとだ、俺と同じものが、ここに……小さいけど、ガッチガチになってる。信じられない。なのに……何でこんなエロくて、かわいいんだ? リオ」

 

 川辺はすっかり上気したリオの顔を見つめながら、ショートパンツを突き上げる花芯(ペニス)を撫でまくる。

 

「!?!? ダメ、だめだめだめぇっ」

 

 隆起に沿い、粘膜の先端を的確にこすりあげる手。男性として、どこが一番感じるかを熟知した動きで。その奥向こう……窪み(アヌス)はすっかり開き切り、こぼれ出た蜜が下着を冷たくじっとりと濡らしている。これが「誰かを受け入れる」ということなのか。

 

 潤みきった琥珀色の瞳。滲む景色の中から、川辺の顔がゆっくりと近づいてくる。艶やかなリオの唇にそよぐ、川辺の息。その唇が、今まさに食いつこうとしていた時だった。

 

「ただいまぁ~。颯太、お友達が来てるの?」

 

 母親らしい声。耳にするなり大げさに飛び退く川辺。リオもすかさず我に返り、手早く服を整える。パタパタと足音が近づき……ノックとドアを開く音が同時に響いた。

 

「颯太、返事ぐらい……あら! あらあらあら。こんにちは」

「こ、こんにち……は」

 

 眉間にしわを寄せて覗き込んだ母親の顔は、リオを見るなり満面の笑みへと変わった。

 

「あらまあ、ちゃんとお茶まで用意して。えっと……」

「井山、理央です。初めまして」

「リオちゃんね。よかったらケーキ食べる? 今買って来たんだけど」

「いえ、その……ありがとうございます。でも、もう帰りますので」

「──! リオっ?」

 

 驚く川辺。リオは何事も悟られまいと平静を保ちながら、立ち上がった。

 母親に深々とあいさつし、逸(はや)る足を落ち着かせながら……ゆっくりと玄関を出る。送ろうと出てきた川辺を、リオは制した。

 

「……ここでいい。今日はありがとうね」

「リオ、ごめんな」

 

 悪びれつつ、やりきれない顔の川辺。手に持っていた先程のCDをリオに向かって突き出した。

 

「これ、貸すよ。返すのはいつでもいいから、またゆっくり聴いてほしい」

「うん……ありがとう。じゃあまた、学校でね」

 

 さっと背を向け、足早に川辺家を後にする。ぐっしょりと濡れた下着が、早足で風にあたるたび冷たく張り付いてくる。

 

「すん……ぐすん。やだ。ほんっとに、いやだ」

 

 あんなにも流されて──

 頬を伝う涙をぬぐいながら、気持ちのやり場が無い自分自身に、ただただ情けなくなるリオだった。





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