【完結】露蜜のカンバス~メスなボクでも幸せになりたい 作:渦螺しお
深紫のSUVが、夜の街を走っている。その光るボディに、街灯を映しては滑らせて。
海浜公園を抜け……
「さあ、着いたぞ」
車を降りるなり、リオは歓喜の声を上げた。
「わあ~……すっごい。とても綺麗!」
海向こうに掛かる、巨大な橋。鉄骨で組み合った無数の
「まさに、抑制の美学だよ」
「抑制……?」
「場所、インフラ、法律。がんじがらめな中で可能性を追い求め、必要を研ぎ澄ます。その結果がシンプルに、どこまでも人の心を打つ。飽きることなんて、知らないようにな」
「そうですね……いつまでも、見ていられます」
光を琥珀色の瞳一杯に映し出し、きらきらと輝かせる。そんなリオの横顔に、神代は満足げな笑顔を浮かべ、そっと肩を抱いた。
「
「先生……」
「二人きりの時は名前で呼び合う話だろう?」
「くすっ、ごめんなさい『和樹さん』。でも、いつだって先生だから。知的で、あこがれで。やさしいけど、時々冷たい……」
肩に頭を寄せ、しなだれかかる。
「好き。和樹さん」
「知っている。私もそうだ」
きゅっと、言葉に反射するようにしがみつくリオ。熱っぽくなる二人を潮風が冷やかす。神代はリオを腕にしがみつかせたまま、車へと戻った。
「んん……んむ……んっ」
舌が激しく絡み合い、お互いの両手が身体をまさぐりあう。神代はリクライニングのスイッチを入れ、ゆっくりと助手席を押し倒した。
ミントグリーンの透け感あるサマーニットが腰のくびれに沿う。素足と見まがうようなエクリュのスキニー。黒のレザーシートに横たわるリオの艶やかな肢体を、ブリッジの光が青白く浮きだたせている。
「はむ、んん……、あっ」
神代はニットの内側へ手を滑り込ませると、器用にチューブトップだけを剥ぎ取る。ぷっくりとした乳首が、ニットをテントのように持ち上げる。熟れきったそれを、神代はニットの上から、繊維がくすぐるように手のひらで転がしていく。
「はぁぁ……和樹さん、それ、ダメ……ぁんんっ」
知らぬ間にスキニーをずらされ、晒された
「──!? んあうぅっ!」
先からこぼれる露を使い、指先が粘膜の口を押し広げる。そのたび、
蜜が
「和樹さん、もう、ダメ。欲しい」
「ふっ、相変わらず堪え性のない
神代は運転席を倒し、横になった。
「さあ、上に乗って。自分で挿れるんだ」
頬を赤らめながら、ぎこちなく神代の下半身を跨ぎ、両膝をシートに突く。後ろ手に、
「んっ」
リオはゆっくりと腰を落とし、
「ぁうっ……んっ、ぁあん」
ずっぷりと根元まで飲み込み終え、虚空を見つめるリオ。いつもと深さと当たり方が違うことにぞくぞくとし、早くも果ててしまいそうになる。
「ほら、休んでいないで、動いて。自分でイクんだ」
「はぃ……、ふあ、あ、あんっ……」
慣れない体勢と場所のせいで、うまく動かせない腰。男根の先端が、一番いいところへ上手く当たらない。その不規則でぎこちない動きに、神代は「心地よい
「──っ、んぅう」
ニットの中に神代の両手が滑り込み、乳首をぐりぐりと強めに摘まみ上げられる。その手つきがニット越しに浮き彫りになり、神代の情欲をさらに掻き立てた。
「これからもっと練習が必要だな。しょうがない。今日はイカセてやる」
骨盤をつかみ、ぐいいと男根をねじ込んでいく。先端に前立腺を感じ取ると、神代はくんっとひと突きした。
「──!!! あああああんんっっ!」
リオの上半身が倒れ込む。神代は浮き上がった尻の肉をつかみ、何度も何度も突き続ける。
「さあ、私も出すぞ。しっかり受け取れっ!」
「!?!?!? ぁあダメだめダメ、んああああんん──!!!」
あらん限りの力でしがみつき、果てる。ガクガクと腰を痙攣させ終えると、リオの身体からゆっくりと力が抜けていく。
「ぁあ、ああ……」
窪みから神代の太腿へ。白濁した汁が、黒いレザーシートの上にどくどくと流れ落ちた。
「はぁ、はあ……これは、綺麗にしておかないと。来週ディーラーに持っていけないな……」
困ったように言いながらも……神代はリオの背中を愛おしく撫で、しばらく合わさったままでいた。
「──家まで送るのに。本当にここでいいのか」
ブリッジから最寄り駅へ。神代はハンドルの上に手を預けながら、少し早い別れを惜しんだ。
「はい。ママに頼まれたボディソープを買って帰らないといけないから」
「心配だな。さっきの後で、フェロモンが出っぱなしだぞ」
「大丈夫です。家は駅を降りてすぐだし、人気のない道は行きませんよ」
「そうしてくれ。何かあったら明日朝の仕事が滞る」
「もう、そんな意地悪な言い方しないで──んっ……」
軽く唇を合わせて降りるつもりが、つい深く、長く。止め方もわからぬまま、二人はお互いの舌と唾液を絡め合った。
アルバイト先から駅に向かっていた川辺は、歩きながらLyNEで彼女のメッセージを確認していた。
次のデートの催促。相変わらず行き先は丸投げ。当日の金払いも、やたらもたれかかってくる。男からの奉仕は当然といった態度に、川辺は辟易としていた。
(なんっか、面倒くさいんだよな。それなりに可愛い子だけど、どうも割を食ってる感じだ)
適当に返信を終え……またリオの顔を思い出す。先日の再会からずっと、あの洗練された美貌が、肢体が、脳に克明に焼きついたまま。
(LyNEはアカが見当たらないし、前のスマホにいれてた電話番号は使えない。やっぱり東美に行って探すか。あれだけの容姿だ、適当に学生つかまえて聞いていけば、絶対見つかるはず──)
家に来てもらったあの後から、ぶっつりと音信不通になったリオ。噂で不登校になったと聞き、その理由もわからぬまま高校生活は終わった。
川辺はバックパックからパステルブルーの小さな巾着を取り出すと、もう残っていないはずの匂いを、鼻先を埋めながら嗅いだ。
(教室前で、この中にCDが入って落ちてたって。あの時、リオが返しに、逢いに来てくれたのは間違いないんだ。なのに何で……)
己が何をしでかしたかなど、気づくこともなく。今日まで燻り続けていたものに新たな火が点いたことで、川辺の焦りは募るばかりだった。
駅の灯りが見え……ふと、その傍に停まる深紫のSUVに目が留まる。フロントガラスの向こうで身体を絡め合い、キスをするカップル。川辺は反射的に毒づいた。
「クソがっ。こんな明るい目立つところで、見せつけんなって……──ええっ!?」
ここまで色香が漂うほどの、キスを終えた横顔。さっきまで脳に映していた画が、目の前のそれと明確に重なった。
「り……リオっ!?」
慌てて最寄りの壁に隠れ、そっとうかがう。ほどなくして車のドアが開き、現れた裸足にサンダル。その先……露わになった全身は、ここ数日焦がれに焦がれた相手そのものだった。
「きっ、奇跡すぎだろ。こんな偶然、ありえないって!」
小声で興奮を漏らしながら、川辺はスマホを取り出し、リオをSUVごと連写し始める。車が去るのを確認し、改札へ向かうリオに目を離さぬよう、川辺は早足で後を追った。
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