※この作品はR-18です。

【完結】露蜜のカンバス~メスなボクでも幸せになりたい   作:渦螺しお

18 / 35
18 雷雨

 東美から歩いてすぐのところにある西洋美術館。目と鼻の先にあるのについつい企画展を見逃しがち。「美大生あるある」な中、リオは今日までの版画展を観ようと散歩がてら向かっていた。

 並木道から覗く青空。梅雨入りから早速に曇天が続いた中で、久しぶりに空気が清々しい。鼻歌交じりに闊歩するリオ。しかし、その行く手は気まぐれ。予報にない暗雲が、突如として頭上を横切り始めた。

 

「えぇ……何かイヤな予感が───きゃっ」

 

 一瞬にして雷雨が到来し、容赦なく地面を叩きつける。リオは慌てて公園に入り、枝ぶりの良い大樹の陰へ避難した。

 

「やっぱり折り畳み傘は持っとくべきだったなあ」

 

 太い木の幹にもたれ、拗ねたようにサンダルの足先を少し蹴り上げる。その時。激しく重い雨が枝葉をしならせ、リオへ注ぎ込まれた。

 

「きゃあああっ!」

 

 バシャリ、派手な音を立てて……バケツ一杯かと思うほどにひっかぶる。

 たちまちびしょ濡れになったリオ。風で膨らむほど軽やかだったフレンチスリーブのブラウスは肌にべったりとまとわりつき、ベージュのブラトップを素肌のように浮きだたせる。サマーウールトロピカルのワイドパンツも同じく、太腿からふくらはぎまでのラインを丸裸にした。

 

「ひどい、あんまりだ……」

 

 両手を掲げ、指先から水がしたたり落ちるのを見ながら、呆然とする。

 ふと、体温で生あたたかくなった雫がうなじを伝い、ぞくりと、全身が鳥肌になった。

 

(ぼおっとしてる場合じゃない。このままだと風邪を引いちゃう)

 

 トートバッグからミニタオルを取り出し、ひとまず顔と首筋を拭き、髪の水気を取る。そこへ……大樹の反対側に、複数の走り込む足音が響き、止まった。

 

「んもう~、さいっあく!」

「ひっさびさに予報がクソ外れたよな」

 

 どうやらカップルで、同じく見舞われたらしい。リオは自分のびしょ濡れを見られないよう、息を殺した。

「なあ、雨が止んだらオレ、駅まで走ってタオル買って来るわ」

「ええ~、こんなところで一人にしないでよ」

「いや、オレはいいけど、お前のそれはダメだろ。公然わいせつ罪だぜ」

(こ、公然わいせつ罪……)

 

 さすがに自分がどう見られるかわかっているリオには、耳が痛い。

 

「えへ……ひょっとして欲情したりしてる?」

「バカ言うなよ。してるよ、当然」

「じゃあさ……ここでシちゃおうよ。そしたら体温が上がって乾くかも」

(え、え、え???)

 

 反対側で混乱するリオなど当然知る由もなく。静かに、雨音を縫うように、カップルは絡みあう言葉をリオの耳へ届かせた。

 

「んっ……あん、何かいつもより感じる」

「はあ、はあ……オレも。これ〝アリ〟かもしんないな」

「変なプレイ、見つけちゃったかも……ぁあん」

(やだ、もう。何でこんなところでしちゃうの?)

 

 呆気に取られながらも、声を聞くたび濡れた服で下がった体温が、じわりと上がり始めるのを感じるリオ。カップルの嬌声が、今まさに神代(かみしろ)に抱かれている妄想へと変換される。リオはブラウスの裾から指先を入れ、乳首を弾いた──

 

<んっ、先せ……和樹……さん……>

<脱がせなくても丸見えだぞ。雨でずぶ濡れなのに誘うとは……どこまでもいやらしい子だ>

<寒いの……早く、脱がして>

<い~や。もっともっと、濡らしてやる>

 

 妄想の中で神代はぺろりと舌を出し、貼りついたブラウス越しに乳首を舐め回す。

 

<んはぅんっ>

 

 両手がパンツの腰に掛かかり、ずるりと脱がされる。濡れ透けた白のショーツには、熱を帯びた花芯が、くっきりと浮かび上がっている。神代はそのショーツ越しに、粘膜の先を指先でなぞり始めた。

 

<このまま、下着の中でイかせてやる。どうせ濡れているんだ。中でも同じだろう?>

<いっ……いやぁ……気持ち悪い>

 

 ショーツの生地を粘膜へこすりつけるように愛撫する。快感が時間差でやってきては、もどかしさを募らせていく。

 その妄想を、実際にショーツの上からこすりながら再現するリオ。ゆっくりとパンツの中に手を入れ……まとわりつく服にぞくぞくとしながら、熱くなった花芯(ペニス)を握りしめ、擦り始めた。

 

(ぁ、ぁん……もうダメ、イクっ……)

 

 達しようとしたその時。トートバッグから唐突にスマホのコール音が鳴り響いた。

 

「──きゃっ! だ、誰かいる!?」

 

 大樹の向こう、カップルが慌ただしく服を直す音が聞こえる。リオも慌てて服のずれを整え……バッグの口を押え、音を封じ込めようとした。

 

「おい、とりあえず逃げるぞ!」

「ああん、待ってよぉ!」

 

 時々水を踏む音とともに、走る足音が遠のいていく。耳の奥は熱く、代わりに心音がドッドッと内耳を打ち始めた。

 リオは胸を押さえ、トートからスマホを取り出して見る。着信は、神代だった。そのまま履歴をタップし、かけ直す。数回のコールの後……神代の低くよく通る声が出た。

 

<<ああ、井山君。大丈夫か。すごい雨だが……版画展を観に行くと言っていたので、心配してね……ん? もしもし?>>

 

 嬉しくて、涙が出る。リオはつい無意識に、二人きりの時の呼び方で返してしまった。

 

「ぐすっ、和樹さん……今、ずぶ濡れなんです」

<<……どこにいる? 迎えに行く>>

 

 わかるように並木道まで出ると伝えると、短い了承とともに、電話はぷつりと切れる。同時にリオは、晴れ間がのぞいた空の下へ、走り出た。





◆Pixivで先行公開中です。
https://www.pixiv.net/novel/series/15593975
※無料(R18につき要アカウント) / 主人公の衣装挿絵付き
※本作は下書き完結済 です!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。