【完結】露蜜のカンバス~メスなボクでも幸せになりたい 作:渦螺しお
盛夏の燃えるような緑をくぐり抜ける、深紫のSUV。東京から二時間ほど。涼やかな風に吹かれながら、
「ほお……」
木組みと漆喰の和モダンな佇まい。神代は宿を見渡し、静かに感嘆した。
「素敵じゃないか。さすがだな」
「嬉しい~。ボクもひと目見て『ここだ!』って思って」
リオの予約から何も知らされずサプライズと、ナビに入力だけして来たものの……あらためてリオのセンスの良さに感心した。
「しかし……穴場にしても、この時期によく取れたね」
「運が味方してくれたんです、きっと。ね、早く入りましょう?」
そっと腕にしがみつくリオの腰に、手を添える。
(随分と奮発したようだが……この
例のアルバイト代を全て吐きだしたかったのかもしれない。久しぶりに見る弾けるようなリオの笑顔に、神代も思わずやさしい笑みを返した。
ロビーに配置された、簡素なオブジェや北欧家具も期待を裏切らない。仕事が嫌いではない神代からすれば、自分では選ばない「無駄な時間と空間」に、珍しく心地よさを覚えていた。熟練を感じさせる客室係の対応も、神代好み。
(手荷物をじろじろ見ないところも一流だな)
ひなびた温泉宿に現れた年の差のカップルなど、従業員たちには格好の話のネタ。好奇の目線もなく、静かな館内を淡々と進む。
「わあ、素敵なお部屋……見て見て、和樹さん! お風呂もすごくオシャレ!」
行き届いた調度品などに目もくれず、リオはバルコニーへ一目散。生成りのシルキーなブラウスとライムグリーンのパンツ。採光豊かな窓の光がふわりとした生地を貫き、その下に隠されたボディラインを浮き彫りにした。
神代は静かに、リオを背中から抱きしめる。
「もう湯に誘っているのか? 明るいうちから、贅沢な趣向だ」
無邪気に景色を観ていたリオの顔に、ふと朱が差した。
「和樹さん……ぁっ」
ボートネックで露わになった肩に、神代の唇が触れる。厚い吐息が首筋を伝い、耳をくすぐる。大好きな、神代との背中越しのキス。そのまま脱いで、脱がされ……心地よい日差しの下、二人は一糸まとわずバルコニーへと出た。
「──んむ……ぁふ、ぁう……」
ぱしゃ、ぱしゃと。湯気が立ちのぼる水面を静かに打ちながら、抱き合う。リオは脇から抱き上げられ、風呂の角に座らされた。
「ほら、足を開いて……
少しのぼせ気味の頭で、言われるがままに。片足ずつ、縁にゆっくりと乗せ……目一杯の開脚で、リオの秘部は少し陰った日の光に晒された。
「ああ、やだ……これ。恥ずかしい……」
「いい眺めだ」
神代はリオの両足首をつかみ、顔を間近に寄せ、じっと見つめている。湯気か吐息かわからないゆるやかな気が双胞を撫で……リオは
「ふぁっ」
粘膜を避け、周りを焦らすように這う神代の舌。リオはみるみる内に露と蜜をあふれさせ、身をよじり始めた。
「ぃやっ……んくぅん……ぁんんっ……」
「声を抑えるんだ。でないと、与えられない」
「……くだ、さい……お願い……」
か細い声を上げ、切ない瞳を向ける。神代は両足首から手を放すと、腰を上げる。湯面を割るようにそそり立つ
「んくっ……んん……──ぁんっ!?」
「ぁあぁんっ、イヤっ……もっと」
「声を出すなら、動かない。しっかり押し殺すんだ」
「はい……、んくっ」
反り返る身体を支えながら、片手で必死に口を押える。だが……熱くて、暑くて、気持ちよくて。リオの手はどんどん口からずれ、嬌声を漏らし始めた。
「ダメ……ダメ、和樹さん、キスで、閉じて」
「まったく、しょうがない
「んむんんんっ!」
キスと同時に、的確に突かれる前立腺。息苦しさと湯あたりで、リオはそのまま、飛んだ。
空が薄紫になる頃。先染めのやわらかな綿浴衣に着替えた二人は、夕食についた。
部屋の机に並べられた、色とりどりの山海珍味に舌つづみを打ちつつ。リオは食前酒だけで、全身をほんのり桃色に染めていた。そうやって飽くことなく艶を放つリオを
「お強いんですね」
「いや、そうでもない。顔に出ないタイプでね。院生の頃はよく強引な先輩に飲まされたよ」
「和樹さんにも、学生の頃があったんだ」
「ふっ、どういう意味だそれは」
「だって、ずっと大人だった人みたいで。頭がよくて、いつも冷静沈着で」
「騒ぐよりは、騒ぐ人間を観ていた方が面白いからね」
リオは冷水のグラスから垂れた露を指で延ばしながら、つぶやくように尋ねた。
「和樹さんって、ボク
「普通とは、何だろうな」
神代は盃を置くと、少し遠い目をした。
「美しいものは飽きる。安心だけでは緩む。歪なものほど刺さるし、愛する意義が感じられる。そういうものだ」
「愛する、意義……」
今は神代の「特別」でいる。とても大きな、自分の存在意義。その一方でリオは、かつて神代が愛したものを想い、胸を焦がした。
そんな憂いを見透かし……神代はリオの横に来ると、指先でくいっと顎を上げた。
「
「何も……何も要りません」
琥珀色の瞳を揺らしながら、顔を見上げるリオ。神代はその頬にそっと手を添え、唇を合せる。
「食事を片づけてもらおう。まだまだ上書きが足りないようだ」
「はい……」
フロントへ連絡を入れると、二人は客室係が来るまで、舌を絡め続けた。
「(ぷちゅ……れろ)んぁむ、んぐ、んん……」
ナイトランプひとつ。薄明りに照らされた寝床の上で、リオは神代の
「んっ……ぶぁ」
ぬるり、
「ん、ん……──んぁ、か、和樹さん?」
「私も一緒にしてあげるよ」
「ぁんん! ……んぐ」
神代に
「んっ、んっ、んんっ……ぷぁはっ、ああ、ダメ、和樹さん、ダメぇっ!」
ぐちゅぐちゅと指先で
「ぁあ……和樹さん。好き。大好き……」
うわごとのように口から漏らすリオの髪を、少し撫でる。
「知っている。愛しているよ、リオ」
リオは大きく我に返り、神代の目を真っすぐに見る。
まさかの、最上の言葉が──彼の〝意義〟が自分に向けて、はっきりと。たちまちリオの目に涙があふれ、こぼれ落ちる。同時に、リオの中へ、神代が力強く入って来た。
「ぁあああああっ! 愛してるっ、愛してるの和樹さん! ボクを、離さないでっ!」
「お前は……私のものだ、リオ!」
神代の言葉に、あらんばかりの力でしがみつく。そのまま抱き起され……腰を沈め、より深く、奥深く。リオは泣きながら、ただただ全身で、自分と神代の生の熱を感じ続ける。
望む、望まざるを越え、自身が新たな
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