※この作品はR-18です。

【完結】露蜜のカンバス~メスなボクでも幸せになりたい   作:渦螺しお

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25 温泉宿

 盛夏の燃えるような緑をくぐり抜ける、深紫のSUV。東京から二時間ほど。涼やかな風に吹かれながら、神代(かみしろ)とリオは半島の山手、とある温泉宿へと到着した。

 

「ほお……」

 

 木組みと漆喰の和モダンな佇まい。神代は宿を見渡し、静かに感嘆した。

 

「素敵じゃないか。さすがだな」

「嬉しい~。ボクもひと目見て『ここだ!』って思って」

 

 リオの予約から何も知らされずサプライズと、ナビに入力だけして来たものの……あらためてリオのセンスの良さに感心した。

 

「しかし……穴場にしても、この時期によく取れたね」

「運が味方してくれたんです、きっと。ね、早く入りましょう?」

 

 そっと腕にしがみつくリオの腰に、手を添える。

 

(随分と奮発したようだが……この娘(こ)なりの浄化と忘却か)

 

 例のアルバイト代を全て吐きだしたかったのかもしれない。久しぶりに見る弾けるようなリオの笑顔に、神代も思わずやさしい笑みを返した。

 

 ロビーに配置された、簡素なオブジェや北欧家具も期待を裏切らない。仕事が嫌いではない神代からすれば、自分では選ばない「無駄な時間と空間」に、珍しく心地よさを覚えていた。熟練を感じさせる客室係の対応も、神代好み。

 

(手荷物をじろじろ見ないところも一流だな)

 

 ひなびた温泉宿に現れた年の差のカップルなど、従業員たちには格好の話のネタ。好奇の目線もなく、静かな館内を淡々と進む。

 

「わあ、素敵なお部屋……見て見て、和樹さん! お風呂もすごくオシャレ!」

 

 行き届いた調度品などに目もくれず、リオはバルコニーへ一目散。生成りのシルキーなブラウスとライムグリーンのパンツ。採光豊かな窓の光がふわりとした生地を貫き、その下に隠されたボディラインを浮き彫りにした。 

 神代は静かに、リオを背中から抱きしめる。

 

「もう湯に誘っているのか? 明るいうちから、贅沢な趣向だ」

 

 無邪気に景色を観ていたリオの顔に、ふと朱が差した。

 

「和樹さん……ぁっ」

 

 ボートネックで露わになった肩に、神代の唇が触れる。厚い吐息が首筋を伝い、耳をくすぐる。大好きな、神代との背中越しのキス。そのまま脱いで、脱がされ……心地よい日差しの下、二人は一糸まとわずバルコニーへと出た。

 

「──んむ……ぁふ、ぁう……」

 

 ぱしゃ、ぱしゃと。湯気が立ちのぼる水面を静かに打ちながら、抱き合う。リオは脇から抱き上げられ、風呂の角に座らされた。

 

「ほら、足を開いて……縁(へり)に置いて」

 

 少しのぼせ気味の頭で、言われるがままに。片足ずつ、縁にゆっくりと乗せ……目一杯の開脚で、リオの秘部は少し陰った日の光に晒された。

 

「ああ、やだ……これ。恥ずかしい……」

「いい眺めだ」

 

 神代はリオの両足首をつかみ、顔を間近に寄せ、じっと見つめている。湯気か吐息かわからないゆるやかな気が双胞を撫で……リオは花芯(ペニス)をぴくぴくとさせた。

 

「ふぁっ」

 

 粘膜を避け、周りを焦らすように這う神代の舌。リオはみるみる内に露と蜜をあふれさせ、身をよじり始めた。

 

「ぃやっ……んくぅん……ぁんんっ……」

「声を抑えるんだ。でないと、与えられない」

「……くだ、さい……お願い……」

 

 か細い声を上げ、切ない瞳を向ける。神代は両足首から手を放すと、腰を上げる。湯面を割るようにそそり立つ男根(いちもつ)。リオはこれからやってくるであろう快感にどきどきとしながら。人差し指を口にくわえた。

 

「んくっ……んん……──ぁんっ!?」

 

 窪み(アヌス)に入って来る熱に驚くリオ。湯であたたまっていた神代のそれは、焼けるように熱く、身体の芯まで沸騰させていく。リオはたまらず声を上げた。

 

「ぁあぁんっ、イヤっ……もっと」

「声を出すなら、動かない。しっかり押し殺すんだ」

「はい……、んくっ」

 

 反り返る身体を支えながら、片手で必死に口を押える。だが……熱くて、暑くて、気持ちよくて。リオの手はどんどん口からずれ、嬌声を漏らし始めた。

 

「ダメ……ダメ、和樹さん、キスで、閉じて」

「まったく、しょうがない娘(こ)だ!」

「んむんんんっ!」

 

 キスと同時に、的確に突かれる前立腺。息苦しさと湯あたりで、リオはそのまま、飛んだ。

 

 

 空が薄紫になる頃。先染めのやわらかな綿浴衣に着替えた二人は、夕食についた。

 部屋の机に並べられた、色とりどりの山海珍味に舌つづみを打ちつつ。リオは食前酒だけで、全身をほんのり桃色に染めていた。そうやって飽くことなく艶を放つリオを肴(さかな)に、神代はキレのいい冷酒を煽った。

 

「お強いんですね」

「いや、そうでもない。顔に出ないタイプでね。院生の頃はよく強引な先輩に飲まされたよ」

「和樹さんにも、学生の頃があったんだ」

「ふっ、どういう意味だそれは」

「だって、ずっと大人だった人みたいで。頭がよくて、いつも冷静沈着で」

「騒ぐよりは、騒ぐ人間を観ていた方が面白いからね」

 

 リオは冷水のグラスから垂れた露を指で延ばしながら、つぶやくように尋ねた。

 

「和樹さんって、ボクみ(・)た(・)い(・)な(・)の(・)……初めてなんでしょう? 今までお付き合いしてた人って、普通の……」

「普通とは、何だろうな」

 

 神代は盃を置くと、少し遠い目をした。

 

「美しいものは飽きる。安心だけでは緩む。歪なものほど刺さるし、愛する意義が感じられる。そういうものだ」

「愛する、意義……」

 

 今は神代の「特別」でいる。とても大きな、自分の存在意義。その一方でリオは、かつて神代が愛したものを想い、胸を焦がした。

 そんな憂いを見透かし……神代はリオの横に来ると、指先でくいっと顎を上げた。

 

「お(・)前(・)はただ、目の前の私を見ていればいい。それ以外に何が要る?」

「何も……何も要りません」

 

 琥珀色の瞳を揺らしながら、顔を見上げるリオ。神代はその頬にそっと手を添え、唇を合せる。

 

「食事を片づけてもらおう。まだまだ上書きが足りないようだ」

「はい……」

 

 フロントへ連絡を入れると、二人は客室係が来るまで、舌を絡め続けた。

 

「(ぷちゅ……れろ)んぁむ、んぐ、んん……」

 

 ナイトランプひとつ。薄明りに照らされた寝床の上で、リオは神代の男根(いちもつ)を口に含んでいる。はだけた浴衣を腕に引っ掛けたまま、帯で後ろ手に拘束され……ゆっくりと、丹念に味わっていた。

 

「んっ……ぶぁ」

 

 ぬるり、男根(いちもつ)を抜き取る。神代はリオの拘束を解き、ゆっくりと寝かせると、再び咥えさせた。

 

「ん、ん……──んぁ、か、和樹さん?」

「私も一緒にしてあげるよ」

「ぁんん! ……んぐ」

 

 神代に花芯(ペニス)を舐められながらの口淫。初めての体位にまた興奮を上書きされながら……上って来る快感に突き動かされるように、リオは懸命に口を動かした。

 

「んっ、んっ、んんっ……ぷぁはっ、ああ、ダメ、和樹さん、ダメぇっ!」

 

 ぐちゅぐちゅと指先で窪み(アヌス)を掻きまわされる。二極からの快感が一気に襲い、リオは達しそうになる。そこでまた、ピタリと止まる指と舌。そう。彼は常に限界寸前に仕立てから、挿れてくれる。その期待通り、神代は腰を引くと、リオの両足を抱え、窪み(アヌス)に唾液で濡れきった男根(いちもつ)を押し当てた。

 

「ぁあ……和樹さん。好き。大好き……」

 

 うわごとのように口から漏らすリオの髪を、少し撫でる。

 

「知っている。愛しているよ、リオ」

 

 リオは大きく我に返り、神代の目を真っすぐに見る。

 まさかの、最上の言葉が──彼の〝意義〟が自分に向けて、はっきりと。たちまちリオの目に涙があふれ、こぼれ落ちる。同時に、リオの中へ、神代が力強く入って来た。

 

「ぁあああああっ! 愛してるっ、愛してるの和樹さん! ボクを、離さないでっ!」

「お前は……私のものだ、リオ!」

 

 神代の言葉に、あらんばかりの力でしがみつく。そのまま抱き起され……腰を沈め、より深く、奥深く。リオは泣きながら、ただただ全身で、自分と神代の生の熱を感じ続ける。

 望む、望まざるを越え、自身が新たな領域(ステージ)へ導かれることなど、想うことなく──





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