【完結】露蜜のカンバス~メスなボクでも幸せになりたい 作:渦螺しお
『
「もっと心からセックスを楽しんでいい。リオちゃんは誰よりもその資格がある。羨ましいぐらい──」
調整でも暴力でも愛でもなく、ただ楽しむ。本物の美しい女性である加蓮が、自分を羨ましいとまで言ってくれた。昨夜の甘美な時間は、リオという
「『美は淫らから生まれる』……ボクも加蓮さんみたいに、なれるかな」
胸に手を当て──行為の途中で聞いたあの言葉を、何度も反芻する。リオはいつにも増してしなやかな所作で、『EIDOS』のガラス扉を押した。
(どうなってるんだ……)
鳴瀬は驚愕した。『
今、目の前でスタッフ全員が息を飲むそれは、知る限り最高峰の掛け合わせの結果と思いたいが……一方で鳴瀬は、奥の見えない深淵に立つ、ぞくぞくとするような好奇心と怖れを想った。
また黒一色。ハイネックのボディスーツが、艶めかしく身体に貼りつく。フロントスリットのスカートから覗く乳白色の美脚は、その
敏感に締め付けて擦る服に熱を帯び、見られまいと抗う羞恥。リオが抑えきれず放つ
「この
歓喜と絶句を繰り返すカメラマンと、終始同じ気持ちで臨んだ二回目の撮影。前回の画像が既にSNSでバズり、オンラインショップのCVR──購入率を想定の倍以上に引き上げている事実。それを今回さらに上回るのは、間違いない。
撮影を終えて衣装を脱ぎ、ローブ姿でスタッフと談笑するリオ。そこには、あどけない18歳が戻っている。
「ぼやぼやしてると、他所に
気持ちを察したように、鳴瀬の肩を叩くカメラマン。
「わかってる。どうにかしなきゃな」
鳴瀬は苦虫をかみつぶした顔で、大きくため息をついた。
「──専属契約、ですか」
帰り際の社長室兼応接室。期待をしないで欲しいと伝えた矢先の鳴瀬の申し出に、リオは困惑した。
「前回の反響、問い合わせがすごくてね。モデル事務所からなんてのもある。下手なところに所属して業界に入ってしまうより、ウチに留めておいた方が、リオさんにとってメリットがあると思う」
契約内容が簡潔に書かれた書類に、改めて目を通す。
半年更新。学業優先で、月にたったの二回、撮影のみの時間拘束。ネット上での情報氾濫に対応するための肖像権管理。それらすべてを『EIDOS』専属で一任する。諸々に疎いリオでも、自分に寄り添った条件を提示してくれているのはわかった。
「だけど、これだと鳴瀬さんに負担をかけているだけのような」
「俺はWin-Winだと思っているけどね。それ以上に、君を守りたいと思っている」
「守る……」
「うん。見ていられないほど
真っすぐに見つめる鳴瀬の目。心配の中に秘められたものをおぼろげに想いつつ、リオは淡々と見つめ返した。
「確かに……鳴瀬さんに守ってもらえるものは、
神代の束縛による絶大な安心感と、加蓮に開かれた自由への扉。そんな自分を安全に試す場を用意してくれるという、願ってもない誠実さ。
(ママ……ボク、自分で決めるね。もう、大人だから)
真っ白な指先が、しなやかにペンを取る。
「鳴瀬さん、『ボクを選んだ』こと、後悔しないでくださいね?」
琥珀色の瞳が揺れる。そのきらめきに捉えられ……鳴瀬は心臓が激しく打つのを感じた。
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