※この作品はR-18です。

【完結】露蜜のカンバス~メスなボクでも幸せになりたい   作:渦螺しお

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34 マンション⑤

 ──半年後。

 

「今日まで、本当にありがとうございました」

 

『EIDOS』社長室。リオは専属モデルの更新辞退書にサインし、そっと差し出した。鳴瀬はその書面を腕をまっすぐ伸ばしてつかんだまま、しばらく肘を折ることができずにいた。

 

「本当に……残念、だよ」

 

 何とか書類を引き寄せると、うつむいたまま言葉を捻り出す。

 

「ただ……もし気が変わったら、いつでも言って欲しい。俺はきっと、君の役に立てると思ってる。まだ先だけど、就職だって──」

 「じゃあそれまで、会社がつぶれないようにしなきゃいけませんね」

 

 鳴瀬自身、惚れた弱みがありながらも真摯に伝えた言葉。そこへ、失言など気にならないほど爽やかな笑顔で返したリオに、鳴瀬は思わず噴き出した。

 

「はあ~……。最初から最後まで、君には何も届かなかった。まさしくこれを高嶺の花っていうんだろうな」

「花って言ってもらえて、嬉しいです。でもボク、男ですからね」

 

 いつにも増してきらきらと輝く、琥珀色の瞳。鳴瀬はその向こうにあるもの──背中を守る何かを想いつつ、やさしく微笑んだ。

 

「いや、君は『リオ』だよ。世界中で君だけ。それ以外の何者でもない──」

 

 

 

「──っ、寒っ」

 

 4月。春風が、薄手のトレンチコートを舞い上げる。最近ハイヒールを履き始めたこともあり、コートの裾からデニムの美脚がさらに美しく覗く。母譲りのウェーブがかった髪は、ショートボブから少し伸ばし、風に遊んでいる。

 

 通りすがる男性はもちろんのこと、女性も皆振り向く。イイ女、美人、憧れ、嫉妬。自分がどう見られているかはもうわかっている。しかし、誰も見た目以上のことは知らない。リオにとってそんな衆目は、もうどうでもよくなっていた。

 

(ボクが本当に愛する人は、二人だけ。それで十分)

 

 何があっても寄り添ってくれる母・美佐緒。自分を生んで、育ててくれて、今なお目一杯の愛を注いでくれる人。相変わらず仕事は多忙ながらも、楽しそうにしている。

 い(・)ろ(・)い(・)ろ(・)察してか、「そろそろ独り暮らししてみる?」などと言われるが……その段になったら彼女は、きっと泣く。

 

 そしてもう一人、敬愛する美大の師にして恋人、神代和樹。自分を「特別」だと言って、飽くことなく愛の絶頂を与えてくれる人。

 最近、マンションの合い鍵を渡された。少しの服に下着、お気に入りのボディシャンプーと歯ブラシも置いている。でも毎日は行かない。適切な距離は大事。何より「一緒にいるほどおかしくなる」。

 

 

 

 

「──今日は……んっ、帰り、ます……」

  

 夕日が、リオの真白の身体を紅く染める。タワーマンション31階、神代の自宅。全面の窓ガラスの向こうに灰色のビル群を見下ろしながら……リオは美しい裸体を「お披露目」されていた。

 

「そうか。久しぶりにひと晩中と思ったんだが……残念、だっ」

「んぁんっ!」

 

 窓向かいのソファに腰掛ける神代。その神代に跨(またが)るリオ。愛らしくゆれる花芯(ペニス)、男根(いちもつ)で圧し広がった窪み(アヌス)。その行為の全てもまた、パノラマで上映されている。

 幾度となく繰り返される、羞恥によるこの上書き。これもリオを精神的に強くする要素のひとつとなっていた。

 

「暗くなってきたな。そろそろお(・)前(・)のいやらしい姿がガラス越しに映るぞ」

 

 指差す先に映る、半透明のはかなげな自分。上気して、潤んだ瞳が光っている。胸に神代の手が伸び……その指先が乳首をつまむ。

 

「ぁん。あっ……いや……やっぱり、恥ずかしい」

 

 慣れてしまうことなど、決してない。そしてその、毎回嫌がる様が、神代を刺激して止まないのだという。

 

「まったく、いつまでたっても魔性だな、お前は」

「ちっ、違う……んんっ、こんなの、和樹さんとしか……んあんっ」

 

 真剣に答えようとするたびに、突いてくる。その、反応を面白がっている神代が好きだから、さらに反応する。飽くことなく。

 

「ふむ、そろそろ一度イカセておくか。私も一緒に行こう」

「一緒……に……うれし──ぃああああんっ!」

 

 背面座位のまま。神代が動くのに合わせ、リオの腰も番(つがい)よろしく連動する。前立腺を激しく擦られ、乳首をこねくり回され……リオの脳内が光に満ちる。

 

「和樹さんっ、愛してるのっ! 誰よりも……ボクを『特別』にしてくれた、あなたをっ!」

「そうだ! お前は、私だけの最高傑作だ……リオっ!」

「ぁぁあああああ────んっ!!!」

 

 神代と合わせて三つ、快悦絶頂の共鳴(レゾナンス)。リオはもう、射精(オスイキ)と前立腺痙攣(メスイキ)が同時に起こるようになっていた。

 

 熱くほとばしる露蜜が、ガラスのカンバスへ。艶やかに伝い、彩っていく。

 

(ああ……ボク、幸せ……)

 

 リオはうっとりとして、微笑んで……肩越しに神代と深く長く、舌を絡め合った。

 

 

 ~完~






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