【完結】露蜜のカンバス~メスなボクでも幸せになりたい 作:渦螺しお
白のスタンドカラーブラウスに、プレスの効いたティールのパンツ。
午後からの研究室を待ち遠しく思いつつ。小腹を満たそうと、学食のオープンテラスでパニーニをかじっているところ──
「ヤッホー、リオ!」
「よッす」
目の前に
「おお~間一髪。今、明らかにこの空席の予約倍率が急上昇してたからね。リオがいたせいで」
「二人とも、久しぶり」
「おう、SAで忙しそうだもんな」
ぱっつんでブロンドに染めた小動物系の真憂は、入学式で声を掛けられて以来の友人。ショートマッシュでイケメンな健也は真憂と同じ高校で、美大に入って再会してからの腐れ縁という。
「ぬぬ、しばらく見ない内にぐ~っと大人な感じになってる。相変わらず何着てもキマってて、尊いぃ」
「確かにカッコいいよな。ま、リオはリオだけど」
「ねえリオぉ、今度一緒に表三堂のカフェ巡りしようよ。フーガス・マクフリーの企画展観るついでにさぁ」
「フーガスが〝ついで〟だろ」
「ぶー、残念。どっちもついで。メインはリオなの!」
そう言って、リオの肩にしなだれかかる真憂。距離感がとても同性のそれで、自分のことを異性として見ていないのはよくわかる。それは健也も同じ。二人はリオにとって、居心地のいい友人だった。
「それより真憂。お前、人体デッサンの提出期限、来週だろ。こないだブツブツ言ってたのから、進んでんのかよ」
「ぐげ。それ今はお願いだから忘れさせて。油画の課題、まだ
「あは。じゃあ近いうちに行く? ボクも長いことあの辺り行ってないし」
「ぃやった! じゃあ後でLyNEで打ち合わせしよ。へへ~、俄然生きる気力が湧いてきた」
「単純でいいなお前」
二人から伝わる、普通の楽しさに癒されながらも、どこか遠い感じ。自身の間に未だ引き続けられている曖昧な境界線や、神代との特別な関係。それを知られた時、二人はまだ近くにいてくれるだろうか。リオはカフェオレを口にしながら、五月の風にふっと冷たさを覚えた。
研究室棟へ向かう足が軽い。男子女子問わず、すれ違うたびに上から下まで見られることに自意識過剰気味だったが、今は違う。見て欲しい人は一人だけ。
ノックを3回。入室を促す、
「失礼します」
「
「は、はい」
入るなり、PCに目を向けたままで、他人行儀な業務指示だけをする神代。オンオフのメリハリは二人の間には傍目に最重要。それでも、どこか寂しさを思ってしまう。
画用紙とパステルの在庫数を書き出し終え、神代に手渡す。
「赤と紫がちょっと心もとないです」
「そうか。じゃあ今の内に購買部へ行ってきてもらおうか」
「……わかりました」
大人な態度ができない自分がつらい。リオが憂いを隠せぬまま
「──! きゃっ」
バックハグに、両肩を突き上げるほど全身を硬直させたリオ。神代はその過剰な反応に少し驚きつつも、ゆっくりと包みこみ、耳元に吐息を吹きかけた。
「ん……せ、先生」
「びっくりさせたお詫びをしなければな。さあ、顔をこっちに」
「ぁぐ……んむん……」
頬をそっと押されながら、後ろ向きのキス。背中越しに神代の豊かな熱を感じ、口の中を掻きまわされ……リオの
神代の手が下腹部へと伸び、パンツの上からそっと先端を愛撫する。
「もうこんなに張らせて。まったく……仕事中だぞ?」
「ぁん……ごめん、なさい」
「まあ、私も人のことは言えないがね」
身体を正面に向け直され、そのまま深いキスが続く。神代の両手は服に滑り込み、背中と尻を撫でまわした。
「んんん……んぁ」
神代はキスを終え、リオをやさしく引き離すと、両手を服から抜き取り、乱れを整えた。
「先生……?」
「今日は夜、空いていると言っていたね」
「はい」
「18時過ぎに、記念館の南側。そこで待っていて。車をつけるから」
頬を赤らめ、こくんと頷くリオ。神代は髪を撫でながら額にキスをした。
「さあ、そうと決まれば仕事だ。購買部に走って。赤は人気色だぞ」
「くすっ……じゃあ、行ってきますね」
リオはトートバッグを手に、軽やかな足取りで研究室を出る。神代は見送り終えると、きゅうっと眉をひそめた。
「……まだ
神代はパステルの黒を一本、指先でつまみあげる。画用紙に立てて粉々に圧し潰すと、親指で円を描くように汚しはじめた。
「リオ、お前は、私のものだからな──」
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