fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ 作:鰻天ぷら
フィストラルビーチに、燃えるような夕陽が沈んでいく。
波打ち際で遊び疲れた四人は、ホテルの最上階、海を一望できる貸切りのプライベートダイニングでディナーの席に着いていた。
「さあ、王子様。あーん、して?」
シックな漆黒のイブニングドレスに着替えた沙条愛歌が、フォークに刺した極上のローストビーフをアストルフォの口元へと運ぶ。
全能の天才である彼女の所作は、ただ肉を運ぶだけでも恐ろしいほどに優雅で、そして妖艶だ。テーブルの下では、ハイヒールを脱いだ彼女の裸足のつま先が、アストルフォの脚をふくらはぎから太ももへと、じっとりと撫で回している。
「あーん! ……んんっ、すっごく美味しい! お肉が口の中でとろけるよ!」
アストルフォは、テーブルの下での愛歌の悪戯を気にする素振りも見せず、屈託のない極上の笑顔で肉を頬張った。
少しだけフォーマルなシャツを着ているものの、第一ボタンは開け放たれ、昼間の海で太陽をたっぷり浴びた首筋からは、彼特有の薔薇の香りと、むせ返るようなオスの熱気が絶え間なく放たれている。
「……お姉ちゃん、行儀が悪いわよ。それに、アストルフォさんばかりに食べさせないで、自分でも食べなさいよね」
沙条綾香が、丸い眼鏡の奥から呆れたような視線を送る。
彼女は清楚なネイビーのワンピース姿だが、昼間の強い日差しのせいか、雪のような肌がほんのりと桜色に上気していた。
「そうよ、愛歌。せっかくの最高級のフルコースなのだから、少しは味わったらどう?」
玲瓏館美沙夜が、ワイングラスを傾けながら艶然と微笑む。完璧主義の彼女らしく、真紅のドレスは彼女の洗練されたプロポーションを完璧に引き立てていた。
「ふふっ。私の王子様が美味しそうに食べている姿を見るだけで、私はお腹いっぱいだわ。……それに」
愛歌は、アストルフォの口元についたソースを自らの親指で拭い取り、それをペロリと舐めとった。
「本当に味わいたいのは、こんなお料理じゃないもの」
愛歌の金色の瞳が、情欲にトロンと濁る。
その視線が意味するものを察し、綾香と美沙夜は同時に顔を赤くしてワインを飲み込んだ。
「綾香も美沙夜も、すっごく顔が赤いよ。海で遊びすぎたかな? 日焼け、痛くない?」
アストルフォが心配そうに身を乗り出し、左右に座る綾香と美沙夜の頬に、自らの大きく熱い手をそっと当てた。
「ひゃっ……!」
「あ……っ」
二人の口から、小さな吐息が漏れる。
冷房の効いたダイニングだというのに、彼の掌から伝わる体温は火傷しそうなほどに高い。日焼けした肌の微かな火照りが、彼の熱と融合し、皮膚の表面から一気に魔術回路の芯へと流れ込んでくる。
「だ、大丈夫です……っ。アストルフォさんの手が、熱いだけで……っ」
綾香は俯き加減に呟きながらも、彼の手から逃れようとはしない。
「……ええ。本当に、貴方はどうしてそんなに熱いの。……触れられているだけで、頭の中が白くなってしまいそう」
美沙夜もまた、エレガントな仮面をかなぐり捨て、自ら彼の手に頬をすり寄せるように目を細めた。
「そっか! ならよかった! ご飯食べたら、お部屋に戻っていーっぱい休もうね!」
太陽のような騎士の無邪気な宣言が、三人の少女の胸の奥で、甘く危険な火種を激しく燃え上がらせた。
***
ディナーを終え、四人が戻った最上階のスイートルーム。
巨大なキングサイズベッドが部屋の中央に鎮座し、窓の外には月明かりに照らされた夜の海が広がっている。
「アストルフォ。私、少し飲みすぎちゃったみたい……」
部屋に入るなり、美沙夜が微かなアルコールの匂いと甘い香水を漂わせながら、アストルフォの広い背中にもたれかかった。
「美沙夜、大丈夫? ベッドで横になる?」
アストルフォが振り返り、彼女の細い腰をしっかりと抱き留める。
「ええ……。でも、ベッドが広すぎて、一人じゃ寒いわ。……貴方が、温めてくれる?」
美沙夜の黒い瞳が、至近距離でアストルフォを妖艶に射抜く。
「ちょっと、美沙夜ちゃん! ずるいわよ!」
綾香が慌てて声を上げるが、彼女自身もアストルフォのもう片方の腕をしっかりと掴み、その逞しい二の腕に自らの柔らかな胸を押し付けていた。
「私だって……その、日焼けしたところが、ジンジンして……アストルフォさんの熱で、癒やしてほしい、です……っ」
氷室の天地ベースの苦労人な彼女が、すっかり理性を溶かされ、甘えん坊な雌の顔になっている。
「あはは! 美沙夜も綾香も、すっごく甘えん坊だね! よーし、ボクがいっぱいいっぱい温めてあげる!」
アストルフォは二人を両腕に抱えたまま、ベッドへと倒れ込んだ。
「きゃあっ!」
「あ……っ、アストルフォ……っ」
ふかふかのマットレスに沈み込む三人。
しかし、その甘い空間を、圧倒的な全能のオーラが切り裂いた。
「……二人とも。私の王子様を独り占めしようだなんて、いい度胸ね」
ベッドの足元。
愛歌が、イブニングドレスの背中のジッパーを自ら下ろし、スルリと漆黒の布地を床に落とした。
現れたのは、純白のランジェリーに包まれた、雪のように白く華奢な肢体。彼女はそのままベッドの上に這い上がり、アストルフォの胸板の上にまたがるようにして、その顔を覗き込んだ。
「愛歌も、一緒に寝る? ボクの胸、まだ空いてるよ!」
「ええ。一緒に寝るわ。でも……ただ寝るだけじゃないの」
愛歌は、アストルフォのシャツのボタンを一つずつ外しながら、情欲に濡れた瞳で甘く囁いた。
「昼間、海で貴方の熱に当てられてから……私のお腹の奥、ずっとジンジンして、疼いてるの。……ねえ、王子様。私を、貴方の熱でめちゃくちゃに溶かして?」
愛歌の顔が近づき、アストルフォの唇を貪るように塞いだ。
「んんっ……!! ぁ……っ、んちゅ……っ」
二人の舌が深く絡み合い、甘い唾液が交わる卑猥な水音がスイートルームに響き渡る。全能の天才が、ただの恋する雌として快楽を貪る音。
「あっ……お姉、ちゃん……っ」
その熱烈な口づけを至近距離で見せつけられ、アストルフォの右腕に抱かれていた綾香の口から、無意識に甘い嬌声が漏れた。
視覚と聴覚からの刺激、そして密着している彼のがっしりとした身体から放たれるオスのフェロモンが、綾香の理性を急速に奪っていく。
「ふふっ……。綾香も、美沙夜も。すっごく熱くなってる。……三人とも、ボクが頭の中が真っ白になるまで、いっぱいいっぱい愛してあげるからね」
アストルフォは愛歌の唇を離すと、今度は右側にいた綾香の口を塞ぎ、同時に左手で美沙夜のドレスの胸元を優しく、けれど逃げ場のない力強さで揉みほぐした。
「んんひぃッ……!! ぁ、ああっ……! だめ、アストルフォ……っ、そんなに強く……っ」
美沙夜が身をよじらせ、シーツを固く握りしめる。彼女の気高いプライドは、彼の手のひらから伝わる圧倒的な体温の前に、一瞬でドロドロに溶かされてしまった。
「んぁ……っ、んちゅ……っ、はぁっ、あ……っ! アストルフォさんの、舌……っ、あつい……です……っ」
綾香もまた、彼との深いキスに息を乱し、丸い眼鏡をベッドに落としたまま、その逞しい首にしがみつく。
「王子様……私にも、もっと……っ」
愛歌が、自らのランジェリーを脱ぎ捨て、彼の硬く引き締まった腹筋に柔らかな素肌を擦り寄せる。
「愛歌、すっごく綺麗だね。……ボクの熱、奥の奥まで届けてあげる」
アストルフォの大きな手が、愛歌の細い腰を掴み、彼女の最も熱を帯びた愛液まみれの秘所の中へ隆起した肉棒を差し込んでいく。
「あぁぁっ……! ぁ、あ……っ! 王子様の、熱……っ。直接、私の中に……っ!」
全能の少女の悲鳴にも似た嬌声が、夜の海に溶けていく。
彼の手は美沙夜の柔らかな太ももの内側を撫で回し、彼の唇は綾香の首筋に真っ赤な愛の印を刻み込んでいる。
「美沙夜も、綾香も、愛歌も。……みんな、ボクの世界で一番可愛いお姫様だよ」
コーンウォール半島の冷たい夜風など、この部屋には一切届かない。
三人の魔術師たちは、一人の太陽のような騎士がもたらす無尽蔵の熱量と、狂おしいほどの愛欲の濁流に完全に呑み込まれ、朝が来るまで幾度となく、極上の快楽の中で歓喜の涙を流し続けるのだった。
アーサー王の伝説の地で、過去の運命を完全に上書きした全能の少女の、甘く、そして幸せに満ちたバカンスの夜は、こうして更けていった――。