※この作品はR-18です。

fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ   作:鰻天ぷら

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インターバル㉖

フィストラルビーチの白波を照らす、眩しい朝の光。

分厚い遮光カーテンの隙間から差し込んだ細い光の筋が、スイートルームの乱れたキングサイズベッドを照らし出していた。

 

「……んっ……」

 

柔らかなシーツの海の中で、沙条愛歌はゆっくりと金色の瞳を開いた。

彼女の華奢な背中には、アストルフォの逞しい腕がしっかりと回されている。彼のがっしりとした胸板から伝わってくる火傷しそうなほどの体温と、甘い薔薇の香りが、彼女が全能の天才ではなく、ただの「愛される一人の女の子」であることを確かに証明していた。

 

「……おはよう、私の王子様」

 

愛歌は、まだ規則的な寝息を立てているアストルフォの首筋に、そっと唇を寄せた。

昨夜、彼に狂おしいほどに愛され、内側までドロドロに溶かされた熱の残滓が、下腹部の奥底でジンジンと甘く疼いている。彼女の雪のような素肌には、胸元から柔らかな太ももの内側に至るまで、彼が刻み込んだ無数の赤い印が花びらのように散らばっていた。

 

その反対側のアストルフォの左腕の中では、妹の綾香が丸く身を縮めて眠っている。

いつもは「不思議系森ガール」を装う苦労人の彼女だが、今は眼鏡も外し、乱れた髪を彼の二の腕に擦りつけながら、ひどく甘く、無防備な寝顔を晒していた。

そしてベッドの足元近くには、エレガントな仮面を完全に剥ぎ取られ、彼の足に自らの白い脚を絡ませたまま、だらしないほどに幸福そうな顔で微睡む玲瓏館美沙夜の姿があった。

 

「んん……? あ、朝だ……!」

 

不意に、アストルフォが紫水晶の瞳をパチリと開けた。

寝起き特有の気怠さなど微塵も感じさせない、底抜けに明るい太陽の笑顔。

 

「愛歌、おはよう! 綾香も美沙夜も、よく眠れた?」

 

彼が身じろぎをするたび、シーツが擦れ、彼の大胸筋と愛歌の柔らかな双丘が直接こすれ合う。

 

「ひゃうっ……」

 

愛歌の口から、無意識の嬌声が漏れた。

朝の光の中だというのに、彼の肌が触れた瞬間、昨夜の極上の快感が鮮明にフラッシュバックし、魔術回路の芯が一気に熱を帯びる。

 

「愛歌、すっごくいい匂い。……昨日の夜、いっぱいいっぱい泣いてたのに、まだボクの熱が欲しいの?」

 

アストルフォの大きな手が、愛歌の腰のくびれを滑り、そのまま豊かな丸みを下からそっと包み込んだ。

 

「あぁっ……! 王子様の手……あつい、わ……っ。だめ、そんな風に触られたら、また私……頭の中が、真っ白に……っ」

 

「んぁ……っ、お姉ちゃん……朝から、ずるい……っ」

 

目を覚ました綾香が、顔を真っ赤にしながらも、自らアストルフォの背中に抱きつき、その圧倒的な体温にすがりつく。

 

「本当よ……。こんなに全身ドロドロにされたのに……貴方の顔を見ると、また子宮の奥が疼いてしまうのだから……っ」

 

美沙夜も起き上がり、乱れた黒髪をかき上げながら、情欲に濡れた瞳でアストルフォの広い胸板に唇を這わせた。

 

海風が吹き抜ける爽やかな朝のスイートルームは、再び彼のもたらす無尽蔵の熱量と、三人の雌たちの甘い吐息によって、濃密な愛の熱帯へと引き戻されていくのだった。

 

***

 

その日の午後。

特急列車に揺られ、ロンドン郊外のエーデルフェルト別邸へと帰還した四人を、エントランスで女主人たちが出迎えていた。

 

「ただいまーっ!! みんな、お土産いーっぱい買ってきたよ!」

アストルフォが、両手に抱えきれないほどの紙袋を下げて、極上の笑顔で飛び込んでくる。

 

「お帰りなさい、うちの馬鹿旦那。……随分と楽しんできたみたいじゃない」

 

遠坂凛が、腕を組みながら鋭い視線を愛歌たちに向けた。

 

「ええ。……見事なまでに、骨の髄まで愛し抜かれた『雌』の顔になっていますわね」

 

ルヴィアゼリッタが、扇子で口元を隠しながら、オーッホッホと底意地の悪い笑いをこぼす。

 

バカンスから帰還した愛歌、綾香、美沙夜の三人は、上質な服を着こなしてはいるものの、その全身から溢れ出る『オスのフェロモンを浴び尽くした女特有の艶』は、最高峰の魔術師たちの目を誤魔化すことなどできなかった。

少し動くたびに首元から微かに覗く赤いキスマーク。歩幅の違和感。そして何より、アストルフォの姿を目で追うたびに、無自覚に太ももを擦り合わせてしまうその仕草。

 

「ふふっ。お帰りなさい、お姉様方。……アストルフォさんの熱は、海辺でもさぞかしデタラメだったのでしょうね」

 

桜が、紫の瞳を細めて妖艶に微笑む。

 

「……ええ。本当に、私の王子様は最高よ。……退屈だった世界が、全部ひっくり返っちゃうくらいにね」

 

愛歌が、一切の恥じらいもなく、全能の余裕と本妻の貫禄を漂わせて微笑み返した。

 

「あ、あの……ご心配おかけしました……っ」

 

綾香は顔から火が出るほど赤面して俯き、美沙夜は「お土産、後でゆっくり開けてちょうだい」と優雅に取り繕っている。

 

「まったく。兄上(Ⅱ世)が聞いたら卒倒しそうなほどの、淫靡な匂いが染み付いているじゃないか。……まあ、私も昨夜は彼がいないベッドで、すっかり身体を持て余してしまったのだけれどね」

 

ライネスが、悪戯っぽくクスクスと笑う。

 

「もう! アストルフォ、今夜は絶対に私の部屋に来てもらうからね! バカンスの分、たっぷり私を温めてもらわないと割に合わないわ!」

 

すっかり女の顔になったオルガマリーが、アストルフォの腕にすがりついて豊満な胸を押し付ける。

 

「あはは! オルガマリーもライネスも凛も、みんないっぱいいっぱい愛してあげるよ! さあ、中に入ろう!」

 

太陽のような騎士の無邪気な声が、エントランスに高く響き渡る。

全能の少女の退屈を完全に打ち砕き、苦労人の妹と完璧な令嬢を甘く蕩けさせた極上の英国バカンスは、こうして賑やかな愛の城での日常へと、再び溶け込んでいくのだった。

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