fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ 作:鰻天ぷら
殺生院キアラが極東の地からロンドンのエーデルフェルト別邸へと連れ帰られ、この愛の魔窟の新たな家族として加わってから、およそ一ヶ月が経過していた。
夕食後の優雅なティータイム。
広大なラウンジでは、ヒロインたちがそれぞれの子供たちを寝かしつけた後、最高級の紅茶やブランデーを傾けながら思い思いのくつろいだ時間を過ごしていた。
「……あら、遠坂。貴女、また首筋に新しい印がついていましてよ。昨夜は随分と激しく鳴かされたみたいですわね。まあ、わたくしの旦那様への奉仕に比べれば、児戯のようなものでしょうけれど」
ルヴィアゼリッタが、豪奢なソファに腰掛けながら、扇子越しに凛をからかう。
「なっ……! あんたこそ、歩き方が少し変じゃない! それに、昨日は私だけじゃなくて、桜も一緒だったんだから!」
遠坂凛が顔を真っ赤にして反論すると、隣でお茶を淹れていたエーデルフェルトの養女・桜が、紫の瞳を艶やかに潤ませて頬に手を当てた。
「ええ……アストルフォさん、とっても情熱的で。私、何度も意識が遠のいてしまって……ふふっ、思い出しただけで、お腹の奥が……」
そんな三人の賑やかな(そして淫靡な)やり取りを、少し離れた席から妖艶な笑みを浮かべて眺めている女がいた。
殺生院キアラだ。
「……ふふっ。皆様、本当に仲がよろしいのですね。でも、その程度の熱で腰を抜かすだなんて、少し可愛らしすぎませんこと?」
キアラは、蠱惑的な仕草でカップを置くと、ふわりと立ち上がり、凛たちの背後へと歩み寄った。
「わたくしが、もう少しだけ……深い快楽の淵というものを、お教えして差し上げましょうか?」
彼女の三日月のように吊り上がった唇から、甘く、脳髄を直接撫で回すような『魅了』の魔力が微かに漏れ出す。
キアラはアストルフォに完全に屈服し、彼への愛に生きることを誓ったが、その根底にある「他者をからかい、揺さぶりたい」という魔性の気質までは消えていない。彼女の指先が、無防備な凛のうなじへとゆっくりと伸び――
「キアラちゃん!」
その指先が触れる寸前。
背後から、がっしりとした太い腕がキアラの細い腰を抱き寄せ、彼女の身体をふわりと宙に浮かせた。
「ひゃうっ!?」
「みんなとお話ししてくれて、すっごく嬉しいよ! キアラちゃん、もうすっかりこのお家の家族だね!」
アストルフォだ。
彼は、キアラが放とうとしていた魔性の毒など全く意に介さない――いや、その純度百パーセントの陽の気で、彼女の魔力を一瞬にして無害な春風へと浄化してしまっていた。
彼はキアラを背後から抱きしめたまま、そのうなじにチュッと可愛らしい音を立ててキスをした。
「あぁっ……! アス、トルフォ様……っ」
悪戯を仕掛けようとしていた菩薩の顔は一瞬で消え失せ、キアラは顔を真っ赤に染め、彼の逞しい腕の中で力なくへたり込んでしまう。
「……まったく。新入りがちょっと悪さをしようとするたびに、あいつが天然で防いじゃうんだから、世話ないわね」
蒼崎橙子が、呆れたようにタバコの煙を吐き出しながら笑った。
「ええ。でも……一ヶ月前、彼がこの新入りを連れて帰ってきた時は、本当にどうなることかと思いましたけれど」
青い法衣姿のシエルが、丸い眼鏡を押し上げながら、熱っぽい溜息を漏らす。
そう。一ヶ月前。
極東での死闘を終え、キアラという規格外の魔性を完全に受け止め、陥落させたアストルフォ。彼が帰還した際に放っていた『レベルアップしたオスの熱量』は、この魔窟の生態系を一時的に崩壊させるほどの威力を誇っていた。
最初の二週間は、まさに嵐だった。
凛も、ルヴィアも、桜も、そして最強の一角である橙子や青子でさえ、夜のベッドで彼が放つ無尽蔵の情熱とフェロモンに全くついていけず、翌日は文字通りベッドから一歩も動けない日が続出したのだ。
「ただの優しい騎士」から、「女のすべてを愛で満たし、溶かし尽くす完璧な雄」への変貌。
あの沙条愛歌でさえ、「王子様、少し激しすぎるわ……でも、もっと……」と、全能の瞳をトロンと濁らせて甘く泣き叫んだほどだった。
しかし、そこは世界最高峰のヒロインたちである。
彼女たちは、この一ヶ月の間に、自らの魔術回路と身体の構造を、彼の限界突破した熱量に『適応』させてみせたのだ。
今では、彼の規格外の愛を全身で受け止め、むしろ自らさらに深い熱を求めて彼にすがりつく、究極の「愛の共犯者」として完璧な仕上がりを見せていた。
「さあ、キアラちゃん。今夜はキアラちゃんのお部屋に行く約束だったよね!」
アストルフォが、腕の中のキアラをヒョイとお姫様抱っこで抱き上げる。
「あ……はい……っ。わたくし、お部屋で……ずっとお待ちしておりましたの……」
キアラは、もはや完全にただの「恋する乙女」の顔で、彼の広い胸板に顔を埋めた。
「抜け駆けは許さないわよ、新入り。明日は私が旦那様を独り占めする番なんだからね」
オルガマリーが、銀髪をかき上げながら艶やかに見送る。
***
キアラのために設えられた、極彩色の装飾が施された豪奢な寝室。
分厚い扉が閉ざされ、二人きりの密室となった瞬間。
キアラは、アストルフォの腕から降りると、妖艶な微笑みを浮かべて彼に向き直った。先程までの恥じらいは鳴りを潜め、そこには「最強の魔性」としての艶やかなプライドが揺らめいている。
「……アストルフォ様。この一ヶ月、貴方の熱に当てられっぱなしでしたけれど。……今夜こそは、わたくしの『全力』で、貴方の理性をドロドロに溶かして差し上げますわ」
彼女は、身に纏っていた薄絹の衣をはらりと床に落とした。
あらわになる、豊満で雪のように白い双丘と、蠱惑的な曲線を描く腰回り。そして、すでに彼を求めて蜜を滴らせている最奥の秘所。
極東の山中での死闘の時と同じ、いや、彼女が「愛する男への奉仕」という概念を知ったことで、その性魔術の威力はかつてより遥かに純度を増し、致死量の快楽の呪いとなって部屋中に充満した。
「さあ、いらっしゃいな。わたくしのすべてで、貴方を狂わせて差し上げます」
普通の男なら、彼女の息遣い一つで精神が崩壊する絶対の領域。
だが、アストルフォは一切の怯みを見せず、太陽のように眩しい笑顔のまま、彼女の裸身へと真っ直ぐに歩み寄った。
「うん! キアラちゃんの全力、ボクがぜーんぶ受け止めるよ!」
彼は、キアラの細い腰を力強く引き寄せると、彼女の魔性が詰まった甘い唇を、自らの唇で完全に塞いだ。
「んんっ……!!」
交わる舌。その瞬間、キアラから放たれる無限の快楽の呪いが、アストルフォの全身に流れ込む。
極東での初戦、彼はこの激流に喘ぎ、限界ギリギリの苦戦を強いられた。
しかし今は違う。彼は、キアラの放つ究極の快楽を「ボクへの愛の形」として完全に理解し、一切の抵抗なく自らの内に取り込み、そして、それを遥かに上回る『オスの肯定感と熱量』へと変換して、彼女の最奥へと叩き返したのだ。
「あぁっ……!? ぁ、あぁぁぁぁっ!!」
キアラの全身が、ビクンと大きく跳ね上がった。
彼女が彼を狂わせようと流し込んだ魔力が、何十倍にも増幅された「愛の熱」となって彼女自身の子宮を直接焼き焦がす。
「キアラちゃん、すっごく気持ちいいよ。キアラちゃんがボクのこと、いっぱい愛してくれてるのが伝わってくる!」
アストルフォは、彼女の豊満な胸を大きな手で包み込み、その先端を優しく、しかし執拗に弄りながら、彼女の首筋に熱いキスマークを刻み込んでいく。
「ひぎぃッ……!! だめ、だめですわ……っ! わたくしが、貴方を……あっ、あぁっ……! アストルフォ様……っ!!」
ベッドに押し倒され、彼女の長い両脚が彼のがっしりとした腰に絡みつく。
キアラは必死に主導権を握ろうと、持てる限りの性魔術を駆使して彼の腰を締め付け、快楽の淵へ引きずり込もうとする。
だが、アストルフォはもはや、彼女の全力を「心地よい愛撫」として余裕で受け止め、果てしない体力と情熱で彼女の最奥を容赦なく貫き続けた。
「キアラちゃん、大好き! ずっと、ずっと一緒にいようね!」
「あぁぁっ……! わたくしも……わたくしも、好き……っ! 貴方の熱で、わたくしの全部を……めちゃくちゃに、してぇっ!!」
最強の魔性の菩薩は、かつて彼女自身が支配していたはずの究極の快楽の海の中で、ただ一人の男の熱に完全に呑み込まれ、愛の悦びに狂い泣く。
レベルアップを果たした太陽の騎士の無尽蔵の愛は、キアラのすべてを包み込み、永遠に終わらない甘く熱帯の夜を、エーデルフェルトの魔窟に刻み込んでいくのだった――。