fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ 作:鰻天ぷら
ガラス屋根を激しく打ち据えるロンドンの冷たい雨音。しかし、温室の中に満ちる空気は、熱帯夜のようにじっとりと重く、そしてどこまでも甘かった。
薔薇の手入れ用に使われる、清潔でひんやりとした木製の長椅子。
そこに横たえられた桜・エーデルフェルトの視界は、自分を覆い隠すようにのしかかる桜色の騎士の姿だけで完全に埋め尽くされていた。
「あっ……んんっ、はぁっ……!」
純白の繊細な下着姿となった桜の柔らかな肌に、アストルフォの滑らかな唇が這う。
首筋から鎖骨へ、そして豊かな胸元の谷間へと、火傷しそうなほどの熱を持った口付けが次々と落とされていく。彼が吸い付くたびに、白磁のような肌に赤い花びらが散ったような真新しい痕が刻み込まれた。
「桜……すごく甘い匂いがする。薔薇の香りよりも、ずっといい匂いだ」
「あ、アストルフォ……さん……っ、だめ、そんなに見つめられ、たら……私……っ」
恥じらいで両腕で顔を覆おうとする桜の手首を、アストルフォは片手でふわりと掴み、彼女の頭上の長椅子に押し留めた。
決して乱暴ではないが、英霊としての絶対的な力差があり、桜は完全に彼の下で無防備な姿を晒すことになった。
「隠さないで。キミの全部が綺麗なんだから、ボクにちゃんと見せて?」
アストルフォは極上の笑みを浮かべたまま、空いたもう片方の手で、桜の胸元を覆う純白のレースのホックへと指をかけた。
カチャリ、と小さな音が響き、最後の布切れが左右に滑り落ちる。
ロンドンの冷たい空気に一瞬だけ晒された彼女の豊かな双眸は、次の瞬間、アストルフォの熱く湿った口腔によって完全に包み込まれた。
「ひゃあぁっ!! あ、ああっ……! そ、こっ……だめぇっ……!」
桜の身体が、雷に打たれたように大きく跳ねた。
経験したことのない強烈な刺激。アストルフォの器用な舌先が、敏感な頂を執拗に転がし、甘噛みし、そして強く吸い上げる。
「んちゅ……ちゅっ……桜、すごく敏感だね。ここ、こんなに硬くなってる」
「あ、ぁあっ……! 許し、て……私、おかしく……おかしくなっちゃう……っ!」
快感のあまり頭を激しく振り、桜は涙声で懇願した。
エーデルフェルトの次期当主としての誇り。常に完璧を求められた令嬢としての理性。そんなものは、彼が与える圧倒的な快楽の波の前に、ちり芥のように吹き飛んでいた。
彼女の頭の片隅に、ふと、本邸の奥で義姉たちと交渉をしているはずの蒼崎青子の姿がよぎる。
あの強大で自由な魔法使い。アストルフォの隣で、誰よりも堂々と笑っていた彼女。
数十分前まで、桜はその事実に嫉妬し、自分は選ばれないのだと絶望していた。
しかし、今はどうだ。
あの蒼崎青子を待たせたまま、彼女の騎士は今、自分を組み敷き、ただ『桜』という一人の女だけを求めて熱狂してくれている。
その背徳感と、彼からの途方もない愛情の独占が、桜の心の中にある『空っぽの箱』を、ドロドロに溶けた極彩色の熱で満たしていく。
(蒼崎先生……ごめんなさい。でも、今だけは……この人は、私だけのもの……っ!)
桜は拘束を解かれた両手を伸ばし、アストルフォの広い背中に爪を立てて、自ら彼を強く抱き寄せた。
「アストルフォ……! もっと……っ、私を、空っぽじゃないって……教えて……っ!」
「……うん。桜は、もう一人じゃないよ。ボクが、キミの全部をボクの熱でいっぱいにしてあげる」
アストルフォの紫水晶の瞳が、限界まで情欲に濁った『オス』の光を放つ。
彼の手が、桜の滑らかな太ももを撫で上げ、最も熱を帯びた秘所のすぐ近くへと滑り込んだ。
すでに彼女自身から溢れ出した甘い蜜で、そこはひどく濡れそぼっていた。
「ああっ……! 触っ……だめ、そこは、汚い……っ」
「汚くないよ。桜がボクを求めてくれてる証拠だ。……すごく熱くて、とろとろになってる。可愛いよ、ボクの桜」
アストルフォの長い指先が、桜の最も敏感な場所を優しく、しかし確かな技巧で撫で回す。
「ひぃっ……! あ、あぁぁっ! アス、トルフォ……っ!」
嬌声が温室の中に高く響き渡る。
もう、限界だった。桜は腰を浮かせ、本能のままに彼を自分の中へ迎え入れようと身をよじった。
「桜……キミのこと、絶対に離さないからね」
低く甘い囁きとともに、アストルフォは自らの圧倒的な熱の塊を、桜の身体の奥深くへとゆっくりと、しかし容赦なく沈み込ませた。
「あぁぁぁっ……!! ぁ……あ……っ!!」
桜の瞳から、快感と安堵の涙が堰を切ったように溢れ出した。
熱い。信じられないほど熱く、そして途方もなく満たされていく。
自分が不要な部品でも、誰かの代用品でもない。今この瞬間、自分はこの世界で最も美しく優しい騎士に、一人の女として心の底から愛されている。
「あ、アストルフォ……っ! 好きっ、好き……です……っ!」
「ボクもだよ、桜……っ。キミの中、すごく気持ちいい……ボクを、こんなにきゅって締め付けてる……っ」
ガラス屋根を打つ雨音が激しさを増す中、長椅子がリズミカルに軋む音が重なり合う。
アストルフォの腰の動きは、初めは彼女を気遣うように優しかったが、桜が快感に身を委ねて彼にしがみつくと、次第に獣のような激しさを帯びていった。
肌と肌が激しく打ち据えられる卑猥な水音が、薔薇の香る密室に反響する。
「んんっ、はぁっ……! あ、奥っ……そこ、だめぇっ……!」
「ここ? ここが好きなの? 桜……もっと、ボクのこと感じて……っ!」
激しく突き上げられるたび、桜の身体に電流のような快感が走り、思考が完全に真っ白に染め上げられていく。
彼女はアストルフォの桜色の髪を掻き毟りながら、息も絶え絶えに彼の名を呼び続けた。
「アストル、フォ……っ! アストルフォ……っ!! あ、あぁぁっ……!」
やがて、二人の息遣いが頂点に向かって極限まで高まる。
アストルフォがひときわ深く腰を沈めた瞬間、桜の身体は弓なりに大きく反り返り、視界が真っ白な閃光に包まれた。
「あぁぁっ……!! んんっ、はぁっ……ぁ……っ」
温室の中に、泣きじゃくるような長い嬌声と、野性的な男の低い吐息が同時に響き渡る。
圧倒的な絶頂の波が桜の全身を駆け抜け、彼女はアストルフォの広い胸の中で、心地よい虚脱感とともにガクンと力を抜いた。
***
「……はぁっ、はぁ……っ」
どれほどの時間が経っただろうか。
雨音だけが静かに響く温室で、桜はアストルフォの胸にすっぽりと抱きかかえられたまま、荒い息を繰り返していた。
身体の芯にはまだ、彼から与えられた熱がジンジンと甘く燻り続けている。彼女の紫の瞳は、もう孤独に凍てついてなどいなかった。そこにあるのは、愛を満たされた女特有の、柔らかく艶やかな光だけだ。
「……桜、大丈夫? 痛くなかった?」
アストルフォが、汗ばんだ桜の前髪を優しく払いながら囁いた。
桜はふるふると小さく首を横に振り、彼のがっしりとした身体にすり寄るように頬を擦り付けた。
「痛く、ありません。……すごく、幸せ……です」
「えへへ、よかった! ボクもすっごく幸せだよ。桜のこと、もっともっと大好きになっちゃった!」
無邪気に笑うアストルフォを見上げて、桜はふわりと微笑み返した。
もう、蒼崎青子や他の女性に対する嫉妬は、不思議なほど消え去っていた。彼が全員を愛しているなら、自分もその途方もない愛の一部として、彼に愛し尽くされればいい。エーデルフェルトの令嬢としての殻を破り捨てた彼女は、今や完全にアストルフォの虜となっていた。
「……あの、アストルフォさん」
「ん?」
「私……もう少しだけ、このままで……あなたの熱を感じていても、いいですか?」
甘えるように上目遣いで見つめる桜に、アストルフォは「もちろん!」と満面の笑みで答え、再び彼女の唇を優しく塞いだ。
ロンドンの冷たい雨の庭園の片隅で、二人きりの甘く濃密な時間は、本邸での交渉が終わるまで誰にも邪魔されることなく続いていった――。