fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ 作:鰻天ぷら
アストルフォの広く逞しい胸板に抱きとめられたノエルは、自らの身体に起きている異常事態に、恐怖と混乱で瞳孔を揺らしていた。
(力が入らない……っ。魔術回路が、頭の芯が、ビリビリって痺れて……っ!)
代行者として過酷な訓練を積んできたはずの彼女の肉体が、アストルフォの肌から伝わる常軌を逸した『オスの熱量』に触れただけで、完全に反逆を起こしていた。
極東で最強の魔性(キアラ)を屈服させ、一段階上の次元へとレベルアップを果たした太陽の騎士。彼が放つ無自覚な愛欲のフェロモンは、ノエルのような愛に飢えた凡庸な魂にとっては、致死量の猛毒であり、同時に抗いがたい極上の甘露だった。
「はな、せ……っ! この、化け物……っ! シエルゥゥッ! アンタ、私を嵌めたわねッ!!」
ノエルはアストルフォの胸の中で藻掻きながら、シエルを涙目で睨みつけた。
「私はアンタから全部奪ってやるって決めたのよ! アンタのそのムカつく幸せを、ぶち壊しに来てやったのよ!! なのに……っ!」
ド黒い私怨を隠す余裕すらなくなり、ノエルは子供のように泣き叫んだ。
だが、そんなノエルの悲痛な(そしてひどくちっぽけな)呪詛を、シエルは怒るでもなく、ただ静かに、慈母のような微笑みで受け止めた。
「ええ、知っていますよ、ノエル。貴女のそのドロドロとした嫉妬も、私への恨みも。……貴女はただ、『普通の女の子』としての幸せが欲しかっただけですよね」
シエルが、ノエルの背後にふわりと歩み寄る。
「ひゃっ……!?」
シエルの冷たくも艶やかな指先が、ノエルの黒い修道服の襟元に触れ、そのボタンを一つ、また一つと手際よく外していった。
「や、やめ……っ! なにするのよ! シエル先輩、だめっ……!」
「強がらなくていいんですよ、ノエル。……私は、貴女の奪われた人生を返してあげることはできない。けれど、貴女のその空っぽで寒々しい心を、底の底まで満たしてあげることはできる」
シエルは、ノエルの茶髪のサイドテールを優しく解き、その耳元に甘く、背徳的な吐息を吹きかけた。
「あの方の熱に、すべてを委ねなさいな。教会の掟も、私への憎しみも、すべてがどうでもよくなるくらい……気持ちよく溶かしてくれますから」
「あ……ぁっ……」
修道服がはらりと床に落ち、下着姿に剥かれたノエルの柔肌が、寝室に充満する熱気(フェロモン)に直接晒される。
「ノエルちゃん、シエルのために、一人でずっと頑張ってきたんだね。すっごく辛かったよね」
アストルフォが、ノエルの華奢な腰を大きな両手で包み込み、彼女の潤んだ瞳を真っ直ぐに覗き込んだ。
「ち、がう……っ、私は、復讐に……っ」
「うん! でももう大丈夫! ボクが、ノエルちゃんのこと、世界で一番幸せな女の子にしてあげるから!」
一切の邪気もない、純度百パーセントの太陽の全肯定。
その言葉と共に、アストルフォの唇が、ノエルの敏感な首筋に吸い付いた。
「んんひぃッ!!? ぁ、ああっ……!!」
ノエルの口から、代行者らしからぬ、ひどく甘く甲高い嬌声が弾け飛んだ。
「あっ、あつい……っ! なにこれ、頭が、真っ白に……っ!! ぁああっ!」
アストルフォの唇が這うたびに、彼のがっしりとした太ももがノエルの股間に擦り付けられるたびに、彼女のちっぽけな復讐心は、あっけないほど一瞬で蒸発していった。
彼女が抱えていたのは、ただの「愛されたい」という強烈な飢餓感だったのだ。それを、絶対に自分を否定しない規格外の雄が、圧倒的な優しさと暴力的なまでの快楽で強引に満たしていく。
「ノエルちゃん、すっごくいい匂い。肌も、とっても柔らかいよ」
アストルフォが、彼女の胸の先端を優しく、しかし執拗に弄る。
「ひぎぃッ!! だめっ、だめぇっ! アストルフォ、様……っ! あたし、わたしっ、こんなの……っ!!」
ノエルは背を反らせ、シエルの腕の中でのたうち回った。
抗おうなどという意思は、開始数秒で完全にへし折られていた。彼女の身体は、生まれて初めて注がれる致死量の『愛』の熱に狂喜し、自らアストルフォの熱を求めて卑猥に腰をくねらせ始めていた。
「ふふっ。素直な身体ですね、ノエル。……さあ、どうすればアストルフォが喜んでくださるか、私が教えてあげますから。しっかり腰を動かしなさいな」
シエルが、ドSな(しかし完全にアストルフォの色に染まりきった)正妻の余裕を見せつけながら、ノエルの身体を背後から支え、アストルフォの熱の塊を、彼女の最奥へとゆっくりと導いていく。
「いっ……!!? ぁ、あぁぁぁぁっ!!」
最も深く、重い熱が、ノエルの子宮の底を打ち据えた。
「あああああッ!! シエルせんぱぁい……っ、わたし、わたしぃっ……!!」
「いいえ、おかしくなるのではありません。アストルフォの愛で、満たされるんです」
ノエルは、かつて自分が憎悪し、その幸せをぶち壊してやろうと企んでいた先輩の目の前で。涙と涎を垂らしながら、自らアストルフォの逞しい背中にすがりつき、狂ったように腰を跳ねさせた。
「アストルフォ様ぁっ……! 好き、好きぃっ……! 私だけ置いていかないで……っ! 私も、貴方の女の子にしてぇっ!!」
完全に崩壊したノエルの口から、不憫で愛らしい雌の本音がこぼれ落ちる。
「うん! いっぱいいっぱい、愛してあげるね!」
最強の代行者と、それに導かれた不憫な後輩。
かつての愛憎と上下関係は、一人の太陽の騎士の無尽蔵の熱に抱かれ、共に快楽の淵に沈む「姉妹(共犯者)」という新たな絆へと塗り替えられていく。
教会の誇りも、ド黒い私怨も、すべてをドロドロの愛に溶かされたノエルは、こうしてあっけなく、しかしこの上なく幸福な絶頂の中で、魔窟の新たなヒロインへと完全に作り変えられてしまったのだった。