fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ 作:鰻天ぷら
「んんッ……ぁっ、はぁっ……!」
探偵事務所『伽藍の堂』に、水音とひどく甘い吐息が響き渡る。
壁に押し付けられたまま、未那はアストルフォのがっしりとした腕に閉じ込められ、逃げ場のない熱の奔流に呑み込まれていた。
交わる舌。与えられるだけの、暴力的でいて気が狂うほど優しい口付け。
「あぁっ……はぁっ……んちゅ……っ」
十八歳という、大人の女としての身体を持ちながらも、その経験値は皆無に等しかった未那の魔術回路は、極東の魔性(キアラ)すら屈服させた「限界突破のオスのフェロモン」を直接注ぎ込まれ、完全にショートしていた。
(あ、頭が……真っ白に……っ。パパ、パパ……ごめんなさい……私……っ)
未那の脳裏に、幼い頃から絶対的な王子様として君臨していた父親(幹也)の穏やかな笑顔がよぎる。しかしそれは、目の前で自分を『一人の女』として貪る太陽の騎士の圧倒的な熱量によって、まるで陽炎のようにドロドロに溶かされ、上書きされていく。
「マナちゃん……息、苦しい?」
少しだけ唇を離したアストルフォが、とろけるような紫水晶の瞳で彼女を覗き込んだ。その声は普段の無邪気な少年のものではなく、完全に成熟した雄の、低く艶やかなものだった。
「はぁっ……はぁっ……だめ、離れないで……っ」
未那は、自らの内に湧き上がる『雌』としての強烈な渇望に抗えず、アストルフォの首に腕を絡ませ、自ら再びその唇を求めた。
もう、強がっていたお嬢様の面影はない。彼から放たれる熱がないと、立っていることすらできないほどに骨抜きにされていた。
「可愛い……。マナちゃん、全部ボクに預けて」
アストルフォの大きな手が、未那の上質な高校のブレザーを滑り落とし、ブラウスのボタンを一つ、また一つと手際よく外していく。
雨上がりの少しひんやりとした室内の空気が、あらわになった未那の柔肌を撫でるが、それ以上に、肌を這うアストルフォの火傷しそうなほど熱い掌の感触が、彼女の全身をビクンと跳ねさせた。
「ひゃっ……! あ、ぁ……っ」
「綺麗だよ、マナちゃん。……背伸びして大人ぶってたけど、本当はこんなに柔らかくて、熱いんだね」
アストルフォの指先が、未那の女性としての柔らかな膨らみを優しく、しかし執拗に撫で上げる。
「あぁっ! だめぇっ、そこ……っ! おかしく、なっちゃう……っ!!」
未那は背を反らせ、アンティークのソファへとゆっくりと押し倒された。
初めて他者に暴かれる自らの『女の子』としての部分。恐怖よりも、恥じらいよりも、「彼に一番のお姫様として扱われている」という圧倒的な全肯定の悦びが、彼女の理性を完全に焼き切っていく。
「怖くないよ。ボクが、マナちゃんのこと、世界で一番幸せな女の子にしてあげる」
「アス、トルフォ……っ! 私を、私を……女にしてぇっ……!!」
懇願。
それは、パパの庇護下にあった『子供』からの完全な決別だった。
「うん……!」
最も深く、重い熱が、未那の最奥へと辿り着く。
「――――ッ!!」
声にならない絶叫。
一瞬の痛みを、それの何百倍もの途方もない優しさと快楽の濁流が塗り潰していく。
「あああああッ!! あぁっ、あぁぁぁっ!!」
未那は、自らの黒髪を乱し、涙と涎を垂らしながら、アストルフォのがっしりとした背中に爪を立てた。
教えられるまでもなく、自ら本能のままに腰を跳ね上げ、彼のもたらす無尽蔵の熱をより深く、より奥へと迎え入れようと狂態を晒す。
「すごい……マナちゃん、すっごく熱いよ……っ」
「もっと……っ! もっと、私をぐちゃぐちゃにして……っ! 貴方の一番に、してぇっ……!!」
夕陽が深紅に染まり、やがて夜の帳が下りるまでの間。
極道の姫君が長年抱え続けていた「子供扱いされる燻り」は、太陽の騎士による圧倒的な熱量と肯定感の嵐によって、最後の一滴まで甘く、激しく搾り取られ、完全に満たし尽くされたのだった。
***
数時間後。
すっかり日が落ち、月明かりだけが差し込む『伽藍の堂』の室内。
アンティークのソファの上で、未那はアストルフォの広く温かい胸板にすっぽりと包み込まれ、微睡んでいた。
「……んんっ……」
彼女の裸体にはアストルフォのジャケットが優しく掛けられている。
未那は、彼の胸に頬をすりすりと擦り付けた。そこから漂う甘いオスの匂いを嗅ぐだけで、子宮の奥がジンジンと甘く痺れ、幸福感で頭がとろけそうになる。
(……私、どうなっちゃったのかしら)
未那は、熱を帯びた瞳で、自分を優しく抱きしめたまま眠りにつこうとしているアストルフォの寝顔を見上げた。
後悔など、微塵もなかった。
それどころか、今まで「パパが一番」と信じて疑わなかった自分の世界が、根底から覆ってしまったことを、細胞の隅々までが歓喜と共に受け入れていた。
この人は、自分を子供扱いしなかった。一人の大人の女として、限界まで愛し尽くし、満たしてくれた。
「……アストルフォ」
未那は、彼の胸にそっと口付けを落とした。
もう、彼の熱がない世界なんて考えられない。
パパは大好きだけど、パパは絶対に私にこの熱を与えてはくれない。私を『雌』にしてくれるのは、この世界でただ一人、この太陽みたいな王子様だけだ。
(……ごめんなさい、パパ、ママ。私……もう、ただの『娘』には戻れないわ)
未那の口元に、母親(両儀式)譲りの、そして父親(幹也)の優しさを狂気へと反転させたような、ひどく艶やかで、小悪魔的な微笑みが浮かんだ。
「……連れて行ってね、私の王子様」
未那は、アストルフォの逞しい腕をギュッと抱きしめ、彼から離れまいと、その身をさらに深く太陽の熱の中へと沈めていった。
誰もいない、静かな探偵事務所で。
両儀未那は、かつての『ませた子供』としての自分に完全に別れを告げ、太陽の騎士なしでは生きられない「極上の愛人(お姫様)」へと、その魂の形を作り変えられてしまったのだった。