fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ 作:鰻天ぷら
完全な趣味120%です(今までもそうでしたが)
午前6時。
ロンドン郊外、エーデルフェルト別邸。
厚いベルベットのカーテンの隙間から、薄明かりが寝室の床に一筋の線を描く頃。
ボクは、体内時計の正確なアラームに従って、パッチリと目を覚ました。
「……んーっ! よく寝た!」
大きく伸びをしようとしたんだけど、ボクの両腕は、すっごく柔らかくていい匂いのする重みに、完全にホールドされてたんだ。
右腕には、艶やかな金髪を散らして、満足しきった寝顔でしがみついている時計塔の君主(ロード)、ライネス。
左腕には、豊かでマシュマロみたいな肢体をボクにすり寄せて、安心しきったように穏やかな寝息を立てている、フィオレ。
昨夜は、この誇り高くも美しい二人の魔術師を相手に、深夜遅くまで徹底的に愛を確かめ合ったんだよね。普通なら、いくら魔力があっても、朝まで泥みたいに眠りこけちゃうくらい激しかったと思う。
でも、ボクはシャルルマーニュ十二勇士のパラディンだからね! ボクの体力は、一晩ぐっすり眠れば完全に上限(マックス)まで回復しちゃうんだ!
「ライネス、フィオレ。朝だよー、起きる時間だね!」
ボクは、二人の滑らかな裸の肩を優しく揺すった。
「……んん。……まったく、君という男は……。昨夜あれほど私を泣かせておいて、どうしてそんなに爽やかに目覚められるんだい……」
ライネスが、微睡みの中で少しだけ悪戯っぽい瞳を開いた。その目は、すっかりボクの熱に当てられた『女の子』の甘い色をしてる。
彼女は、ボクの胸板にすりすりと頬を擦り付けながら、そのまま自分のふんわりした太ももを、ボクの下腹部へと這わせてきた。
「ひゃっ! ライネス、くすぐったいよ!」
「ふふっ。いくら君でも、朝は少し無防備になるようだね。……どうだい? 兄上(Ⅱ世)の胃痛の種になる前に、もう一度、私の魔術刻印が溶け落ちるくらいに可愛がってくれないか?」
ライネスの細く艶やかな指先が、ボクの胸の筋肉をなぞって、そのままボクをシーツの海へと引きずり込もうとする。
「あ……ら、ライネスさん……っ。アストルフォを独り占めするのは、ずるいです……っ」
その気配に目を覚ましたフィオレも、頬を薔薇色に染めながら、もじもじとボクの左腕に抱きついてきた。普段のおっとりしたフィオレからは想像もつかないくらい、その瞳は強い熱を帯びてるんだ。
「フィオレも起きたね! うん、二人ともすっごく可愛いよ!」
ボクは、二人の甘い視線を真正面から受け止めて、とびっきりの笑顔を返した。
「でもね」
ボクは、自分から絡みついてくるライネスとフィオレの身体を、両手でコロン、と容易くベッドに押さえ込んで、そのまま二人の上に覆いかぶさった。
「ひゃうっ……」
「あ……っ、アストルフォ……」
朝のひんやりとした空気の中で、ボクの体温が二人に伝わる。ボクの匂いを嗅いだだけで、二人の瞳がトロンと潤んでいくのがわかる。
「朝のお楽しみもすっごく大好きだけど。……ボクが可愛がったら、二人とも、今日はベッドから一歩も出られなくなっちゃうよ?」
ボクは、至近距離で二人を真っ直ぐに見つめた。
そして、ライネスの白いうなじに深く、熱いキスを落とし、そのままフィオレの柔らかな唇を甘く塞いであげた。
「んんッ……!! ぁ、あぁっ……」
「はぁっ……んちゅ……っ。だ、だめだ、アストルフォ……っ、そんな風に触られたら、私……っ」
時計塔の君主としての威厳も、一族を背負う当主としての矜持も。
ボクがいーっぱい撫でてキスをしてあげると、二人はあっという間に、ただの「愛されたい女の子」の甘い声を出して、ドロドロに溶けていっちゃうんだ。
数十分後。
「あはは! ほら、言った通りになっちゃった! ボク、先にご飯の用意の手伝いに行ってくるね!」
ベッドの上で完全に腰を抜かして、涙目になりながら荒い息を吐く二人を残して。ボクは鼻歌交じりにシャワーを浴びに向かった。今日も朝から絶好調だ!
***
午前7時10分。
エーデルフェルト別邸の、広大なダイニングルーム。
「アストルフォ様、おはようございます。今朝はプレーンヨーグルトにブルーベリーを添えてみました」
「おはよう、アストルフォ。オートミールと温野菜のサラダもたっぷりあるからね。さあ、たくさん食べなさい」
エプロン姿のセラとシエルたちが手際よく並べてくれたのは、極めて質素で、栄養バランスが完璧に計算された『超・健康的な朝ごはん』!
「わぁ! いつもありがとう、みんな! すっごく美味しそう!」
ボクは席に着くと、目を輝かせてサラダとオートミールを口に運んだ。
「もぐもぐもぐもぐ……」
もちろん、一口につききっちり三十回、真剣な顔で咀嚼する。これが大事なんだ!
「……ねえ、凛。あいつ、毎晩あんなに非常識なことしてるのに、なんで朝ごはんはあんなにストイックなの?」
まだ少し眠たそうな目を擦りながらダイニングにやってきた橙子(蒼崎橙子)が、呆れたようにボクを見てる。
「さあ……。でも、あいつ曰く『胃腸に負担をかけないことと、バランスのいい食事が、パラディンのスタミナの最大の秘訣!』だそうよ」
凛が、優雅に紅茶を飲みながら苦笑した。
「実際、あいつが毎朝オートミールと野菜をきっちり食べているおかげで、この屋敷の平和(とあの方の無尽蔵の体力)が保たれているわけだから。文句は言えないわね」
そこへ、ライネスとフィオレが、壁伝いにフラフラとした足取りでダイニングに現れた。
「あ……お、おはよう、ございます……」
「やあ……兄上には内緒にしておいてくれたまえ。まさか、朝の数十分で魔術回路が焼き切れる寸前までイかされるとは思わなかったよ……」
二人はすっかり愛された『女の子』の顔のまま、腰を押さえて椅子にへたり込んだ。
「あ! 二人とも、やっと降りてきたね! オートミール、すっごく美味しいよ!」
ボクがとびきりの笑顔で笑いかけると、みんなは「この太陽には一生勝てない」って顔をして、フフッと笑い返してくれた。
***
午前8時15分。
「いってきまーす!」
「パパ、今日はお仕事早く終わるー?」
朝食を終えたボクは、イリヤ、美遊、クロエたちや、年少の子供たちを、ロンドン市内の学校や魔術の稽古場へと送り届けていた。
「うん! 報告書を出したらすぐ帰るから、おやつの時間には一緒に遊べるよ!」
ボクは子供たちの頭を一人ずつ丁寧に撫でてあげた。みんな、ボクの大事な宝物だからね!
***
午前9時。
イギリス・ロンドン。魔術協会の中枢、時計塔。
重厚な石造りの廊下を抜け、ボクはある一部屋のドアをノックして開けた。
「おはよう、ロード! 今日もいいお天気だね!」
執務デスクの奥で、大量の書類と葉巻の煙に埋もれていた長髪の男――ロード・エルメロイⅡ世が、ゆっくりと顔を上げた。
昔は、ボクが魔術協会の偉い人たち(ライネスやフィオレたち)とお家で仲良くしてるのを見て、すごく胃を痛そうにしてたロードだけど。今の彼の顔には、怒りも胃痛もなくて、なんだか東洋のブッダみたいな『悟り』の表情が浮かんでるんだ。
「……おはよう、アストルフォ。今日も顔色がいいな」
ロードは、静かに葉巻の灰を落とした。
「うん! いっぱい噛んで朝ごはん食べたからね! それで、今日のボクのお仕事はなに?」
「……これだ。中東の遺跡で発生した幻霊の残滓処理と、この三つの魔術刻印の譲渡に関する書類のサインだ。お前のその『常識外れの腕力と、誰からも恨まれない善性』があれば、午前中には終わるだろう」
ロードは、淡々と書類の束をボクに手渡してくれた。
「わかった! 任せてよ!」
「……アストルフォ」
ボクが執務室を出て行こうとしたら、背中からロードの声がした。
「ん?」
「お前の私生活……我が義妹(ライネス)や、その他の女たちを毎晩どうしようが、もう私からは何も言わん。……ただ、これ以上、時計塔の有能な女性職員を『お持ち帰り』して人員不足にさせるのだけは、勘弁してくれ。……私にも、限界がある」
「えー? ボク、無理やりなんて連れて帰ったことないよ? みんな、ボクのお家がすっごく居心地がいいから、遊びに来てそのまま住んじゃってるだけだもん!」
ボクが本当のことを言うと。
「……そうか。そうだな。……もう行け。そして、早く帰ってやれ」
ロードは静かに目を閉じて、深ーいため息をつきながら、再び書類の山へと向き直った。
ロードってば、いつもお仕事頑張りすぎだよね。ボクもパパッと終わらせて、早くみんなの待つお家に帰ろうっと!