fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ 作:鰻天ぷら
午後12時。
ロンドン市内、某所の廃教会跡地。
「えーいっ! よし、これで最後かな!」
ボクは、地下室に蠢いていた幻霊の残滓たちを、剣の柄による物理的な一撃(とパラディンの神聖なオーラ)で一掃した。複雑な魔術なんて必要ない。迷いのない一撃を叩き込めば、悪いものは大体スッキリ消えてくれるのだ。
「ふぅ、お腹空いた! お昼ご飯にしようっと!」
瓦礫の上にひょいと腰掛けると、ボクはシエルとセラが持たせてくれた愛妻弁当を開いた。
中身は、蒸し鶏の胸肉、色鮮やかな茹でブロッコリー、そして玄米の小さなおにぎり。
「いただきまーす! もぐもぐもぐもぐ……」
ボクは、誰も見ていない薄暗い地下室の中でも、一口につききっちり三十回、真剣に咀嚼を繰り返す。
(胃腸に負担をかけないこと。そして栄養を完璧に吸収すること。これが、パラディンとしての強さの秘訣だからね!)
毎晩、大好きな奥様たちといーっぱい愛し合っても、絶対に体力を枯渇させない。その誓いを守るためには、日々の健康管理(食事と運動)が何よりも大切なのだ。
午後14時。
時計塔の窓口に、今日のお仕事の報告書(要点をまとめた可愛い丸文字)を提出する。
「あ、アストルフォ様……! いつも迅速なご対応、本当に助かります……っ」
目の下にクマを作った女性職員さんが、涙ぐみながら拝んでくる。魔術師の人たちって、いつも難しく考えすぎて徹夜とかしちゃうからダメなんだよね。
「うん! お仕事頑張ってね! ちゃんと寝ないとダメだよ!」
ボクは彼女の手をギュッと握って元気の魔法(笑顔)をかけてあげてから、愛する家族が待つお家へと軽やかに帰還した。
***
午後15時。
ロンドン郊外、エーデルフェルト別邸。
「ただいまー!」
「アストルフォ様、お帰りなさいませ。お疲れ様でございました」
エントランスでボクを出迎えてくれたのは、クラシカルなメイド服を着た銀髪の綺麗な女性――マリアだった。彼女は元々、聖堂教会のすごいシスター(異端審問官)で、昔ボクを倒すためにこのお家に潜入してきたんだけど、今ではすっかり仲良くなって、専属のメイドさんとして一緒に暮らしている。
「ただいま、マリア! 今日もすっごくいい匂いがするね! みんなはお茶会?」
「はい。奥様方はすでにサロンにお集まりです。本日はダージリンをご用意いたしました」
マリアは、いつ見ても背筋がピンと伸びていてかっこいい。でも、ボクがコートを手渡した時、彼女の少し冷たい指先がボクの手に触れて、ほんの少しだけビクッと震えたのを、ボクは見逃さなかった。
サロンに行くと、凛やルヴィア、それに新しく家族になった未那ちゃん(両儀未那)たちが、楽しそうにお茶を飲んでいた。
「アストルフォ、お疲れ様。報告書は無事に通った?」
「うん! Ⅱ世も元気そうだったよ! みんなも一緒におやつ食べよう!」
午後15時45分。
美味しいお茶を飲んでホッとしたボクは、広大なお家の中を散歩していた。
ふと、西陽が差し込む図書室を覗くと、マリアが一人で本棚の整理をしてくれていた。
(マリア、いつもみんなのために一生懸命働いてくれて、本当に優しいなぁ。……よし!)
「マリア、ここにいたんだ」
ボクは足音を立てずに図書室に入ると、彼女の後ろからそっと抱きついた。
「あっ……アストルフォ、様。いかがなさいましたか?」
マリアは振り返って、メイドとしての完璧な笑みを浮かべようとした。でも、ボクの腕の中にすっぽり収まった彼女の身体は、もうすでにほんのりと熱くなり始めている。
「ううん。マリア、いつもお掃除とかみんなのお世話、頑張ってくれてありがとう。……でも、ボクの前では、そんなに完璧なメイドさんでいなくていいんだよ?」
ボクは、彼女が持っていた魔導書をそっと本棚に戻すと、そのまま彼女の華奢な背中を本棚にコトン、と押し付けた。
「アスト、ルフォ様……私、は……メイドとして、当然の務めを……」
マリアは必死に涼しい顔を保とうとしている。教会で厳しい訓練を受けた彼女は、すごく我慢強い。でも、ボクは知っている。彼女が本当は、すっごく女の子らしくて、甘えたがりだってことを。
「マリアはいつもクールだけど。ボクが触ると、すぐにこんなに熱くなっちゃうんだよね。……すっごく可愛いよ」
ボクは、マリアのメイド服の襟元から手を入れて、その滑らかなうなじを優しく撫で上げた。ボクの体温が伝わった瞬間、彼女の身体がビクンッ! と大きく跳ねた。
「ひやうッ……!! ぁ、あぁ……っ」
「ん……ちゅっ……」
ボクは、マリアの震える唇を塞いだ。彼女の口の中は、すっごく甘くて熱い。
ボクがいーっぱい撫でて、いーっぱいキスをしてあげると、マリアはもうメイドの我慢なんて忘れて、ボクの首に腕を絡ませてしがみついてくる。
(あはは、マリアったら、ボクの服をギュッと掴んで、子猫みたい。可愛いなぁ)
ボクは、彼女が気持ちよくなるように、一番敏感なところを優しく、でも力強く愛してあげた。静かな図書室に、彼女の甘い声がたくさん響く。
昔は怖い顔でボクに武器を向けていた彼女が、今はこうして、ボクの腕の中で「女の子」として幸せそうに溶けてくれている。それが、ボクはすっごく嬉しいんだ。
***
午後17時15分。
マリアといーっぱい愛し合って、心のエネルギーを満タンにしたボクは、トレーニングウェアに着替えて裏庭へと飛び出した。
「よーし! おやつの後は、しっかり運動しなきゃね!」
『ドゴォォォォォォンッ!!』
裏庭の芝生が吹き飛ぶ。ボクの目の前には、黒いスーツを着崩した武闘派の魔術師、バゼットが両手足にルーンを輝かせて立っている。
「……見事です、アストルフォ。まさか私の『フラガラック』の迎撃タイミングを、魔力も使わずステップのみで回避してみせるとは」
バゼットは汗だくになりながら、生真面目な顔で感嘆の声を漏らした。
「バゼットもすっごく速いよ! でも、夕ご飯の前にもっと汗かいて、お腹空かせなきゃ! いっくよーっ!」
ボクは純粋なパラディンの身体能力だけで、バゼットの猛攻を躱し、寸止めのカウンターを打ち込んでいく。
(フットワーク、よし! 筋肉の連動、よし! うん、今日もボクの体調は完璧だね!)
バゼットとの本気のスパーリングは、最高に楽しい有酸素運動だ。この日課があるからこそ、ボクのスタミナは無限に作られるんだから!
午後18時30分〜19時。
お風呂で汗を流した後は、キッチンで夕食の準備をお手伝い。
「シエル、今日のメニューは何?」
「鶏胸肉のハーブローストと、たっぷり野菜のミネストローネですよ」
「わぁ、美味しそう!」
栄養バランスが完璧な質素で美味しい夕食を、家族みんなでワイワイ食べる。もちろん、夜のために三十回咀嚼は忘れない。
午後19時40分。
夕食後は、大浴場でのんびりタイムだ。
「パパ、こっち来てー! 水鉄砲しよー!」
イリヤやクロエ、それにアルチナたち年少の子供たちと一緒に、広いお風呂でバシャバシャと遊ぶ。子供たちの笑顔を見ていると、ボクの心はどこまでも温かくなる。
「こらこら、お風呂で走っちゃダメだよー!」
ボクは完全なお父さんモードで、みんなの背中を流してあげたり、髪を乾かしてあげたりした。
午後22時。
子供たちを寝かしつけ、屋敷が静寂に包まれる時間。
ボクは、今夜の当番の奥様たちが待つ寝室のドアを開けた。
「お待たせー!」
「……遅いですわよ、アストルフォ! わたくしをこんなに待たせるなんて、万死に値しますわ!」
天蓋付きの豪華なベッドの上で、シルクのネグリジェを着たルヴィアが、ぷくっと頬を膨らませて腕を組んでいた。でも、その金色の瞳はすっごく期待に満ちている。
「ふふっ。ルヴィアちゃんったら、さっきからソワソワして、何度も入り口をチラチラ見ていたのよ?」
その隣で、豊かな白い肢体を艶やかに横たえたアイリ(アイリスフィール)が、母性に溢れた優しい微笑みでルヴィアをからかった。
「なっ……! 違いますわ、アイリ! わたくしはただ、この男のルーズさに苦言を……きゃうっ!?」
ボクはベッドに飛び込むと、言い訳をしているルヴィアの身体をガシッと抱きしめた。
「ごめんごめん! でも、二人ともすっごくいい匂いで、綺麗だよ。……今日も一日、健康に過ごせたから、ボクの体力は満タンだかんね!」
「あ……っ、アストル、フォ……っ。そんな、急に……っ」
高飛車だったルヴィアの顔が、一瞬で真っ赤に染まり、ボクの熱に当てられてトロトロに溶け始める。
「ふふ。……私も、アストルフォの熱、いーっぱい欲しいな」
アイリも、ボクの背中に柔らかな腕を回し、甘く誘うようにすり寄ってきた。
(よし! 明日も元気にお仕事して、みんなを幸せにするために! 今夜も全力で愛し合おう!)
こうしてボクは、ルヴィアとアイリの二人に、無尽蔵の愛(とスタミナ)を、朝までたっぷりと注ぎ込み続けたのだった。